神宮に散る 日本シリーズ最終戦
先週は出張だの家の用事だの、かなりどたばたと忙しい一週間でした。
そんな中でも、常にヤキモキと気にかけていたのが、
日本シリーズの行方。
もうね、金満ソフトバンクさん(精いっぱいの負け惜しみ)の選手層の分厚さと、
工藤さんの憎たらしいほどの余裕の笑顔に、
わがヤクルトスワローズはもうなす術もないほど圧倒されておりました。
それが山田哲人のもはや伝説となった3連発で一矢報い、
ひょっとしたら神宮ではやれるんじゃないかと
わずかな希望が見えたのもつかの間、
あっさりと王手をかけられて万事休す。
それは当然そうで、普通3本もホームラン撃てば余裕綽々のはずが
あの試合でも8回まで1点差ゲームだったのですからね。
そんなこんなで毎晩、仕事を早めに切り上げてTV越しに応援していたのだが
試合終わりにはもう、こちらも疲労困憊、心神喪失。
そして泣いても笑っても今シーズン本拠地最終となる木曜に
居てもたってもいられずに神宮へとはせ参じました。
もし勝てば勝ったで当然うれしいし、
負けたら負けたで、日本一が決まる瞬間に立ち会えるということで
ダメージは比較的少ないし、
まああまり過度な期待せずに、終戦を見届けに行くという覚悟。
そうしていざ神宮球場へ足を踏み入れます。
ぎりぎりに遠征を決めたので、チケットは当然ほぼ完売。
残っていたのが3塁側内野席。
こちらにはおびただしい数のソフトバンクファンで埋め尽くされていて
まるでヤフオクドーム?あるいはあのイエローはもしかして虎党?
と見間違うほどの状況。
応援するタイミングも違えば、
同じプレーに対してもリアクションが真逆なので、
ヒジョーに応援しづらかったですが負けていられません!
この日の先発は、小さな大巨人ことエースの石川さん。
前日、館山兄さんが打ち込まれててしまいましたし、
後がない試合で彼しか任せられる人はいません。
今年、投球規定回数をクリアしている先発投手の中で
断トツの被弾率なので、強力鷹軍団は本当に恐怖ですが、
とにかく5回まで何とか頑張って!
↓小さな巨人。頑張れ!
初回、先頭の川島に2ベースを打たれいきなりの大ピンチでしたが
どうにかこらえ、初回の攻撃。
しかしあっさりと3者凡退。
1番上田のいい当たりもセカンドライナー。
首位打者川端も日本シリーズ絶不調を引きずったまま。
期待の山田もあの3発以来、どうも調子が狂ってしまったのか、
三振が多くなってきている…
うむ〜今日もエンジンがかかる様子がない。
2回は無難に3者凡退に収め、打点王・畠山!
しかしいつみてもあの打席でのフォームはすごい。
よくあれで遠くへ飛ばせると感じるが、軸足が相当しっかりしているんだろう。
かなり強い当たりが3塁線に飛ぶが、松田にナイスキャッチされてしまう。
バレ、雄平がヒットで2死1,3塁!
しかしキャッチー中村が凡退でみすみす先制のチャンスを逃す。
今年の優勝の一番の原動力は、正捕手中村の大成長の守備力とリード力なのだが、
ちょっとあまりにも打てなさすぎる…
元々打てないわけじゃないはずなんだけどなあ
そこが今年の大反省として来年はそこもベースアップしてほしい!
少なくともより偉大な捕手となるには、
谷繁タイプではなく古田や矢野を目指してほしい。
次の3回は、石川が圧巻のピッチングで3者三振に切っておろし、
その流れで裏の攻撃では再びチャンス到来!
上田がフォアボールを選び、川端は真中イズムを継続してヒッティングで
1死1,2塁。
ここで期待の山田と畠山だったのだが、ここであっさり打ち取られ、
みすみすチャンスを逃す。
たらればを言っても仕方がないが、
もしここで1点でも得点していればまた違ったのだが…
やはり野球はリズムや試合の流れがとても大事なわけで、
このチャンスを生かせなかったことのしっぺ返しがすぐに用意されてたのである…
先頭の明石が三塁線ぎりぎりへの2ベースヒットで大ピンチ。
ここで迎えるはトリプル柳田。
ここは石川が粘りのピッチングでしのいだのだが、
その油断からなのか、次のイ・デホに手痛い一発を目の前にぶち込まれる。
ポールぎりぎりの打球だったので物言いがつき、試合は一時中断。
自分のいた付近の客は本当に目の前で見えていたので
明らかにホームランだとわかったのだが、
これで試合が10分ほど中断。
審議の結果、やはりホームランとなり、流れは一気にソフトバンク。
中断中に肩を冷やしたせいか、石川は松田にも強烈なヒットを浴びるが
盗塁を中村の強肩が阻止し、どうにかピンチを脱する。
しかし、あまりにも痛すぎる2失点…
↓のはずが、イ・デホに痛恨の一発…
4回裏は、今浪がヒットを放つものの、
下位打線は打席での粘りが全くなく、
ポンポンと数球で打ち取られてしまって恐ろしく攻撃の時間が少ない。
打ちあぐねているスタンリッジを早く引きずりおろすには
打席でいやらしく粘って粘って球数を投げさせるのもありだと思うのだが、
初球であっさりポップフライを上げてしまって全く駄目。
特に雄平よ…
そして悪い流れはやはり鬼門の5回。
先発の石川がこらえきれない。
先頭の今浪に2ベースを打たれ、
ピッチャーのスタンにはあっさりフォアボールを与えたところで無念の降板…
むう、今シリーズ、全く先発が試合を作れてない。
今のヤクルトの最大の問題はやはりここ。来季こそしっかり頼むぞ!
ここで前日も見事な火消しをして好調の石山投入!
だが…
代わりばなの川島の3塁線へのゴロを川端がまさかのファンブル!
ゲッツーで終了のはずが、1死満塁の大ピンチ。
ここでミスしたらいかん!
で、案の定、次の明石のヒットで3点目を献上。
引き続き、満塁から恐怖の柳田!
結果はボテボテのゴロながら、
フルスイングのおかげで打球が大きく跳ね上がり、その間にゲッツーならずで
さらに駄目押しに近い4点目。
さっきの回の大チャンスで1点もあげれずにあっさり打ち取られた山田と畠山、
それに引き換え、絶不調でもやらないといけない場面では最低限の仕事をこなす柳田。
この差が如実に出た中盤戦でした。
その裏、ピッチャーの代打で森岡を送り出すも、
不発で三者凡退でここもあっさり。
6回からは自慢の中継ぎ継投にスイッチし、まずは秋吉。
6回、7回と完璧にシャットアウト。さすがです!
一方攻撃陣は、畠がフォアボールを選んで出塁するもバレが最悪のゲッツー内野ゴロ。
もうねえ、おしまいよ…
7回には、ピッチャー秋吉に代えて、ヤクルト一筋ユウイチが現役最後の打席へ。
苦労人が最後にたどり着いた、バットを極限まで短く持って、
とにかくチームヒッティングに徹する姿。
結果はセカンドゴロで3アウトチェンジでしたが、いやあ、胸アツの瞬間。
8回は盤石の継投でローガン・オンドルセク。
のはずが、松田にデッドボールを与え、中村晃にはセーフティバントを決められ、
全然ヤヴァイ…
しかしその後ろの今宮と鶴岡を打ち取りどうにか0点で切り抜ける。
いやあ、せめてここくらいは安心して見させてよ。
8回、相手はバリオス投入。
こちらは1番からの好打順。裏を返せば、もうここしかない…
しかしそのラストチャンスも、赤子の手をひねるごとくあっさりジ・エンド。
さすがに畠!ここでの見逃し三振はだめ〜!
9回は守護神バーネットできっちり締めたい。
しかし、代わりばな、代打・本多にいきなりヒットを打たれ、
おまけに絶不調だった柳田にタイムリーを浴びて終戦…
最後の9回の攻撃も、完璧すぎるサファテに勝機なし。
ラスト、今年一年悩みに悩みぬいた雄平が打席に。
もう勝ち負けはついている。
最後はあれこれ考えず、とにかく悔いなく振れと念を送る。
そうして高めのボールをフルスイングし、三振ゲームセット。
終わりました。この試合はもう全く勝てる気がしませんでしたね。
完敗です。
雄平のバットが空を切った瞬間、
3塁ベンチからソフトバンクの面々がマウンドへ走り込み
歓喜の瞬間。
白戸家のお父さん、工藤監督、王監督が宙を舞う!
王さんはちょっと胴上げはヒヤヒヤします。
ご高齢なのだから丁寧にお願いしますよ。
日本一の興奮と熱気が冷めやらぬ中、
ホームベース付近では大勢の報道陣が集まりだし、
優勝監督インタビューがスタート。
いやあ、工藤さんええ顔です。
さすが現役時代から優勝請負人だけあって、本当にお立ち台が様になりすぎ。
いったいどれだけのタイトルを持って帰れば満足するのか。
それくらい常勝という言葉が憎らしいほど似合います。
自分がヤクルトファンになった90年代のころから、
野村IC野球に対する森常勝軍団の絶対的エースとして
工藤さんは大きな壁として常にスワローズの前に立ちはだかってきました。
よくよく考えれば、現在の日本プロ野球を支えている監督・コーチ陣の多くが
当時のヤクルトvs西武の黄金時代に現役選手だった人たちばかりというのは
本当に感慨深いものがありますね。
今工藤さんの下についているのが飯田さんというのも因果なものを感じます。
今回は本当にソフトバンクには完膚なきまでにやられました。
はっきりと実力の差、経験の差、大負けです。
でもこれで諦める必要はないのです。
93年にヤクルトが日本一を決めた時もそうでした。
その前年に王者西武ライオンズにコテンパンにやられた、その悔しさが原動力となりました。
ベンチの前でソフトバンクの面々の歓喜の輪を一列に整列をして見守り続ける
監督・コーチ・選手にはすでにメラメラと燃え盛るものが芽生えているように感じました。
来年こそ掴みきれなかった日本一のフラッグを手にするためにも、
しっかりとこの光景を目に焼き付けてほしいと思いました。
そうして、準備が整い、セレモニーがスタート。
日本一のペナントが工藤監督に授与されると、
チーム関係なく温かな拍手が湧きました。
本当に一番強かった者たちに対する純粋な祝福の歓声が
球場全体を包み込んで、本当に素晴らしい時間と空間。
そして、シリーズのMVPは、この日も先制の2ランを放ったイ・デホ選手。
間近で見ると本当にアスリートかというくらいものすごいでかい体格ですが
もう打席に入った時の威圧感というか、打ちそうな予感を醸し出す恐ろしさはさすがでした。
敢闘賞には、明石、バンデンハーク、武田、そしてわがスワローズからは山田が選出。
山田はやはりあの3連発が本当に記憶に残る大仕事となりました。
あの1戦で勝てていなければ、今日この試合もなかったわけで本当に感謝感謝。
直接ではありませんが、実は山田は同じ学園の後輩にあたるので、
それはそれで誇らしく感じます。
シーズンのトリプル達成と、ホームラン王&盗塁王という輝かしい成績も、
今年1年だけでは意味がありません。
来年もこの悔しさをバネに球史に残る名選手になってほしいと思います。
セレモニーが終わると、ソフトバンクの一団の終わらない歓喜の輪。
そして3塁側に向かって少しずつその輪が広がっていきます。
一方スワローズでも、別の歓喜の輪が広がりました。
一塁側外野席に向かってファンへの挨拶があり、その後、
この試合を持って引退するユウイチの胴上げが始まりました。
この光景は本当に胸が熱くなる思いで、ファンの中には号泣する人たちも多数。
こういう場面を見ると、本当にヤクルトスワローズというチームが
いかにアットホームで選手もファンもみんなが愛されているいいチームだなあと実感します。
コーチの伊藤智や館山を引き合いに出すまでもなく、
長い故障にさいなまれる選手、成績が伸び悩む選手でも辛抱強く待ち、使い続ける。
FA移籍やメジャー挑戦する選手は温かく送り出す。
そしてセリーグを制覇した時の真中さんの一言。
若松さんへのリスペクトに満ちていました。
こういう優しさは勝負の世界では本当はあかんのでしょうけど、
うちはこれが強みなんです。
そうして苦労人のユウイチをみんなで送り出したのち、さらなる感動がありました。
なんと、3塁側で盛り上がっているソフトバンクの輪の中から、
一人こちらへと歩いてきます。
よく見ると、去年までの同志・川島慶三ではないですか!
みんなにごめんなさいポーズで挨拶し、そこで川島コール。
そこに五十嵐、そして飯田コーチまでが集まって
ユウイチにねぎらいの言葉をかけ抱擁を交わします。
これは本当に感動的でした。
↓ユウイチ!
それから一人一人クラブハウスへ戻る選手たちに、ねぎらいの言葉をかけます。
正直、今年リーグ優勝なんて夢にも思ってませんでした。
日本シリーズで戦えるなんて思ってませんでした。
日本一はまだまだ遠い遠い先にありますが、
でも少なくとも夢を見させてもらえることはできました。
ありがたいですね。
選手一人一人にありがとうを言いたいし、
真中監督をはじめ、スタッフ・コーチに感謝とご苦労様の気持ちでいっぱいです。
あと、ツバ九郎もね!(今年はFAしないでよ)
ということで、やっぱり神宮行けてよかったなあと。