地獄谷から八幡谷
日曜日。
コンディション最悪で昼まで寝る。
無気力なまま昼を過ぎ、
このままではいかんと無理やり家を出て、
夕暮れ迫る六甲に分け入る。
時刻はすでに16時になろうとしているが、全然かまわない。
山に入れば何者でもなく、そこらの木や石と同じ存在になれる。
今はそれがどうしても必要。
高座の滝の先から珍しく芦屋地獄谷へ足を進める。
土石流アラートのロープをくぐって、
早速谷底の沢を進んでいく。
この日の水勢はそれほどなく、
小滝をいくつも越えていく。
しばらくは誰にも会わず静かな山歩き。
何も聞こえず、ただ水の音と葉っぱを踏みしめる音だけ。
無心で歩く。
少し大きめな滝のところで、
前方から団体さんが直降して渋滞。
みなこんな時間から登ってくる人がいるというような感じ。
全然大丈夫です。
下山の大パーティーがいなくなると、
そこからは全く人気がなくなる。
いくつもの滝を直登したり、巻いたり、
無心で汗をかいて、ひたすら沢を遡上する。
小便滝のところで、この谷筋に唯一ある堰堤にぶつかる。
一旦右手の斜面に向かってトレイルは折れていく。
そのままA〜C懸や万物相のある
ロックガーデン方面へ行ってもよかったが、
今日はひたすら日陰の谷底を黙々とさらうということをしたくて、
斜面の左手にうっすら伸びる堰堤方面へ折れる。
堰堤の向こう側の広い河原に降り、
よく目を凝らすと白テープが右手にあり、
それを頼りつつ谷筋を引き続いて進む。
いくつか細かい出合があるが、
主流を選択しながらどんどん深い谷底へと分け入る。
すでに手掛かりとなるようなテープや、踏み跡はなく、
ひたすら沢に沿って進んでいく。
周囲の山並みの位置関係は完全に頭に入っているのだが、
ここまでこの一帯の谷に潜ったことがない。
不安と同時に、迷子になっている状況にワクワク感というか、
大袈裟に言えば生きてる実感が湧いて少し元気になる。
いくつもの分岐と思われるところを折れ、滝や大岩を抜け、
一か所、かなりの落差の部分を左から高巻きしていくと、
大きな谷が二手に分かれるところに、
手製の看板がぶらさげてあった。
まだまだ谷の深い位置ではあるが、
人工物があるというだけでもほっと一安心。
看板の地図を見ると、左手に行けば金鳥山、
まっすぐ行けば風吹岩。当然直進します。
この先は、沢も流れというより
ちょろちょろと水があるだけのようになり、
そのうち沢は広い山の斜面へと変わっていく。
おそらくこの流れのもとは横池なんだろうけど、
いったいどこから始まってるんだろうか?
斜面はおそらく風吹岩の直下に向かって斜度を増していく。
踏み跡がなく、歩きやすいところを見つけながら登っていく。
途中で何度か風吹岩で見かけたトラ猫がいて目が合う。
茂みや木の枝を使ってどんどん上がっていくと、
そのうち、白テープを発見。
白なのでかなり目視しづらく、
しかも忘れたころの間隔で付いているので、
よくよく前方に目を凝らしながら進む。
そのうち前方に見慣れたガレ岩が見えてきて、
風吹岩に出ました。
なかなか見過ごした分岐もいくつもあるので、
集中してエリアを彷徨っても面白そうだ。
1時間弱のちょっとした冒険だったが
感覚的に結構長い時間彷徨っている状況だったように感じた。
何の音もなく、無心で、ただ目の前の岩や斜面に取り付いて
全神経を集中させて突破する、ただそれだけのことだが、
生きた心地を取り戻すのにこれほどぴったりなものはない。
無人の風吹岩で、心地よい汗をぬぐい、水分補給をしながら
夕暮れ迫る大阪平野と大阪湾をぼおっと眺める。
この日はとても空気が澄んでいたのか眺望がくっきり見える。
大和葛城山の山並みが、二上山を顔として
まるで阿蘇五岳の涅槃像とそっくりだと気付いた。
↓大和葛城山系は涅槃像みたいだ
時刻はすでに17時。セオリーなら、
このまま魚屋道を下って保久良さんへ向かうのだが、
せっかくの冒険が尻すぼみになるので、
どうせなら下りも使ったことのない道を行くことにする。
風吹岩からメインルートに出て登っていき、
途中から脇道に入って横池へ進む。
その脇にある小ピークへ登ってから
そのまま雌池へ下る。
ここから打越峠へ向かったはずなのだが、
ルートが色々ありすぎてよくわからず、
やみくもに分岐を選択して歩いていると、
何やらものすごい木組みが連なる道に出る。
七兵衛山へ向かおうか迷ったが、森が深く日差しが入らないので
徐々に真っ暗になってきた。
地図も持ってきていないし、
この日は岡本駅のある方向へおとなしく歩きます。
うっそうとした森が続き、段々薄暗くなってきました。
道はよく整備されており全く問題はないが
色々分岐が多いので逆に迷ってしまいそう。
18時には無事住宅街に脱出。
そこから岡本駅まで急な坂道を降りて山行終了。
<山行記録>
15:45芦屋川駅⇒16:00高座の滝⇒16:05芦屋地獄谷入口⇒16:15小便滝16:17⇒
16:20梅谷第二砂防ダム⇒16:40金鳥山分岐⇒16:55風吹岩17:00⇒
17:10横ノ池⇒17:15横池(雌池)⇒17:25木漏れ日広場⇒
17:45八幡滝⇒17:55八幡谷登山口⇒18:15阪急電車岡本駅