記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

伊吹山ナイトハイク

この週末は金曜日に仕事の締め切りがあって夏休みを絡められないのと
日曜日にはPTAのふれあいプールが入っているので、
実質土曜日しか自由がない。
1日では遠征は無理だし、
かといってもはやこの酷暑では近場の低山は地獄でしかない。
でもお山にはいきたいしなあということで、
いろいろ検討した結果、
伊吹山ナイトハイクを決行!


金曜日の仕事終わりに速攻家に帰って支度をし、
せっかくなら日の出に間に合うようにしたいので
念のため終電の1本前の米原行き新快速に乗る。
なかなか混雑していたが京都駅から座れて仮眠をとる。
22:30に米原に到着し乗り換え。
予定通り22:47に近江長岡駅に到着。


↓JR近江長岡駅


同じ駅で降りた人たちは、みなお迎えが来ていて、
散り散りに車が発進していくと、
周囲は人っ子一人いなくなり、真っ暗闇と静寂。
駅前の通りに出て、右手に進んでいく。
歩道をとぼとぼ歩いていくと、
いきなり前方から轟音が鳴り、
新幹線の鋭い閃光が右から左へ刺す。
高架下をくぐった先の村木の交差点で左折し、
県道551号で集落の間を抜ける。
高番の交差点でR365をまたいで、さらに先へ。
前方に大きな伊吹山の山影が黒く浮き上がっているのが迫ってくる。
お天気は良さそうだ。
セメント工場から延びている坑道の連なりをくぐり、
上野の交差点で左折し、
ファミマでドリンクと朝ご飯を調達。
支度を済ませて23:55に登山口に到着。


↓ここを左折


↓高番


日付変わったタイミングでさっそく山歩きスタート。
1合目までは深い森の中を進む区間なので、特に暗い。
ヘッデンのほかに、チャリのビッグライトを手持ちように抜いてきたので
2灯構えで行きます。
あと熊鈴もしっかり装着。
最近ここらでも出没するとかしないとか言うし、
夜間の方が確立が上がるので万全を期す。
歩き始め、足元はつるつるですべりやすい石に、なぜか笹の葉が散乱している。
グリップが悪い路面なのか、それともそろそろ靴底が限界なのか
最近は足元がおぼつかないなあ。
真っ暗闇の中をえっほえっほと進んでいると、
対向からトレイルランナーが1人、足早に降りてきてご挨拶。
あちらも夜間の涼しいうちにトレーニングかな?
あまり時間の感覚もなく、黙々と前進。
しばらくして道が滑らかになったなあと思ったら
周囲が開けて1合目に到着。


↓0時ジャストに登山口


↓1合目


1合目からは周囲が開けた旧スキー場のゲレンデを進む。
前回はもっと草が伸びていない時期だったのでほぼ直登して
あまりの急登にヘロヘロになってしまいましたが、
今回は程よいジグザグに草を刈ったトレイルが設けられているので
それほどしんどい思いをせずに2合目へ。
夜中だと直射日光もなく、気温も低くて快適。
この夜はそよそよと心地よい風が山頂から吹いていて、
ほとんど汗もかかずに来れました。
これが昼間だったら完全に地獄でしょう。
振り返ると長浜や湖東の町の夜景が少しずつ見えてきました。
こんなに深夜で、みな寝静まっていても
人間世界はこれほどに光にあふれている。
文明っていろんな意味ですごいなあ。


↓じわり夜景


↓2合目


2合目から少し進むと、その先再び森の中へ。
途中でラジオをつけた年配の単独者をパスします。
さらに先にもいくつかライトが見えるので、
同じようにナイトハイクしている人が結構いるようです。
3合目でトイレ休憩。
時刻は1時少し前。
早く登頂しても日の出まで時間が余るだけなので
できるだけゆっくり歩いてきたつもりなのですが
暑さもなくむしろ昼間よりも順調に登ってきてしまって
これでは3時には着いてしまうゾ…
やはり最終電車で十分だったか。


↓じょじょに高度を上げる


↓3合目


時間調整で少しベンチで滞在して再び歩き出す。
ゲレンデの上部の轍を進み、ブロックのある所が4合目。
そこから再び森の中へ。
岩がゴロゴロしているところもあるので
躓かないように進む。
途中で年配のご夫婦がいらしてご挨拶をしてパス。
そうして中間地点である5合目に到着。


↓4合目


↓5合目


5合目の小屋前のベンチで再び時間調整。
ここまでくると結構風が強く、
じっとしていると寒いのでウェアをもう1枚羽織る。
これは山頂で長居したら結構寒そうだ…
かといってこんな吹きさらしでずっと待機するにも限界があるし
1:30になって、
トレイルランナーが下から上がってきたタイミングでリスタート。


昼間ならここから山頂まで大原っぱをジグザグに行く
登山道が見えるのだが、さすがに夜中には目の前に
でーんと黒い塊があるだけ。
よーく見るといくつか灯りが動いているのが見えます。
同志の存在は暗闇ではとても安心しますね。
歩き始めはそれほど斜度もなく、サクサクと進む。
6合目にある避難小屋にたどり着くと、
中がかなり盛り上がっているようで
ここで時間調整をして朝日を見ようという人が結構いるようでした。


↓6合目避難小屋


避難小屋を通過した先から
徐々にジグザグは細かくなり、斜度も上がります。
昼間であればほとんど問題がないが、
暗い中ではなかなか前方確認も大変。
時間的には全く余裕なので、
じっくり立ち止まって前方確認しながら登る。
一段ずつステージを上がっていくにつれて
眼下の夜景の豪華さが増していきます。
右手の光の集まっているところが長浜、
左の光が集まっているのが彦根
灯りに縁どられて右上に広がる黒い塊は琵琶湖です。


↓6合目


↓7合目


↓絶景


伊吹山は大半が眺望のよい区間を上がっていくので
うっそうとした森の闇の中を心細く歩くこともなく、
開放感のある夜景を背負いながらなので、
それほど闇にびくびくすることもなく、ナイトハイクにうってつけ。
闇にも慣れ、小気味良くジグザグを上がっていくと、
どうも向かって左手の斜面にちらちらと発光するものがみえる。
明らかに登山道から大きく外れた部分なので、登山者のヘデンではなく、
ひょっとして姫ボタルが舞っているのかなあとワクワクして
そちらの方へライトを当ててみると…
なんと!
おびただしい数の鹿の目が、ライトに反射しているのでした。
少なく見積もっても30頭はいたでしょうか。
こちらの動きに合わせて、一斉に光る眼がこちらを警戒して動き、
さすがに相手は臆病者なので、こちらに向かってくることはないのですが
一斉包囲網を敷かれたようでさすがに不気味でした。
昼間にはほとんど見かけることはないけど、
伊吹山でもこんなにもシカがいるのかと驚愕。


↓おびただしい数の鹿の目が光る


そうこうしているうちに8合目に到着。
時刻は2時を少し回ったところ。
8合目を過ぎると、道は少し急な岩場の連続となる。
滑落とかそういう危険のあるところでは全然ないけど、
なんといっても夜間なので慎重に、
シカのことはシカトして登りに集中する。
途中、9合目なのかな?ベンチの置かれてあるところで
若者3人組が休憩をしていて、挨拶をしてパスしていきます。


↓8合目


引き続き、岩場を細かくジグザグに登っていくと、
ようやく斜度が落ち着き始め、周囲は穏やかな植生となってきました。
そろそろ山頂というときに、
5合目でパスして行ったトレイルランナーさんが早くも下山ですれ違う。
そうして2:22に山頂にとうちゃこ。
相当早くつきすぎてしまいました…
この日の日の出は5:01だから、約2.5hも山頂で待機しないといけません。
せっかく来たのに日の出を見ずにすぐに下山というわけにもいかない。
とりあえず、山頂の日本武尊像のところで記念撮影。
そこから山上を軽く散歩しましたが、
東側の草地にはこれまたおびただしい数の鹿の影が
わんさか動いていて行く気になれず。
山頂は結構風が強く、
ずっと動かずに待機しているとみるみるうちに冷えてきます。
そのうち、さっき9合目でパスした3人組がわいわい登頂してきました。
寒さをしのぐために伊吹山寺の祠が
緊急避難場所としても24時間開放されているのでそちらに入り、
靴を脱いで、地べたに座ってひたすら待機します。
外と比べて、風が当たらないのと、ほのかにお香のぬくもりがあるのだが、
それでもやはり徐々に冷えてくるので、
持っているウェアをすべて着込む。
そして念のために持ってきた貼るカイロで暖を取ります。


↓山頂の日本武尊像とうちゃこ


↓琵琶湖の影がくっきり


なかなか時計の針が進まない中、
うつらうつらと、座り姿勢で仮眠を取り、ひたすら朝を待ちます。
4時前くらいにお一人上がってきたハイカーさんが入ってこられて待機されます。
さらに30分ほど経つと、外がにわかに騒がしくなります。
日の出に合わせてみな登頂してきたようで、
こちらもぼちぼち準備をして祠を出ます。
なかには子供たちもいて、こんな夜中に登ってきたのかと感心したのですが、
よく考えるとドライブウェイまで来るまで上がってきて、
そこで一泊した人たちも結構いたようです。


↓すごい人出


さて、東の空が空は少しずつ明るさを帯び始め、
深い紺色と鈍いオレンジが妖しく混ざり合います。
その下では、気ままに張り出した白い雲海が
気持ちよさそうに山並みを乗越してゆきます。
予想以上に賑わう山上では、みな寒い寒いと言いながらも、
朝日が昇ってくるのを待ちわびる。
空はオレンジから薄いピンク色に微妙に変化ていくのだが、
肝心の朝日は、さらに東の空に厚くかかっている雲にさえぎられて見えない。
この日は残念ながら半熟卵は見れなかったが、
代わりに見事な雲海と、朝焼けを楽しむことができました。
標高1400m弱の伊吹山でこれほどダイナミックな朝が見られるとは
ちょっとうれしい誤算でした。


↓朝焼けと雲海


↓雲海がすごい


↓雲が山肌を乗越してゆく


↓薄ピンクとオレンジのグラデーション


予定時刻の5:01を過ぎても、本丸は全く気配を見せず、
東の空に架かった分厚すぎる雲の壁は居座ったまま。
さらに10分ほど待ちましたが、
これはもう相当上がってこないと無理だろうということで断念しました。
もうすっかり夜は過ぎて、周囲は一気に明るくなりました。
日本武尊像のところで、もう一度明るい状態で撮影。


↓結局日の出は見えず


↓記念撮影


さらに少しだけ寄り道をして、
西登山道から三ツ頭の方へ回って、眼下に広がる琵琶湖を撮る。
眼下の長浜はもちろん、対岸の高島・安曇川の集落、
その後ろにそびえる比良山系と比叡山もばっちり。
大津のビル群まで、まるごと滋賀を切り取ったような絶景でした。
伊吹山には何度も訪れていますが、
これほどクリアに見渡せたのは初めてかも。


↓まるごと滋賀


↓再び記念撮影


山上の人が一世に下山を初めて混む前に、下山を開始します。
枝道を伝って本線に復帰すると、そこからえっほえっほと下ります。
上から何人かトレイルランナーが小走りで降りてくるので
道を譲りながら下っていくと、
逆に下からも続々と登ってくる人もたくさんすれ違うようになってきました。
まだ朝とはいえ、これから一気に気温が上がるだろうから
これから登る人は大変だと思います。
名残惜しく何度も振り返りながら、5合目まで降りてきました。


↓登山道全景


↓シカだらけ


↓7合目付近から振り返って


↓5合目から振り返って


5合目からはひたすらに下り。
続々と登ってくる人にエールを送りながらずんずんと下る。
下れば下るほど登ってくる人の数は増えて、
行き違いも大変になってきます。
そうして6:40に無事上野登山口に下山しました。


↓3合目手前より振り返って


↓無事下山


残念ながらタッチの差で7:36の近江長岡行のバスを逃してしまいましたが
47分に長浜行のバスが出るということだったのでそちらに乗り込みます。
長浜には7:21に到着。
次の新快速まで20分ほどあったのだが、
さすがにこの時間どこも開いておらず、ホームで電車を待つのみ。
すでにこの時間でも下界は暑い!


↓JR長浜駅


7:47発の新快速赤穂行きに乗り込むと、
待ってましたとばかりに眠気が襲ってきて、ZZZ…
気づいたらすでに京都を出ていて、車内はすし詰め状態でした。
9:30には大阪に到着。そろそろ嫁子は音楽教室に向けて移動しているはずなので、
先回りして見事ドッキリ成功♪


思い立って最終に乗れば、翌朝イチには帰宅できるし、
夜間とはいえ危険個所もなく、闇にびくびくするコースでもない。
何より想像以上に素晴らしい朝焼けショーが見れるとあって
夏場の伊吹山のナイトハイクはなかなかいい選択肢になりそうです。


↓山行ルート


<山行スケジュール>
21:05新大阪⇒22:30米原22:38⇒22:47近江長岡駅22:50⇒
23:55伊吹登山口(三之宮神社前)0:00⇒00:17伊吹山一合目(伊吹高原荘)⇒
00:31伊吹山二合目⇒00:50伊吹山三合目⇒01:05伊吹山四合目⇒
01:13伊吹山五合目01:25⇒01:31伊吹山六合目避難小屋⇒
01:46伊吹山七合目⇒02:03伊吹山八合目⇒
02:22日本武尊像(伊吹山)⇒02:25伊吹山05:10⇒
05:50伊吹山五合目⇒06:40伊吹山上野登山口04:47⇒
07:21JR長浜駅07:47⇒9:30JR大阪駅