記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

音楽劇『プラネタリウムのふたご』

記事前後します。

先週、作家のいしいしんじさんがツイッターで、

代表作である『プラネタリウムのふたご』が

初めての舞台化されるというアナウンス。

もう本番の日まで数日前というタイミングだったのだが、

上演はこの日1日2公演のみということで

どうにかスケジュールを調整して、大急ぎでチケットを手配して

長女と堺まで観劇に行ってきました。

 

我が夫婦は本の虫で、

若い頃からたくさんの本に囲まれて暮らしているけど、

数々の作家さんのなかでも、いしいさんは特別な存在で、

本棚に専用コーナーがあるくらい。

数々、素晴らしいお話を書いていらっしゃいますが、

そのなかでも特に大好きなのがテンペルとタットルの双子のお話である

この『プラネタリウムのふたご』。(本のレビューはブログ末尾へ)

その舞台となれば、自分の眼で目撃しないわけにはいかないのです。

以前に舞台化された『麦踏みクーツェ』も

とっても素晴らしいものだったので

ワクワク!!

 

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ということで、当日、鳳駅まで電車で、

そこから歩いて会場の堺市立西文化会館ウェスティに。

ほぼ開場時間通りに来たのだが、

ロビーがすごい人で溢れかえっている。

本公演は、関西の若手役者たちが集まって行われるものらしくて、

そういう若手役者さんのファンが多いみたい。

現地支払いということもあってか、

受付が大混雑で、大行列をなしていて、

結局開演が30分ほど遅れてしまいました。

 

 

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受付を済ませて、ホールへ入ろうとすると、

いしいさんとご子息のひとひ君とバッタリしてご挨拶。

今年は新年会でお会いして以来なのでおひさしぶりでしたが、

「え?え?来てくれたん?何で知って?」と色々とお話し。

なにやら別の劇団でも同作品の舞台の予定があるとの

耳寄り情報もいただいて、楽しみですね。

そしてそして、ひとひ君が会うたびにどんどん大きくなって、

なんかちょっと前まで、元気いっぱいのちびっ子だったのが、

この日あった時は、

少し凛とした雰囲気も醸し出すような少年になっていました。

でも、あいかわらずの好奇心のかたまりと、

研究熱心ぶりは健在のようで、

早速ラグビー日本代表のユニフォームに身を包んで

カバンからいくつものラグビー関連の本を出してきてくれて、

色々と説明してくれました!!

いしいさんの大ファンであることは間違いないけど、

ひとひ君の大ファンでもあるのです。もちろん園子さんも。 

 

さて、少し遅れてしまいましたが、舞台の幕が上がります。 

プラネタリウムを見上げながら、

ある男の人が2人の子供たち?に不思議な双子の物語を

そっと優しく語り始めるところからお話はスタートします。

そして、オープニングの大合唱へ。

音楽劇と銘打った華々しいスタート。

そこからたくさんの出会いと別れ、

そこに寄り添う温かな作り話がいくつも繰り広げられていく様を

若くフレッシュな役者陣がみなキラキラ、イキイキと

一生懸命演じておられました。

 

その中でもサーカス一座に飼われている

ど近眼の馬プランクトンを演じている方のなりきりぶり、

そしてタットルが毎日郵便配達に出かける先にいる盲目の

老婆のつぶやきぶりがとても印象的でした。

 

演劇にしても映画にしても、

まず何よりも時間的に縛られてしまうから

ある意味無制限に広がる表現が可能な小説の世界観を描き切るのは

そもそもとても難しいことなので、

例えば、熊追いのシーンとか、犬が崖から落ちるシーンなど、

小説において重要なシーンを克明に描写できるだけの

十分な尺がもっとあっらたよかったかなあというのはありました。

そこは観る側の想像力も必要なのだろうなあ。

でも大好きな作品がこうやって立体的に立ち上がってきてくれたのは

本当にうれしいことです。

そして役者の一人一人の役をつかみ取ろうというひたむきさが

ひしひしと伝わってきました。

 

この日は元々予定びっしりで、次の用事があったのだけど、

開演が遅れたことでさらに大変で、

もう少し余韻に浸っていたかったのだけど、

ラストを見送って大慌てで会場を後にしました。

 

 

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小説もとっても愛おしくて素晴らしいので、

ぜひたくさんの人に読んでもらいたい。

以下は、以前読書メーターに書いたレビューです。

気になった人は本屋さんへ!!

 

プラネタリウムのふたご いしいしんじ著】

数奇な星の下に生まれ育った双子がたどる
悲しくもやさしさに満ちた運命、
そしてユニークで忘れ難い人々との
出会いと別れを描いた壮大な物語。
1人は天体を司り、星空に壮大な物語を描き出す。
もう1人は手先を器用に操りながら、
ありとあらゆる奇跡を披露しては人々を驚かせる。
方法は違えどそれぞれのマジックで、
人々を幸福へと導いてゆく。
たとえ遠く離れていようとも、
同じ空の下、見えない指で固く結ばれながら…。
これこそまさにホンモノの物語だと思う。
 
この物語はたくさんのマヤカシと偽り、
愛すべき作り話で満ちている。
天体にまつわる無数の神話、
サーカス一座が繰り広げる手品、
まぼろしの熊、老婆の手紙…。
そもそも泣き男と双子の関係さえ、実の親子ではない。
しかしそれが本物であるかどうかなど大したことではない。
時にマボロシは本物を越える。
誰もが愛する人を驚かせ、
喜ばせるためにちょっとしたマジックを使う手品師なのだ。
そうやってみな繋がっているという深くて大きな教示。
ぼくの見えない透明な6本目の指は
いったい誰と繋がっているだろうか。