記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

裏銀座縦走 3日目 油断大敵の巻

4時ごろ、お隣の学生4人組さんが準備を始める音が聞こえる。
自分はこの日は下山のみでのんびりできるので、
まどろみながらゆっくり起きる。
5時ごろ起床し、もろもろ準備。
少しだけ外に出てみると今日もすっきり晴れている。
赤牛へ向かうお父さんにお別れをして、5時30に出発する。


↓最終日の朝日


↓さらば双六


小屋の人にお礼を言っていよいよ家路につきます。
小屋の裏からテン場を抜け、緑の中を縫う木道を進みます。
しばらくすると前方にはきれいに笠ヶ岳が見えます。
樅沢岳の南の縁へのぼりが始まります。
ゴツゴツした岩が転がっていますが、整備されているので問題なし。
たくさんの先行者の方々をパスしていきます。
小さなピークを登って降りて、崩落地の横をかすめて、どんどん進みます。


↓振り返って


↓左が乗鞍、右が笠ヶ岳(山頂は見えず)


↓眼下の流れまで下ります


途中で、元祖山ガールの大集団につかまり、停滞を余儀なくされます。
ちょうどブッシュが深い区間で、
追い抜きもすれ違いもできない狭いところが続き、ダラダラと進みます。
少し広いところに出ても、一向に道を譲ってくれない感じ、
というより自分のことでいっぱいで周りが見えてないようで、それがしばらく続きます。
同じくトラフィックにつかまっていたもう一方が業を煮やして、
「先行かせてください!」と声をかけ、ようやく前が空き、
それに乗じて「自分もお願いします!」と声をかけて先行します。
わずかに雪渓が残っていてその上を過ぎ、そこから下りに入ります。
下りの先に、ベンチが見え、ちょうど別の元祖山ガール3人ほどが出発しようと
登山道へ向かおうとしていたのが見え、さっきのこともあって、
道が詰まる前にと焦りながら、慌ててそちらへ進みます。
それが間違いの始まりでした。
少し上りがあって、小高いピークに達します。
そこからはるか下に標識の立った乗越が見え、
あそこから鏡平に降りるのだとばかり思い込んで、さらに進みます。
そこから、朽ちかけた梯子が連続する場所や、斜面ギリギリのガレ場など、
おそらくメジャーなルートににつかわしくない少し難易度の高い区間が続きます。
前後の登山客も急にいなくなり、ちょっと不安に。
とりあえず直下に見えている標識のある乗越まで行こうと下ります。
そうして乗越まで来ると、その標識には「←笠ヶ岳・弓折岳→」とあるだけで、
肝心の鏡平への案内はありませんでした。
ここから先急登となり、これは明らかに笠ヶ岳への取り付き。
かといって道を間違えた記憶もなく、どうしよう…
乗越から谷方面へけもの道のようなものがあり、そこをしばらく進んでいったのだが、
明らかに最近人が通った感じでもなく、だんだんかなり険しくなってきたため、
乗越へ引き返します。
これはきっと何か自分の中で勘違いをしているに違いない。
一度落ち着いて地図を見て位置関係を確認した方がよいと、
ナゾの乗越で腰を下ろします。
まずこの標識では、「弓折岳→」とある。でも地図を見れば、
鏡平に降りる道は明らかに弓折岳の手前で分岐している。
ということは、自分は弓折岳を乗り越えてオーバーランをしていることになる。
実際乗越からの沢の向こう側に鏡平の高台の一部が見えている。
そこにちょうどさっきパスしたテント装備を抱えた学生の子が降りてきたので
道を聞いてみたら、やっぱり道を間違えていることが確定。
大急ぎで来た道を戻ります。
よりにもよって具合の悪い区間を間違えたもので、
結構体力削られてしまいました。


↓ん?やけに険しい道だなあ…


↓大間違いで大ノマ乗越まで来てしまった…


↓弓折乗越に復帰


弓折乗越にどうにか復帰した時点で30分も時間をロスしてしまいました。
そこから一度パスした人たちをもう一度パスし直ししながら、ずんずん進みます。
中弓折の先から再び結構な急坂を下り始め、そこでタイミング悪いことに
さっきの元祖山ガールの大集団につかまります…
今度は気づいてもらえてすんなりと道を譲っていただけました。
そうしてどうにかこうにか鏡平小屋にとうちゃこ。
時刻は7:25。
朝ごはんを食べておらず、思いがけず体力を消費したのでちょっと休憩。
昨日同部屋の人がおすすめされていたかき氷をいただきます。
レモン味をチョイスし、練乳もたっぷりかけていただきました。
うんま!
甘味最高♪
一気に疲れが吹き飛びます。
合わせてレーションも補給しておいて、体力復活し20分ほどでリスタート。


↓鏡平小屋


↓名物のかき氷!バリウマ!


少しばかり木道を歩いていくと、きれいな池が現れます。
そこで槍ヶ岳を撮ってまたすぐに出発。
ゴツゴツとした岩が転がる登山道をぴょんぴょん進みます。
最初は結構平坦で進んでいき、しばらくしてシシウドヶ原に到着。
時刻は8時ジャスト。
見上げるとさっき間違ってたどり着いた大ノマ乗越が見えます。
これくらいの距離だったら無理してけもの道をここまで下ってきてもよかったかな。


↓鏡平


↓シシウドヶ原より。さっき間違ってあそこの乗越まで行ってしまった


そこからは広大な秩父沢をずんずんと下っていきます。
ブッシュに覆われた岩だらけの道ですが、テンポよく下っていきます。
追い抜きもすれ違いもここからは結構発生します。
途中何度か沢を渡るところがあり、もう残りわずかなところで事件発生。
沢を渡るのに対岸の人が道を譲ってくれて待っていただき、
そちらに「ありがとう!お気をつけて!」と手を振って渡りきった瞬間に
うっかり足場を確認せずに左足を乗せた大岩がぐらりと動いて、
いきなりバランスを崩して転倒。
気づいたら仰向けでした。
仰向けになったことで、ザックがエアバッグの代わりとなり、
頭を打たずに済みましたが、その代わりに右ひざと右手を強打してしまいます。
ひっくり返った陸ガメのようにしばらく仰向けで動けないままでいると、
先ほどのお二人が大丈夫ですかと声をかけていただく。
とりあえず「大丈夫です」と答えて、先へ行ってもらいました。
最初強打した右ひざに力が全く入らず、
もしかして折れたか膝の皿が割れたかして歩けないかもとビビったが、
ちょうど石が絶妙なところに入ったみたいで、シビれていただけでした。
足を動かすと多少痛いですが、まあなんとか歩けます。
問題は右手。中指が明らかに腫れてしまいました。
動かすと関節は曲げれるので折れていないようです。
そして掌底部分が紫色になって腫れています。
手首にも相当衝撃があったようで、一応曲げることは可能ですが、かなり痛みが走ります。
ただ幸いに致命的なダメージは受けずに済んだので、
とりあえず右手に負担をかけないように気を付けてリスタートします。


秩父沢をずんずん下る


↓ゴツゴツした岩で歩きにくい


最初は右足の痛みをかばっていたのだが、その痛みにも慣れ、
再び元のペースに戻します。
しかし、「お気をつけて〜」と声をかけながら自分が転倒するのだから、ざまぁないです。
まあ笑い話で済んだからいいのですが。
それにしてもまさかあんな大したところじゃないところでこんな目に遭うなんて。
あれが切り立った稜線や、ピーク付近、岩礁地帯などだったら絶対に起こらないミス。
あともう2時間で山道終了で難所もないという、どこかに油断があったんでしょうねえ。
オーラス雪渓をまたいでいくと、ようやく小池新道入口の橋まで下ってきました。
見上げると、大ノマ岳と弓折岳がずいぶん高いところにあります。
この鏡平〜ワサビ平までの区間は下りでも結構長いなあと感じました。


↓小池新道入口まで降りてきました


ここからは整備された林道歩き。ちょいと10分程度歩いていくと
左手にワサビ平小屋があります。時刻は9時ジャスト。
さすがにちょっと休息を入れます。
小屋前の水槽に冷やされたジュースの中からファンタグレープを発見!
炭酸最高♪
とりあえずレーションを2つ3つ放り込み、すぐにリスタートします。


↓ワサビ平小屋


ここからは長くだらだらとした林道歩き。
上高地から徳沢までのハイウェイと比べても単調でかなり味気ない感じです。
途中、三大急登よりもえぐいと噂の笠新道の入り口を横目に、
どんどん先行者をパスしていきます。
頭上にはすばらしく澄み切った晴れ間が顔をのぞかせ、
これはもう1日休みがあったらなおよかったのになあとだんだん名残惜しさが増していきます。
山道の途中、横の山肌には岩孔がいくつも開いていて
そこからひんやりとした空気が流れて気持ち良かった。
そろそろハイペースで歩き続けて足が痛くなってきましたが、最後まで維持して、
登山口のゲートをくぐります。


↓最強と称される笠新道


↓名残惜しい…


↓山道終了


そうして新穂高ロープウェイの入口へと向かうと、路線バスがすでに見えています。
さすがに下山は昼以降だろうと思っていたので、
午前のバスの出発時刻は調べていません。
でもすでにバスがいるということは出発間近だろうと、
大慌てでダッシュして橋を渡ります。
で、なんとか間に合い、運転手さんに何時に出ますか!?と聞くと、
「あと25秒ででますよ」と。何たる!
ドリンクだけ買ってきてもいいですかとお願いすると、ダッシュで買ってきてと言われ、
大急ぎで自販機へ向かい冷たいお茶をゲットし、バスに乗り込みます。
毎度毎度乗り継ぎはギリギリの攻防なワタクシですが、
ここまでドンピシャもなかなかありません。
でもこれで1時間無駄に待たされることもなく、
最後までペースを落とさずに歩いた甲斐があります。
普通下りでも7時間はかかるところを、
オーバーランの30分も含めて4.5時間でまとめることができました。
登山は速さではないけど、下山は速さです。


新穂高に到着。あっ!バス着てる!


バスに乗り込むと、前日、最初相部屋になるはずだった方がいて、
その方は4:30出発だったのだけど、
一緒のバスになってかなりびっくりされておりました。
その方とは平湯のバスターミナルでお別れ。
そこからは外国人観光客がどっさり。
ドイツ語にフランス語にまるでここはスイスかどこかなのかと思うほど
外国人だらけです。
で、ここにも無礼な中国人観光客が大挙していて、
トランクをいくつも座席にボンボンと放り込んで大変でした。
高山のバスターミナルに到着したのが11:45。
とにかく下界が暑い!なんじゃこの暑さ!
まずは何より帰りの足を確保ということで、工事中で小ぢんまりしてしまった高山駅へ。
さすがにまだ昼イチの便(しかも月曜)なので指定席はまだ余裕があって、問題なくゲット。
でも土日の夕方の便などはグリーン指定すらも売り切れになることもあるので
高山発の特急便は要注意です。
12:33発までまだ時間があるので、その間にちゃっとみやげ物色と昼飯確保。
商店街の入り口まで戻ってみると、よさげな店があり、テイクアウトもあったので
そこで焼そばをゲット。
売店でビールもしっかり購入して、いざ名古屋へ。


↓名代ちとせ



↓焼そば弁当


帰りは快適化と思いきや
下呂から乗ってきた馬鹿男子学生4人組が下衆なバカ騒ぎをしていて十分に眠れず。
名古屋で乗り換えするといつも、山の中から大都会に戻ってきたという実感がわきます。
この日は相当暑くて、プラットホームで待っているだけも目が回ります。
15:11発のひかりに乗り込み、新大阪着は16時過ぎ。
帰宅してすぐにシャワーを浴びてバタンQ。
とにかく素晴らしすぎた2泊4日の大冒険終了。