ヨシダナギ写真展『HEROES』 at 梅田阪急
週末。再びヨシダナギさん。
梅田阪急での写真展へ。
先日のトークショーで写真集は購入したし、
何なら今の時代ネットで写真を見ることは可能だけど、
やはり写真とはいえ、ライブで見て感じて受け取るということはとても大切な行為。
事あるごとに言っていますが、SNSで情報や画像として受け取るのと、
実際の作品を鑑賞するのとは似て非なるモノなのです。
すでに会場にはご本人はいらっしゃらず
キミノさん共々、再会はかないませんでしたが、
大判に引き伸ばされた迫力ある写真たちと、
ご本人によるオモシロ解説コメントは見ごたえ十分でした。
先日のトークショーで撮影秘話なども聞いているので、
ああ、この写真、あの話のアレかあとか思いながら拝見しました。
それにしても予想以上の人出でびっくりしました。
大人気!!
正直言って、写真の腕、技術という点では
まだまだ伸びしろがあるんだろうと思いますが(本人も自覚ありだそう)、
それよりも何よりもあの状況を撮影できる
シチュエーションを自ら作り出すことができる
ということが彼女の最大のスキルなんだろうと思います。
地球の辺境へと長い時間かけてたどり着き、
コミュニケーションもままならないような相手と
相互に信頼関係を築く。
そのうえで、さらに撮影したい写真のコンセプトやイメージを
的確に共有して、初めてあのような作品が生まれるのだから、
それはもう唯一無二のフォトグラファーですね。
元々グラビアをやっていたという事で、
撮られる側のスタンスを知っているということが
十分作品に活かされているし、
イラストレーターとして、
あのぶっ飛んだ色彩感覚もしっかり受け継がれていて、
ナギさんの中で脈々と流れてきた潮流が、
このような形で結実したんだろうなあと感じました。
写真には各民族ごとにナギさんのコメントがついているのだが
それがぶっ飛んでいて面白い。
どうしても我々はステレオタイプな色眼鏡で物事を見がちで、
アフリカ民族に対しても、こうあってほしいというような
願望交じりのイメージを抱きがちだが、
実際はバンバン現代的で、都会的で、素朴でもなんでもねーよと、
あっさりと暴露しちゃってたり、
それでも、彼らがひとたびスイッチを入れて、
民族としての本性を現せば、
そういった現代社会的な価値観などそっちのけで、
無条件に彼らは美しいのだと、
彼らへの純粋なリスペクトや愛情がひしひしと伝わってきます。
彼女は、アカデミックな人間の西洋主義的な上から視点ではなく、
まさに同時代に生まれた等身大の生身の人間としての付き合い、
という視点に揺らぎがない。
一見すると刺激的な色使いで、
劇画チックで嘘っぽいデフォルメのように見える作品でありながら
それが実に生々しくリアルに受け取れるのは、
彼女のそういう姿勢や、実際に彼らとのやり取り・信頼関係が
作品の端々から感じられるからである。
↓スケルトンマン(オモ族)
数ある作品の中で、一番のお気に入りは、
下のスリ族がタウンワークを見ている写真。
他の多くの作品が、純粋な存在としての美しさを、
最高のシチュエーションで切り取るといったものだったのだが、
この作品は、それとは違い、彼らの文化や生活にないものを
意図的に放り込んで、それが生み出す化学反応を探ろうとしていて面白い。
アートとは、既存の価値観への挑戦、
新たな視点の提示、常識をぶっ壊すということが第一義だと思うのだが
この作品は、色々な洒落や皮肉が、
決して陰湿ではなく、むしろPOPに表現されている。
偶然なのか意図的なのかはわからないが、表紙のキャッチが
「履歴書なしで面接OKのお仕事特集」って、
面接だけなら受かる気満々なのかと、
勝手に想像したりして思わず笑ってしまう。
美しい写真を美しいままに受け取るというのももちろん素晴らしいが、
この写真のように、受け取る側に
色々想像させる余地を与えてくれる作品は面白い。
いやあ、またナギさんにお会いしたいですね。(キミノさんにも)。
一つ興味深いのはナギさんが、
日本人をテーマに撮ったらどんな風になるだろうかと気になっています。
日本も色彩豊かな風土や文化があるから、
例えばどこかの田舎の祭りだったり、伝統行事、
子ども達などを彼女のフィルターを通したらどうなるだろう、
なんて想像してしまいます。