記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

幡野さんの写真

先日、東京・神田で行われた
幡野広志さんの写真展「いただきます、ごちそうさま」で
1点購入させていただいた写真が昨日届いた。
写真の解説も自筆で書いていただき、
とても立派な写真の風貌にピッタリのフレームに収まって、
それはやってきました。




写真展ではほかにもたくさんの生々しく衝撃的な写真や、
残酷さと温かさが共存した写真が並んでいたが、
そのうちから1点求めるとしたら、
死にゆくものと、生きてゆくものが
ともに映り込んだ写真しかないと思っていました。
この写真展のタイトルである「いただきます、ごちそうさま」の通り、
命を引き継いでゆくということは、
この地球上では最も普遍的な行為の一つである「食べる」ということであり、
それは決して綺麗事ではなく、時に残酷である。
その行為を、捕食するもの、されるもののどちらか一方の視点ではなく
それが一体として捉えられるような一枚が
ふさわしいのではないかと考えていた。


この一枚はご本人の解説によれば、
山中湖付近で捕えた鹿をこれから鍋で煮込むところを捉えたものらしい。
狩猟者が鹿の頭を持ち上げ、それが狩猟者の顔と重なった瞬間に、
あたかも生が死の仮面を纏っているようにも見え、
また同時に死が生を乗っ取っているかのようにも見え、
思わず背筋がゾクっとする。
これは、まるでどこかの狩猟民族の
極めてプリミティブな儀式をみているかのようだ。
強烈に匂い立つような一枚は観る者の心を捉えて離さない。