仁川渓谷アドベンチャー 詳細編
日曜日。夜更かしがたたり、起きたのが11:00。
やっぱりちょっと軽く近所のお山行っときますかと思い立つが、
ベランダから降り注ぐギンギンラの日差し。
できれば木立の中か、沢歩きが涼しげでよかろう。
ということで前々からリストアップしていた仁川渓谷に向かうことに決定。
水量がどんなものか、場合によっては途中撤退も大いにありうるが、
まあここ数日雨降っていないから大丈夫でしょう。
といってもある程度濡れるのは覚悟しなければならないので、
カメラは持っていかず写メだけに頼ることにし、
携帯もポッケに入れずに首からかけれるようにする。
そしてザックはプールバッグにして、着替え一式とヘルメットだけ。
沢歩き用のアイテムは残念ながら持っていないので、
速乾性の上下と、先日の火打山でドロドロになった登山靴で。
ちょうど丸洗いするところだったので、沢水で汚れを落としませう。
ブランチを食べて12:30ごろに出動。
1時出発の特急に乗り西北で乗り換えて、仁川に到着。
コンビニでドリンクと補給品を買い込んで13:36に山行スタート。
駅からすぐに仁川沿いに歩き始めるが、その時点でびっくり。
なんと川に結構な水が流れて、ちゃんとした川になっている!
お隣の逆瀬川もそうだが、
枯れっ枯れで乾燥した川底の地肌が丸見えなイメージしかなかったのでちょっと意外。
ひょっとして先日の台風で降った雨の貯水量が思ったより多いのかな。
それにしてもこれでは相当ルートが水に浸かって、難易度が高そうだ…
ずんずん歩いていくと、前方の左手にこんもりとした甲山、
そしてその右側にへばりつくような住宅街が見える。
子供のころから何度もトライした仁川の激坂の一部がここからでも確認できます。
まさに阪神のユイの壁ですな。
↓阪急仁川駅
その激坂も今日はスルーして、さらに川に沿って上がっていくと、
百合野橋に到着します。
このすぐ左手奥には地すべり会館があります。
阪神大震災の際にこの地で深刻な地滑りが発生し、
34名の方がお亡くなりになっています。
盛り土による宅地造成が原因でした。
この辺りは高級そうな住宅が山の際まで続いていますが、
地形的には相当に険しい場所なのだと改めて思い知らさせます。
百合野橋を反対側に渡り、河原へ降りる橋はスルーして
そのまま川上のけもの道を進みます。
すぐに両岸が切り立った峡谷へと姿を変え、
その間を白い泡をまき散らしながら激しく水が流れています。
ほんのわずか入っただけでものすごい山奥に分け入ったかのような錯覚を覚えます。
しばらくけもの道を進んでいくと、川へと降りる場所に差し掛かります。
飛び石を伝って、前進をしていくと、
石積の小さな堰が出てきました。
これは左手側の水が来ていないところに露出している
石積をステップにして越えていきます。
落ちる水のしぶきがかかって涼しい〜。
堰を越えてさらに奥へ進んでいくと、大きな岩がどーんと右手に鎮座しています。
この仁川一帯は、ロッククライミングの古い名所だそうで、
この岩はムーンライト・ロックと呼ばれているそうです。
そこへたどり着くには2度3度と浅瀬や飛び石のある個所を渡っていくのだが、
もうくるぶし辺りまでの浸水は気にならなくなってきました。
このムーンライト・ロックの直下をぐりっと右にカーブしながら奥へ進みます。
大きく右に折れながら、大岩の先へ回り込むと、
いきなり賑やかになります。
なんと、たくさんの大学生くらいの子らが、水遊びに興じているのでした。
どうも、峡谷の上部を伝ってくる巻き道が、
この少し先にある滝の手前まであるらしく、そこを通って
このヒミツの水遊び場にやってきているようでした。
若い子らが水着を着て楽しそうに遊んでいる横を、
ヘルメットを被った重装備のおっさんが、ズブズブと水の中を歩いてきたので
みなからギョっとされます。
ちょっとバツが悪いですなあ。
滝壺の先では落差5mほどの滝があり、直接は登れないので、
いったん左手の岩場をあがります。
そこにも休憩をしているたくさんの子らがいて、
道を開けてもらって、巻き道を伝っていくと、滝の上部に出ました。
滝の上部からはいよいよ両岸の幅も狭まり、渓谷の核心部に突入。
浅瀬といえる浅瀬はもはや見当たらず、
でかい岩がゴロゴロと川に転がっています。
その岩を伝ってできるだけ進んでいきたいのだが、
岩は存分に濡れてツルツルと滑りやすく、
慎重に進まないと水に流されそうな感じ。
数少ない手がかり、足掛かりだけでは前進もままならず、
意を決して水中をジャバジャバ歩かないといけない場面もいよいよ出てきました。
膝下浸水は当たり前で、場所によっては腰元まで浸かるようなところもあり、
もうそこまで達すると、濡れる濡れないはもうどうでもよくなり、
開き直って進めるようになりました。
そうして第1の関門である水門に到達しました。
ここは2段の堰堤になっているのだが、丈が結構あってよじ登れそうにない。
なにより水の勢いが結構あり、直前の滝壺も相当深く、肩くらいまで浸かるほど。
一か所だけ(下の写真の一番手前の子が立っているところ)、
大岩があるのだがそこでさえ腰まで水に浸かる感じ。
事前リサーチではその岩をステップに堰堤をよじ登れとあったのだが、
それはもっと水が少ない時期のことで、このままでは何もかもが水没してしまう…
どうしようか悩んだ末に、手前に沈んでいる枯れ木を伝って、
左手の岩場をよじ登ることにした。
かなり難易度の高いクライミングになるが、最悪落ちても下は水なので死にはしない。
でも携帯も含めてすべて水没することになるので必死で取り掛かります。
枯れ木はかなり不安定で歩くたびにコロコロと動く。
どうにか岩場に到着したら、
まず縦に入った岩の切れ目に右腕を突っ込み、そこを固定して、
左手を左の岩のかなり上の方の手掛かりにどうにかかけ、
そこからまず左足をわずかな段差に押し上げます。
体を持ち上げたら、宙ぶらりんの右足をクラックの先、
水門側の岩のわずかな張り出しにかけます。
これでベタっと岩場に張り付いた状態になり、そこでいったんキープ。
筋肉がピクピクする@@@@@
手を入れ替えるため、力を籠め、左手を外し、
その手をクラックに突っ込んで固定したら右手を自由にさせ、水門側の岩をつかむ。
これで若干の横移動となる。
そうして、左手を目いっぱい踏ん張って、
左足をどうにか右側の岩場に持ってきてあとは岩場を登るだけ。
どうにか水に落ちずに水門をあがることができました。ゼエゼエ。
↓左下の倒木を足掛かりに、ロッククライミングの要領で岩をよじ登る
このちょっとしたクライミングで結構体力を使ってしまったので、
水門の上でしばし休憩。
濡れてもへっちゃらな子らがひょいひょい水門をあがってはダイブするのを見て、
ワシャ一人何をやっとんのやろ〜と思いますが、
難所を抜けれたことにちょっとした満足感もありました。
ここからは深いゴルジュとなり水の流れが速くなります。
川幅もほとんど狭くなり、ズブズブと浸かりながら、進みます。
小さな落差がいくつもあり、そういうスポットでは水の流れがものすごい。
足を入れた瞬間にふらっと流されるような感覚になるので、
踏ん張りながら進みます。
瞬間瞬間が、結構神経を使う場所ばかりで、
ひたすら川の流れと前方の具合を確認しながら、
一歩ずつ立ち止まって、次の足場をどうするかを考える、を繰り返していきます。
川幅いっぱいにで岩場がないところは、よく集中して水中を覗きやると、
うっすらと川底が見え、砂が堆積して浅瀬になっているところと、
流れが速く削られて深くなっているところを見分けられます。
川のできるだけウィークポイントをつきながら、
ずんずん進んでいくと奥に巨大な堰堤が登場しました。
第2の難所、大井滝砂防ダムです。
ゴオオオオオ〜という爆音を上げながら、
豪快に水しぶきを上げております。
ここでしばらく立ち往生しました。
これをどうやって越えていくのか…
必ずどこかに巻き道が存在しているはずなのだが、
それらしいものは見当たらない。
右の切り立った岩場をよく見ると、
頼りないロープの切れ端が千切れてへばりついています。
さらに上部にはハーケンの跡も見える。
しかしここはさすがにロープがないと厳しすぎる。
あまりに危ないのでしばし躊躇し、撤退しようかどうしようかずいぶん悩む。
しばらく考えたのち、上れるだけ登ってみようと思って、
2つめのステップまで上るが、明らかにこれは装備なしで登るようなところじゃない。
靴も濡れて滑るし、これは絶対落ちると思って直登を断念します。
↓大井滝砂防ダム
これで撤退かあと失意のうちにバックしようと思った矢先に、
油断してずるっと足を滑らせ、深みに!
大慌てでリカバリーして、どうにか岩の上に戻ります。
おおおおお、超焦った@@@@@
体は幸いどこも打たずに無事だったのだが、荷物はすべて水没してしまいました。
心配なのは首からかけていた携帯…
見ると電源が落ちてしまっています。
振ってみたりあれこれやってみるとどうにか再起動しました(汗)
でも湿気てしまったせいかボタンが思うように作動しなかったため、
しばらく電源を落として放置することにし、
念のため、ヘルメットの中に放り込むことにしました。
このまま撤退も悔しいと思い、両岸の上部を確認しながら少し戻ると、
左手のちょっとした沢の上部へ足跡があったのでそちらへ進み、
峡谷の上の方まで巻いて、どうにか堰堤を越えることができました。
堰堤の手前で、ちょっとだけ休憩。
靴の中に大量の砂礫が流れ込んで痛かったので、脱いでみると、
こんもりと小石や砂が採れました。火打の泥は流せても、また今度は砂です。
未開封のペットボトルがかろうじて無事だったので、水分補給だけして
あとはしばらく放心。
ん〜思ったよりハードだなあ。
しばし休憩ののち、滝上部を進んでいきます。
もうこの辺りは全く足場がなくて、深みをズバズバと進んでいきます。
そうすると先ほどよりも少し小さめの堰が登場。
右手側に完全に弱り切ったロープがつるしてあり、そこから登ります。
ロープはあまりに頼りがないので、
体を岩に押し付けるようにしながらバランスを保って、どうにかよじ登ります。
ふぃ〜しんど。
ここで今一度携帯をいじったら、どうにか復活しました(汗)
そこを登りきると、河原が広くなり、笹が生い茂る平坦な場所に出ます。
しばらく進むと、千刈ダムから神戸まで続く神戸水道の水道管が上部を横断しています。
右手にはその上へと続く巻き道を確認。なにかあればここまで戻ってこればOK。
ひとまず行けるところまで遡上してみます。
水道管の直下は結構深くて流れも速く慎重に。
倒木を支えにぐいっと川の中央のでかい岩に飛び移る。
そうして何度も流れを行ったり来たりしていると、
前方右手に巨大な岩壁が見えてきました。
仁川のバットレスです。
近くへ行ってみるとクライミング用の穴がいくつも見えました。
真下から見上げるとなかなかの高さ。
↓仁川バットレス
さすがにここは登れないので、それをぐいっと右に旋回しつつ進みます。
このカーブのところは、かなり水深があり、流れも急で
川に入ってあっちこっちルートを探ってみたのですが、
残念ながらここで水量に阻まれてしまいました。
仕方なく先ほどの水道管の巻き道までバックします。
引き返そうとクルリと反転したが、
もう自分がどこを辿ってきたのか全くわかりません。
我ながらえらいところを歩いているなあと時間します。
遡上と違って、引き返すときは流れに押され気味に進むので、
足を取られぬように慎重を期し、どうにか水道管まで戻ってきました。
そこから水道管の管理用の階段を伝っていくと、
下流から続いているけもの道に合流。
そこをずんずん進み、いったん開けるところに出ます。
眼下にはこの渓谷最大の落差のある仁川渓堰堤が見えました。
さすがにあの堰堤を巻ける場所はないので、
どのみちここまでバックしないといけなかったのですが、
せめて堰堤を真下から覗いてみたかったです。
また水の少ない時にリベンジ。
そこをさらに進んで、ずんずん下っていくと、ただっ広い河原に出ました。
そのまんま広河原という場所で、周辺では家族連れが思い思いに憩っています。
先ほどまで、アドベンチャーど真ん中だった景色とは全く雰囲気が変わりました。
奥には甲山がポコンと張り出して、なんとものどか。
水遊びに興じる子供らや家族連れの間を、
全身ずぶ濡れのまるで帰還兵のようなおっさんが無言で通過します。
レストハウスを過ぎ、五ヶ池ピクニックロードの橋の下を進み、
再び野生の世界へと戻ります。
いくつか沢を行ったり来たりしつつ進んでいくと、前方に大きな堰が。
そこで、右手側から回り込んで巻き道を発見。
この神呪堰堤は3連になっていて、なかなかの見応えです。
そこからはしばらく川の流れとさようならして、
ブッシュの中を突き進む巻き道を進む。
ちょうど顔の位置にたくさん蜘蛛の巣があって、ベタベタとくっつく!
ああ、先週顔を腫らしたばっかりなのに!
小さな簡易の橋を渡ってしばらくのところで、
道が右手に分かれているところがあり、その先の急峻なガレ場を登ると、
遠く千里の方まで一望できました。
再び元の道に戻り進んでいくと、広い沢へ降りることができます。
少し戻ると、神呪第2堰堤がありました。
そこからは水が引いた広い沢を歩いていくことにします。
この頃からもう、日がずいぶん沈んできました。
本当はこの先も川は続くのですが(宝殿の直下辺りが源流)、
そろそろ帰路を考えねばなりません。
地図を取り出して、あれこれ思案をして、
北山貯水池に出てバスを拾うのがベストとはじき出してそちらへ向かいます。
最後の徒渡(かちわたり)を渡り切って、少しけもの道を彷徨うと、
甲山に張り巡らされた自然道に出ます。
そこを少し進んでいくと、急に前方が開けて、北山貯水池に出ました。
これで今回の山行は終了です。乙カレ〜。
ひとまずバス停で確認すると東回りのほうが
もう10分ほどで到着というベストタイミング。
服は歩いているうちにずいぶん乾いていたのだが、
靴にたまった水や砂がたまらんので、靴を脱いで乾かします。
生乾きのままで申し訳ないが、バスに乗り込み、
そのまま終点の阪神西宮駅へ。
そこからまっすぐ梅田に出て帰宅。
さすがにこの泥っ泥、ベチャベチャで寄り道はできないワ。
帰宅後、真っ先にシャワーを浴びて冷えたビール。最高♪
ということで、ちょっとご近所で沢歩きという軽い気分はどこへやら
がっつり本格的な沢歩きになりましたとさ。