記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

Music life にほんのうた

前回に引き続き、日本の歌を。
今回は故郷を想う心を歌った曲を2曲。


故郷という言葉は、そもそも遠い距離感を帯びていますね。
つまり、生まれ育った土地に自分はすでにおらず、
はるか遠いところからの視点から語られた言葉ということ。
その距離が、人に様々な想いを抱かせるのです。
24時間いつでもどこでも繋がっているというのは
便利なのかもしれませんが、
心の豊かさという点ではやはりどうなのか。
距離とか間とか、競争激しい現代社会では
コストとしてしか勘定されないようなもの、
実は大事なものだと思います。
そして、ネットワークが発達し、
もはや場所や土地に縛られることから解放されつつある
現代社会においてでも、
ゲニウスロキ(地霊)は間違いなく存在している。
動物に帰巣本能や縄張り意識があるのとまったく同じで
人間も土地に縛られ、土地に根差しながら生きている。
それはもう間違いのないことだと思います。


さて、本題。
まず1曲目はもはや説明不要、
日本人なら誰もが知っている『ふるさと』。
とても美しい曲ですね。


↓ふるさと


【ふるさと】
作詞:高野辰之/作曲:岡野貞一


兎追いし彼の山
小鮒釣りし彼の川
夢は今も巡りて
忘れ難き故郷


如何にいます父母
恙無しや友がき
雨に風につけても
思い出づる故郷


志を果たして
いつの日にか帰らん
山は青き故郷
水は清き故郷


2曲目は『椰子の実』。
愛知の伊良湖に滞在していた柳田國男
浜に流れ着いた椰子の実の話を島崎藤村に話し、
藤村がその話を気に入り創作したもの。
敬愛する濱口祐自さんのレパートリーの中で、
数少ない歌う曲で、自分もぜひ弾いてみたいと思っていた曲です。
胸にジーンと響きますね。


↓椰子の実


「椰子の実」
作詞:島崎藤村/作曲:田中寅二


名も知らぬ 遠き島より
流れ寄る 椰子の実一つ
故郷(ふるさと)の岸を 離れて
汝(なれ)はそも 波に幾月(いくつき)


旧(もと)の木は 生(お)いや茂れる
枝はなお 影をやなせる
われもまた 渚(なぎさ)を枕
孤身(ひとりみ)の 浮寝(うきね)の旅ぞ

 
実をとりて 胸にあつれば
新(あらた)なり 流離(りゅうり)の憂(うれい)
海の日の 沈むを見れば
激(たぎ)り落つ 異郷(いきょう)の涙


思いやる 八重(やえ)の汐々(しおじお)
いずれの日にか 国に帰らん