記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

仙丈ヶ岳登山 2日目

話は1日目の夜中からの続き。
お腹いっぱい夕食を食べ、生ビールを煽り、
熟睡に向けてしっかりと準備したつもりが
2度目のアタックですっかり目が冴えてしまった。
19:30に部屋に戻ると、消灯30分前というのにすでに消灯して
ほとんどの人が先に寝息を立てている状態。
他の人に遠慮をしてヘッデンをつけずに、狭い土間でレインウェアを脱いで
寝る支度をし、毛布にもぐりこむ。
自分も前日ほとんど睡眠をとっていないまま、3000m峰登山を開始し、
しかも成り行きで2度の山頂アタックをかまし
すっかり眠気も疲労もMAXなはずなのだが、
正直寝遅れてしまった…
すると、お隣のK大先生はなかなかの大声量だし、
他の方も含めて大部屋は大合唱。
寝よう寝ようと集中すればするほどドツボにはまっていく感じで、全く寝れない。
それに敷布団も掛け布団も分厚い毛布で、自分の熱がこもってしまって、
それはそれで寝付けない。どっちかというとこの暑さの方が寝苦しさの原因。
ぬくい布団は大の苦手です。
かといって布団をはぐと10度そこいらの部屋は寒いし。
仕方がないので、来ていた服をどんどん脱ぎ、靴下も脱いで、
できるだけ熱を逃がすようにして無理矢理目をつぶる。
1人1枚の布団なのだが、余裕あるスペースではなく、
隣の人と密着しかねない幅なので、遠慮しながら寝返りを打ったり。
そこそこ寝たかなあと思って腕時計をチェックしてみても、
まだ30分も経ってないし…。
そういうのを何度も繰り返して、ただ時間が過ぎるのを待つ感じ。
ウツラウツラと半起半寝状態で、長い夜は続いていく。
まあ、大抵こういう小屋泊で寝れないというのはすっかり慣れっこだ。
0時を過ぎたあたりでどうも小屋の外側が騒がしい。
強烈な風が小屋全体に吹き付け、かなりの雨が窓をたたきつけているようだ。
翌日の天気は、前日よりもさらに悪化しそうな予感である…。
30分寝ては30分で目が覚めるを繰り返して、
2時ごろ、ふと隣のkさんが目を覚ます。
すっかり熟睡をしていい感じで体力回復しているとのこと。
それを言い残して再び眠りの世界へ即落ちしていかれました。
すぐ寝れる人ってうらやましいよなあ〜。


そうこうしているうちに、起床予定時刻の3:30となる。
もうこの時点でご来光など望めそうにはないことははっきりしていたが、
一応出発の準備を始める。
この日の行程としては、北沢峠10時発のバスに乗って帰ることにしていたので
逆算すると余裕をもって6時ごろには小屋を経たねばならない。
しかし、ここで1つ問題なのは、Kさんがまだ登頂を果たしていないということ。
どうせ登頂をするならご来光を兼ねてということで4時出発としていたのだが、
外の状況ではまず無理そう。
といって、6時までには登って小屋に帰ってこないといけないので、どっちみち同じこと。
ただ、道の具合は昨日2度歩いてわかってはいるが、
まだ夜が明けていない暗闇を、わざわざリスクを冒して歩く必要性はないので、
5時の朝食をさっと食べてのちに、山頂へ向かうのがベターだろうと判断する。
4時前にKさんを起こし、プラン変更の旨を通達。
他の登山客の方々も、さすがにご来光は断念したようで、
みな目覚めてはいたが誰も出発する人はいなかった。
トイレへ行くためにいったん外へ出てみるが、
昨日より少し強めのササメ雨が降っていた。
ん〜。今日もダメ!むしろ天気は下り坂のようなので、
眺望を狙って無理に山上で粘るより、早めに下山した方が得策だろう。


5時となって、食堂で朝食。
朝から立派な朝食を頂いて元気を頂きます。
ニュースを見ながら天気予報をチェックするが、
どう考えたってよくなる兆候はナッシング。
こればっかりはどうしようもない…


↓豪華な朝食


5:20になっていよいよ山頂アタックをスタートさせる。
いったん小屋に戻ってくるので荷物は置いて、空荷で参ります。
他の方は、山頂からそのまま下山ルートへ進むためか
ザック担いで出発されていましたが
こちらの方がおそらくずっと楽で速いはずです。
レインウェアと風対策にトレッキングポールと冬グローブだけ用意し、
あと一眼レフも持っていくことにしました。
この悪天に、Kさんはだいぶ弱気で、
ここまで来れたからもういいよ〜などと冗談半分で行っていましたが、
もう目と鼻の先ですから、攻めてピークは踏んで帰りましょうと背中を押しながら
小屋横の上りをあがっていきます。
地蔵尾根分岐まで上がってくると、
山の反対側から吹きあがってくる風がいっそう強まります。
そこからさらに上に2段、3段の上り区間があり、慎重に慎重に進んでいきます。


↓もうちょい!ファイト!


そうして約30分ほどで無事に山頂に到達。
Kさん、やりましたよ〜。
自分は昨日に引き続き3度目の登頂でしたが、ご来光どころか、
あいかわらず周囲は真っ白けっけで何も見えません…
とにかく風が強いので、記念撮影だけをして、
滞在わずか5分足らずで下山開始。
小屋の方へと下っていくと、完全武装した登山客が順々と上がってきます。
挨拶をしながら行き違いをしていきます。
さすがにこの天候だし、ルート的にも山頂から間ノ岳へ抜ける人はいないでしょうから
みなおそらく山頂からそのまま九合目へと下っていくものと思われます。
地蔵尾根分岐のところで2人組の男の方が迷っていらっしゃる。
聞けば標識に馬の背はこっちだとあったので登ってきたのだけど、
こっちでいいのかなあと尋ねてきました。
その時自分もこの分岐の先(地蔵尾根)をきちんと頭に入れていなかったのだが、
明らかに馬の背方面ではなかったので、違うと思いますよと言っておきました。
あのまま進んでしまうと長い長い地蔵尾根を下って
戸台口付近まで下山を強いられることになります。
そこから小屋まで下って、小屋に戻ってきたのが6時を少し過ぎたところ。


↓三度山頂


↓K大先生も無事登頂


いったん寝床の部屋に戻り、荷物を整理します。
すでに他の登山客は出払っていて、我々2人だけでした。
山頂は風も強く朝イチで寒いだろうとレインウェアの中を厚めに着ていたので
下りに備えて、レインウェアの中をポロシャツ一枚に着替えたり、色々支度。
一応小屋のスタッフさんに道を確認。
一番アップダウンも少なくて早く下山できるルートを聞くと、
まず馬の背ヒュッテまで行き、
そこから大滝頭までトラバースルートを行くのがベストとのこと。
往路に歩いた登山ルートの方が眺望がいいのだが、この天気ではどうせハズレだろうし、
あちらは上り返しが結構あるので、馬の背ルートで帰ることにします。
最後に、小屋のおやっさんにご挨拶と記撮影をしていよいよ下山開始です。
また晴れた日に来るよ〜。


まずは馬の背ヒュッテを目指します。
標識は小屋の前から下にある水場の方向を間違いなく指していましたが、
さっき上の分岐であった人は何か見間違えたのか知らん?
大き目な意思がゴロゴロする登山道を下っていくとすぐに水場がありました。
Kさんは、やっぱり南アルプスの天然水はウマイなあと絶賛されていて、
何度もおかわりをしていらっしゃいましたね。


↓千丈小屋の水場を通過


そこから、さらに大きなカールのちょうど真ん中あたりをずんずんと下っていきます。
なかなか段差が大きく、Kさんも快調に高度を下げていきます。
そこそこカールを下っていくと、次はいわゆる馬の背状になった尾根を進んでいきます。
おそらく馬の背ヒュッテに宿泊された方々が次々に上がってきて、行き違い。
時々うっすらと甲斐駒方面の景色が見えたりするが、
単に高度を下げて雲中を脱しただけで、これ以上の眺望は望めなそうだった。


↓ずんずん下ります


途中から登山道の左右にネットが張り巡らされてくるようになりました。
これは天然植物の植生を守るための鹿除けとのことらしい。
日本全国で鹿は問題になってますね。
徐々に周囲の木々の背丈も大きくなり、緑に包まれるようになってきました。
そうしてそのうっそうとした森の中に、ぬわっと馬の背ヒュッテが現れました。
時刻は6:45。
こちらの小屋もなかなか清潔そうな感じでしたが、
やはり立地を考えると千丈小屋の方がいいかなあ。


↓鹿の防護ネット


↓馬の背ヒュッテ


少しだけ馬の背ヒュッテで休憩をしていると、
見慣れた顔の方が下ってきました。
なんと、先ほどお別れをした千丈小屋のおやっさんです。
どうやらこの日、水道ポンプの設営があるらしく、
その作業でここまで下ってきたようです。
朝イチから雪渓をバックにデカいパイプをいじり倒すおやっさん
さすが山の男です。


↓千丈小屋のおやっさん働く


さて、休憩を済ませて先へ進みます。
馬の背ヒュッテからもう少し下ると、藪沢に出ます。
ここで分岐。この沢を直下りする藪沢新道と、
引き続きこの山肌をトラバースするルート。
本当なら往路と復路は違う方がありがたいのだが、ケツカッチンだし、
それに今年は雪が多く残っていて、
藪沢ルートはつい先日開通したばかりということで、
難儀なことが予想されるので、そのままトラバースルートを進むことにします。


↓藪沢新道との分岐。トラバースルートへ進む


↓いくつも沢を渡ります


沢を渡っていくと、小仙丈ヶ岳の北側の斜面にへばりつくようにして続く
トラバースルートを進みます。
なかなか木の根っこが張り出していたり、ゴツゴツした岩があったり、
なにより土がぬかるんでドロドロのところがあったり、意外と骨が折れます。
アップダウンはそれほどないので、
谷側へ落っこちないようにだけ注意して進みます。


↓なかなか難儀なトラバースルート


しばらく水平歩道を進んでいくと、少し森の中へと突入していきます。
すると前方に小屋が見えてきました。ここが今は営業をしていない藪沢小屋である。
時刻は7時を過ぎたところ。ここで少し身支度を整えます。
一応、雨を見越してレインウェアを羽織っていたのだが、
すでに樹林帯に突入しているし、高度を下げたことで雲の中を脱したので脱ぐ。
ただパンツの方は、朝露に濡れた草木が生い茂っていたり、ぬかるみが多いので我慢。
7:15になってリスタート。


↓営業を停止した藪沢小屋


小屋を過ぎてすぐに大き目の雪渓が残っている沢にぶつかる。
ここで写真を撮っている方々をパス。
こっから沢をほんの少し下るのだが、結構急な上にガレているので慎重に。
そして沢を渡ると、短いがきつい上り返し。
一応ロープが設置されているが使わずとも問題ない。
ただかなりぬかるんでいるのでお手つきしてドロドロになってしまったヨ。


↓雪渓の下を渡る


↓歩きにくい…


↓ぬかるんだロープ場


水平歩道と、沢渡のアップダウンを何度もこなしていく。
北側は視界が開けていて、雲間からは鋸岳がそのギザギザの稜線をちらつかせている。
Kさんに、今度アレ登りますかと聞くと、無理無理と即答。
ですよね〜。
見るからに人を寄せ付けない恐ろしい山だ。
そのうち道は緑の中へと突っ込んでいく。
道の具合も、大きな石がゴロゴロととしてきた。


↓向こうには鋸岳が見え隠れ


↓薄暗い森を抜ける


そうして前方でたくさんの人が一服している場所が見えてきた。
7:40五合目(大滝頭)に到着です。
1時間ちょっとでここまで来たので、もう10時のバスは間違いなさそうです。
Kさんも、睡眠十分で昨日終盤とは打って変わって快調でした。
時間十分とはいえ、こんなところで長くいても仕方ないのですぐにリスタート。


↓五合目で往路と合流


この辺りからは、おそらく北沢峠で一夜を明かした人たちが上がってくる。
あいさつだけでなく色々意見交換をしたりしながら行き違っていきます。
結構ペース良く下ってきたのだが、朝イチで結構ハードに来たので、
Kさんもそろそろパワーダウンしてきた。
自分も下りの方が足に衝撃が大きいのでちょっと疲れてきた。
2合目か3合目のところで少しばかり休憩。


↓ひたすら下る


↓小休止


2合目のところから少し上り返しが発生し、えっちらおっちら進む。
前方に単独女性の方がいて、その人の後を追うような形で下っていきます。
注意していたのだが、一合目の標識を完全に見逃し、
そのまま進んでいるうちに北沢峠が見えてきました。
そうして9時ジャストぐらいに無事に下山終了♪
Kさんお疲れっした!


↓北沢峠が見えてきた!


↓無事に下山!お疲れ様です!


バスまでは約1時間あるので、のんびり着替えをしたりトイレタイム。
念のため係りの人に時刻を確認したら、
もう少し人数が来れば臨時便を出すかもという話。
ちょっと小屋で休憩したいので、もし臨時出るようなら声掛けしてくださいというと、
臨時便については、小屋のお客さんが出払っちゃって怒られるので
あまり大きく触れ回れないのだとか。ナルホド。
なので、バス停付近で動きがあったり、車が来たら注視しておくことにして、
長衛荘へ。
そこでコカコーラを買って、Kさんとねぎらいの祝杯♪
いや〜なかなか楽しかったですなあ。


↓長衛荘


しばらく小屋のベンチで待機していると、広河原からのバスが到着。
20人ほどの団体さんが下りてきた。
で、その団体さんはそのまま仙流荘へと下るということで、臨時便が確定。
ただ、団体さん優先で残り5名だけが乗れるとのこと。
自分たちより先に到着していた人が5,6人いたのだが、
その人たちは休憩を優先して10時でいいということだったので、
ラスト2席(補助席)を無事ゲットして、
予定より30分早くバスに乗り込みます。ラッキー♪
下りのバスも、運転手さんの詳しい解説付きです。
あそこに咲いている花はこれ、あの虫は○○とか、さすがに詳しい。
それにオーバーすぎるくらい団体のおばさんは歓喜の声を上げる。
自分はやはり対岸の鋸岳が気になった。
あのガレッガレでほぼ垂直の岩の沢を直登して、
あの大ギャップをはじめとしたギザギザの稜線を伝い、
しかも一か所天然の岩の穴(鹿の窓)を抜けてトラバースしないといけないという…
いつかチャレンジしてみたいようなしたくないような…


↓バスの車窓から。鋸岳のえぐいギザギザ


そうこうしているうちに眠気に負けてZZZ…
そうして10:20頃に仙流荘まで下ってきました。
仙流荘には立ち寄り湯(600円)があったので、
ひとっ風呂浴びて帰ることにします。
お風呂は自分好みのぬるめのお湯でゆったりつかる。
露天風呂もありましたが入らず。
全身さっぱりリフレ〜ッシュン♪
Kさんも絶好調のようです。


↓仙人の湯


11時を過ぎたところで帰路につきます。
まずは高遠方面へと走りますが、
途中の道の駅南アルプス村長谷にちょっとだけ寄り道。
さすがに遊び倒しているのでお土産を買わにゃ。
伊那といえば、蜂の子やサナギ、イナゴなどもたっくさん売っていましたよ。
でもさすがに無理!
諸々買い込んで出発。


↓道の駅南アルプス村長谷


↓サナギ・イナゴ…


高遠、伊那には寄らずに県道209号で駒ヶ根を目指します。
そろそろ昼時ということで、ご当地グルメを食べて帰るのです。
もちろん駒ヶ根といえば、ソースかつ丼ですね!
で、駒ヶ根IC近くの明治亭に到着。
昼時というのもあるが、相当の行列でびっくり。
しばし待たされます。人気あるんだなあ。
で、自分たちの席に案内され注文します。
豚肉の産地によって若干値段が違っていて、
自分たちは信州産豚を使ったソースかつ丼を注文。
しばらく待って運ばれてきたのが、お椀からはみ出さんばかりのカツ丼!
見た目のパンチはなかなか効いてます。
さっそく実食!
お肉はさすがにやわらかくてサクサク。
その下に大量に盛られたキャベツのせいでなかなかご飯にたどり着けにゃ〜い。
ソースが甘めで食欲をそそります。
なかなかボリューミーで食べ応えがありました。
ただ、お値段が1400円もするので、まあ値段相応かなあ。
少なくともB級の価格帯ではないです。
福井のヨーロッパ軒が650円とかそんななのでねえ。
でも、まあ味はもちろん美味しかったですよ!


↓明治亭本店


↓信州産豚ロースの駒ヶ根ソースかつ丼


お腹も満たされて大満足で出発します。
でも駒ヶ根ICから高速に乗り、すぐの駒ヶ根SAにすぐさま寄り道。
おみやをもう少しだけ追加してから帰ります。
こちら側お天気が崩れていて、中央アルプスは雲の中。
局所的にザザーッと雨が降ったり。と思えば、すぐに止んだり。
途中、恵那山トンネルを抜けると雨の心配はなくなりました。


↓恵那山トンネルの信号


小牧JCT名神に合流するところで、ちょっと危ないアクシデントがあり、
どうにか事故にならずに済んだのですが、
タチの悪い輩に嫌がらせをされてちょっとビビる。
そのまま振りきってどうにか事なきを得る。
関ヶ原周辺では、物々しい護送車の隊列に遭遇。誰を運んでいるのか?
黒丸PAで一服したら、そろそろ道も混み始める。
京滋バイパスから第二京阪とつないで、家の近くまで送っていただき、
帰宅したのが17:30頃。
ちょうど奥さんが仕事から帰ってくる時間なので駅で待ち伏せをして一緒に帰る。


お天気は残念ながら味方してくれなかったが、
久々に同行者ありでの登山は楽しかった。
K大先生、ありがとうございました。また秋にお手合わせよろしくお願いします!