常念山脈大縦走 2日目(大天井岳〜東天井岳〜横通岳〜常念岳〜蝶槍〜蝶ヶ岳)
8/11(日)。
夜中。前日松本駅での野宿でもまともに寝ておらず、
しかも1日目で一気に2900mまで高度を上げ、なかなかの疲労で爆睡。
でもあまりに寝が深かったせいか0時ごろにスキッと一度目が覚める。
すると、ぴゅ〜@@ゴ〜〜〜〜@@と結構な強風小屋全体を震わせている。
立地的に風の通り道にある稜線上なので、比較的風を浴びやすい小屋なのだろうが、
それにしても明日はひょっとして風が強いのか。
夕飯のときのNHKの予報でも、翌日は風が強く、
場所によっては霞んで道迷いの危険もあるとあった。
でもまあ、どんなひどい気候条件で下山を余儀なくされようとも、
大天井岳からは直接下山できないので、
稜線を歩いていかなくてはならないのだが、果たして。
色々考えているうちに再び睡眠の中へ…
次に起きたのはほかの人の目覚ましで。時刻は4時。
昨日の予報や風の強さから、早くに経つのはしないつもりで、
朝はゆっくり6時に出発する予定。
ただ、せっかくこんな素晴らしいところに来ているのだから、ゆっくりご来光を味わうのだ。
そのため、4:30か6:00の朝食では間が悪いので、
小屋には朝食の代わりにお弁当にしてもらう。
荷物は前日に用意しているのでデポしておいて、
まだ暗いのでヘッデンを点灯させ、強風対策で念のためポールを持っていく。
気温は10度程度と寒く、強風を考えると体感はもっと下がるので、
ダウンジャケットに、レインウェア上下。
それとどれくらい粘るか分からないので冬グローブと完全防備で山頂まで散歩に出かける。
10分ほど岩場を登りつめて山頂に赴くと、
すでに2,3人の方が三脚を持ち出してその時を待っている。
おはようございますと挨拶をして、自分もベスポジを確保して、
朝が明けていくのをひたすら待つ。
西からの風がかなり強くて、顔がしびれる。
向かいにそびえる穂高連峰や槍が闇の中にさらに黒いシルエットとして浮き上がっている。
そして槍の肩や北穂のあたりには、煌々と小屋の明かりが光っている。
時間を追うごとに、山のシルエットは徐々に徐々に明瞭になって、
岩筋や残雪の具合が模様となって姿を現し始める。
最初のうちは非常にクリアな空だったが、
そのうち飛騨側から猛烈な勢いで雲がのしあがってくる。
そうして、大キレットやら飛騨乗越から一気にこちら側にこぼれて、山を下っていく。
ただその雲の流れの何と面白いこと。
風が相当強いので大丈夫だろうと思っていたが、
槍の先や北穂の先だけはここからほとんど、雲に紛れて見えなくなってしまう。
それでも、この大眺望は全く飽きることがない。
そうこうしているうちに徐々に北アルプスは朝を迎え始める。
↓絶景かな〜(左は穂高連峰〜槍、中央は西鎌尾根〜水晶岳、右手は表銀座から燕岳)
雲海の中から半熟卵のような朝日が徐々に徐々に顔を見せていく。
それにつれて対岸の山々は朝日を浴びて、赤く焼けていく。
見事なモルゲンロート。
今回はこの朝日に焼ける槍・穂高を見るのが最大の目的だった。
前回の蝶ヶ岳ではすでに起床時から暴風雨で5m先も見えなかったのでまさに感無量。
朝日を見るために東の空を見、すぐに反転して西の山々を見、
カメラを構えてバシバシシャッターを切るので、結構忙しい。
特に槍は雲が絶えずかかっているのだが、時折風がアシストをして姿を見せるので
一部始終が見逃せない。
背後に分厚い雲を纏った槍は本当に王様の風格を漂わせていて素晴らしい。
いつかあの槍も極めたいと思うが、今日はここから槍が拝めるだけで十分満足。
槍からはこの槍の素晴らしい景色は見えないし、
あの雲だと肩の小屋からはご来光も難しそうだ。
何はさておき、とにかく素晴らしい朝で、気づけば4:30から6時手前まで
1時間半も大天井岳の山頂で満喫してしまった。
↓大天井岳からの槍は最高!小槍もバッチリ
朝日もすっかり空の上に昇っていき、満足して小屋に戻ったのが6:00手前。
すっかり体が冷えてしまい、すでに人もまばらな歓談室のストーブに陣取って暖をとる。
多くの人は食堂で朝飯か、すでに出発してしまっている。
寝室のところへ荷物を取りに行くと、すでに自分以外の荷物はなく、
小屋の方が寝床をはがし始めているところだった。さすがに山の朝は早い。
適当にレーションをつまみながら熱い茶で朝食を済まし、6時にいよいよ2日目の山行出発。
昨日お世話になった方々に挨拶して行きたかったが、
山頂に出かけている間にすでに出発してしまっているようで残念。
テン場をすぎて、なだらかな稜線歩きをスタートさせる。
昨夜から吹き続けているキツイ西風は相変わらずで、
一応トレッキングポール使用でサクサク進む。
かたい岩場を抜けると、整備されたきれいな山道となりあっという間に東天井岳の鞍にでる。
そこからは一転して下りに入る。見下ろすと、東天井岳の南斜面は一面のグリーン。
その間をはるか先まで道が続いている。
先発していた登山客を順調にパスしながら進むが
日が高くなるにつれて今度は暑くなってきた。
朝イチから完全防寒の仕様のまま歩いていたのだが、これはたまらんいうことで、
上着を全部脱ぎ、2wayパンツをハーフにするととてもスッキリ。
東天井岳を過ぎると、尾根を一本挟むからか懸念の風も穏やかになり、ポールも収納。
警戒に緑の中を下っていく。
早くも常念方面からやってきた登山客ともすれ違うようになり、挨拶をしながらすれ違って行く。
東天井岳から横通岳との間の鞍部。緑のど真ん中ではたくさんの人が休憩中だった。
なかなか素晴らしい道ですなあ。
そこからは一転して砂場の上り。快調にペースを上げて昇っていく。
この間もずっと槍・穂高はその姿を見せ続けてくれている。何て素晴らしい天気!
しばらく上ると平坦な道に出るが、
その先にはさらに横通岳の頂上を右に巻きながら道は進んでいく。
道はさらに岩場となり、途中では岩の上を渡っていくような個所もあるが、
難易度は全然大したことはない。
これまで歩いてきたトレイルを振り返ったり、何度も立ち止まってカメラを向けたり、
天気が良すぎるゆえに意外と時間がかかる。贅沢な悩み。
途中見晴らしの素晴らしいところでカメラタイム。
穂高連峰が丸裸!
槍から北へ伸びる北鎌尾根もはっきりとその難所具合が見て取れる。
ここは、かの加藤文太郎や松壽明が命を落とした場所だ。
↓東天井岳と横通岳の鞍部より。穂高連峰を望む。まるで教科書みたいな写真(笑)
横通岳を右手からぐるっと巻き終わると、いよいよ常念岳が姿を現す。
鋭角で研ぎ澄まされたカリスマ性を感じる槍ヶ岳のシルエットとは対照的に、
こちらはどこからみてもスケールのでかい、武骨でどしりとしたシルエット。
その器のでかさに去年魅了され、まさに今からそこに向かおうとしているなんて!
それにしてもあの山肌に刻まれている登山道のなんと険しそうなこと。
高度感はすごそうだし、なかなか道もガレていて厳しそうである。
その前に一度、はるか眼下に見えている小屋のある常念乗越まで下らないといけない。
こちらの横通岳の下りもそれなりに傾斜が急でガレているので慎重に慎重に下る。
そうして出発から2時間ほど、8:00に常念小屋に到達。
↓常念岳をバックに。それにしてもすごい威圧感
まず、朝ごはんをレーションで済ましてきたので、
この上りの前にしっかりと腹ごしらえをすることにする。
小屋の周辺はすごい人です。
ちょうどクラブツーリズムの3班にもわたる団体さんが出発するところでワイワイガヤガヤ。
小屋に行って飲み物をと思ったら、ノンアルコールビールを発見!
ああ、飲みたかったのよ〜と早速購入。それから一緒に近年の山バッジもゲット。
表のベンチで常念岳を見上げながら、大天井荘の弁当を食べる。
なんて贅沢な飯でしょう〜。
で、ゆったりと朝ごはんを食べ、トイレをしたり何だしていたら
あっという間に40分も経ってた(汗)
まあ、夜に充電していた携帯の充電が早くも尽きかけていて、
それを小屋で100円充電待ちだったりしていたので思わずもたついてしまったのだが。
そんなこんなで、大天井岳からの縦走でパスして行った人たちもすでにみな出発して、
ほとんど最後尾から常念岳を目指します。
この上りはかなり厳しいことが予想されるので、
普段上りでは使わないポールを頼りにして上ることにする。
そうすると一眼を首にかけっぱなしだと邪魔なのでザックにしまい、
主に携帯撮影に切り替える。
とにかくハードそうなので慎重に、安全第一で参ります。
9:40。準備万端でいよいよ憧れの常念岳を極めます。
ベンチからすぐの登山道に復帰し、ボチボチと岩場を詰めていきます。
三俣方面への分岐までは大した斜度でもなく、岩場をのんびり上がっていく感じ。
ただ、真下から見上げると、
まるでオーバーハングしているような錯覚を覚える厳しい斜面のはるか上部に、
先行する登山客が豆粒のようにへばりついていて、もうそれだけで目がクラクラ@@
高いところから下を見て、その高度感に足がすくむことはあっても、
上を見上げて同じように足がすくむとは!
それだけ高くて急な登りなんでしょう。なにしろ、一気に500m近く上がるのですから。
ああ、高所恐怖症@@@
それでもここを克服しないことには何も始まりません。
鎖場や梯子、ロープが必要なところがあるわけでもなく、
ひたすら岩場を歩いていけばいいのですから、行くしかない!
分岐を過ぎると、徐々に道もハードになっていきます。
所々に赤ペンキのマークがあって、それを目印にジグザグに登山道を進んで、
少しずつ高度を稼いでいくのですが、時々マークを見落として直登をしてしまい、
むやみにデンジャラスな状況になってしまったり、気が抜けません。
出発が遅れたのが幸いして、自分の前も後ろも人の列はないので、
時折、単独さんをパスしたり、上から下りてくる人たちと行き違う以外は、
集中して自分のペースでひたすら登る。
そうして集中して集中して、必死になっている間は恐怖心もなく、
足元の岩場、手前を見上げて目先のコースだけに意識を向かわせる。
きっと、それが何かの拍子で解けて我に返ってしまったら、
一気に高所恐怖症が襲ってくるに違いないので、
とにかく目先の集中、目先の集中と唱えながら進みます。
とはいえ、やはり10kg以上の荷物(コレデモテン泊者に比べたら全然軽い)を担いで
急場を緊張感バリバリで上るとさすがに疲れるわけで、
しかも雲1つない天気で直射日光が照りつける中汗だくなわけで、
このまま山頂までノンストップはきつい。
途中の少しスペースに余裕があるところで1度休憩を入れる。
で、やったらいかんのに、思わず下を覗いたら…
ああ、高いやんかあ、怖いやんか〜@@
足元の岩が何かの拍子でごろっと崩落したら、イチコロで死んじゃうよ〜
なんて、マイナスのことばかり考えてしまって余計に怖い。
あかんあかん、気をしっかり持て!と、すぐに休憩を切り上げて登りを再開する。
そこからはひたすら足場に意識を集中させて、
右へ左へジグザグジグザグと岩場を登っていく。
ほとんどはポールを立てて登っていけるが、
急なところはポールではなく手でよじ登りながら進む。
そうやって、下から見えていたピークまでたどり着くと、そこは偽ピーク(泣)
そこから、斜度が少し緩んで、少し幅広の歩きやすい荒地となり、
気持ちにも余裕が生まれます。そこで遅れを取り戻すべくピッチを上げ、
9:50常念岳登頂!
やったど〜。
こんなビビりの高所恐怖症の人でも急な岩の山に登れました〜。
いやいや、しかし、やはり乗越から1時間かかりました。結構ハードな登りでした。
ベテランの山師からしから、これくらいでビビってどうするといえるようなところですが、
日ごろ、六甲くらいしか登っていない身としては、
この険しい山を登り通せたことは次のステップへ進む上で、本当に自信になります。
いやはやよくがんばった!
下から見上げるとあれだけ雄大な常念岳ですが、山頂は意外と狭くて、
祠の周りにしがみつくようにして、みな座っています。
北側にはここまで歩いてきた道のりをおさらいするかのように、大天井岳から横通岳。
東側には厳しそうな前常念の尾根が続き、その先松本盆地がうっすらと雲の下に。
南側にはこれから進んでいく、蝶ヶ岳方面のこれまたアップダウンの激しそうな稜線。
しばらくすると松本側から雲があがってきて蝶ヶ岳が隠れていってしまいました。
そして東側には雲ひとつない槍と穂高連峰の峰々。
これぞまさに天上の別天地。すばらしい眺望です!
祠の前や標識のところでは団体さんが写真撮影でごった返し、なかなかスリリングです。
シャッターをお願いされた人が、カメラを抱えて後ろ足で構えるのだが、
カメラに集中しすぎて足場をちゃんと確認しておらず、
あと5cmでも後ずさったらそのまま谷へ落ちちゃうよ〜という人が結構いて、
それを見ているだけでもハラハラする。
自分も混んでいる中をどうにかスペースを見つけて写真を撮る。
↓激混みの常念岳山頂
↓常念岳からの眺め
15分ほど山頂でとどまっていると、
どうしても集中力が解けてきて、恐怖心が増してきます。
ああ、よくよく考えるとかなり高いよとか、あれだけ登ってきてしまったが、
同じ分だけ、同じようなところを下らないといけないってことだよなあとか、
色々考え始めてしまう。
ここまでで先発していた団体さんにほとんど追いついてしまっていて、
しかもそれらがそろそろ一斉に下山を開始しそうだったので、
混雑に巻き込まれる前に自分も蝶ヶ岳方面へと下山することにします。
で、蝶ヶ岳方面を指し示す登山道を確認してみると…
えっ?ここ?崖ですけど?マジ?
かといって、今登ってきた常念方面の斜面を下るというのも怖すぎて絶対嫌。
これはもう意を決して下るしかない!
↓蝶ヶ岳方面への下り口だが、マジでここ?
もう下り口へと集結し始めた大阪から来た団体の前にどうにか先行して、
前が開いた状態で下り始めます。
下り始めがとにかく急で、あお向けて3点確保で降りるような感じのところも。
足元はガレガレでとにかく滑りやすく、前方に傾斜が付いているので本当に怖い。
そこに蝶ヶ岳方面から縦走してきた人たちが束になって続々と向かってきて、
せまいせまい登山道を譲り合いながら行き違うのだが、
その待機している場所もまた足場が安定しないから本当に怖い!
前をゆく紫ザックの女性が、怖い怖いと言いながら進んでいて、
お互い励ましあいながら慎重に下ります。
行き違いのときは後ろから来たさっきの大阪の団体のリーダーのおっちゃんとおしゃべり。
「今日はどこまで行くの?」と聞かれたので、「できれば上高地まで行きたいです」と言うと、
「ほな、グズグズしてられへんな!どんどこ下りていかな!」とか。
人としゃべっていると恐怖心が和らぐので、そうやって怖さをだましつつ、
慎重に下っていきます。
そのうち、後ろの団体さんとは差がつき、前をゆく女性の方と先行して行きます。
途中で女性がルートを間違え登り返してきて、そこでパスして先へ進みますが、
逆に素晴らしいペースで降りてきた緑ジャケットの若者に道を譲ります。
下るにつれて少しずつ斜度はマシになっていくのだが、
ガレた足場は相変わらずで、浮石も多く、全く油断ならない。
どれくらいの時間を要したのか、周囲の景色を見る余裕もなく、
どうにか1つ目の安全地帯である岩礁にたどりついた。ふぃ〜。
たどり着いた岩礁を右から巻くのだが、これまた右手がすぱっと切れ落ちたところで、
でかい岩の上を飛び乗っていくようなルートになっていて結構冷や汗が…
途中から先行していた緑の方がどんどん遠くなって、
ルート検索に頼りにしてたのに自分でルートを探さないといけなくなる。
蝶ヶ岳方面からはルートが見えやすい位置に書いてあるようなのだが、
逆方向からなので岩の裏などに書かれてあるマークを見落としがちで、
下手に下りすぎると後が大変と、できるだけ水平方向に行くように心がける。
が、それが裏目で、ルートが1m下にあって、正規ルートに復帰するのに四苦八苦したり。
まだまだ予断を許さない攻防戦が続きます。
難所の岩礁地帯を抜けると、目の前に最低鞍部と、その先に緑の小高い山が見えてきます。
あそこまで行けばようやく難所は抜けれます。
もうじき安全地帯だと、少しずつ自信を取り戻してえっほえっほ下っていきます。
すると穂高の方面が何やら騒がしい。ずっとヘリがホバーリングしている音がする。
まさか事故でも起こって捜索しているのか、もしくは物資を運んでいるのか。
できれば物資輸送であってほしいと願いながら歩きます。
しかし残念ながら、後で調べたら、お一方北穂高で200m滑落してお亡くなりになられていました。
生と死が隣り合わせなのが山の現実です。ご冥福をお祈りいたします。
最後のガレ地を詰めて、最低鞍部の手前までどうにか降りてきました。
そこから少し下って、登り返し。
小高い丘になっていて、そこではたくさんの人が休憩をしていました。
自分も相当この下りで消耗してしまったのでちょいと休憩を入れます。
M&M'sで甘いものを摂取し、水分補給。
自転車用のボトルにウーロン茶、それに常念小屋で仕入れたポカリ500m、
それに背中のハイドレーションに2リットルと十分な量を用意したはずだが、
あまりの暑さと消耗で、残りはウーロン茶1/3と、わずかのハイドレーションのみ。
まだここでようやく半分の行程だが水分が足りるかどうか。
一気に飲まずに節約して摂取するようにします。
11:30リスタートして、蝶ヶ岳を目指します。
↓最低鞍部の手前より。蝶ヶ岳まで3つもピークが見えてる…ぴょこんとなってる左から2つ目が蝶槍
トップから緩やかに下っていくと、登山道は樹林帯へと突入していきます。
日差しを嫌ってこの茂みの中で休憩をとっている人たちが結構いました。
茂みの中をえっちらおっちら進んでいくと少しずつまた上りが始まります。
日差しがない分涼しいが、風の抜けが悪いので結構蒸す感じで結局暑い!
一度平坦部に入り、池なども出没。
そこから再び前方にそびえる緑の山へ上りが始まります。
ガイドブック等にもこの区間のことはあまり触れられていませんが、
何気にハードです。木々の間から出た幹や根っこの階段をえっちらおっちら登る。
時折、先行しているパーティーをパスしていきますが、みな一様にお疲れ気味。
この日はちょっと気温が上がりすぎでしたね。バテバテ。
そうこうしていると前方が開けてトップに到着したようです。
ここはちょっとしたお花畑になっていました。
ここで先行していた緑のジャケットの方をパスして、一転激下りが始まります。
え?でも蝶槍までの上りがあるはず…
ということはせっかく稼いだ標高を一度はきだして、
まだしんどい上りが残されているということですな…
お花畑の斜面を結構急な感じで下っていきます。
そうしてしばらくして松本側から上高地側の斜面へ移り、
樹林帯の中をまだまだ下っていきます。
木の根っこが登山道をたくさん横断していて、下りが続いているので力み過ぎたのか
途中で不覚にも左足の中指を攣ってしまい、ため池のようなところでちょっとブレイク。
エナジーチューブを2本流し込み、貴重な残りの水分を少し含む。
下りの途中、前方が開けるところがあって、そこから蝶槍の姿が前面に。
ああああ、さっき常念乗越から常念岳を見上げた時のデジャブか?
槍と呼ばれているだけあって山中がとんがっている目の前の斜面に、
豆粒のようにへばりついている登山客の姿。常念ほど長くはないようだが、
それでも2/3くらいはあろうかという上りが立ちはだかっております。
しかし、ここさえ抜ければもうあとは緩やかな二重稜線が待ち受けているのは間違いなく、
もうひと頑張りです。
最低部までたどり着いたら、徐々に登りに入っていきます。
なかなかの急坂で、疲労した身には最後のトドメのように響いてきます。
徐々に周囲の草木の丈が低くなり、ラストはハイマツの間のガレ場歩きとなります。
周囲の眺望が一気に開け、槍ヶ岳もまだきれいにその姿を確認できます。
ハイマツのおかげで恐怖心はないが、しかし斜度はというと、
さっきの常念の一番厳しい部分と同じくらいの傾斜があってなかなか骨が折れます。
ジワリジワリ登りつめ、少し傾斜が緩やかなところから、
あとわずかに岩礁にかじりついて13:00ジャストに蝶槍に到達です。
あああ、疲れた〜。
ここからはもう道のりもイージーで、30分ほどなので、
残っていた水分を全部使い切ります。ああ、生き返る〜@@
蝶槍ではお約束のポーズで写真を撮ったり少しだけ休憩。
蝶槍をすぎるとあとはなだらかな稜線歩き。
対岸に穂高連峰を望みながらテクテク。
去年来た時には本当に視界不良で恐ろしかったが、こうやってみると本当に穏やかな山。
のんびり歩いて、すでにたくさんの人でにぎわう蝶ヶ岳ヒュッテに到着。
蝶ヶ岳から常念岳の間はイメージ的になだらかな稜線歩きを想像していたのだが、
どっこいどっこい結構なアップダウンの応酬で思った以上にハードでした。
よくよく考えれば、樹林帯の区間から森林限界を超える部分まであるわけだから、
そりゃあ登り降りも激しいはずです。
時刻は13:30。
腹ペコなのでまずは腹ごしらをするとして、その後、このまま先を進んで上高地へ下りるべきか。
目標は達成したし、あとは上高地へ下りるだけなので、
もし1日早く帰れるなら家族にとってもいいし、頑張るべきかどうか思案する。
ここから長塀尾根を下って3hとして、
徳沢から上高地まで1hとして、上高地着は18時ごろ。
高速バスはすでに出発しているので、そこから松本まで2hかけて出たとして20時。
どうがんばっても名古屋止まりがいいところです。
それならば、蝶ヶ岳ヒュッテで泊まって、もう一度モルゲンロートを見て、
長塀尾根を下らずに、さらに縦走を続けて徳本峠を目指すのはどうだろう。
ざっくりと考えて、その方が面白そうなのでここで本日の行動を終えることにしました。
そうすれば、早速寝床の手配。
今回は朝食なしの1泊1食で7500円にしました。
小屋グルメを満喫しすぎて補給食が余りすぎていたので、それで朝は済ますことにします。
寝床は本日も2段ベッドの2階です。
ここも2畳6人のスペース。ですが、幸い2畳を2人で過ごせました。
寝床を手配したら、とにかく空腹を満たしたい!
売店へ行って、カレーうどんと思わず我慢していたビールを注文します。
ビール、ウんメ〜〜〜!!!
やはり山で飲むビールは格別ですなあ。
カレーうどんを食べつつ、地図を広げて翌日のルートを確認しておきます。
全く予定していなかったし、マイナールートなので不安ですが、
小屋の人に聞いても危険個所や難所もないし、よく整備された道だというし問題なさそう。
ただ、恐ろしく長いよ〜、あと数日前に熊が出たから注意ね〜と軽くレクチャーされる。
ク、クマですか。それはクマった…
あとは、中村新道は結構マイナールートなので、
昨日の表銀座や今日の縦走路と違って、人気がほとんどない。
何かあった時に少々不安だが、静かな山行が期待できそうなのでそれはそれで楽しみだ。
そうこうしていると、常念の下りでご一緒した女性が小屋に到着。
無事に着きました〜と安堵されていました。
それからさらにしばらく経って、同じく常念で出会った大阪のおっちゃんも到着。
言葉をかけたのですが、自分と気づいていないらしく、
はてな顔でスルーされてしまう@@ションボリ
でもだいぶ後、夕食前にわざわざ自分を探してやってきて、
「さっきはスマン!小屋に着いたときは疲労困憊で誰かわからんかったわ!
上高地へ行くっていうてたしな。」と声をかけてくれました。
「ビールに負けて、ここに泊まることにしたんです」と答えると、
「それは正しい!」と笑っておりました。
山ではこういう一期一会の出会いや会話が本当に楽しい。
↓ハンガー寸前でカレーうどん。そして誘惑に負けてビイル@@
昼飯を終えたら、寝床へもどり翌日の準備とか、洗濯物を干したり、携帯の充電をしたり。
高所ビールが思ったより効いていて、ほろ酔いなので動作が鈍い。
でもここで昼寝をしてしまうと、夜寝れずに苦しむことは知っているので、
ダラダラしつつもしっかり起きておきます。
色々済ませて、とりあえず蝶ヶ岳登頂しておかないといけないので
小屋のつっかけをお借りして、裏の山頂へ散歩。ものの2分です。
標高2677mの蝶ヶ岳に2年連続登頂です。
時刻は15:00。
夕食の時間は17:30なのでまだまだ時間によゆうがあります。
少し歩きまわって、翌日歩く、大滝山方面の山の具合を観察します。
山はなだらかに展開をしていて、地図と照らし合わせながらみるが、
等高線もなだらかで、見る限りは急場はなさそう。
長いトレイルだよ〜と小屋の人に脅かされたが、
北側の方面を見て、はるか遠くの大天井岳の姿を見ると、
よっぽど今日の道のりの方が長く険しく見えるので、きっと大丈夫。
山頂を後にして、今度は小屋の反対側にある瞑想の丘と呼ばれる、
山の羅針盤のあるところへ行き、ひたすら西日を浴びる穂高連峰を眺める。
ヘロヘロになって常念方面からたどり着いた登山客に、
お疲れさま〜と声をかけながらのんびり声をかけつつ、景色に見入る。
こちら側の常念もまた器がでかくて美しい。
午後も遅くなって、ジワジワと雲が出てくるようになった。
特に東側は色々な雲が現れて面白い。山は全然飽きることがないなあ。
↓反対側には雲のマジック。あの中にはラピュタが?
ぼちぼち夕食の時間が近くなったので小屋に戻り、
ロビーで天気予報などを見ながらのんびり過ごす。
ロビー横の売店ではビールが飛ぶように売れていく。
天満より繁盛してるんじゃないかというくらいビール大人気。ん〜わかる!
17:30になって1回目の夕食。
この小屋もおかずのレパートリーが多く、それもお野菜を多く使っていてすばらしい。
ご飯もお味噌汁もしっかりお代わりさせてもらいました。
そしてやっぱり熱いお茶がうまい!
ごちそうさまでした!
食後。
この小屋には名古屋市大のボランティア診療所があり、
去年も参加したのだが今年も高山病セミナーがあるよう。
19:30からということで1時間ほど時間があるので、
再び夕焼けの穂高連峰を見に散歩に出かける。
食後のコーヒーと洒落こむ。やっぱり最高っすねえ。
この日の夕焼けも本当に見事で、ちょうど大キレットのくぼみに太陽が沈んでいく。
ちょうどそのあたりに浮かんでいた千切れ雲が日差しを浴びて真っ赤な炎のように色づく。
太陽フレアのような出で立ちで、最後の光を放ったかと思ったら、
あっという間に北アルプスは夜の闇に没していった。
↓槍・穂高の夕焼けをみながら一杯
↓沈みゆく穂高連峰
↓大キレットのフレア
1時間ほど夕焼けショーを楽しんだのち、
19:30から雲上セミナーに参加します。
高山病はまだそのメカニズムがはっきり解明されていないらしく、
個体差が非常に大きい病気だそうです。
人によっては1500mを越えると発症するらしく、特効薬はないそうです。
そのまま無理をして高度を上げたりして、悪化すると肺水腫や脳水腫となって、
下手をすれば死に至ります。
酸素ボンベなども有効ですが、ずっと吸い続けなければならず対処療法でしかないので、
高山病にかかれば無理をせず下山するのが一番の薬です。
ちなみに、高山病予防として水分補給が大事なのですが、
適量の水分量を計算する式があります。
体重×行動時間×5ミリリットル
です。この日の自分に当てはめると、
65×7.5×5=2437.5ミリリットル、つまり約2.5リットルは飲まないといけません。
2.5リットルといえばなかなかの量だと思います。
自分はこの日は暑いこともあって3リットル以上飲んでいるので問題なし。
高山病セミナー以外にも、バードウォッチング講座などもあって、
なかなか楽しい時間を過ごせました。
消灯時間は21:00。
まだ40分ほど時間があります。
この日はペルセウス流星群が見えるかもしれないらしく、
多くの人がヘッデンをつけて夜散歩を楽しんでおりました。
自分もカメラを出動させて、近くの瞑想の丘まで行って夜を楽しむ。
シャッターを解放して撮影を試みますが、さすがに三脚も、リモートもない状態ではブレがひどい。
それでも何度か撮影しているなかでマシなものが撮れる。
何度か流れ星を目撃し満足のいく天体ショーでした。
21:00となり、小屋へ戻り、翌日の支度を済ませたら就寝。
気がつけば早くも明日は山行最終日。
名残惜しくて仕方がないが、最後まで気を抜かず悔いのない山行でいきます!
つづく…