記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

プレイバック ツール’94

どこからともなく湧き上がってくる”走りたい欲”、この欲求不満を解消するために、
家で眠っていた過去のツールのビデオ(随時DVDに再ダビング中)を引っ張り出してきて
このところ連日見ている。
僕にとってはツールといえば、インデュラインが5連覇を果たした時期がど真ん中の時期。
アームストロングが7連覇した時期より、こっちの方が役者も多く、まさに黄金期だったと思う。
ちょうど80〜90年代に活躍したベテラン選手と、90年代〜2000年に台頭する新人選手が
並んで走る時代で今見るととてもおもしろい。


今見ているのは94年。英仏トンネルが開通した年で、フランス北部リールを出発、
カレーでTTTをこなしたのち、イギリスに渡り、そこから南下、
後半にピレネー、アルプスの山岳が集中、その間に山岳個人TTがあるというコース設定。


インデュラインはその年までツール3連覇、
しかも史上唯一の2年連続ダブルーツール達成で無敵状態。
ただ直前のジロで3位となり、膝の故障と力の衰えで連覇は不安視されていた。
対抗馬は、前年ツール2位、プエルタ3連覇のトニー・ロミンゲル、
あるいは同時代のライバルだったジャンニ・ブーニョ、クラウディオ・キヤプッチ。


結局、ライバルが体調不良で脱落する中体力を維持し続け、
TTでの堅い走りと、後半の山岳でのケタ違いのスピードでインデュラインの4連覇。
2位はウルグモフ、3位はかのマルコ・パンターニ
マイヨ・グランペールは若き日のリシャール・ビランク
(後に歴代最多の7度の山岳王となる記念すべき1回目)
マイヨ・ベールウズベクの暴れ馬アブドジャバロフ!
(やつに比べたらカブなんてお子ちゃま)


この年引退やグランツールはラストというベテラン選手の最後の勇姿が印象的。
3回の総合優勝を誇るグレッグ・レモンのラストラン。
TTTでもまさかの失速で、チームメイトのマイヨを死守できず。
結局序盤戦のなんでもない平坦コースで集団についていけずリタイア。
かつての数々の伝説を残したヒーローのラストはあまりに寂しかった。
同じくキヤプッチも得意の山岳ステージでまさかのリタイア。
ブーニョ(今で言うエヴァンスだな)も衰えがすさまじく、
全く優勝争いに絡むことがないままフェードアウト。
逆にデルガド・ベルナールのバネスト最強アシスト、
モテやルブランなどはまだまだ健在。


今や大物選手のまだ初々しい姿も楽しい。
のちに7連覇を果たすアームストロングは2回目の出走で、マイヨではなくアルカンシェル姿。
山岳個人TTでは、2分後にスタートしたインデュラインにいとも簡単に抜かれてた。
序盤の平坦コースでは、早くもチッポリーニ劇場がこの年から開演、ただし衣装はまだ地味。
3位に入った期待の新人(!)パンターニはまだ24歳で、トレードマークののスキンではなく、
なんと波平カット!実況に「これでもれっきとした新人です」と言われてた。
パンターニの本気のアタックにも余裕でついていけるインデュラインって一体どうなってんの?
初めての山岳王に輝いたビランクは、アルプスステージ制覇で号泣。しかしよく泣く。
かわいそうなのは、スプリント王ジャラベール。
第1ステージのゴールスプリントで、あろうことかカメラを構えていた警官に衝突。
顔面骨折で一時は引退間際までいく大怪我でリタイア。
当時インデュラインの後継者と目されていた期待の新人アレックス・ツェーレも
観客と衝突し、結局体調不良で早々に優勝争いから脱落。速いけどホントに運のない人。


そういえば今や名将とうたわれるビャルヌ・リース(現サクソバンク監督)や
ブリュイネール(アスタナ⇒ラジオジャック?監督)の現役姿もチラチラと。


ああ、もうこのブログ書いてるだけでおもしろい。帰ったら今日も観よっと。