記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

都構想 住民投票

開票速報では、開票率1%開くごとに二転三転し、
最後まで決着ががわからなかったが、最終的に大阪市が維持されることとなった。
いい勝負だったとみれるかもしれないが、
これは完全に賛成派の完敗に近いと思う。
もちろん1票でも上回ればいいのだが、
こういう革命的なことっていうのは、
相当大きなうねりというかエネルギーがないと達成できないように思う。
例えば、小泉さんの時の郵政民営化や、民主党政権奪取のときのような圧倒的多数で勝たねば、
投票結果が半々程度で勝ったとしても、
むしろもっと反発が強まって大混乱することになっていたんじゃないかと思います。
そうしてプロセスのどこかの段階で、プロジェクトがとん挫してしまったら、
解体された市民たちはあてもなく彷徨い続けていたかもしれません。
(その予防措置として、意味のある反対票を投じたと自分は思っています)
大阪の改革は賛成派だけが行うべきものでも、反対派だけでも行うものでもない。
大阪が一かたまりになって大きな動きにならなかった時点で、
都構想はすでに敗北していたのだと思う。チャンスはもちろんあったと思います。
でも、そのあたりの肝心の潮目を見誤ったというのは、
本人のおっしゃる通り政治家としての限界(導くのが政治家の仕事)なのだと思うし、
そのことを本人がはっきり認めているという姿勢はとても評価に値すると思います。


府と市の二重行政は確かに無駄な部分が多い。
一生懸命頑張っている公務員がいる一方で、
安定した身分に胡坐をかいて怠慢で横暴なダメ職員も多い。
そもそも職員の数、議員の数、もっともっと減らすべきだ。
(それは今のままでもできるし、都構想関係なしでやるべき)
そして不当な既得権益にしがみつく、老害どもに対しても嫌悪感を感じるほどではある。
(特定の世代の人間たちが大阪のみならず日本を駄目にしてきたと確信している)
無駄をなくすこと、既得権益をばらばらに分解すること、
オリンピックやリニアで今後も盛り上がりが期待できる東京に対して
ジリ貧の大阪を立て直すこと、この基本的な考えに違いはないけれど、
自分は今回の投票では反対票を入れました。
これまでの維新、そして橋下さんの仕事(知事・市長として)への評価と
都構想のアイデアに疑問があったからです。


維新、そして橋下さんは約7年半大阪を改革することに専念してきましたが、
一住民としてその効果がほとんど実感することができなかった。
市と府を統合することに比べたらはるかにハードルが低いであろう、
水道事業の統合すら果たすことができなかったのに、
その何十倍も困難な都への一本化など本当にできるのか。
そして途中、数々待ち受ける障壁に阻まれてとん挫したらどうなるのか、
そこまでの丁寧な説明もなかった。
公募区長制度も、まったく暮らしがよくなったという実感もなければ、
自分の住んでいる地域の区長が誰なのかすらわからないほど存在感がなかった。
公募校長制度も、子育て世代からすれば?と思うような不祥事が多かった。
泉北鉄道の民営化でも、わけのわからない外資系ファンドに売り飛ばしかけ、
地域沿線の住民の利益が無視されていた。
市営地下鉄も、初乗り運賃が20円安くなっただけで民営化は程遠い。
そして、肝心の財政状況の改善でも、大阪の借金は減るどころか増え続けているのが現状だ。
もちろん、維新も橋下さんも松井さんも、本気で改革に取り組んできたのは分かるし、
今回だって、自らの政治生命をかけて真剣勝負だったのはわかるが、
7年半も同じプロジェクトに集中して一向に目が出ない、
改革の兆しすら感じられないというのは、もうそろそろ潮時なんじゃないかと思う。
橋下さんのやり方やそのキャラクターうんぬんの好き嫌いという部分ではなく、
いったいこの7年何が変わったんだという実感が持てなかった、
その上でさらに将来に期待できるのかというところの評価でした。
一般の企業で7年(大統領でもほぼ丸々2期分の長さ)も同じことやって
結果が出なければそりゃやめろとなると思います。


そして橋下さんや松井さんは別として、維新の会のメンバーの
果たしてどれだけの連中が真剣に都構想に取り組んできたのか。
維新の風が吹き、そのブームにあやかって、民主や自民から鞍替えして、
椅子取りゲームに勝ちたいだけの議員たち。
どうせこれでまた別の政党にケロっと鞍替えでもするんでしょうか。
一方、賛成の票を投じた中には、もちろん大阪の将来を案じた人もいるだろうが、
都構想云々ではなく、橋下さんやからあという理由で賛成を入れた人も少なくないだろう。
大阪の人間は悲しいかなブランドやタレントにめっぽう弱い。
だからノックさんも知事になれたし、平松さんは市長になれたし、
きよしさんは議員さんにになれた。
そういう義理人情に厚いところはもちろん大阪のいいところでもあるが、
既得権益や腐敗、堕落につながっているのもまた事実。
そういう発想では改革など到底無理だろう。
あるカリスマ性のある人間が立てば、そっちになびき、
時代のうねりに簡単に飲み込まれて右から左、左から右。
あれだけ民主党を持ち上げておいて、ダメならコロッと手のひらを返す。
そういう気まぐれな層を、ひととき取り込んだとしても
所詮、「ふわっとした民意」は本当にふわっとしたものでしかなく、
改革を継続的に推し進めるほどのものではない。
今回の半々の投票結果というのは、
まさしく大阪市民の側もまた、そこまで付き合う覚悟がなかったという結果だと思う。


個人的には都構想自体に反対です。
なぜなら、むしろ道州制に賛成しているからです。
大阪の府と市が統合されたとして、大阪の中での整理はついたとして、
その大阪都が一体どれだけの存在になれるのか。
もはや大阪単体で勝負する時代ではないのではないかと思っています。
今の都道府県の区割りの原型は明治期に形成されてきましたが、
当時よりはるかに交通網が発達し、文化的なつながりも大きい現代、
小さな島国である日本を47もの数に分ける必要があるのかと思っています。
例えば北海道、東北、近畿、中部、四国といったひとまとまりの文化圏(10程度)で、
今の都道府県よりももっと広範囲で、権限も多く与えることで、
中央集権ではなく地方分権が加速すると思いますし、
エリアの特製をもっと前面に打ち出せると思います。
そして地方とはいえこのグローバルな世の中で勝ち抜いていくには
それなりの尺が必要だと思います。
ここ数年で外国人観光客が急増し、インバウンド事業も盛んになってきました。
この分野でも、単体の都道府県がPRするより、地域ブロックでアピールした方が得策です。
交通・流通事業でも同じ。地域にいくつも空港を造って足を引っ張り合うより、
他国の国際空港に負けないハブ空港の強化・整備をすべきです。
市民の身近な行政サービス(教育や福祉)といった分野は、
最小単位である現在の市町村で細かく目の届く範囲で行い、
一方、観光・産業といった大きな事業は今の都道府県単位ではなく、より広域な道州が担い、
現在の強大すぎる国の権力に物を申せるだけの力を地方がもつことになり、
権力のパワーバランスも解消できます。
そう考えると、廃止すべきは市ではなく、中途半端な府・県だという考えなので
維新の掲げる都構想とはちょっと意見が違うのです。
もっとも、府と市も統合できないのに、
全国一斉再編などよっぽどのことがあっても困難でしょうが。
いずれにせよ、ただ反対というわけではなく、よく考えた上で一票を投じたわけです。


一方で、これほど自分たちの生活の直結し、身近な事案で、
かつ注目度も、重要度も極めて高い事案でさえも、
有権者の34%の人間が投票行為を破棄するというのはもう愚かとしか言いようがない。
最寄りの投票所へ行って、賛成か反対か一筆書く、
それもこの頃は期日前投票が充実し融通も聞くというのに、
それすらできない、それすら面倒だと思うクズが大阪だけでざっと63万人もいる。
あきれてモノも言えないとはこのことです。