地下に眠るパルテノン神殿 「首都圏外郭放水路」
大急ぎで荻窪を出発し、新宿から埼京線で北上。
浦和、越谷辺りで何度か乗り換えをし、
車窓から見える大平野に方向感覚を失いながら、
たどり着いたのは南桜井駅。どこここ?
で、そこからバスはなく、
予定集合時間の14:40まで1時間弱あったので
目的地までの3kmの道のりを歩いていくことにします。
速足で、大型スーパーの横に延びる道を北へ進み、
住宅街を抜けて、R16の春日部野田バイパスをまたぐ。
さらに直進して県道321号へでて、雑木林を抜け、
庄和高校のところで、ようやく標識を発見。
そこからさらに10分歩いて、集合時間の10分前に無事到着。
今回の遠征の最大の目的の一つが、
関東の地下に眠る巨大パルテノン神殿と称される、
「首都圏外郭放水路」の見学。
ドボク愛好家だけでなく、
様々なメディアに取り上げられたことで
見学の予約が殺到するスポットになっています。
この施設は、さきほどまたいだ国道16号の真下50mの地下に
全長6.3kmのトンネルを掘り、
周辺の河川が大雨や台風時に氾濫した際に、
その余剰の水を巨大立坑から取り込んで、
安全に江戸川へと放水する世界最大級の地下放水路。
これにより河川の氾濫を防ぎ、浸水被害を軽減する役割を果たしています。
施設は主に3つの機能から成り立っていて、
1つ目が、地上の溢れた水をトンネルへと取り込む立坑が5本。
その穴の大きさは、内径が30m、深さ70mの立筒で、
スペースシャトルや自由の女神がすっぽり入る大きさなんだとか。
2つ目は、取り込んだ水を地下空間に貯めておくための機能で、
サンシャイン60と同じ大きさのバケツの水を一度に貯めることのできる
調圧水槽がある。これがいわゆる地下神殿と称されるところで、
見学会のメインになります。
そして3つ目は、貯まった水を安全に吐き出す機能で、
この役割を果たしているのが、
目の前に見えてきた庄和排水機場になります。
↓庄和排水機場
まずは建物の2階へ行き、予約の確認とサインをして、
入坑証をもらいます。
15時になり、いよいよ見学会スタート。
まずは江戸川の歴史や施設の概要をレクチャーいただきます。
この春日部市一帯は、荒川・利根川・江戸川と
大河川に囲まれた低い平地になっており、
元々水害に対して弱い地形だそうです。
また、それらの支流である中川・綾瀬川は
何度も氾濫を起こしてきた歴史があり、
慢性的な浸水を解消することが地域の課題の1つだったそうです。
概要説明が終わると、一行は建物を出て、グラウンドの方へ移動。
その先にポツンとある小さな建物から、
いよいよ調圧水槽へと潜入します。
実はこのグラウンドの真下が調圧水槽で、
水槽上部の空間を有効利用するために整備されたそう。
ちなみに、内部の施設は国の管轄、
上部のグラウンドは春日部市の管轄だそうです。
中に入ると、100段、およそ6階建てに相当する
階段を降りていきます。
通路がせまく、安全上の理由から、
階段部分での撮影や立ち止まることは禁止。
スタッフさんに続いて狭く暗い階段を下っていくと、
広大な地下空間に出ました。
地下空間はあまりに広大で、しかもひんやりとしていました。
温度としてはこの日は9度で、地上よりも5度ほど低い。
さて、まずは、この調圧水槽の説明を10分ほどあります。
大きさとしては幅78m、長さ177m、高さは18mの巨大な水槽です。
これだけの規模が必要な理由としては、
緊急停止時に発生する逆流の水圧を調整するためだそう。
水の勢いというのはそれほど大きなものということですね。
そして、その水圧で、天井部分が膨張して
浮き上がってしまうのを防ぐための重しとして
奥行7m、幅2m、高さ18m、重さにして500tにもなる
コンクリート製の柱を59本設置する必要があるそうで、
その重厚な柱が並ぶ様が、
パルテノン神殿として呼ばれるようになったそうです。
ちなみに、この設備は年に5〜8回程度稼働するらしいのですが、
その度に水だけではなく大量の土砂やゴミなども
同時に入ってくることになります。
それらは水を抜いた後に、なんと天井を開けて、
そこから清掃用の重機を吊り下げて搬入して、
清掃するらしいです。スゴイですねえ。
↓あの上に見えているところをあけて清掃用ブルドーザーを入れるらしい
解説の後は10〜15分程度、自由行動で撮影もOK。
ただし見学範囲は決められていて、
虎ロープで囲われた部分のみになります。
では、さっそく!
とにかく、あまりに大きすぎるスケール感と、
コンクリートの塊の重厚感に圧倒されます。
素のまま撮っても十分なのですが、
こういう場合は対比物として、
あえて人が映り込んでいる方が、
よりその大きさがはっきりわかってよいです。
翻って、反対側には第1立坑と呼ばれる大きな立穴がぽっかりと空いています。
ここは直接河川と繋がって水を取り入れるのではなく、
地下トンネルを通じてやってきた水を
調圧水槽に流すためのパイプのような存在。
ここから天井まで水がどんどんたまっていくときの
水圧や水勢を想像すると、ちょっと震えてしまいます。
とにかくめったに見られる光景でないので、
手当たり次第に撮影です。
本当にすごいものを人間というものは造り出しますね。
でも、これだけのものを造らないと対応できない
自然災害というのもまた恐ろしい力です。
あっという間ですが、この圧倒的な空間に浸ることができました。
見学タイムが終了し、再び地上まで階段を上って、
先ほどの排水機場まで戻ってきたら見学会は終了で解散。
そこから再び駅まで徒歩で戻るのだが、
どうせなら他の立坑も見られないかなと思って、
隣の駅まで足を延ばして帰ることにします。
県道321号に出て、あとはひたすら平坦で変わり映えのしない道を西へ。
本当に何もないところで、果てしなかった…
で、途中の電信柱に、昔の水害の後を発見。
こんな平地で、ここまでの水が溢れるということは、
相当な水量だったはずで、あれだけの貯水槽の必要性が実感できます。
道は越谷春日部バイパスとの交差の先でR16に合流し、
大きな橋を渡りますが、ここが中川。
川の横に引き込みが設けられて第二立坑がありました。
近くまでは行けなそうだったので、橋から遠景のみ。
そのままR16を西進すると次の橋があり、
横付けするようにして、第3立坑がありました。
こちらは倉松川からの水を取り込むための立坑で、
ちょうど川の対岸の土手から撮影できそうだったのでそちらへ。
普段は、そちらへの水路は盛り土がされてあり、
それが堤防の役割をはたして水が浸入しないようになっているようですが
増水時には自然と水がその盛り土を越えて、
立坑へ流れ込み、余剰分の水がここから立坑へと逃がされ、
地下トンネルを伝って、先ほどの調圧水槽へと向かい、
そこからポンプによって安全に江戸川へと逃がされるのです。
先ほどの施設から5km近くは離れていて、
徒歩ではなかなかしんどい距離なのですが、
両方の現場を見ることで、全体的な仕組みが実感できました。
そこから南下に転じて、さらに20分ほど歩いて、
藤の牛島駅に無事到着。
17:30の大宮行に無事乗り込みました。