記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

『旅と酒場俳句』 by 吉田類

おなじみ酒場詩人・吉田類さんの本です。
テレビでは時々ろれつが回らず、
取材先の店名もすっかり忘れてしまうことの多い類さんですが、
単なる酔っ払いのおっさんというわけでは決してありません。
自分が類さんに惹かれたのも、あの番組のエンディングで詠まれる一句があってこそ。
単なるグルメ番組としてではなく、酒と人生を小粋に流す様がいいのだ。
つまり人情。
ということで、本書は酒飲みとしての類さんではなく、
俳人としての類さんの魅力がたっぷり詰まった一冊。
さすが酒場詩人を名乗るだけあって酒にまつわる句が多いが、
お酒のピッチ同様に、テンポよく言葉が躍る。心も弾ける。
たまにはそんな詩を肴に一杯なんていうのもいいじゃあないかぁ。



たくさんの句が、それを詠った時の解説付きで紹介されていますが、
その中から自分のお気に入りを少しだけご紹介。
うむ〜なかなかどうして見事。


「火酒過ぎて 亡者の船に ゆられたる」


「ワンタン喰ふ 春や乳房の 舌触り」


「ローカル線 どんぐり行った きりという」


「酔ひそぞろ 天には冬の月 無言」


「獣うつ 野に一瞬の 冬もみじ」


ハイボール 弾ける夏の ブルージーン」