記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

関西3空港問題

珍しくマジメな話。


はっきりいって橋下大阪府知事の政策にはあまり共感しない。
実際大阪府大阪市に住み、働いている者としては、
改革の実感もなければ、痛みが解消される気配もない。
子沢山知事ということで、子育て支援なども最初は期待していたのだが・・・
そんななか、伊丹を廃止し、関空を東アジアのハブ空港へと発展させるという
知事の関西3空港問題に対する主張については唯一大いに支持できる。


関空をあれだけ遠方に造ってしまったというソモソモ論を始めても、
全く非建設的なのでしないとして、
今ある関空・伊丹・神戸の3つの空港をどう活用すれば一番有効なのか考える。
それは伊丹空港を廃止し、関空を東アジアのハブ空港へと強化、
神戸空港に国内線ターミナルとして関空のサブの役割を担わせ、
その2つの空港を海上輸送で結ぶことだ。


実際問題として、伊丹発着の国内便が関空の足を引っ張っていることは明白だ。
確かに利用者にとっては伊丹は利便性がよく魅力的に感じるかもしれない。
しかし伊丹の利便性はリニア開通に合わせて取って代わられ、
いずれ間違いなく衰退の運命にある。
何より伊丹は、24時間フル稼働できないという致命的な欠陥がある。
伊丹の再国際化などというのはナンセンスだ。
目先の利益に飛びついてはいけない。
伊丹をなくし、ドル箱路線を関空へ移せば、関空の空港発着料を下げ、
伊丹や上海と競争することが可能になる。そちらの方が大事だ。


航空業界において、旅客は重要なファクターであるというのは間違いないが、
しかし最も重要なのは実は貨物。
一般の人にはあまりなじみがないので、こういう議論がされる場合、
世論では軽んじられてしまうのだが、実は国の大きな根幹である。
前職で航空貨物に携わっていた者としては、
「貨物を制する者は経済を制する」と断言してもよい。
貨物の取扱量、売上は、旅客のそれとは比べ物にならないほど大きい。
24時間フル稼働でき、しかも4000mの第2滑走路ができたことで、
関空は仁川に負けない東アジアのハブ空港になれるだけの機能がある。
伊丹にはそれだけの機能はない。
貨物が集まる。モノが動けば、人も動く。
そうすることで関西の経済が活気付くのは間違いないことで、
関空周辺の自治体だけでなく、伊丹周辺の人々も恩恵を受けられる。


ところが、今や関空はその勢いを失いつつある。
ANAハブ空港へ前進せず空港発着料の高い関空を見切り、
倉庫をたたんで、沖縄へ貨物拠点を移してしまった。
その上、JALがゴタゴタで貨物から撤退すれば、関西は閑古鳥が鳴くだろう。
かつて鎖国していた島国日本の悪い癖なのか、
広く世界を見ることをせず、地元・身内のちょこちょことした利益を主張しあっている。
ハブ空港たりえるかどうかというのは国家戦略上極めて重要で、
国や広域行政が明確なビジョンを提示すべきなのに
地元の小さな主張に振り回されてしまっている。
これでは、結局お互いが足を引っ張り合って、
関西の地盤沈下はますます加速してしまうだけだ。


関空の一番の難点は言うまでもなくアクセスである。確かに遠い。
でも成田はどうか?成田はアクセス整備の努力を怠らなかったが、
関空は未整備のツケが回ってきている。
伊丹廃止の前提として大阪の中心部と関空を結ぶ、高速鉄道網を整備する必要はある。
知事の言うように伊丹を売却した分でリニアを整備するのも一つの手だ。
でも、一般の人が1年のうちに海外へ行く、あるいは飛行機に乗る回数なんて、
たかが知れている。
たまの海外なら、関空へ行くまでの1時間をワクワクして楽しめばいい。
確かに帰国してからの道のりは険しいが、家に帰り着くまでが旅じゃないか。
そういう小さい話で大きい政策を左右してはいけない。
各地元の利害や思惑も当然複雑に絡んでくると思うが、
個別で特定のエリアや人間の損得ではなく、
国や地域が主導で大きい視野で問題を解決してほしいと思う。