灰ヶ峰登山
呉駅到着が13:26。
今回の主目的は映画『この世界の片隅に』の舞台の町を歩くことだが、
その前にどうしてもやっておきたいことが。
暮れの街並みを見下ろすかのように背後に構えている
灰ヶ峰に登って、呉の街並みを一望すること。
すでに昼を過ぎているし、日没までに下山を考えると、
真っ先にそれに取り掛かる必要がある。
灰ヶ峰へは駅から歩いて行ってもよいのだが、
時間があまりないので、最寄りまではバスを利用して時間短縮。
駅前のバスターミナルから11系統(広方面)に乗り込み、
呉越峠の手前の西畑バス停に降り立つ。
バス通りから県道174号へと折れると、
急斜面にひしめき合う住宅街の細い道をくねくねと進みます。
もうこの辺りは呉市街地の一番はずれの辺りで、
少しずつ高度を上げていくと徐々に展望が開けてきました。
クネクネと登っていくと、
平原浄水場をぐるっとなぞるようにして道は進んでいき、
浄水場の上部に来ると、路肩に登山道の標識を発見します。
ここから県道174号を右に折れるのだが、
いきなりえげつない直線の激坂が続いており、
その目線の先に目的地である灰ヶ峰の頂上にあるアンテナが見えます。
しかし、のっけからとんでもない斜度の上り。
おそらく暗峠の序盤くらいの感じです。
灰ヶ峰の標高が737m(呉市の郵便番号上3桁と同じだそうで)で、
現時点が100mほど。
頂上までわずか3.0km弱(最短ルート)で標高差600mですから、
なかなかに急なのもうなずけます。
ひーひー言いながら激さかをやっつけます。
住宅街を抜けると、東側の斜面が開け、
田畑の向こう側に広の町と海が見えてきました。
少しずつ斜度を寄るめてなおも登っていくと、
墓地の入り口のようなところに出て、
そこに中国自然歩道の看板を発見。
ここから呉の町が緑の奥に垣間見えるのだが、
その構図がなんだか、
すずさんが水原さんの代わりに絵を描いた
白うさぎの海を眺める高台を彷彿としていて、
ちょっとドキっとしてしまう。
実際には、あの場面は広島の江波地区なので、
全然違うのだけれど、呉の町に入ってから、
もうずっとそういうモードに入ってしまっていたので。
舗装道路を離れてトレイルへ分け入ります。
道の周囲にお墓が転々としている林は、
さっきの激坂に比べるとゆったりとした斜度で、
落ち葉を踏みしめながら、進んでいきます。
しばらく進むと、大きな看板があり分岐点。
左側は、正面登山コースとあるので、
最短で尾根伝いに登っていく道。
右側は七曲りコースとあり、
道中に水場があることから、沢を伝っていく道。
面白そうなのはもちろん後者ということで右をチョイス。
しばらく山肌をなぞるようにして平たんな道が続き、
しばらく進むと小さな沢にぶつかる。
その沢の脇にずんずんと石段が続いている。
えっちらおっちら登っていくと、
ぽっかりと開けたところに出て、
さらに進んでいくと銀明水と呼ばれる水場に出ます。
古くから名水が湧き出る水場で、
この天然の清らかな水が呉の繁栄の礎になっているのです。
そこからさらには山肌をなぞっていくと、
沢の上部の道になります。
そこをてくてく進んでいくと、
金明水への分岐を示す標識。
この標識に従えば、金明水を経て山頂への道ということなのだが、
まっすぐ進む道が正規なのでは???
というのも、谷筋へと急に切れ込んでいく左手の道は
ほとんどトレイルが消えかかり、
谷に向かってかなり危うい感じ。
ここが正規ルートだとしたら、事故頻発だろう。
しかし、ここは標識を信じて、左手に折れます。
ほとんど足場があってないような頼りない道を、
その道を塞いでいる枝木をサポート代わりに、
急速に谷へと下ります。
本当にあっているのかと不審になってきたころに、
金明水の看板があり、谷底の岩場に水を牽くパイプを発見。
さっきの道を喉るのはかなり難儀だし、
さっきの標識通りなら、この先山頂までのトレイルがあるはず。
ということで、それらしい場所を選びながら、
ずんずん谷底を進んでいくと、空が開けた広い沢に出る。
しかし、その時点ではトレイルらしいトレイルもなく、
もしあったとしても、おびただしい雑草とツタで一面覆われて
もはやどこがトレイルなのかわからない状態。
人が足を踏み入れなくなって久しいというのは間違いなく、
かといって引き返すのもそろそろ難しい段階になってしまいました。
どうしたもんじゃろと周囲を見渡すと、
さっき分岐したもう一方の道が右手の谷の中腹に続いているのが見える。
あそこまでこのまま無理やり登りきればよいだろうと、
そこから道なき道を突進。
ところが、突然の訪問者に容赦なく牙をむく
トゲトゲやくっつき虫に悪戦苦闘。チクチクと皮膚を刺されながら、
どうにかこうにかトレイルに復帰できました。
下山時に、林道からこの辺りを見下ろせば、
このまま無理やり突進していたら、完全にどん詰まりだったので、
途中で意を決して離脱して正解でした。
しかしあの標識は紛らわしい…
無事にまっとうなルートに躍り出て、
そこから何度か急斜面をジグザグ蛇行しつつ進んでいくと、
上部に林道のガードレールがあり、そこまでたどり着くと、
小さな東屋がありました。
そこからは呉の街並みが望めました。
そこそこ高度を上げてきましたね。
そこから林道を右に進んでいくと、
ほどなくして山頂までのトレイルの入り口を発見。
ふたたび山道に入りますが、2つのトレイルが並行しています。
1つはきれいに丸太で階段状にしてある道で
山頂まではこちらがイージーそう。
もう一つは元々の道で、林道に沿いながら進んでいく様子。
ここはやはり古い道を選択します。
ラストの登りはなかなかどうして骨が折れ、
急坂をえっちらおっちらと登っていきます。
急な階段が終わるところを過ぎると、
展望台を兼ねた休憩所がありましたが、
もう山頂はそこだし、休みを入れずに写真だけ撮って、
一気に山頂まで。
そうして15:20に灰ヶ峰の山頂に到着。
山頂には、気象レーダーの施設と、展望台があります。
これは戦時中、呉の軍港を空襲から守るための
海軍の高射砲施設の遺構。
そこからの眺めは360度の大パノラマ。
すぐ眼下には呉の街並みがミニチュアのように見え、
右手側には遠く広島市街や宮島方面が広島湾に浮かんでいる。
翻って見れば、背後に熊野町や東広島の山並み、
南東部には、広の街の向こうに瀬戸内の海。
ちょうど正面に安芸灘大橋がかかっていて、
そこからとびしま海道の島々が続く。
空模様はどんよりと沈黙を保ち、それに応えるようにして、
瀬戸内の島々が幾重にも身を寄せ合っているかのよう。
山上は少し風が吹いていて、
あっという間に汗まみれの体を冷やしてゆくが、
お構いなしにシャッターを切り続けた。
来たよ、すずさん。呉の町が見えるよ。
↓灰ヶ峰展望台
アングルを求めて山頂を少しうろうろしてみたが、
背後には金網があっては入れない。
よく見ると、ここは米軍の管轄区域で立ち入り禁止の文字。
すずさんの街のてっぺんが、
今もってアメリカの占領下におかれているのかと思うと、
少し悲しい気持ちになった…。
↓いまだにアメリカの占領下に…
すずさんのこと、呉の人々のこと、
戦争のこと、原爆のこと、そして今の日本のこと、
目の前に広がる景色を眺めながら、
色々な思いが駆け巡り、
いつも見る山からの絶景とは少し違う気分に駆られる。
15:30を過ぎ、名残惜しいがそろそろ下山せねばならない。
また、折に触れて登りに来よう。
山頂からは林道も含めて方々に道が枝分かれしている。
どうせなら違うルートを通りたいが、
間違って、呉市街とは反対側に降りてしまうと後が難儀。
初めての山で、しかも日没までに聖地巡礼もしないといけないため、
ここでのルートミスは致命傷。
なので、とりあえずはきた道を戻る。
途中の展望所からは別のルートを使ったが、
結局林道までに同じ道に戻る。
林道に出て、金明水の道はスルーして、
そのまま少し舗装道路を進む。
途中、ロードバイクで苦しそうに上がってくる人がいて、
頑張れ!とハッパをかける。
少し進んでいくと、別の休憩所があり、
その近くのガードレールの切れ目に、ルートを発見。
そこをずんずんと下っていく。
ルートは一直線に下っており、なかなかの急斜面。
そのうちに、見たことのある分岐に出る。
一番最初の分岐だ。
そこからさらに下って、無事に登山口に到着したのが16:13。
約2時間の山行でした。
<山行記録>
14:03灰ヶ峰登山口→14:11舗装道終わり→14:24分岐→
14:33銀明水→14:42金明水→15:00東屋→
15:20灰ヶ峰山頂15:35→15:51直登コース→16:13灰ヶ峰登山口