記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

富士登山

8月最終週。土佐ライドでの疲労と激務も相まってかなり衰弱気味。
週の半ばでぱしゃ君と奈良夜練をしたが時期尚早。
体力の回復が万全でなく、ゲロゲロ。おそらく間違いなく熱中症
こんな状態では2週連続でロングは難しい。かといって週末を持て余すのも忍びない。
こはちょっくら気分転換に山でも行くか。
ただ、仕事が大変忙しく、週末前後に休暇を取れないので、1泊2日で行って帰ってこれる山。
ということで北アは断念。
そこでいっそもう富士山登っちゃえば?と即決。
本当は8月の頭に会社の人と登る予定だったのが流れてしまっていたし、
シーズンもオーラスで、この週を逃したらまた来シーズンまで待たねばならない。
高度が高いから暑さとの格闘はないだろうし、
ペースを守っていけばほどよいトレーニングにもなる。
そうだ、富士山に行こう!


4つある登山口のうち、色々検討した結果、須走コースを選択する。
一番の決め手は、スタート地点の高度が1970mと比較的低いこと。
例えば富士宮口ならすでに2500mからスタートできるが、
自分はまだまだ高所慣れしていないので徐々に高度を上げていった方がよいので。
ただし、高度が低いということはそれだけ歩く距離は増える。
チャリと一緒で、瞬発的に強強度を上げるのは苦手だが、じっくり長時間出力は問題ない。
富士登山と決まれば、慌てて夜行バスを手配したり何だり。
わざざざOCATまで出向いたのにカード使えないというので結局家のPCで手配。
小屋はその時の状況次第で。(富士山に関しては絶対に予約が必要だとわかった)


当日21:15に家を出てそのまま徒歩で東梅田のバス停まで。
バスは小田原方面行きの高速バスで、3列独立シート、トイレ付。
だが予約でラス1のシートだったので
最後尾の真ん中、エンジンルームの真上という空調的に過酷な席だった。
定刻通り9:50に出発。
新御堂〜吹田ICのルートではなく、なぜか福島ランプ〜豊中ICで名神入り。
中京都の八重口で停車するのだが、そこまでの区間だけでも相当にしんどい。
直下からエンジンが発する熱が来るし、窓側の席のように上に送風口がないので風も来ない。
うだるような暑さで朝の7時前まで耐えれるのか…
車窓も望めないセンターの狭い空間で煮えるような暑さと格闘するも全然寝付けない。
途中1回だけ休憩があり、土山SAで30分とにかく社外に出て涼む。
売店でキンキンに凍ったパウチタイプのアクエリアスがあったのでそれを買い、
タオルにくるんで氷枕にしてどうにかこうにか我慢する。
寝苦しいことこの上なく、あまり熟睡できないまま6:50に御殿場駅前に到着する。


近鉄高速バスにてアクセス


↓早朝の御殿場駅


6:30.ようやくバスの密閉空間から解放されすがすがしい朝日を浴びる。
今日はいい天気になりそうだ。
須走口までの路線バスは7:20なので少し時間がある。
今のうち登山仕様にウェアを着替えたり、コンビニで朝食を取ったり準備しておく。
8:20にバス到着。
同じく富士山に登るハイカーが15人ほどが乗りこみ1時間ほどバスに揺られる。
徐々に高度があがっていくにつれてガスってきた。
これは本格的な雨雲のせいなのか、それとも一時的な朝霧か…
そろそろ終点に近づいてくると、周辺の道には路駐の長い長い車列。
おそらく登山口の駐車場がいっぱいであふれ出たものだろうが、
しかしこんな1km2kmも先から車の列が続いているとは何ともはや。
予定通り8:20に須走登山口に到着です。


↓須走口5合目


到着してすぐに歩き出したい衝動にかられるのをぐっと抑えて、
高所に慣れるためにしばらく待機する。
さすがに2000m近くまで上がってきて、しかも薄曇りで風が強いので少し寒い。
そこでフリースを出して着込んだり、もう一度準備をやる。
自分はお腹の具合が非常にユルユルなので、出発前にしっかりトイレにこもる。
トイレも何度も行けるものではなく、1回200円の使用料がかかるので、ぎりぎりまで我慢。
あと小屋の状況を確認すると、山上の小屋は今シーズン営業終了で、
8合目9合目のほとんどの小屋はもう満室の様子。
唯一7合目にある太陽館だけ若干の余裕ありという状況。
うむう、見通しが甘かったか…
こうなれば今日中に上って帰る弾丸も検討せねばなるまい。
トイレのおっちゃんに聞いてみたら、「あんたなら十分行って帰ってこれるわ」と太鼓判。
いやいや、まがりなりにも日本一高い山でっせ、そんな簡単に行けるかしらん?
どうせならご来光も見てみたいし、
できるだけ早く7合目の小屋に到達して寝床を確保することにする。
そうこうしているうちに9時になってしまいそうなので
そろそろ登山開始。


↓山小屋はほとんど満室状態


↓いよいよここから登山開始(1970m)


土産物屋の前を通り過ぎ、石段を歩いていきます。
本などでは自分が思っている以上にペースをゆっくり保つべしとあったので
歩き始めは相当意識してゆっくりペースで進みます。(それでも結構人をパスしたけど)
何か祀ってある鳥居をくぐると石段がなくなり、土の道になります。
そこからはしばらくは樹林帯の中を進んでいく。
さすが活火山だけあって黒土に覆われ、
木の根っこが張り出しているのでつまづかないように進む。
この辺は全然上りというよりも森林ハイキングといった感じ。
30分ほど森を歩くと一旦視界が開ける場所に出る。
すると、雲の切れ間から少しだけ山頂を拝むことができた。


↓最初は樹林帯をゆく


↓30分ほどで一旦視界が開ける


↓山頂がかすかに見渡せる


一旦まとまった森を抜けると、先ほどよりも低い草木の間を進む。
地面は一層砂っぽくなり、足が入っていくほど柔らかくなっていく。
少しずつ斜度が上がってきたせいか、休憩をしている人も増えてくる。
白人の家族集団をパスし、そのまま彼らを引き連れる格好でしばらく上る。
彼らは短パン半袖で荷物なしというワイルドすぎる格好だが大丈夫か?
6合目の手前あたりからいよいよ草木が低くなり、展望が開ける。
ずっと薄曇りだったのだが、この頃は風が強いせいか雲が飛ばされて下界も少しだけ望めた。
さっきからずっとパンパン、ババババーンという音が下界から響いてきてたのだが
おそらく御殿場の演習場で実弾演習でも行われているのだろう。
ところどころ見晴らしのいいところがあって、そこでたくさんの人が休憩をしている。
自分は全然疲れていないので写真だけ撮ってすぐに上りを開始する。
途中並走した若造集団が、「自然ってすごい〜(はあと)」「これって青春だね(はあと)」とか
聞いているこちらが恥ずかしくなるような歯の浮くようなセリフで会話しよるので
ああいうセリフをこともなげに言っちゃうのはもう絶対東京人。
やめてくれ〜と思ってピッチを上げて引き離し再び静けさを取り戻す。
それにしても暑い。5合目でバスを降りたときには肌寒さを感じ、タイツ2枚履きしたりしたのだが
やはり動き始めると暑い。かといってここで脱ぐわけにもいかないし、困った。
レイアリングは難しい。
歩き始めから1時間ほどで6合目の茶屋に到達する。


↓地面がだんだん黒っぽい砂地になる


↓もうすぐ6合目というところから裸地に変貌


↓待ってろ!山頂!


↓6合目(2420m)


6合目の小屋ではたくさんの人が休憩中だったが、
まだ1時間しか歩いていないのでそれほど疲れてもいない。
それに早く7合目にたどり着いて小屋の手配をしなければならないのでスルー。
この頃は天気も良く、ちらちら後ろを振り返りながら下界をみやり進む。
で、本6合目にあっという間に到着。
6合目の次は7合目ではないんですな〜へへへ〜。
なかなかこのニセモノに苦しめられ
永遠に山頂にたどり着けないのではないかと思う人がいるらしい。数のマジック。
要は何合目かより今何mまで上がってきたかさえ気にしてればいい。
ここでまだ2700m弱なので、700m分は登ってきたが、あと1000mはあります。
ここまでは草木もあってなだらかな傾斜を登ってきましたが、
お遊びはここまででいよいよ本格的な登山ルートになっていきます。
少しだけ荷物を下ろして汗をぬぐい、水を流し込みます。
あと少しお腹が減ったのでマーブルチョコレートを筒からがががっと流し込む。
蝶ヶ岳の時はプレッツェル&ナッツの自家製レーションだったが、
豆の油分に私のお腹はすこぶる弱く、翌日便がユルユルで困るので、
チョコに変えました。甘みのおかげで疲れも吹っ飛ぶぜ。


↓眼下に御殿場のすそ野が広がる


↓本6合目の瀬戸館(2630m)


ほんのわずかな休息ののち、再び登り始めます。
この辺まで来ると草木はもうほとんどなくなり、
黒い砂地が一面を覆い、ゴツゴツした岩が転々とする荒涼な地へと変貌します。
須走ルートは登山ルートと下山ルートがはっきり区分けされていて、
遠くに下山ルートが見えるのだが、そちらには多くのハイカーが土ぼこりを上げながら
豪快に下っているのが見える。
高度を上げるにつれて雲が厚くなってくる。
黙々と登り続け、約2時間で7合目に到達する。11:30。
ここでようやく高度3000mを越えます。道程的にはちょうど山頂まで半分です。


↓徐々に草木がなくなり道も険しくなる


まだ午前中だが先に小屋によって寝床の確保に向かう。
受付のお兄ちゃんが今日は予約でいっぱいだよ〜と難しい顔。
5合目のインフォメーションではわずか空いていると聞いたんだけど〜と言いながら
小屋のお母さんも巻き込んで世話話。
するとこのお兄ちゃん大阪から来ているようで、話が合い、
盛り上がったところで再び交渉したら、どうにか1人分ならスペース空けますということで
無事に交渉成立。
小屋のお母さんが、ここまで2時間で来れる脚があるんなら、
十分日帰りで下山できるし、お金もったいないからそうしなと言ってくれるのだが、
いや泊まりたいんですというと、
お母さんがひょっとしてどっか外国の山へ行かはるの?高度順応のトレーニングかなんか?
と聞かれたので、いやいや今日登頂は済ませるけどご来光は見たいので一泊するんですと答える。
それでようやくこの時間帯に小屋の手配する事情について納得してもらえる。
まあ実際、日帰りで下山してもいいのだが、まさか日帰りは想定していなかったので
下山後、大阪まで帰れるかノープラン。
8時、9時に御殿場に着いたとして、どこか下界で泊まりになってしまう可能性も大きい。
それなら7合目でとどまって、ご来光のチャンスに賭けた方が意味がある。
2日連続登頂するというのもちょっと二度手間な感じはするが、2回登れたら登れたでいいし。
そもそも自分のペースがそんなに速いのかどうか。
ということで、客がはけてガラガラの小屋を案内してもらう。
自分の寝床は食堂側の一番はしっこの下段。一番端というだけでちょっとラッキー。
今日は予約でいっぱいなので、敷いてある布団一枚の上で7,8人シェアして寝る。
1人ずつ寝袋が用意されているのでそれに潜り込んで寝るようだ。
早速不要な荷物を自分のスペースにデポして、登頂に向かうことにする。
で、小屋を出て食堂の前を通り過ぎようとしたときに、ちょうどカレーを注文した人がいて
これがただのレトルトなのだが何ともうまそうな匂い。
これはいかんともしようがないと、足を止めてカレーを食べることにする。
カレーはセットで1365円。カップヌードルで600円の世界です。
カレーにサラダ、コーヒーと缶詰めのミカンのデザート付きでこの値段は納得。
待っている間、となりで豚汁を注文した若者2人が話しかけてくる。
もう山頂はそこですかと聞いてくるので、いやいやここはちょうど中間地点ですよと教えると
かなり絶望していました。曲がりなりにも日本一の山ですからね。
甘く見たら痛い目をみますよん。
さてようやくカレー様の登場です。
やはりお腹が空いていたのか、ガンガン胃袋に収まる。
山でカレーってなんでこんなにうまいんでしょう!
道行く人たちが自分のカレーを見て、
思わずうまそううまそうと声を洩らしながら過ぎていきます。
うんうん、ええやろ?ほしかったら注文してください!
あっという間にカレーを食べ終わり11:00にリスタートします。


↓7合目の太陽館(2930m)


↓本日の寝床確保


↓カレーセット1365円


7合目の時点で結構ガスっている状態。
ここがちょうど中間地点ということは、単純計算すると2時間で登頂、1時間で下山。
上で過ごす時間や予備も含めて4時間あれば15時までには小屋に戻ってこれそう。
ただし3000m上空の話ですから、高山病の兆候や気候の悪化などマイナス要素はあります。
まあ夕飯の時間17時までには帰ってこれるだろう。
腹ごしらえも済ませて元気いっぱい!ゆっくりめに歩いてきた効果か、
頭痛など高山病の兆候もなく、意気揚々と上を目指します。
この7合目過ぎからが本当の富士登山
道もずいぶん傾斜がきつくなってくるし、黒土がやわらかくてなかなか足にまとわりつく。
ソールの柔らかい靴だったらちょっと疲れるかもしれないなあ。
あとローカットの靴だと砂がじゃんじゃか侵入してきて不快かも。
ゲイターがあるとなお楽。
なかなかごまかしのきかない、砂の斜面を前傾姿勢でガンガン進む。
結構ここから本格的なので脚の実力がモロに出るのか、速い人遅い人が顕著になる。
自分は下界でのペースとほとんど変わらないペースで進む。
急なペースの上げ下げはできないけど、
一定強度で持続させるのはやはり体が慣れているようだ。
足場が柔らかいため、上の人が踏んだ足場からポロポロと砂や小石が落ちてくるので
特に大きめの石が転がっているところは上を見つつ、慎重に進む。
下山ルートを見てみると、それと並行して走っているブルドーザー道を
黄色い車体が唸りを上げながら少しずつ下ってきているのが見えた。
すげえ。
しばらくして本7合目に到達。ようやくそれらしい強度になってきた。


↓さあここからが本番


↓7合目の小屋を見下ろす


↓ひたすら足場のゆるい砂地の急斜面


↓ブルドーザーが往く


↓もうじき本7合目


↓本7合目から8合目が見える(3140m)


本7合目に用はないのでスルー。
上を見上げるとすぐそこに8合目が見えます。
よく体験記などを見るとすぐそこに見えてるのに、なかなかたどりつけないといった
苦しい苦しいエピソードばかりなので油断は禁物です。
順調に高度を上げてきたが不調を訴える信号はないので、今までのペースを刻む。
斜度もずいぶんと険しくなってきましたが、休憩で立ち止まることもなく
ペースを一定で来たので意外とあっさり8合目に到達です。
8合目からは、一番登山客の多い吉田口からのルートと合流するため、人が一気に増えます。
さすがにここまで来ると疲労や高度障害で苦しんでいる人が多く、
狭い登山ルートで立ち止まったりしゃがみこんだりしている人が目立ってきた。
足を止めるのはいいのだが、その場で立ち止まってルートをふさいでしまうのが困る。
でも脇へ避けるという思考もないほど余裕がなさそうな人ばかりなので仕方がない。
自分はまだ元気なので、遅い集団の後ろに着くと一気にペースを上げて、
足場の悪い脇をピョンピョンと飛び越えてパスしていく、を繰り返す。
自分でもびっくりするくらい元気だ。


↓8合目で吉田ルートと合流(3270m)


↓本8合目の下


8合目から本8合目までは小屋銀座。小屋の間を抜けたり、登山道と下山道が交錯していたり
色々と忙しい。
と、道の上部でザザ〜っという音とともに土煙が発生。
大声をあげて周囲の人が集まっている。
何事かと様子をうかがうと、勢いよく下ってきた男の人が、
その勢い余って顔面から転倒したらしく、運悪くその場所に大きめの石があったのか
顔面血まみれの状態。
砂走と言われるくらい、快調にペースを上げて下れるのが魅力のコースとは言え、
やはり安易にスピードの上げすぎるのは危険だということ。
かなり痛々しい感じです。周りの人がすぐさま近くの小屋に救助をお願いしに行ったので
これは下山する人たちにまかせて後を去ります。


↓転倒事故発生


↓本8合目終点(3380m)


本8合目を過ぎると、今までの黒土の道から急峻でゴツゴツした岩場を
えっほえっほと登って行くようになります。
道端で倒れている人、うずくまる人、必死で酸素を吸っている人などなど、
状況も結構なあり様になってきます。
雲は相変わらず厚く、残念ながら下界の眺望は一切見えず。
そうなれば多々黙々とペースを上げて上を目指すことに集中する。
本8合目でもそれほど疲労も感じていないので止まらずにスルー。
遅い人たちをパスしながら、一定ペースで進む。
途中、8合五勺なるダミーを過ぎ、傾斜は一層厳しくなっていく。
北の斜面に大きめの雪渓が残っているのが見えた。
地面は黒い色から赤茶色の粗い土となり、足場が少しずつ悪くなっていく。


↓なかなかの傾斜。向こうに下山道が見える


↓8合五勺(3450m)


↓万年雪が見える


9合目の手前で鳥居をくぐり、9合目はそのままスルー。
もう目の前に見えている山頂まで距離にしてあと400mくらい。
ゴールが目視できるようになってがぜんやる気がみなぎり、
さらにペースアップしてガシガシ登る。
そうするとみなが記念撮影をしている狛犬のところに到達。
これをくぐれば浅間大社奥宮の敷地内。ということは山頂です!
ぱちりと写真を取ってすぐに石段を駆け上がると山頂にたどり着きました。


↓9合目手前


↓9合目(3570m)


↓鳥居を抜ければ山頂!


↓の前に記念撮影


山頂到着が13:10。9時ごろに登山を開始したので
4時間ちょっとで到達したことになります。
5合目でゆとりをもってスタートしたのと、
7合目でゆっくりカレーを食べたのが効いたのか
高山病の兆候に悩まされることもなく、
最小の休憩回数でペースを刻んでこれたのが最大の要因。
7合目まで2時間、7合目から山頂までは実質1時間半といった道のりでした。
ひとまずお疲れ様でした。
山頂付近は全くの視界不良で何にも見えません。
景色はあきらめ、ずらっと並んだ土産物屋で土産を物色。
山バッジに日付を入れてもらうのに並んだりしたが、飯は食べず。
本当はここからお鉢めぐりをして最高峰の剣が峰まで行きたかったので、
少し御殿場ルートの途中くらいまで脚を伸ばすが、
天候は悪化の一途をたどっていたし、
やはり15時くらいまでには今日の山行を終えて翌日に備えたかったので引き返す。
明日、晴れるのを信じるしかないでしょう。
お鉢巡りはご来光のあとにします。


↓で山頂(3710m)。4時間ちょいで登頂


↓山上は土産屋で大賑わい


13:40下山開始。
ますます雲が厚くなり、いよいよ雨が降ってきた!
今はまだ暑いがグズグズできないので慌ててレインウェアを着る。
下から雨が当たってくるので、眼鏡が曇ってしかたがない。
下山ルートは砂が慣らしてあって勢いがついて楽チンなのだが、
さっきの転倒事故の目撃もあるし、
何より視界不良でいきなり道が曲がっててボトンなんてのは避けたいので
そこそこのペースで下っていく。
途中8合目で吉田ルートとの分岐をしっかりと見極めて須走ルートに入る。
そこから雨は一層強まってきたので、いよいよペースを上げて小屋を目指す。
本どしゃになる前になんとか小屋にたどり着いたのが14:50でした。


↓天候悪化の中下山開始


↓吉田ルートとの分岐は慎重に


小屋はまだ宿泊客もほとんどおらずがらんとしている。
着替えを出し入れしたり、なんやかんや荷物整理をしたりしていると、
小屋のお母さんがやってきて、「もう下ってきたの?」とびっくりされる。
明日の天気の具合を聞いてみたが、どうもよくなさそう。
それでも一応ご来光を見るとしたら何時に出ればいいか聞いてみると
早い人は23時には出発するらしい。8合目付近からご来光を見るための渋滞がひどいらしく、
それをかき分けていくのに時間がかかるらしい。
「あんたなら、3時間あれば十分」ということなので逆算して1時に出発することにする。
外で写真を撮りたくてももうどしゃ降りになってきたし晩飯まですることがない。
荷物を整理して、さあ着替えようと思ったら、着替えの袋ごと家に置いてきてしまってた…
替えの清潔な服がないまま、湿ったタイツとTシャツで我慢。
とにかく、まだスペースにゆとりがあるうちにぐっすりと仮眠をとることにする。
なにせ前日の深夜バスでもろくに寝れてないので。
で、1時間半くらい寝袋で爆睡。
16時すぎになって起床。どうも雨がいっそうひどいようで、
小屋に入りたい人が押し寄せてきているようで騒がしい。
続々と宿泊客がやってきて小屋は一気にぎゅうぎゅう。
混んできたなあと小屋の様子を寝袋から伺っていたら、山ガールの集団が隣に。
雨に濡れて不快だの何だの言いながら、いきなり着替えを始める。
しかも、この際下着も着替えちゃえとスッポンポンに!
他にも人はたくさんいるなかでなんと大胆な。
こういうとき男の方がどうしていいのかこちらが困ってしまいます。
まあ何だ、とりあえずゴチソウサマ。
そのあともどんどん人が押し寄せてきます。
小屋の人の話に聞き耳を立てていたら、通常目一杯でも120人のキャパのところに、
今日は150人越える人が入るようだ。
当然寝床を確保できない人は廊下で寝ることになり、
廊下で幅3人で埋まっていき、トイレに行くのにも人を踏まないように細心の注意が必要なほど。
16:30に第1陣の晩飯号令。自分も名前が呼ばれたので食堂に集まる。
自分のテーブルには、小さな子連れの家族もいました。
やはり子連れはなかなか大変そう。
さて晩飯、てっきりカレーだけと思っていたらしっかりとした晩ご飯が出されてびっくり。
ありがたくいただきます。
この豚汁がどえらいおいしくて4杯もお代わりしてしまいました。


↓今晩の夕食。豚汁がバカ旨!


さて晩飯も食べ、暗い暗い2段ベッドの下段のすみっこで何もすることがない。
深夜に出発するつもりでいるのでむやみにヘッデンの電池も減らしたくないし、
何よりすでに大方の登山客が収容された小屋で動き回るスペースがない。
まだ17時そこいらですが、とりあえず寝袋にくるまって寝る。
ひたすら寝る。眠くないけど寝る。
周りはまだ消灯時間で見ないのであれやこれがごったがえしているが、
じっと気配を消して寝る。
最初は結構寒かった室内も、さすがにこれだけ人がいると熱を持って暑い。
うにうに苦しみながら寝る。
気付いたら22時ごろだった。隣の食堂で何やら急患発生しているようで、
対応に追われるスタッフの声で目が覚めた。
どうもおばちゃんが一人激しい腹痛を訴えている様子。
症状から高山病ではなさそうだが、かなり苦しい感じ。
おそらくよくある便秘でしょうが、本人も早く下山したいと訴えている。
外は当然日が暮れて真っ暗闇。しかもかなり激しい雨が降っている様子で、
おばちゃんやその一行が自力で下山できる状態ではない。
小屋のスタッフがより下の小屋に救助を依頼しているようなのだが、
どこにも断られているよう。
最終的に引き受け手が見つかったようで、2時間ほどで迎えに来る様子。
ただしその費用がすさまじい。
患者を運ぶのに最低人足2人必要で、1人4万の費用かかるそう。
んん……一応、山保険をスポットで加入しているとはいえ、それだけの費用にはビビる。
自分なら多少のことなら何が何でも自力で下山せねばだな・・・。


その件がひと段落したと思ったら、1時くらいになって小屋が騒がしくなってきた。
こんな小屋の中にいても雨風の音が聞こえるくらいだが、
どうしてもご来光を見たい人たちが諦めきれないのか、いそいそと準備して出ていく。
こんな夜中にこんな高所で、日が昇るまで6時間も雨風と低温に耐え続けるなんて…
確かに雨風で進行が遅れるのは間違いないから、
今から出発しないと間に合わないのだろうけど
自分はそんな自殺行為ようしませんわ。
ということで自分はもうご来光を諦めて4時半起床でプラン変更します。
逆に、ご来光を目指して5合目から夜間スタートしてきた人たちが、
さすがに登坂を継続するのは無理と判断したのか、小屋に押し寄せてきた。
小屋のスタッフはちょうど出発したグループの分の空きスペースをどうにかやりくりして
テキパキと寝床の割り振りをしていく。もう夜の小屋は戦場ですな。いや収容所か。
その中にはしゃぎまくってる若者グループがいてうるさい。
自分たちは悪環境の中歩いてきてアドレナリンが出まくって興奮しているのだろうけど、
寝てる人ばかりだし、なかには子供や具合が悪くて苦しんでいる人がいるのをわからないのか。
しかも耳に入ってくるのは、
「雨降るなんて知らないし〜。レインコートなんて持ってきてないよ〜」とか
「出発の時暑かったからTシャツしか着てきてないけど、寒くてたまらな〜い」とか。
馬鹿かと。
さすがに怒り新党でちょっと文句言ってやろうと思ったら、
「ここはホテルでもペンションでもなく山小屋や」
「集団生活ができないようならさっさと山を下りろ」と、別の方がしこたま怒ってくれました。
全くその通りです。
流行りやネタやテンションで山に来られても他の人が困ります。やめてください。
そんなドッタバタした環境で、自分は寝袋でほんの数センチ体を動かすのもやっとという状況、
当然寝つけるわけもなく、まるで悪夢が正夢になったような世界で
ひたすらボオっと亡霊のように6時間も横になったままである。
斜面の上り下りとかなんとかより、この小屋での厳しい状況が一番体に堪えました。
これもまあいい経験です。


4:30になり、いよいよ起床。体がビッシビシです。明らかに高山病のせいではないですが。
ヘッデンを他の人に当たらないように注意しつつ荷物を整理する。
そしてリュックと靴をかついで、絶対に人を踏まないように
ツイスターをするような要領でどうにか食堂に難を逃れる。
そこでストーブで暖を取りながら、今日の行動について思案する。
外は相変わらずの雨と風。
今からではご来光に間に合わないし、そもそもこれだけ雲が厚いと見れるはずもない。
そうすれば山頂からの眺望も望めないから、昨日となんら変わりがない。
何の見込みもないのにもう一度登っても仕方がないし、
むしろどんどん天候が悪化して山上で身動きが取れなくなっては困る。
これはもう、苦労して1泊した意味が全くないけれど、安全策で下山した方がよいと決める。
5合目から御殿場の駅までのバスの始発は8:30。
同じく早く下山したい人で行列ができても困るので、8時には5合目に下りたいが、
あまり早く到着してもやることがないので6時に出発することにする。
朝食は昨日のマーブルチョコの残りを流し込み、それからエナジーチューブで済ます。
前日朝食の代わりにお弁当を作ってもらっているが、
これは5合目でバスを待っている間に頂くことにする。


悪天候でキャパオーバーの小屋の夜中の状況


↓翌朝は土砂降り


6時になりいいよ下山開始。
ドアを開けると吹きすさぶ風に雨粒が飛来。
地面はもうデカめの水たまりができているのでそれを避けつつ進む。
ああ、絵にかいたような悪天候です。
慌てずしっかりと地に足をつけるような感じで少しずつ歩きます。
こないだの蝶ヶ岳に比べたら、周囲のどこかには人もいるし、
コースが明瞭なのでそれほど怖くはない。
けど下から吹きあがってくる雨のせいで眼鏡が曇って何も見えない。
別に細かいものを見る必要もないので、眼鏡をはずして歩くことにする。
少し進んで登山道との分岐を直進し、下山専用のコースへ。
いよいよ須走名物の砂走り区間に入る。
トレッキングポールをスキーのストックのような要領で動かしながら、
板を履かずにスキーをするような感じでリズムよく下っていく。
下が砂地でやわらかく着地すると靴が埋まる感じ。
あまりむやみにペースを上げると、ところどころ大きな石が散乱しているので危険。
むしろテンポよく下る方が安全で速い。
ただ天候が相当に悪く、10mも視界が効かない。
いきなり道が曲がって、その先からドボンなんてことのないように慎重に下る。
ある程度下っていくと、先行して下っている人たちにポツポツでくわすゆになってくる。
みな雨風に抗いながら必死の感じ。挨拶をしながらバンバン追い抜いていく。
今どのあたりかさえもわからないまま、とにかくコースをロストしないようにだけ注意する。
徐々に斜度もゆるくなってきて、雨も小康状態になってくる。
この砂走りではたくさんの人をパスしたが、
なかには靴底が完全に剥がれてしまった人もいて大変そうだった。
30,40分ほどで下り専用の茶屋である砂払5合目に到達。


↓吹きあがってくる雨風で何も見えん。コーステープだけが頼り


↓どの辺かわからないまま、砂走りをスピードを上げて下っていく


↓とになくコースアウトしなければ問題なし


↓砂払5合目


特に休憩したいわけでもなかったので、茶屋はスルーし、樹林帯に分け入っていく。
ここからは木々の根っこが露出してかなり足場が悪く、
しかもぬかるみに水がたまっていたりするので、転倒しないように慎重に進む。
茶屋に到達する頃には再び雨が強くなってきたが、
ここは木々に守られて少しマシ。雷の心配も樹林帯に入れば少し気が楽になった。
30分ほど歩いて7:15に須走登山口に生還。
雨で足取りが遅くなるのを見越して2時間半前に出発したのだが、
予想以上に早く到着しすぎて、バスまで1時間も待機せねばならない。
休みなく歩いてきたので暑く、喉が渇いたので富士山サイダーでまずは一服。
土産物屋で家へのみやげを物色するが大したものはなし。
茶屋の前にある簡易の座敷で雨のしぶきを浴びながら待機。
歩いている間はよかったが、止まっているとどんどん体が冷える。
ホットコーヒーにすればよかった…
その間にも雨はじゃんじゃか容赦なく降る。
茶屋のスタッフさんや他の登山客も、さすがに今日の天候で上に行くのはないなあと言っていた。
確かに平地でもこの雨はつらい。
こないだの上高地よりもひょっとしたら雨は強いかもしれない。
やはり下山の判断は間違いなかったし、朝のうちに行動して安全圏まで下ってきたのは正解だった。
着替えることもできず、ただただ吹きっさらしの中
体を冷やしながら待つこと1時間、ようやく下山のバスが到着。


↓樹林帯に入り一安心


↓無事に須走口まで生還。全身ずぶ濡れ


↓サイダーで一服


8:30の御殿場行きバスは超満員。
自分は20分前から露天にさらされたバス停で雨に耐えながら列に並んでいたので
なんとか座席を確保する。
そこから1時間、冷房の利いた車内で体をガクガク震わせながら我慢。
9:30に無事に御殿場駅に到着するが、下界も相変わらずどしゃ降り状態。
今日はもう1日アウトかもなあ。
さっそくここからの帰路について考える。
高速バスなど夜まで待っている場合ではないし、酷使した体には辛すぎるので
山行の帰りは決まって電車です。
ということで9:50沼津行きワンマンカーに乗る。
一息ついて小腹が減ったので小屋で用意してもらった弁当を食べる。
なかなかどうして豪勢なお弁当です。
本当は山頂で食べたかったなあ。


御殿場線でお弁当を食べる


20分ほどで沼津に到着。
最短で行けば三島から新幹線に乗れるのだが、
せっかく静岡まで来ておとなしく帰るのもシャクなんで、ちょっと寄り道して帰ります。
10:17東海道本線静岡行きに乗り換えます。
ここから静岡の手前までは爆睡のため全く記憶なし。
やけに暑いなあというので目を覚ましたのが静岡駅の2つ前くらい。
なんや〜カンカン照りですやん。ここまでくると晴れています。
う〜ん、もったいない。でも山上は晴れてるとは限らないか。
11:30に静岡着。
ちょうどお昼時で賑わう駅前の繁華街を、
ズブズブびしょびしょのおっさんが大層な荷物抱えて歩きます。
できるだけ陽の当るところを歩いて、原始的に衣服を乾かしながら歩く。しかし暑い!
駅から15分ほど北へ歩いたところ、駿府城跡を過ぎて、静岡浅間神社の参道の一角にある
「おがわ」に到着。
ここは静岡おでんを全国に広めた老舗の駄菓子屋さんです。
がんばって富士登山した自分へのご褒美に、ここで一杯ひっかけて帰ります。


↓おがわ


店頭の鍋には黒々としたおつゆにたくさんの串が刺さっています。
うまそうだべ。
さっそく店のお母さんに注文。
厚揚げにじゃがいも、牛スジ、それに忘れてはならない黒はんぺん!
具の上にはどっさり魔法の削り粉をどっさり。ディス・イズ・しぞーかおおでん!
で、生中を頼もうと思ったら、冷蔵庫に赤星を発見したのでラッキーとばかりに注文。
真昼間からウマイおでんで一杯なんてシアワセすぎますなあ。
おでんの中でも静岡おでんが一番うまいんじゃないかと思っとります。
あまりにうまく、ビールもたっぷり一瓶あるので、おでんのお代りを注文。
お母さんが、今日は特別に桜エビの団子が入ってるよと言うのでそれと、
あとやっぱりウマイ黒はんぺん。
最高やねえ。


↓しーぞーかおでんで赤星を注ぎ込む至福の時


↓思わずお代わり。黒はんぺんウマシ!


さてさて、大満足でお昼を済ませたのであとはもう新幹線で帰るのみです。
駅で15:20のひかりを手配し、
待ち時間の間に土産物屋で再びみやげを物色。奥さんの大好きなうなぎパイも買っとく。
あとは一路大阪へ。爆睡ののち18時台には新大阪着。
こっちも雨降ってるや〜ん。
大阪駅からは雨に打たれながら19時帰宅。


天候等はほぼ最悪の状況ではありましたが、まずまずのペースで登頂できたのはよかった。
ただし、剣が峰を取りこぼし、ご来光も見れずじまいだったので
また来シーズンリベンジ。
おそらく次回は富士宮口で登って、須走口で下山というルートかな。
剣が峰への最短ルートでもあるし、
ご来光を見るには吉田口、須走口が方角的には最適だけどかなり渋滞してそれどころではない。
それなら早めに小屋を出て空いた道で山頂目指した方が得策かも、ということで。
あと単独峰は景色が変わらず、ソロは孤独でつまらないので同士募る。