記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

初八ヶ岳 1日目 至福の赤岳鉱泉

木曜日の祝日。
夕方から支度をして一路、茅野へ。
本当は諏訪にあるレストハウスで安く前ノリを考えていたが、
ぎりぎりまで天気が読めず、直前で問い合わせると満室…
『君の名は』の舞台のモデルとなった諏訪湖を眺めつつ、
茅野駅に降り立つ。
駅前には何もなく、検索をしたところ4km先の国道沿いに、
いつも松本の前泊で使っているのと同じ系列のネカフェがあるようで、
霧雨の中、トボトボとそちらまで40分かけて歩く。
翌日が平日ということもあるし、雨模様ということもあって、
座席は十分空いていてマット席で一晩。


↓前ノリは定番のネカフェ


翌日、5時起きで店を出ると、シトシトと冷たい雨が降りしきる。
分厚い白靄が立ち込める国道を、
大型トラックが走り抜けるたびに、無遠慮な水しぶきが歩道を襲う。
昨夜来た道を再び40分かけて茅野駅へ戻るころには
全身が濡れ、心も折れてしまった。
当初の予定では、茅野駅を6:05に出る電車に乗り、小淵沢で降り、
そこから山行を開始するはずだったが、
駅周辺から見えるであろう山々は
白い靄にすっぽり覆われて存在が確認できない。
まして、駅前の停留所ですら、徐々に強まる雨脚のおかげで、
すっかりと冷え込み、どんよりとしている。
流石に、初めての山域で未知数な要素が多いし、
そもそも山歩きできるような天候ではなく、出発する電車を見送る。


茅野駅


することもない中、早朝の駅前のベンチでしばし呆然。
とはいえ、わざわざ有給ももらって、遠路はるばるやってきて、
このまま引き返すというのも味気ない。
ならば、登山口を変更して、よりイージーなルートを選択して、
少しでも山を味わって帰ることにしよう。
幸い、八ヶ岳連峰はバリエーション豊かなルートがある。
そのためにはまず、登山口へのアプローチを確認しないといけない。
いくつもあるバス停の時刻表を見て回って、
最速で山に入れる便はないかと探す。
しかし、あいにくこの日は金曜日=平日で、
山へ向かうほとんどの便が土・日祝限定のものばかりで、
早くも計画変更がとん挫する。
一番早い便で、北八ヶ岳ロープウェイ行きが10:20、
美濃戸口行きが10:25の2本。
どちらにしても無駄に駅前で4時間も待機が決定…
流石に野外で待つのはつらく、
色々調べると少し先のデニーズが開いていたので、
さっそう飛び込む。
モーニングをついばみながら、シミュレーションをして、
結果、2日目に天気が好転した場合に、
色々な選択肢が取れる美濃戸口へと向かうことにする。


10時には駅前へ戻ると、数人の登山客が集まりだす。
時刻通りバスは出発し、徐々に高度を上げながら山の中へと進んでいく。
11時を少し過ぎて、八ヶ岳の一大登山拠点である美濃戸口に到着。
登山届を提出してトイレを済ませたら、すぐに山行を開始する。


↓美濃戸口


美濃戸口からは、未舗装の林道を延々と歩きます。
時折、車が往来するので脇へよけるのだが、
すでに一部は川のように雨水が流れてくる。
アップダウンはそれほどないのだが、ダラダラと単調な道が続く。
やまのこ村まで約30分でたどり着き、そのままスルー。


↓退屈なアプローチ


↓やまのこ村


その先に2つほど山小屋があり、車が入れるのもここまで。
美濃戸山荘の先で、分岐。
北沢を詰めて赤岳鉱泉へ向かうか、
南沢を詰めて行者小屋を目指すか。
今日中に赤岳天望荘まで行けたら行っておいて、翌日に備えたいので
そう考えると南沢の方が距離も所要時間も短い。
だが、このエリアに入るのは初めてで、距離感がつかめないし、
万一途中で天候が一気に崩れてしまった場合を考えると、
スタンダードな北沢の方が難易度が低そうなのと、
最悪、赤岳鉱泉まではたどり着けると判断。
北沢を行くことにしました。


↓北沢と南沢の分岐


相変わらず、森から先の眺望はすべて真っ白で、
どのくらいの高さの山の中を進んでいるのかもわからず、
ただただ代わり映えのしない砂利道を進む。
自分以外にはほとんど人がおらず、
静かに歩けるのはよいのだが、なんとなく不気味さもある。
黙々と歩いて堰堤広場には12:30到着。
この辺りから雨脚が一層強くなってきた。


↓豊かな自然


↓堰堤広場


堰堤広場で橋を渡るとそこからは砂利道ではなく
本格的な山道となる。
ただ、アップダウンもそれほどないし、よく整備されている。
何度も沢を行ったり来たりしながら山の奥へと進む。
沢の勢いはすごく、これ以上雨が降って橋が流されたり、
そういう心配も頭をよぎる。
雨脚が再び強くなり、道も滑りやすく、歩く度に泥をはねて、
上も下もびっちゃんこ。
山歩きを楽しむ余裕などもなく、汗と雨で不快さを纏ったまま、
延々と数メートル先を注視しながら歩き続ける。


↓北沢沿いに進む


そうして前方が開けて、小屋が見えてきました。
赤岳鉱泉
13:15着。
まだ時間も早いし、この時点ではさっさと休憩をして
さらに先を目指そうと考えていたのだが、
到着と同時に、ずさーっと雨が強くなり、
たまらず小屋へと飛び込む。
いったん気が緩むと、人間はいけないもので、
しばらく雨宿りをしているうちに
この土砂降りの中をさらに2時間プラス歩くのは御免と、
心が折れました。


↓赤岳鉱泉とうちゃこ


本格的な山行はあす以降の天気に任せるとして
早速宿泊の手続き。
濡れたものを一式乾燥室に移動してから、大部屋に通されます。
この日は平日の雨ということで、10人ほどしかおらず、
上の段を独り占め。
寝床を確保したら早速、お昼ご飯です。
本当にもう魅力的なラインナップで、
カレーは6種類、パスタは4種類、雨の日企画のケーキセットまであって、
かなーり悩みましたが、
やはり黄レンジャーとしてはカレー貫徹ということで、
ジャワカレーをいただきました。
メニューにもあるようにパイナップルを隠し味にした
トロピカルなカレーでした。
ごちそうさん

↓食堂


↓カレーラインナップ


↓パスタも充実


↓雨の日限定ケーキ


↓ジャワカレー


お昼を食べ終わると時刻は14時となり、
ちょうどお風呂タイムがスタート。
雨で濡れて不快なままだし、夕食前には混むだろうから
善は急げと一番風呂をきただきに上がる。
受付の横から風呂場へ行くと、脱衣所と湯船が一体となったお風呂場。
思った以上に湯船は広く、ゆったりのんびり、
贅沢風呂を独り占めでき、
ついさっきまでずぶ濡れの雨の中で相当みじめな気分だったのが
すっかり吹き飛んで、極楽そのもの。
赤岳鉱泉で正解でした!


↓一番風呂♪


お腹も満たし、風呂にも入ってご満悦。
こりゃあビール飲むっきゃないでしょと、
湯上りビールとモツ煮を注文。
冷えたビールがごくごく喉を過ぎるてプハァ〜。
最高じゃないか!
しかもここのモツ煮が大正解!
よく下処理されているのか臭みもなく、煮込み具合も最高で
かなりレベルが高く、素晴らしい!
いつもストイックに丸一日ぎりぎりまで歩き続ける山行だけど、
たまにはこういう贅沢もありですなあ〜♪


↓湯上りについ一杯


鉱泉グッズ


ゆったりのんびり風呂と食事を楽しみましたが、
それでもまだ15時前。
夕食がはじまるまでまだまだ時間が余っています。
雨は一層強くなってきていて、周辺を散歩することもできないので、
館内を散策することにしました。
小屋は山肌に沿って、段差を上ったり下りたりしながら
中庭をぐるっと回廊するような造りとなっています。
受付から入ってすぐの食堂は広々としていて、その周辺に談話室と乾燥室。
そこから個室部屋があり、一番遠いところにトイレ。
そこを抜けると、また談話室があり、個室と大部屋が続く。
途中の談話室には、京都の古本屋・文月文庫さんの出張ブースがあったり、
マムートのハンモックがあったりしていました。
ちょっくらハンモックに揺られてみるかと乗ってみたら、
気づいたら寝てました。


↓回廊式の小屋


↓談話室にある文月文庫


↓ハンモックで昼寝


うっかり30分ほど寝てしまい、体もすっかり冷えてしまったので
部屋に戻り、布団にくるまってぼうっと。
夕食の時刻となり、食堂へ行ってみると、
あちらこちらからジュージューと音がしている。
やっぱり今日はステーキだ!
着席すると、陶板に乗せられたでっかい肉の塊がド〜ン!
実物を見るまでは、ステーキといってもペラペラなお肉だろうし、
あまり期待し過ぎて、残念なことにならないようにと思っていましたが、
いやいや、予想をはるかに上回る肉厚とボリューム!
日常の平地でもこれだけのボリュームは食べないようなお肉が、
こんな山小屋で供されていることにただただ驚嘆するしかありません!
しかも、サイドメニューも豊富なサラダとフルーツ、
キノコ汁(自分は食べれないので受け取らず)がついて、
ご飯と汁はおかわり自由なんて、本当に最高すぎる夕食でした。
しかも調理された作り置きではなく、
陶板でジュージュー焼いて食べれるのでアツアツ。
こりゃあ元気出ました!
ごちそうさん


↓夕食は名物のステーキ!


↓じゃ〜ん!見よこのボリューム


夕食後は、消灯時間までの間を時間つぶし。
一度外の様子を見に出てみると、
時々雲間が晴れて星が見えるタイミングもあり、
今日よりも天気は好転する期待が持てそう。
21時前には部屋に戻り、翌日の支度を済ませて就寝。


↓わずかに星空が