記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

『東京オアシス』 by 松本佳奈 中村佳代


『カモメ食堂』『めがね』を手がけたスタッフチームの最新作。
『カモメ』からこのシリーズを追いかけている身として期待半分、
でも結局『カモメ』『めがね』だけがよかっただけで、
以降の作品は意味不明&ひたすら眠気を誘うものばかりなので諦め半分で奥さんと観に行った。
結論から言うと、全くもってつまらない映画でした。
このシリーズ、ちょっとひどいくらい劣化が激しすぎる。
これはマンネリという簡単な問題ではなくて、
この製作陣のウヌボレなんだと理解している。
つまりアナタたちこういうのが好きなんでしょ?
じゃあ皆まで言わなくても理解できるよね?
わからない人はセンスないってことなのヨ、そういう人はサヨウナラといった風。
『カモメ』の頃なんかは、謎めいてメルヘンなところもあったけど、
でも基本出ている人たちの暖かさや優しさっていうのが画面からあふれていた気がするし、
飾らない、肩肘張らない、背伸びしない手作り感といったものが
非常に好感を持って受け入れられたのだが、ここまで来るともう全然優しくない。
ただ単に同じキャストだから一緒に見えるというのは言い訳に過ぎない。
むしろ同じキャストだって全然いいと思うのだが、
それを生かすべき資質が監督・脚本家・演出家に決定的に欠けている。
比喩ではなく、実際問題として学生映画レベル以下。
たぶんもう次観に行くことはないだろう。
ダラダラと風景のショットを長回しし、演者が禅問答のようなやりとりを二言三言。
もっともらしいことを言っている様で、単に思わせぶりなだけで中身はなく、
空虚なコトバだけが映像に拡散するだけで、
実感も共感も納得もなく、ただただ無駄な時間が垂れ流し。それが約90分。
何が言いたいのか、何がしたいのか。
ストーリーというストーリーもなく、登場人物同士が会話はすれど真に交わることもない。
ただきれいな景色の中に雰囲気のある役者を放り込んで気の利いたことを言わせるだけ。
行間を読めと言ったってその行すらなければ単なる余白にすぎない。
これでは東京オアシスというより、全く何もない東京砂漠だろう。


追記:
映画とは関係なく奥さんと2人で大爆笑してしまったのだが、
映画が始まる直前に「ワン!」っと小型犬の鳴く声がしたので
まさか犬同伴で映画館に来てるのかと思って探したら、
なんとお客さんのクシャミ!
超リアルというか、まさしく犬の泣き声だった。
あれは形態模写としては完全に近い。
あの後クシャミをしそうなときに色々試してみるが
あんな音の出し方はどうやってもできない!
映画よりそっちの方が印象深かった。