記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

ツール・ド・フランス2010

予約購入してたツール2010のDVDが届きました。
さっそく全部見たけど、正直BSでやってた1時間の総集編に毛が生えた程度で少し物足りないけど、
それでも画面にひきつけられる見どころは多々あった。
コンタドールのドーピングについてはまだ最終的な結論が出てないのでそれを考慮しないで
純粋に結果だけでの感想を少し。


例の物議をかもしたピレネーステージでのアンディのメカトラと、コンタのアタックだけど、
ちゃんと見たらやっぱりその件に関してはコンタには全く非難されるようなことはないと思う。
アンディのトラブル発生と、コンタのアタックはほぼ同時。
コンタ自身はアンディがメカトラに遭っていたと知らなかったと言っているけど、それはきっと嘘。
知っていてアタックをかけたのはたぶん間違いない。
ただ、コンタがアタックをかけて出し抜こうとしたのなら、
さらに後方にいたメンショフ、サンチェスも置いていかれていたはずなのだが、
山頂を越えるまでに合流しているところを見ると、
明らかにコンタはペースを緩めてしばらく様子を見ている。
総合3位、4位の2人が合流したのにアンディがいないのを見てとって
コンタはそこからしきりに後方を確認している。
それにそこから下り区間に入っても、先頭交代には加わろうとせず、ずっと後ろを気にしていた。
先頭交代に加われば、アンディとの差をもっと決定的に広げることは可能だったはずだがそうしなかった。
つまり、コンタ自身はきっとアンディを待っていたのだと思う。
ただそれが完全にストップして待つということにならなかったのは、
メンショフ、サンチェスの表彰台争いが激化していたことがある。
そしてそれを放置するのはコンタにとっても危険だったこと、
特に前のステージの上りで、アンディとコンタは非常に危険な心理戦を展開して
ほとんど停まってしまうんじゃないかっていうくらいまでペースを落としたりして
そのステージの後半に、メンショフとサンチェスとの差が危険水位に入るという状況もあった。
そういう前フリを考えるとコンタとしては彼ら2人についていかざるを得なかったと思う。
それにひょっとしたら、メンショフとサンチェスが、
アンディのメカトラに乗じて表彰台確保のために出し抜いたという可能性だってありうる。
なぜならアンディはTTが苦手とこの時点では思われていたから。
これらの状況を考えると、もし不文律を破ったとして非難されるのならば、
それはコンタドールではなく、メンショフとサンチェスじゃないのかと思う。
ただ、マイヨジョーヌを着る者の重責としてコンタドールが非難の的になってしまったというのは理解できるが。


そしてそして歴史に残る濃霧のツールマレーでの激戦。
先のメカトラ問題が遠くかすんでしまうほど2人の異次元の戦いはすごすぎた。
日頃チャーミングなアンディが、歯を剥き出しにし、ギラギラと獰猛なまなざしで、
後先を考えずに信じられないペースでふもとから上がっていく。
それを表情一つ変えずにぴったりと追走するコンタ。
残りの選手全員をはるか後方に追いやって、純粋に己の力のみでのぶつかり合い。
栗村さんの解説によると、2人の出力はざっと見積もっても450〜500W。
そんなのもう人間業ではなく神業。
アンディが何度もものすごい形相でコンタをにらみつけ、それを涼しい顔で流して
逆に爆発的なアタックで揺さぶりをかけるコンタ。
こうなるともう誰もこの2人の世界に踏み込むことができない。
そしてゴール後にはお互いをたたえあう姿。
もうこのわずか11kmほどの出来事を目に焼き付けるだけでも買った価値はある。