記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

建物探訪 『聴竹居』 by 藤井厚二

大正〜昭和にかけて活躍した建築家・藤井厚二が、
天王山の麓、大山崎の広大な土地に建てた自邸で、
5回の建て直しを繰り返した実験住宅が『聴竹居(ちょうちくきょ)』です。
「其の国を代表する建築は住宅建築である」とし、
四季折々に変わる日本の気候や風土に適し、
日本人の身体に適した住宅を追い求めた結果生まれた近代モダン建築の傑作です。


この建築の最大の特徴は、蒸し暑い夏の過ごしやすさを重点的に考えられた設計で、
いたるところにその仕組みが仕掛けられています。
最も特徴的なのは、居間と寝室との段差部分にある導気口です。
これはここから導気筒が西にある柳谷に通じていて、
そこから自然の風を室内に取り入れ、
常に新鮮で清涼な空気に換気できるようになっています。
東に面する縁側からも採光性と通気性が考えられ、
ここからは淀川の三川合流と対岸の八幡山を望むことができ、眺望も抜群です。
このように周辺環境(自然)との調和をテーマとして建てられたこの住まいは、
現代のエコ住宅のコンセプトの先駆けといってもよいかもしれない。


デザイン的には洋風建築の意匠を取り入れつつも、
例えば障子欄間や神棚のスペースが設けられているなど日本的な要素も残していて
生活スペースとしての実態に即した形で設計されていてなかなか興味深い点が多い。
また居間や客室といった公共スペースと、
寝室やキッチンといったプライベートなスペースを
空間的に絶妙に切り分けているなどの点も見逃せない。


↓聴竹居


↓和と洋が絶妙にミックス


↓東に面する縁側は大胆に取り付けられた横連窓。


↓柳谷から自然の谷風を室内に取り込む導気口


↓客室。照明や天井の意匠やなどデザイン的なこだわりが随所にある


↓居間に隣接する読書室。ふすまを開けると縁側を見渡せ開放感を演出している