記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

雨、地獄谷、再び

季節外れの嵐が冷たい雨を降らす。
そんな夜にはふらりと路地裏へ。
ということで今宵もまた地獄谷の奥底へと落ちてゆきます。
雨のせいか、あるいは週の真ん中だからか
スナックから漏れ出る歌声も、酔っぱらいの陽気なしゃべり声もなく
ひっそり閑。



狭い路地を折れて折れて、再び「ゆるり」さんへ。
ちょうどご主人が2Fの予約客のための仕込中。
「入ってよろし?」「どうぞどうぞ」
促されるまま、狭いカウンターに腰を落ち着かせる。



まずは一杯と生。
カウンターの上には、これから2Fに供されるであろう旨そうなチャーシュー。
ご主人が朝から自宅で炊いたそうで、その見事な照りに思わず生唾ごっくん。
「これいただいてよろし?」「どうぞどうぞ」



ご主人は地酒にも相当詳しく、おすすめの酒の話や、
先日の天満の呑み放題の話とか。
昭和な大衆食堂マニアでもあり、いろいろ耳寄りなお勧め情報もいただく。
ちょうど先日話題に上がっていた「小川下」さん、すでに復活されたそうだ。
と、目の前で、季節外れのカツオのたたきが見事に皿に盛りつけられてゆく。
もともと「ゆるり」さんは、移転前の野田の高架下で鹿児島料理のお店で、
このカツオも枕崎の生カツオを仕入れて、家でタタキにしてきたそう。
「これも…」「どうぞどうぞ」
と、一番旨い部分を切り分けていただく。すみませんねえ。
鹿児島特有のちょっと甘めの醤油ダレとたっぷりの薬味を絡めて放り込む。
カツオ特有のねっとりとした食感がたまらない。
すぐさま酒を注文する。
せっかくなので、この店のデフォである灘の酒「大黒正宗」のしぼりたてを。
うん、相性バッチリ。
ごちそうさん



そのまま帰るのも忍びないということで、2軒目「地獄谷冥土バー」へ。
冥土と言ってもメイドではありません。
この地獄谷という奈落にオアシスを見出した
愛すべき中年オヤジが集結して開いた隠れ家的禁煙BAR。
たった9平米の狭い狭い店内には所狭しと愛飲する酒が陳列する。
「冥土の土産にハイボール」を合言葉に、スコッチ・バーボンがずらり。
先にいらしたもう一方のお客さんとともに、
つかず離れず絶妙の間合いでしっぽり。
ああ、落ち着きますなあ。




と、地獄の片隅で極楽モードに入っているところを
奥さんから帰れコールがあり、現実に戻って襟を正して帰宅。