記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

苦肉の山行スタイル

よく、せっかく山に行っているのに
なんでそんなにセカセカ急ぐのと言われることがある。
こないだも、そんだけ速いんならトレランにしちゃえばと勧められたが、
自分は競技的なスピードは全く求めていないのです。
あれだけの驚異的な大自然の中で、人同士が1分1秒競い合うことに
なんの意味もないと自分は実感するからです。
じゃあなぜそんなに急ぐかというと、理由は単純明快、
確実にその日中に帰宅するためです。
帰れないと翌日の出勤や子供の登園に影響が出るわけで
これはもう社会人にとっては最低必須の条件なのです。


イカーをもっていれば、多少下山が遅れてしまっても、
高速ぶっ飛ばして挽回することができたり、
最悪夜中になっても、夜通し走り続けば早朝帰宅なんて言うウルトラQも可能なので、
お尻は比較的余裕が持てるのだけど(といってそんな理由でさすがに車買えない…)、
自分の場合はマイカーではなく、公共交通機関の利用を大前提としている以上、
自動的に地点地点での足切りタイムが発生する。
なので、事前のスケジューリングは綿密に行うし(まさに昔の国鉄スジ屋のごとく)、
各アクセスの最終とターゲットタイム付近の3パターンほどのダイヤはほぼ頭に入れてある。


例えば、松本から帰る場合であれば、
20:31松本発のワイドビューしなの26号が最終(大阪23:54着)。
それに間に合わせるため、上高地発は最終18:00、扇沢なら17:55。
高山から帰る場合なら、16:55新穂高⇒18:45高山発のワイドビューひだ20号。
富山から帰る場合は、19:56発のサンダーバード46号で、それに乗るには、
宇奈月からなら17:17(欅平15:19)、室堂なら16:20には出発が必要となる。
南アルプスでは、広河原16:30⇒19:36甲府がデッド。
といった具合である。(全て2014年夏ダイヤ参照)
これらに1分でも遅れれば、その日中の帰宅は不可能となってしまう。
まさに死活問題です。


最終便をアテにするほど自分は楽観的ではないし、少しでも確実に帰りたい。
そもそも最終便は混雑しがちで避けたいというのもあるし、
余裕があれば土産も買いたいし、弁当やビールだって仕込む時間がほしい。
最終便はあくまでバックアップとして捉えて、
当然それよりも1本でも2本でも早い便を狙っていきます。
そうするとおのずと、下山ペースはより速くより速くとなっていった結果、
速いペースが可能となったわけです。
かといって下りがとりわけ得意というわけではないんですが…
ただ、最終下山日は大抵、不思議と一番エネルギーがみなぎっていたりします。
人間締め切りに追われると馬鹿力が出るもんなんでしょうか(笑)
つまり自分の置かれた環境・状況に合わせた苦肉の山行スタイルなわけですが、
それはそれで結果的に自分のスキルを高め、無理のないプランニングが実行でき、
よりチャレンジングな山行へとステップアップできるようになるわけなので、
それはそれでよかったのかなあと思います。
本当ならお尻を気にせず、のんびりゆったり、
一か所で何枚も写真を撮り続けたいのですが
なかなかそんな贅沢な山行は難しいですねえ。年取ってからですね。


比較するのもおこがましいことですが、
先日紹介した加藤文太郎さんも同じような境遇で、
三菱重工業の社員であった文太郎さんは、
限られた休日でできるだけ山に登るために、
弾丸登山を続け、結果驚異的なペースで山行を可能にし、
最強の登山家と称されるようになったそうです。
さすがに文太郎さんのようなのはクレイジーすぎて自分には真似できませんが(汗)