社寺めぐりウォーク(東福寺~伏見稲荷神社)
引き続き、学校休校で暇を持て余す親子タイム。
(念のため、これも2週間以上前の話です)
長女は、小学生ながら渋い趣味を持っていて、
和物にとても興味がある。
食事も和食を好み、普段着は着物や浴衣といった和装、
時代劇とか雅楽とか、百人一首といったそういうものが好きみたいで、
将来はそういうものに携わりたいと思っているみたい。
そんな娘さんなので、
せっかくならばと京都へ寺社巡りに連れ出します。
社寺めぐりウォークの記念すべき初回に選んだのは東福寺です。
紅葉のシーズンなどは信じられない人出でごった返しますが、
この日はシーズンオフに加えて、外国人観光客が皆無、
なおかつ平日の曇り空という事で、
ほとんど人がいませんでした。
これほどまでに人がいないのは初めて。
京都五山に数えられる禅寺。
25もの塔頭のある大寺院です。
ちなみに、東福寺の名は
奈良の2大寺の東大寺の「東」と興福寺の「福」を取って名付けられたのだそう。
見どころ満載ですが、まずは日本最古の三門(国宝)。
寺院の多くは度重なる火災で再建されたものですが、
この三門は室町時代の遺構そのまま残されています。
そして立派な仏殿(本堂)を覗くと、
天上には堂本印象画伯の龍図。
これだけの大きさのものをわずか17日で完成させたのだそう。
続きましては、東福寺の最も有名な名所の一つでもある通天橋へ。
東福寺は、洗玉澗という小さな渓谷の上にまたがって建てられており、
その谷に、臥雲橋、通天橋、偃月橋と、
3つの屋根付きの橋廊が渡されています。
紅葉の時期はそれこそ京都1,2を争う名所として大混雑します。
そういう華やかなものを愛でるのもいいですが、
こういう枯れて物侘しさと静寂に包まれた空間を
ゆったりと味わうのもまた一興でございます。
その奥にある常楽庵開山堂もまた静かな趣。
そして方丈も拝観します。
ここは、近代で最重要の作庭師・重森三玲によって作庭された
本坊庭園(八相の庭)が有名ですね(国指定名勝)。
方丈を囲むようにして東西南北に配された4つの庭は、
表現される趣や世界観がそれぞれ独特ですが、
各庭で配され表現された8つのものを、
釈迦が衆生を救うために示した8つの相「八相成道」にちなんで
八相の庭と名付けられていました。
1つ1つの庭がユニークで独創的な作品でありつつ、
全体を通しての物語性を兼ね備えた重森三玲の傑作です。
面白いのは、禅の教えに従って、使用されている資材がすべて、
寺院で不要になった材木や石を再利用して作られているということ。
まずは東庭。
渡廊下をはさんで真隣にある圧倒的スケールの南庭と対照的に、
こじんまりとした印象を受ける東庭。
高さの異なる7つ石柱と、白川砂、苔によって表現されているのは
北斗七星です。
そしてその奥の二重の生け垣が天の川。
他の3つの庭がどちらかというと、意匠を前面に魅せる庭であるのに対して、
この東庭は、限りなくミニマムで静なる世界で、
自分の中では一番魅了されました。
続いて南庭。
まずは何と言っても圧倒的なスケール感に驚かされます。
いかにも日本庭園らしい、蓬莱神仙思想に基づいた構成で、
渦巻く波紋で見立てた「八海」に、
巨石を配することで
東の大海の彼方に仙人が住む「四神仙島」(蓬莱、方丈、瀛州、壺梁)を表現。
西側には京都五山になぞらえた苔山が配されていて、
ここに見事な世界が広がっています。
面白いのは五山の築山と波紋の間が斜めに直線的に区切られているところ。
これは表現的には、次の西庭へ続く布石としても
絶妙な役割を果たしているのだけど、
庭に配された多くのものが、あたかもありのまま、
自然のままに存在するかのように配されているのに対して、
この直線だけがまるで明確な意図を持っているかのように目に飛び込み、
その意図とは、理想郷であり自然あるいは神や仏の領域である八海の世界と、
人間がコントロールする世俗・人工の世界とを区切る
境界(結界?)のようにも思えて、なかなかに面白い。
南庭の苔山の延長から流れて、西庭(井田の庭)へと導かれると、
そこには日本の伝統的な市松模様が強烈に目に飛び込んできます。
サツキの刈込と葛石の使用によって表現されていますが、
それは勅使門から方丈にかけて敷き詰められていた縁石を
再利用したものなのだそう。
資材の再利用が作庭の第一条件とされ、
あまり作庭に利用されない直線的な葛石をどう用いるか、
試行錯誤した末にたどり着いたのが、日本古来の市松模様で、
それが今となっては一周二周して、
極めてモダンな表現方法として源田に再評価されているというのは
実に面白い現象である。
この大胆な市松模様は、さらに次の北庭へと続いており、
苔と敷石によって、さらに見事に表現されています。
西庭から続く方面は規則正しく並んでいるが、
先へ進むほどにそれらは乱れ始め、
次第に苔の世界へと還っていきます。
一説には、西で生まれた仏教が東へ伝番する様や、
お釈迦さまが入滅する様を表したものとも言われています。
個人的には、
南庭の自然の領域である八海から、あの斜めの直線で区切られた築山、
そこから人間の領域として西庭~北庭の市松模様があり、
それがまた自然の領域へと還って、東庭の天の世界へと続いていくというような
森羅万象が一巡りするような感覚を覚えました。
ということで、ほとんど貸し切り状態で、
ゆっくりとお庭を愛でることができました。
といってもこんなことで、小学生の女子が面白いのかどうか?
正直よくわからない。
大丈夫?面白い?と聞くと、
こういうのがええねん、こういうのが落ち着くねんとのこと。
我が娘ながらなかなか独特である。
ちょうど北庭と東庭の間のところで、
庭師さんがお仕事をされていて、
長女はそれを興味津々のまなざしで見つめておりました。
さてさて、東福寺を後にしてそのまま帰るのも忍びないので、
そこから少し歩いてもう一つご近所へ。
ということで伏見稲荷大社へ。
ここも今ではインバウンド向けにものすごい人出を誇る人気スポットですが、
さすがに人は少なかったです。
伏見稲荷大社は全国のお稲荷さんの総本山です。
ちょうどこの日は3.11で、本殿で手を合わせるタイミングで、
14時46分を迎え、そのまま東の方角に向かって合掌・黙祷をしました。
黙祷を終え、目を開けると、
それまでどんよりとした雨雲が一瞬だけ開いて、
西から陽が差しました。
せっかくなので千本鳥居をくぐって、
東山三十六峰の最南端である稲荷山(233m)まで登ります。
奥社には「おもかる石」というものがあり、
お願いごとをしてから石を持ち上げ、
重く感じたら叶いづらく、
軽く感じたら願いが叶うという試し石があります。
さて、娘のお願いは叶うのでしょうか。
さてさて、山頂を目指してさらに奥へと進みます。
四ツ辻を逆回りで一ノ峰へやってきました。
なかなかほどよい運動でした。
お参りを済ませて、写真を撮りつつ無事に下りました。
ということで社寺めぐりウォーク終了。
なかなかおもしろかったということで、
休校の間、しばらくシリーズ化とあいなります。