記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

紀伊半島縦断 前編(金剛トンネル〜十津川〜本宮)

小浜・名古屋とロングを重ねてきたが、どうにも感動が薄い。
いやもちろん走りきった充実感はたまらないのだが、
ゴールとなる目的地がイマイチぱっとしない。
人気のない寂しい港に着いたところでこみ上げることがない。
ということで、感動必至のポイントをゴールにロングへ行こうと思い、
そしたらもう本州最南端・潮岬しかないわけです。
行き方としては和歌山・白浜とひたすら海岸線を走るルートと、
吉野・熊野を抜けて新宮から目指すルートとある。
ともに240kmとほぼ同じ。どっちがいいかなと考えて、
そういや最近は全く山岳らしい山岳を走ってないなあ、ということで
後者を選択。
夜中に出発して、帰りは夕方の特急で輪行する計画。
ただし、ここでちょっと不安。
電車のダイヤと、日中の暑さを考えるとできるだけ早く出発しておきたいのだが、
あまり早く出発しすぎると、五條から新宮まで130kmの補給ポイントに困ることになる。
なにせ、五條病院前のコンビニを過ぎたら、新宮までないのだ。
途中30kmおき位に道の駅があるのだが、早くても8:00、9:00までは開かない。
自販機ぐらいはあるだろうが、上りで腹が減るのは間違いない。
シミュレーションを重ね、最適な時間は23:00出発とする。
が、当日の日中はご承知の通り集中豪雨。ホンマに行くんかとぱしゃ君がわざわざTELをくれる。
正直DNSも考えたが、目的地方面は雨はひどくなさそうだし、出発までには止むだろう。


まずは入念に準備。
前輪がヘコんでいる・・・
チューブを調べてみるが、特に異常は見当たらず、
手持ちの替えチューブが3本しかないのでそのまま入れておく。(結局前輪はノーパンクでいけた)
それにしても早くもミシュラン嫌な予感。
パンクは避けたいので今日は前後とも空気圧9.5BARと高め。
それから今日のために新調したフロントライト。1000カンテラ以上で多少明るく。
いつも使っているものもつけ、バックライトも2つ、加えてヘルメットに1つずつと万全を期す。
リュックを背負うと腰に間違いなくくるので、
サドルバッグとポッケにありったけの補給品や地図、ウィンブレ、その他諸々を詰め込む作戦。
まずは補給品として、羊羹、SOYJOY4本。
それからいつもポッケにペットボトルを突き刺してしまうので、
今回は小さい500mlハイドレーションを忍ばし、山岳での万日に備える。
それからこないだの小浜までの山間部は寒かったのを思い出す。
アームウォーマにするか、ウィンブレにするか迷ったが、
この雨でさらに低いことが予想されるし、帰りの電車も寒いだろうからウィンブレに。
背中パンパンです。


23:00出動。まずは舞洲へ。風が強いので無理せずに。
舞洲でいつものように記念撮影♪と思ったら、なんと痛恨のケータイ忘れ・・・
あれこれ詰め込むのに必死で、充電したまま忘れてた・・・でもここで気付いてよかった。
ガッデム。本当はここからR43などを使って直で堺まで行くつもりだったが、一旦帰宅。
0:15。いきなりのタイムロス。
そこから天満橋筋天王寺、直進して播磨町で曲がって、西田辺からあびこ筋
大和川のところでローディーさんがいたので挨拶してパス。
後ろについてきているみたいなので、手信号出してあげて、新金岡まで。
中百舌鳥で左折し、R310に入る。昼間は使いたくない路肩狭小の幹線道だが、夜中は便利。
泉北丘陵のアップダウンをこなして2:00まえに河内長野到着。自販機でしばし休憩。
ここまで来るとちょっとひんやり。


すぐにリスタートして、金剛トンネルを目指す。
まずは観心寺までの斜度きつめの上りをえっちらおっちら。
とたんに周囲が暗くなり、心細い。空を見上げるとびっくりするくらいの星空。
進行方向の東の空の低いところには、真夏のオリオン。きれいだなあ。
観心寺からは金剛トンネルTTコース。
無理は禁物だが一応TTモードで気持ちを上げ集中。
そうじゃないと、話し相手もおらず暗さが怖い。
中間近くの県道211分岐までは民家もあり、数十メートルおきにオレンジ外灯があるので
集中してそこそこ回していたのだが、そこから先少しずつ斜度が上がり、
暗闇が深くなってきてビビリはじめ、ペースが落ちる。
最後の集落が終わり石見川がはなれていくところから、最後の3kmが本格的な上り。
ここで上のほうから嫌なエキゾースト音。
その音は一気に近づき、フルスピードでコーナーを攻める2台の走り屋が通過。
センターライン無視で、しかも2台が抜きつ抜かれつの接近バトルをしているもんだから
危なすぎて思わず足つきして、路肩へ逃げる。
ひょっとして走り屋がいるかもと思って、紀美峠⇒橋本の迂回ルートも考えてはいたが
大雨の後だし大丈夫だと踏んで、こちらのルートを選択。
現にTTコースの大半にいなかったので安心してたのだが・・・
とりあえずココまで来て後戻りできないので、もう戻ってくるなよと祈りつつリスタートするが、
ヤツラが下から戻ってくる!ちょうどクネクネ区間
ヤツラもこちらの存在には気付いてはいるはずだが、
事故だけは嫌なので、ブラインドにならず、巻き込まれないストレート区間で待機。
あっちゅう間に2台が駆け上がっていく。
もう来ないでくれよと、命からがら金剛トンネルに到着。タイムは一応37:51。
元々100%ではなかったし、暗いし、車怖いしで、参考記録


↓mid金剛トンネル


トンネルを抜けると、ちょっとした広場みたいなところで6,7台の車が停まって
たくさんの若者たちがダベっている。
このコースは夜中は完全な走り屋の巣のようなので夜間は二度と使わないでおこう。
そのまま五條へと下ります。
奈良には予算がないのか、大阪側はある程度の間隔であった外灯もなくなり、真っ暗。
こちらの方が傾斜が急なのに、見通せないので、慎重に下る。
眼下には五條の街の明かり。そしてその上に朝もやがポッカリ浮いていて幻想的だった。
が、余り気を抜けず、ゆっくりゆっくり下る。場所によっては相当に暗い。
そしてかなりの急カーブが連続し難易度が高い。
TTコースのほうへ迂回しようと思ったが、暗過ぎてポイントを見失い、そのまま下る。
クネクネクネクネととても骨が折れる。上半身がクタクタ。
ようやく住宅街に抜けると、朝もやのせいか寒い。
五條IC、本陣交差点を通過し、大川橋で紀の川越え。
関西ブルベでおなじみの五條病院前のサークルKに到着が3:15くらいだったか。88km。
ここから新宮まではコンビニがないので、しっかり補給しておく。
とにかく冷えるので、ウィンブレを着こみ、温かいものを。
カップ麺だと油でもたれるので、スープパスタ、それにおにぎり2つ。
それにしても予想より早く来過ぎた。
あまり早すぎると更に山間に分け入っていくので、ちょっと不安。
時間調整の意味でも30分の休憩。
4:00前のリスタートなら、何かあっても1時間半で夜は明けるし、
暑くなる前には本日最大の15kmの上り区間をこなして、
確実に本日のチマコッピは過ぎているので問題ない。
次の目標、谷瀬のつり橋には7:00までに到着すればよい。


4:00までのんびりストレッチしながら体を休めるつもりだったが、
止まっていると寒いのもあって、3:45に再出発。
丹原でブルベコースと分かれて左折し、県道110コース並みに緩くのぼっていく。
西吉野までは幻の五新線のバス専用道路と何度も交差しながら進む。
学生時代、奥さんとここを走る専用バスに乗って西吉野へプチ旅行したことがあるなあと
しみじみ思いだしたりのんびり上っていく。
そんなに上りという上りでもないし、寒いのでウィンブレを来たままの走行だったが、
黒滝への分岐で一旦止まって脱ぐ。


↓黒滝との分岐


ここから本格的な上りが始まる。
予習したデータでは現在地は標高250m、ピークの天辻峠は650mなので、
約7kmの区間で標高差400mを上る。
のっけから結構斜度がきつく感じ、勢い付けるためにダンシング開始。
寒さのせいかちょっと膝に違和感がでてくるが、痛みはない。
そのうち何かの施設のところの手前から登坂区間が現れ、斜度が上がる。
ぐる〜っと大きくヘアピンカーブを回りながら、上っていくと、
そろそろ太陽が上ってきて朝を迎える。


↓吉野の夜明け


ヘアピン区間を抜けると少し斜度が緩み、そのまま長いトンネルへ。
めちゃくちゃというわけではないが、釣りやキャンプの客であろう車が結構走っているので、
トンネル内は慎重に進む。
まだまだ上りは続き、緩急をつけながら上っていく。
なかなかダイナミックで自分は好きなコースかも。
再び大きなヘアピンカーブを回っているとどうも後輪のフィーリングがおかしい。
特にダンシングをするとゴテゴテと違和感を感じるが、まあ走れているので様子見。
再びヘアピンカーブがあり、ダンシングするがどうも気になる。
もうちょいでピークなのだが、その手前に長いトンネルが待っているので、
そこで身動きできなくなる前になんとかしたい。
ちょうどヘアピンを抜けたところにある何かの施設の駐車場があって、
エスケープできたので一旦止まって後輪を確認すると、
タイヤの一ヵ所に何か付着している。アスファルトのカスのようだ。
ミシュランはグリップ力をあげるために表面がベタベタで
よく小石やアスファルトのカスを拾うので、それかと思って外したら、
小さいカット傷が現れ、明らかに空気が抜けている音がする。
お〜い、マジかよ〜(泣)せっかく一番の難所を気分よくこなせてたのに!(怒)
しかも出発前に不安のあった前輪ならまだしも、何もないはずの後輪。
まだ始まったばかりなのに、両輪に不安をかかえてあと200km近く走るのか…
とにもかくにもパンク修理をしないことには始まらない。
力は入らないし、気持ちは萎えるし、バカミシュランには腹立つし。
だいた、まだ履き替えて1カ月で、2000kmも走ってないのに、このザマ。
イライラを全部、カット傷のついたタイヤにぶつけながら、空気を目いっぱいブチ込む。
ああ全くロングライドでこれほど気が滅入ることはない。
無駄に体力を消耗しヘトヘトになったので、貴重な補給品をここで2つ使ってしまう。
こうなったら食わなやってられへん。
不幸中の幸いはこれが夜明けすぐに起こったこと。
これがまだ夜中だったら手探りで路肩でパンク修理などできるわけがない。
予防線を張って時間調整しておいてよかった。


30分ほどロスをして、そこからすぐに新天辻トンネル。
これがまたどえらい長いトンネル。路肩などなく、肝を冷やしながらなんとか抜ける。
そこから500m進んだところにある道の駅吉野路大塔で一旦休憩。
案の定店はまだ明いておらず、水分補給とトイレ休憩、そしてタイヤ交換で汚れた手を洗う。
モチベーションは下がってるわ、タイヤに不安はあるわで、駄目駄目状態。
ここからは下り基調で十津川なので、ここが運命の分かれ道。
引き返すならここしかない。ちょっといったん落ち着いて休憩して考える。
30分無駄にしたが、まだ予定はそんなに押してないし、疲れてない。
チューブの替えは2つしかなく、タイヤに不安はあるものの、
下り基調ならスムーズに行けるだろうし、夜は明けた。
とりあえず110km先の新宮までなんとかたどり着ければよい。
何よりパンクごときで引き返すのは負けた気分になるので、やっぱり進むことにする。


↓チマコッピ直前で痛恨のパンク


↓長い長い新天辻トンネル


↓道の駅吉野路大塔


道の駅を出発したのが、6:00ちょい。ここから一気に下り。
どうも後輪がブレるような感覚・・・
道の駅できちんとタイヤの具合をチェックしたのだが・・・
下りきると静かなる猿谷貯水池をぐるっと回り込みます。静かだなあ。
途中天川村との分岐で右折。
川と併行しながら、のどかな道をひた走る。
やはり後輪が変。特にコーナリングで自動ロックがかかるように推進力がなくなる。
あまりにこなしいので一旦停止して後輪をチェックすると、
後輪がぐらぐらでブレーキシューに干渉している・・・
恐らくパンク修理の時にホイールがうまくはまっていなかったのだろう。
何度もチェックしたはずなのだが・・・疲れと眠気で集中力が欠けてきているのかも・・・
もう一度はずして、きちっとセンターに入れて、クイックをしっかりと締める。
途中いくつかのトンネルを過ぎると大塔町堂平の集落に入る。
ここから再び上りが始まる。対岸へと分かれていく険しい県道734は野追川へと続いていく。
随分上がってくると、対岸にかけてでっかい構造物が架けられようとしている。
なんかMIHO MUSEUMにあるアーチのような橋。恐らくR168の付け替えだろう。
ここからは再びの下り区間。車線も復活し、爽快に下っていく。
大分明るくなったが、まだまだ暑さは大丈夫。なんてすがすがしい朝だろう。
幾つものアップダウンと、トンネルをこなして、ようやく前方に谷瀬のつり橋の案内板発見。
本線から少し外れて、ちょいと上って7:00前に到着。
高所恐怖症だがせっかくなので、つり橋を途中まで渡ってみたが、
打ち付けてある板がパカパカするたびに、クリートがめっちゃ滑るので、危うく尻餅つきかけた。
あむないあむない。対岸まで行ってもしゃーないので途中まで行って退散。
駐車場のトイレで用を済まし出てくると、朝市のおっちゃんに声をかけられる。
どっから来たのと聞かれて、大阪からと応えるとご苦労なこってと労われる。


↓谷瀬のつり橋


クリートが滑る(汗)


さて、この時点で走行距離130kmです。新宮まではあと60kmくらい。
最終目的地までは100km以上あります。まだまだまだあります。
7:00ジャストにリスタートして、先へ急ぐ。
ひたすら山を縫って、トンネルをくぐって進む。基本は確かに下り基調。基本は。
去年走った護摩壇山が尾根道で厳しかったのに対して、
こちらは川に沿って谷底を進むので難易度としては全然こちらのほうが楽。
風屋貯水池をぐるっと回り、橋から顔をのぞかせているダムをパチリ。
ここからは狭小な道を幾多のアップダウンをこなしながら進む。
つり橋を越えると交通量もぐっと減り快適なワインディングロード。
道の駅十津川郷に到着。あと10分で8:00のOPENなので休憩がてら待つ。
めはり寿司が置いてあるかと期待したが、なくて残念。
結局何も買わずにリスタートする。


風屋ダム


↓道の駅十津川郷


ここからも基本アップダウンを繰り返していく。途中でR425との共通区間になる。
太陽も高くなってきて、十津川の川面がエメラルドグリーンに輝いてビックリするほどきれい。
大自然の中を走ってるという実感。充実。
折立橋で川の対岸にわたり、しばらくにぶい上りをこなすと十津川温泉郷に入る。
しばらく行くと、さっき合流したR425が恐怖の牛廻山へと分かれていく。
この十津川温泉郷から桑畑までの6kmは本ルート最後の本格的な上り。
徐々に斜度が上がり気合を入れて上り始めるが、
最後の民家からでかい犬が飛び出してきて目が合う。
嫌な予感がしたので、ペースを一気に上げてさっと抜けようと思ったら、
犬の目がキランと輝いて、うれしそうにダッシュしてくるではないか!
もう、ヤメテ〜!
追いつかれそうなくらいの勢いだったので、ガチダンシングで必死で上る。
200〜300mくらいバトルが続き、ようやくあきらめて向こうがペースを落としたので、一安心。
まあまあの斜度があったし、めっさ疲れた〜!
ちゅうか動物に茶々入れられるの多すぎ!
そこからはダラダラと上りをこなしていく。どんどん川は下の方になっていき、
雄大な山々が連なるのを見ながら上る。ぱしゃ君連れてこなくてよかった。
桑畑のトンネル出口が工事中で、対面信号でちょっと休憩。
そこを抜けると一気の下りが始まる。
七色からはR168の付け替えで、真新しい高架橋が連なっている。
旧道を行こうかどうか迷ったが、地元の路線バスがそっちへ行って後ろにつきたくないのと、
新道は別に自動車専用じゃなかったので、快適に新道を進む。やっほい♪


↓川がエメラルドグリーン


↓キング・オブ・酷道R425の心臓部、牛廻越への入り口


↓R168の付け替えでスムーズに


そこを下りきると、広い平野部に出て平坦に。
道の駅奥熊野古道ほんぐうでトイレ&ジュース休憩だけして先へ進む。
一度丘越えをして再び平坦になると、右手に大斎原の大鳥居が見えてくる。
ここが熊野霊山の中心地、本宮です。ここはもう聖なる地なのですぞ。
せっかくなので本宮大社に参拝。ビンディングで石段を登るのはかなり難儀する。
残念ながら本殿は葺き替え中でしたが、家族の健康と道中の安全をお祈り。
そうそうここの神様にお仕えしている従者は言わずと知れた八咫烏
そう八咫烏といえば、日本サッカーのシンボルですね。
サッカーお守りなんぞもありましたが、必要ないので買わず。


↓大斎原の大鳥居


↓本殿は葺替え中


さてさて、ようやく本宮まで来ました。現在9:00ちょい。約200km走ってきました。
新宮まではあと35km、潮岬まではあと70km。
まだまだ旅は続きます。



追記:
予想はしていたが、まさか自分が1週間前に走ったエリアが、
台風のせいであれだけの被害が出るとは、とても複雑な心境。
1日も早く復旧するように祈るばかりです。