記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

事故検証ライド

少し時間が空いてしまいましたが、ぱしゃ君と事故現場に行った時の検証です。
事故が起こった要因は直接的間接的なものが色々合わさった結果です。
個人的な問題点、チームとしての問題点、
あるいは天候や路面状況といった外的要因等々あります。
その中でも特に改善すべき点を抽出し、
より安全なライドを実現するにはどうしたらよいか、
それをきちんと検証することで、今回の事故を教訓とすることができると考えます。
なので、問題点として考えられそうな要因ごとに1つ1つ検証したいと思います。


それから、程度の問題に関係なく、チームライドで事故を起こしてしまったことは、
正直言って、あまりお知らせしたくない都合の悪い内容です。
しかし、それを都合が悪いからと言ってうやむやにしたり、
隠蔽とまでは言わずとも、お茶を濁すようなやり方はしたくありません。
こういう事態こそチームとしてきちっと取り組むべきだと思いますし、
その結果を、プライバシーには配慮しつつも、
きちんと公表することはチームとしての健全さに直結することです。
また、遊びで個人的につながった集団であると言っても、
やはりチームとして存在している以上、社会的な責任というのも少なからずあります。
自転車という競技は常に事故と隣り合わせの世界ですから、
事故の検証結果を広くローディーに発信して、
共有することはとても意味のあることだと思います。
また、当事者の意見だけではなく、
本記事を読んだ客観的なご意見・アドバイスをフィードバックしていただけると、
自分たちが気付かなかった点を発見できたり、違う観点を与えられることで
より事故防止につながるのではないかという期待感もあります。
いずれにせよ、Sidewindersとしては”安全性”というものを
どこよりもマジメに考えるチームでありたいと思っています。


検証をする前に、1つはっきりとさせておきたいことがあります。
それは、いかなる理由であっても、
後方から追突したトラックの方に責任があるということです。
マシンの破損状況を見れば一目瞭然ですが、
前輪やフレームよりも明らかに後輪のダメージが甚大で、それはつまり、
彼は後方からトラックに突っ込まれた=オカマを掘られたという事実に他なりません。
たとえ、事故のそもそもの一因としてこちらの不注意や不手際があったとしても、
自動車の運転者は前方に対して常に注意を払う義務を負っており、
今回それが正しく果たされなかったということは明白です。
その点については疑いようがないことです。
また、あの道をあのサイズのトラックが通行するのはそもそも結構シビアで、
急停止したとはいえ、速度もそこそこ出ていたと思われます。
我々は全員テールランプを正常に点灯させており、
合計6つのライトが数珠つなぎになっているのは
かなり後方からでもはっきり確認できたはずです。
普段この道を利用しているドライバーのようでしたが、
つまり、この付近の道がとりわけ狭いという認識は、我々以上にあったはずで、
であれば、制限速度を守るだけではなく、
事故を起こさないために徐行・停止という判断も必要だったと思います。
また、こちらに対してクラクション等での注意喚起も全くありませんでした。
我々が明らかにトラックよりも前方にいたのですから、
そういう責任の所在はトラックの側により多く課せられるべきだと考えます。


さて、責任の所在についての問題とは別物として、
ライド中に事故を起こしてしまったことは我々にとって重々反省すべきことです。
何がいけなかったのか、どうすれば防げたのか。
事故が起きてダメージを受けるのは我々の方ですから、
今後事故が起きないためにどうすればよいのか、事故を検証していきたいと思います。


<事故概要>
まずは事故の概要をおさらいします。
事故当日、4人トレインで早朝からロングライドをし、
21:30前後、走行距離約300km地点で事故現場にさしかかる。
県境の山越え区間の中で最も狭小な区間に入るタイミングで、
最後走者より「トラック!」との注意呼びかけがある。
先頭走者が前方を確認すると、道がさらに狭くなり、
かつ道の真横は大きめの溝でガードレールもなく、
予告なく道幅が狭くなるため後方者がそれを見極めるのは困難な状況。
またトラックの大きさはこの時、不明だが、
大型車と並走しながら抜けるには明らかに道が狭く、
無理に突っ込めばトラックの脇と接触をしたり、
それを回避しようとする行動によって脇の溝へ突っ込む恐れがあり、
安全第一の選択としては、まだ道が広いうちにトレインを停止させ、
先にトラックを行かせてから、十分な走行ラインを確保して、
狭小区間を抜けるのが最適と判断し「ストップ!」と声による指示を出す。
何事もなく2人目、3人目は停止したのだが、
最終走者は何らかの理由により停止しきれず、
3人目の後輪にハスって、車道側に飛び出し、そこにトラックが正面から追突。
トラックは急停止をしたが、8mほど吹き飛ばされる。
その際、トラックの車体に巻き込まれず、
またペダルから脚が外れ、うまく受け身を取ったことが功を奏し、
結果的にかすり傷と鞭打ちの症状だけという軽症で済んだ。
本人に話を聞くと、最終走者として後方からの危険を注意喚起する役割を果たすべく、
後方から来たトラックの様子が気になり、
トラックの大きさや距離を図ろうと後ろを振り向いている最中に、
ストップの指示が来て慌てて前方に直ってブレーキをかけたが間に合わず、
3人目のリアにはすってしまったとのこと。
3人目の証言でも接触した感触があったということなので間違いないですが、
ただ3人目がそれによって押し出されたり、リアを破損したりという、
具体的なダメージが全くなかったことを考えると、
とりわけ激しく接触したということでもなさそうです。
ただ、その接触によって多少パニックになったと思われ、
これ以上の接触を避けるべくエスケープの場所を探した結果、
車道側に出てしまうという、あってはならない対応へとつながり、
そこにタイミング悪くトラックが来たというのが事故の全容です。


↓事故概要


ここで事故を1つ1つのポイントに分類して分析していきます。
まずは事故現場の様子についてです。


<事故現場>
事故現場は京都府亀岡市大阪府高槻市の県境付近。
府道407号の東掛の集落内です。
亀岡側からの上りが少し手前で終了し、
にわかに下り基調に入ろうとする地点です。
その少し手前は緩やかな左カーブとなっていて、
建物がイン側に建っていてカーブの出先がブラインドになっています。
ちょうど上りから下りに入るというところで、
スピードが急速に変化するスポット。
かつ、前方左手の出口がカーブを抜けてみないとわかりづらいというところで、
出口の先で急に道幅が、マシン一個分減るという、
今考えるとなかなか難しいレイアウトになっています。
そしてもう1つクセ者が道の横にある溝です。
下の写真を見るとわかるようにゆうにマシンが1台すっぽりはまるサイズであり、
そこは暗い穴のようで見えづらくなっている。
この個所の危険性はすでに地元でも懸案になっているのだと思われるのが、
ちょうど事故当時も、この区間の拡幅工事が行われていました。
事故当時の時間帯的にはすでに暗く、
集落内といってもそれほど灯りがあるわけではなかったため、
その目視は特に難しかったと思いますが、
前方が危険と判断した段階ですぐにストップの合図をかけました。
ぱしゃ君にも現場検証にかけあってもらいましたが、
彼が先頭でも後方からトラックが来ていればストップをかけると言っていました。
事故現場がそもそも危険性をはらんでいる場所であったことは間違いありません。


↓事故現場


↓事故現場


↓別角度(離合ポイント)から


↓道脇の溝。白線で仕切られた路肩と同じかそれより幅が広い


↓最終停止地点


↓柵の下に滑り込むように転倒


これは個人的な言い分になってしまいますが、
そもそもストップをかけたことが事故の最初のアクションであったので、
タイミング的にもっとゆとりがある状態でストップの合図をかけられれば、
あるいはストップの合図をせずにそのまま進んでいれば、
もしかすれば事故が防げたかもと言う自責の念が正直いまだにあります。
でも、あのまま合図せずに狭小区間に突っ込んでいれば、
もっとひどい結果が起きていたかもしれませんし、
現場の状況を見るにつけその可能性の方が大きかったと思います。
それについては実証不可能ですが、
ただ2人目3人目がきちんと停止している以上、
極端に合図が遅れたということでもないですし、
それよりももっと直接的な問題があるように思います。


<コースレイアウトの妥当性について>
先述の通り、事故現場は場所的にも事故の危険性の高い場所でした。
こういった危険個所をコースとして組み入れるのはどうかという批判もあるかもしれません。
事故が起こりやすい場所、そうでない場所というのは確かにあると思いますが、
とりわけロングライドの場合、はじめて走る区間が大多数ということもザラで、
事前のプランニングではどこが危険個所かなどわかりようもありません。
実際に走ってみて初めて、ああ、あそこはちょっと怖かったとか、
危険だと実感できると思います。
そういった経験値をたくさん貯めていくように個人的にはやっていて、
今回のルーティングの際も、個人的な経験に基づいて、
安全かつ比較的イージーな道というのを導き出しました。
具体的には、できるだけ交通量が少ない道、路肩の広い道、
体力的なことを考慮して、上りの少ないルートです。
今回のルーティングはそういう意味でほとんど理想的なコースだったと思っています。
とはいえ、300km中300km全てがセーフティーな道などありえません。
また、状況に応じて、以前は安全だったが通行時は危険ということもあります。
言ってしまえば、確実に安全な道などどこにもないということです。
イレギュラーな事はいついかなるシチュエーションでも起こりうることで、
その場その場の適切な判断が要求されるのだと思いますし、
それこそロングライドの難しさであり醍醐味でもあります。


実は、亀岡運動公園前のコンビニで休憩をはさんだ際に、
今回通った当初のルートではなく、別のルートの方が安全ではないかと検討しました。
例えば、R9で老ノ坂を越えて、一旦平野側に出てしまうとか、
規格の狭い府道ではなくR423を使うというルートです。
しかし、前者ではプラス20km程度の遠回りをしてしまうことになり、
さらにその先での体力的なリスクを発生させてしまうことになります。
後者では、余野、あるいは高山からもう一度上り返しが発生するため、
こちらも同じく新たなリスクを発生させることになります。
予定通り、府道407号から府道46号へ出るルートが、距離的にも最短であり、
1つ短い上りさえこなせばあとは、幅広かつ交通量の少ない下りのみと、
体力的に一番イージーなコースであり、結果的に当初の予定通りこの道を利用しました。
別の道を選択していれば事故が防げたかというと、そうは思いません。
交通量が多いR9を選択した方がやはりリスクが高かったろうと思います。
このルートだから安全、この場所は知っているから大丈夫ということは全くありません。
もちろんその危険性を事前に軽減するべく、色々な角度からルーティングをするわけで、
危険個所とわかっていれば避けるべきだとは思いますが、
自宅の近所であっても事故は起こるべきときに起こるものだと思います。
危険な場所、ルートは確かにあります。
でも場所的な問題、ルートの問題が直接的な事故要因とは捉えられません。
そうではなく、走ってみて、そこが危険個所とわかった際に、どういう状況判断を下すのか、
どんな状況でも対応できるかどうかというスキルの問題の方が大きいのではと思います。


<個人スキルについて>
●長距離を走れるだけの実力だったか?


今回、一番聞かれたのが、
そもそも事故に遭った本人が300km越えるライドに見合った実力がなかったのではないか、
無理が生じて、最後の最後体力もなく、集中力も落ちて判断を誤り、
なるべくして事故になったのではないかというものでした。
これは彼の名誉のためにも断言しておきますが、それは絶対にありません。
確かに彼はロード歴が一番短く、わずか8カ月程度なので、そう思われるかもしれません。
しかし、まがりなりにも彼は大阪⇒東京550kmを一昼夜かけて走り抜けた経験があります。
またそれとは別で帰郷するのに200km越えのロングライドも単独で成功させています。
速さは別としても、継続して何十時間もライドを続ける経験があるというのは
正直言って、相当大きい経験値です。これはそう簡単に真似できるものではない。
どういうタイミングで疲労が襲ってくるか、その疲労はどういう作用を及ぼすか、
それに対してどう対処すべきか、昼間のライドと夜間のライドとの切り替え等々、
彼はこのライドの時点でしっかりと体得していたと思います。
実際、彼は直前の休憩ポイントで、人目もはばからず堂々と店先で寝っ転がって
仮眠をとりました。
普通なら他の人がいれば遠慮しそうなところを、
5分でも10分でも体を休めることの重要性を知っているがゆえに、そういう行動に出たのです。
これは紛れもなくロングライドの厳しさと対処法を知っているということです。


ただしである。彼自身、ロングライドの経験があるという
過信と油断があったというのは事実です。
また同時に、彼にはそういう経験者であるから大丈夫だろうと
他のメンバーも彼の実力を過信し油断していたというのも事実でした。
それはこの日この時点までの300kmがうまくいっていたという実感が
その過信と油断を見えなくさせてしまっていたというのもあります。


●強度が高すぎた(無理をした)のではないか?


この日強度は確かに高めだったかもしれません。
ライドの前には、彼が年末のチーム練でオールアウトして、
時速20kmも出ないほど疲弊したというのを聞いていたので、心配していましたが、
そういう状況もありませんでしたし、
逐一ペースが速すぎないかどうかメンバー同士で声掛けもしていました。
脚のあるメンバーに対しては序盤にガス抜きポイントを3か所設けて、
脚を削ったりして、終盤に足並みがそろうような対応はしました。
それからメンバーの呼びかけに応じて、
予定外の場所であっても休憩を挟むなど柔軟な対応もしました。
また、できるだけアップダウンの少ない強度の低いコース設定にしていましたし、
実際、もう事故現場に差し掛かった時点では、その日の上りは全て終了し、
あとはペダルを漕がずとも惰性で下って帰れるだけという区間を残すのみでした。
体力的にみれば、300km走ってきたのですから、みな余裕はさすがになかったですが、
それでも限界ギリギリといった切迫した状況ではありませんでした。
しかも、事故のわずか15分前には休憩を20分ほど入れた直後で、
体力も気力もみな幾分回復していたところでした。
そういう事実を考えると、事故現場に差し掛かった時点で、
彼が限界を越えて危うい状況だったとは思えません。
むしろ、直前での休憩が功を奏して元気を取り戻しているように感じました。
もし、彼が限界だったとしたら、上りの区間であれほど後方から注意の声掛けはできません。
ある程度体力が十分でないと、上りながらの発声を頻繁はできないでしょうし、
自分のことで精いっぱいの状況であれば、
そもそも他のメンバーのために注意喚起をするというところまで頭が回らないはずです。
それができていた、回りも見えていて、声を出す元気があったということは、
このライドで十分に彼がついて来れるだけの体力・実力があったと認めるべきです。


また、この事故現場に差し掛かった段階では、
強度の高い高速巡航をしていたわけではありません。
もし、ここで無理が生じるほど強度が上がっていて、
それに追いつけずに彼が焦ってしまった、判断を誤ってしまった結果、
事故に巻き込まれた、というシチュエーションであれば、
”強度”という問題に目を向けるべきかもしれません。
しかし、すでにご承知の通り、この地点ではみなむしろ停止しようとしていたわけですから、
彼がこの地点で無理をしていたということではなく、
強度うんぬんということは今回の一件ではあまり焦点にはなりえないと考えます。


●夜間走行の危険性
自分と今回同行してもらったぱしゃ君は、一般のローディーと比べても、
相当に夜間ライドの特性があります。それはその分だけ相当に場数を踏んでいるからです。
ぱしゃ君と色々話をしてみても、昼間走るのと夜間走るのとでは、
ウォッチしている個所やタイミングは全然違いますし、注意するポイントの数も全然違う。
ここでイチイチそれを列挙することはできませんが、
暗くなれば当然前方の様子が把握しづらくなるわけで、
それに対して色々な防衛策を昼間以上に手厚くしなければなりません。
今回のメンバーは(というより普通のローディーは大抵そうなのですが)、
夜間走行についてそこまで経験がありませんでした。
下山からナイトランに突入した段階で、
トレインとしてちょっと不安定な状態になったなという漠然とした感覚がありました。
他のメンバーが少し戸惑っているというか、暗さに対して過敏になっているというか、
逆にそういう感覚こそ普通の感覚なのだろうと思いますが、
そういった感覚のギャップはあったと思います。
事故直前の上りでは、外灯が一切ない森の中を抜ける区間が3kmほどあり、
そこでは暗闇から早く抜けて安全圏に脱したいという焦りのようなものが
メンバーからは見えていて、上りのラストではトレインが少しバラけたりもしていました。
暗さへの不慣れによってメンバーそれぞれが不安定な心理状態に陥り、
自分をコントロールすることに集中せざるを得ない状態で、
他への目配り気配りが少し薄くなってしまっている状況であったことは確かです。
ここでいう夜間走行の危険性とは、実際に前方が見えづらいといった具体的なことよりも、
暗さがもたらす心理的なプレッシャーのことです。
しかし、これに関してはもう慣れしかないと思います。
300kmを越えるロングライドであれば、必ずといっていいほどナイトランになります。
そういう覚悟もロングでは必要です。
かといって慣れるために夜間走る練習を各人すべしというわけにもいきません。
ではどうすればよいか。それはメンバー同士がきちっとケアしあう以外にはないと思います。
本来であれば、トレインの様子を観察して浮足立っているなと思ったら、
バランスを調整するのは最後尾の仕事です。(この難しさについては後述します)
ただ、今回の場合であれば経験者である自分が、
もう少し周囲に気を配って、例えば声をかけて落ち着かせるとか、
後方に回ってバランスを見るということをすればよかったなと思いました。


ここまで検証した時点で、
ロングライドの設計に問題があったとか、
あるいはその設計に見合うだけの実力がなかったということが、
今回の直接的な事故要因ではないと考えます。
事故現場に到達した時点で、我々は全員、体力も気力も十分あり、
危険な個所を危険と判断し、状況を見たうえで、
事故回避のために適切な対応を試みました。
それでも事故は起きてしまった。なぜか。
ここからは、いくつかの問題点を列挙してみます。


<集団走行について>
個人的な実力は問題なかったと先述しました。
が、それが集団としてまとまった時にどうだったかというと、
我々はあまりに集団走行のスキルがなかったと痛感せざるを得ませんでした。
この部分がもっとしっかりとできていれば、もしかしたら事故が防げたかもしれない、
つまりは事故の最大の要因ではないかと考えます。
今回のメンバーが4人そろってトレインを組むのは今回が初めてでした。
しかもみな実はあまり集団で走行するという経験が実はあまりない人ばかりでした。
そもそも、うちのチーム全体として、集団走行の経験が少なく、
またそういう機会があっても安易にバトルに入って、
ひとまとまりになって走るということに真剣に取り組んできていませんでした。
手信号の仕方とか、そういったごく基本的な決まりごとはみな知っているのは当然としても、
こういう場合はこうするといった、より突っ込んだ約束事や、役割分担など、
きちんとコンセンサスを取るべきものを、
まあ大体こんな感じでと、場当たり的に対応していたにすぎませんでした。
また各メンバー間の”間合い”といった感覚的な部分のすり合わせというのも
正直不十分だったと思います。
このことはチームとして今回最も反省すべき点で、
今後改善していかなければならない問題だと覆います。


●番手の問題
普段、自分もソロが多く、
人と走る場合でも基本ナビ役として集団の前方に位置取りをすることがほとんどで、
実は最後尾の役割の大変さや難しさというものを時間として十分理解していませんでした。
うちのチームには名誉ランタンルージュという大ベテランがいて、
いつも事もなげに大役を果たしてしまうので、
その重要性についてなかなか気付きませんでしたが
正月に行ったカキオコライドの際に、後ろへ回って初めてそれを痛感しました。
その動きは、集団前方の発進・停止に大きく左右され、それを自力で対応しなければならない。
集団全体に目を配りつつ、ペース配分等々トレイン全体のバランスを整える調整役。
体力も使えば気も使う、一見地味ですが、脚力があるとかいった実力ではなく、
やはり経験値が相当ものをいうポジションでした。
事故当時、トレインの順番的に、
一番経験の浅い彼が最後尾に回ってしまったというのが誤算でした。
体力的には十分であっても、かじ取り役を任せられるほど経験も余裕もなかったと思います。
直前の休憩のリスタート時に、きちっと2番手3番手の位置でサンドしてあげるという、
ちょっとした調整をしていれば、また違った結果だったように思います。
とにかく最後尾というのがどれだけ難しいかということを実感しました。


●合図のしかたについて
手信号についてはみな当然キチンと理解をし、混乱することはありませんでした。
また、手信号を無理に出すと逆に危ない場面だったり、
夜間になって手信号そのものが視認しづらい状況になってからは、
手信号ではなく声出しに変更して対応できていました。
しかし、合図の仕方について1点非常に気になる点がありました。
それは本ライドで後方からの注意指示が極端に多かったことです。
私自身その違和感には早くから気付いていて、
それについて、後ろからはそんなに注意しなくてもいいと思いつつも、
それだけ注意に意識を向けてくれている方がむしろよい、
注意するに越したことはないと、その懸念をメンバーに伝えていませんでした。
後方からの声掛けといえば、例えば後ろから大型車がやってくるとか、
めったに交通量のない区間で車が来るとか、
そういった場合に、”参考程度に”親切心で入れるものであって、
集団走行のルールとしてはマストなものでは本来ありません。
なぜなら、後方における安全の責任は、
後方から来る者(トラックや車のドライバー)が負っているからです。
それに先に出した事例の場合でも、一応注意してくれたら助かるなという程度のものであって、
後方から車やトラックが近づけば、本来指示がなくとも音などで判断できることで、
後方から来るであろう危険に対して身構えることは可能です。
しかし、このライドでは初めから最終走者からの声掛けが頻繁に行われていて、
ナイトライドに突入するとそれはより顕著になっていました。
おそらくですが、普段メンバーは集団走行をしていないので、
役割についての理解がきちんとされておらず、
最終走者はそういう役割を果たさなければならないポジションなのだと
変な理解がされていたのだと思います。
その役割をしっかりと果たそうという意識が働いた結果、
極端に後方からの指示が飛んでいたのだと思います。
夜間になり前方からの指示が手信号から声掛けに変更した時点で、
前方の指示と後ろの支持の声がバッティングしてしまい、
指示が聞き取りづらいという場面も2,3度ありました。
事故の際も、後方の様子を気にしすぎたために前方不注意に陥ったことが直接の原因です。
前方と後方、どちらに注意を注がなくてはならないかは言わずもがな前方です。
しかし、事故の瞬間、そうではなく後方に意識が行ってしまうような
心理的状況が生み出されていたと考えられます。
彼は、まだチームに入りたて、他のメンバーと一緒に走る機会も少ない。
足手まといにならず、この4人チームで何か少しでも貢献したい、
最後尾にいるのだから、せめて後方からの注意呼びかけはしっかりやらなければ!
と、彼が考えるのも自然なことです。
彼がそこにチームにおける自分の役割を見つけ、
その責任感から、後方確認、後方確認とそちらにばかり意識が行ってしまった…
これは彼自身の問題ではなく、
経験の浅いメンバーを、一番難しい最後尾に回してしまい、
そこで過剰に役割を抱え込んで、余裕のない心理状態にしてしまった、
チームとしての問題と捉えています。
もし彼が最後尾ではなく、きちんとチームがケアをして集団の中にいたとしたら、
彼が後方に対して余計な注意を向ける状況ではなかったとしたら、
きっと事故は起きていなかったのではないか、そう思います。


●コミュニケーション
ここまで検証してきた問題点で一番改善すべきところは、
やはりメンバー間できちんとコミュニケーションを取って、
コンセンサスを得るということが少し欠けていたというところでしょう。
自分も早くから後方注意の合図の頻度について疑問を抱いていたにも関わらず、
それをメンバーに伝えることができていませんでした。
もし、休憩の時間にでも、「後ろからの指示はそんなにいらないよ」と一言言っていれば、
事故が起きるほどまで後方に注意が逸れてしまうことがなかったかもしれません。
また、これはのちに報告があったことなのですが、
このライドの序盤で、同じ番手で走行している際に、
前方の目測を誤って、最後尾にいた彼が前の走者に追突しかけていた場面があったそうです。
もしそのアクシデントを、ライド中にメンバー全員が共有していたとしたら、
ちょっと間合いが難しいようだから車間を開けるようにしようとか、
とにかく後ろはいいから前方により注意するように本人にアドバイスできたかもしれません。
あるいは、リスタート時に、もう一度全員の状態をチェックして、
この区間はこの順番で行きましょうとか、
ここから先はこういうコースレイアウトなので注意しましょうとか、
ブリーフィングをしていれば意識も違っていたかもしれません。
そういうちょっとしたところの慎重さにかけていたと思いますし、
そういう部分が集団で走るというシチュエーションでは大きな部分であると感じました。
チームとして集団走行のスキルを上げるというのは必要であると思っています。


<メンタル要素>
事故現場に差し掛かった時のメンバーの心理状態で、
いくつかの油断や慢心があったことはここまでに数か所上げていますが、
やはり気の緩みが一番の大敵だと思います。
ロングライドも終盤に差し掛かり、早く帰りたい焦りは間違いなくあったと思いますし、
もう最後の上り、オーラスの難所をほとんど抜けるといったタイミングで、
ほっと安堵感が漂っていたことも事実です。
これらのちょっとした油断が、判断を遅らせてしまったり、
少し丁寧さに欠ける部分として出てきてしまったのではないかと思います。


あと、個人的にはフレッシュの成功の幻想に取りつかれていたことも
どこかにあったのだと思います。
このライドのわずか1週間前にはチームとしてフレッシュに参加し、
一昼夜を走り抜いて500kmほど走ったところでした。
この成功を間髪なく継続したいという思いは最初からありましたが、
今回も無事に成功するという根拠のない自信があって油断につながっていたかもしれません。
フレッシュの時と決定的に異なるのはメンバー構成です。
フレッシュの時は、全く初めての人がメンバーにいました。
その人がどれくらいの実力で、どんな走りをするのか、
あるいはその初めての方からしたらこのチームはどんな感じなのだろうか、
と、メンバー同士がいい意味で気を使って、
自然と相互にケアする意識が生まれていました。
しかし今回は、実際一緒に走った経験は少なくても気心の知れたメンバー同士。
知っている人同士だから、そこまで深くケアしなくても大丈夫、
言わずともわかるといった、悪い意味での慣れ合いの感覚があったかもしれません。
そういう意識が、コミュニケーション不足になったり、
ルールを徹底せずに場当たり的になってしまった要因につながっていたと思います。


以上、1つ1つの要因をできるだけ丁寧に検証したつもりですが、
ここで今一度結論をまとめます。
事故の直接的な要因は、最終走者による前方不注意です。
そこに至るさらなる要因としては、


●集団走行時におけるルールがあいまいだったこと
●全体をケアする余裕がチームとして欠けていたこと
●特定の個人(この場合、最終走者)に余計な負担を強いる状況になったこと
●メンバー間でのコミュニケーション不足
●上記全体を含めて集団としてのコンセンサスがとれていなかったこと


が挙げられると思います。
これは決して個人の実力不足で、疲労困憊に陥り余裕がなかったからではなく、
チームとして未成熟だったからだと思います。
これに対して、改善に向けての大きな指針としては、


●ライドを始めるにあたってメンバー間で合図などの決まりごとをしっかりと確認しあう
●メンバー同士で常に情報を共有する、コミュニケーションを密にする
●チームとして集団走行のスキルを上げる


これらを実施する具体的な方法は色々考えられると思いますし、
これから煮詰めていかなくてはならない部分だと思います。
これを実践するだけで、今回のような事故のリスクを軽減することが可能ではないかと思います。
もちろん、この検証結果と、要因の追及は100%正解だとは思いません。
自分自身、事故の直接的な当事者の1人ですから、
どうしてもそういった偏った視線でしか事故を見つめられないということは認めざるを得ません。
他にこういう理由があるのではないか、やっぱりここを改善すべきではないのか、
第3者が見て思うところ、感じるところはあると思いますし、
できればそういうご意見を少しでも吸収できれば、
より事故のリスクを減らすことができるのではないかと思います。
幸いにして事故は軽傷で済みました。
私たちは事故を反省材料として次に生かすチャンスをもらいました。
今回の検証を軸に、より安全なライドを目指していきたいと思います。



<補足メモ>
走行距離:111.38km(76.56km+当時のジテ通分)
TOTAL:4206.37km