記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

「その街のこども」

今年の1.17震災の日にNHKで放送された特別ドラマ。
あれから15年、当時子供だった人がもう社会人となり、
あの時が少し遠い記憶となってきている。
この物語の主人公2人も、神戸を離れ、社会人として忙しい日々を過ごし、
神戸の記憶を思い返すことなく生活している。
ひょんなことから、神戸の地に舞い戻り、夜の街を歩く2人。
自分の中ではもう15年前の出来事、終わったこととして片付けたつもりでも
やっぱり心の片隅には、間違いなくあの時経験した悲しみや苦しみが、
かさぶたのように残っていて、それが不意に痛み出す。
震災は15年前に起こった単発の出来事ではなく、
あの時から始まったものなのだ。


震災ものといえば、当時の悲惨な情景を映し出したり、
救助活動を題材にした感動的なヒューマンドラマを作ったほうが、
わかりやすいのかもしれない。
でもあえて、15年前に被災した普通の人たちの「今」を描いたことは
とても大切なことだと思う。
実際に被災をし、15年たった今、同じような気持ちを抱いている自分としては
ものすごく現実的な話だったし、多くの被災者が多分同じ気持ちだと思う。
そしてそれは決して忘れてはいけない気持ちだ。


主人公を演じる、佐藤江梨子森山未來ともに、
実際に子供の時に神戸で被災し、
そして今は地元を離れて忙しい日々を送っているという、
物語の主人公とほとんど同じ境遇にあるからこそ
演技ではない彼ら自身の等身大の姿が、ありのままの姿として映る。
ラスト、東遊園地のシーンは、放送のわずか十数時間前、
今年2010年の朝に撮影されたものだ。
そのちょっとしたこだわりにも、力の入れようがわかる。
今年の震災の日は少し特別な気分になった。