記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

鳥取民芸の窯元に器を求めてライド 約250km

9月某日のはなし。

 

昔から、器や民芸品についても興味があったのだが、

コロナ禍で、自宅での暮らしが中心となり、

また我が家の食事を受け持つようになって、

それらのありがたみが一層よくわかってきた。

 

例えば、同じ料理を食べるにしても、

良い器に盛りつけるだけで、

なんだかご馳走をいただくような気分になったり、

一輪の花が器にさりげなく飾られているだけで、

部屋の雰囲気が一変したり。

 

つまり、暮らしの中から生まれ、育まれてきた、

上質のデザインがいかに暮らしを豊かにするか、

生活に彩りや心のゆとりを与えてくれるか、ということ。

 

つい先日、とある料理屋さんで、

ハッとするほど美しい器に料理が盛られて出されてきて、

全く惚れこんでしまった。

正確には、前からその器のことは知っていたのだが、

改めて目の前に突然現れて、それを思い出したのだ。

鳥取の窯元で焼かれたその器を眺めながら、

ああこんな器で毎日食事ができたら、きっといいだろうなと、

あれを乗っけてみたり、これを組み合わせてみたりと、

妄想が止まらなくなり、そうなるともう、

これはどうしても手に入れなければ気が済まなくなってしまった。

とはいえ、通販やネットでポチっとするのでは味気ないし、

どうせなら窯元で直接手に取って、手に入れたい。

 

コロナの状況もあるし、

GoToで人の流れがまたどっと増えている時期だったし、

密を裂けて鳥取まで行くにはどうすればよいか、

それに窯元は最寄駅からかなりの山間の集落にあり、

駅からの足がなかなかない。

どうしたものかと思案したが、こういう時こそ、

地足を見せる番ではないか。

 

ということで、久々にロングライドを敢行することにしました。

結局は片道ライドになりましたが、当初は往復で考えていたので

日帰りで帰宅するために、日付が変わると同時に出発となりました。

はやめに仮眠を取ろうとしたけど、全然寝れないま0:30出発。

 

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まずは淀川左岸を下って、R43まで向かうが、

新たに設置される高速道路の工事が何か所もあって、

迂回しながら、新伝法大橋まで。

そこからは基本R43で神戸まで行きます。

昼間は交通量が多いから、

一本海側の裏ルートと合わせてを使うのが常だけど

深夜帯は交通量も少ないし、路面状況もクリアだし、

信号も少なく、ハイスピードを維持して巡行しやすいので

神戸行きはR43に限る。

メリケンパーク着が2:00少し前。

 

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そのままR2に乗り、

ほとんど交通量のない大通りをかっ飛ばす。

明石海峡大橋2:40。

夜釣り客が予想以上に多かった。

明石に3:00。

自宅から2.5hだからまあ悪くないペース。

真夜中はどうせ、景色も見れないし、

ひたすらペースを稼ぐに限る。

 

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和坂を上って、西明石でR250に。

ここもただっ広い大通りを独り占め状態で、

快調にペースを刻む。

ここまで全然休憩を取らずに来て、そろそろガス欠。

腹が鳴るので、別府手前の吉牛にイン。

 

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リスタートしてしばらくして、加古川を渡る。

高砂西で、R250は浜側へ折れてしまうので、

曽根からは裏道へ。

ひめじ別所でR2に復帰し、そのまま進んで市川橋を渡り、

姫路市内へ。そろそろ空が明るくなってきた。

姫路城着が5:30。ここまでで約100km。

 

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姫路市街地内はR2が東向き一方通行なので、

そのまま直進できないので一本下った道を進む。

今宿東で合流し、夢前橋を渡ってR2とはさようなら。

県道724号(因幡街道)で菅生川を右手に観ながら

北上に転じる。

ちょうど往路行程の半分となるポイントにある

長池東のローソンで再び朝ごはんタイム。

 

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リスタートしてすぐに山陽道をくぐり、

下伊勢ランプからR29に入る。

ここからは意外と交通量がある。

最終的には結局R29で鳥取入りするのだが、

登り回避のため、追分で左折し県道724号に入り、

まずは西進。

觜崎橋で揖保川を渡る。

船渡で右折してR179へ。

新宮三差路を直進し県道26号に入り、

ほどなくして姫新線をまたぐ。

 

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しばらくは真横に揖保川を伴っての北上。

空はいいお天気で、少し肌寒いくらいが気持ちよい。

意外と交通量があるが、

そこま神経質になるほどでもなく。

じきに宍粟(しそう)市に入る。

(余談だが、このすぐお隣の神河町が、のんちゃんの生まれ故郷)

山崎インターでR29に合流&中国道をくぐり、

今宿北のファミマで小休止。時刻は7:30。

久々ロングなので、そろそろ腰が痛い。

そしてそろそろ眠たくなる時間帯、ZZZ…。

 

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リスタート後は引き続き、揖保川沿いを遡上していきます。

この辺りから交通量が減るのを期待してたのだけど、

早朝練習の部活関連の送迎の車やら、

早立ちのバイカー集団、トラックもそこそこ往来があり、

トラフィックが忙しい。

道は基本的に登り基調だが、あまり感覚がないほど、

この辺りは緩め。安積橋で左折し、揖保川を離れ、

支流の引原川沿いに向かう。

いよいよ若桜街道に入りました。

 

そして少し行った先の道の駅みなみ波賀で小休止。

とにかく喉が渇く。

 

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9:00ジャストにリスタート。

しばらくはダラダラとした道だが、

道の駅はがを越えたくらいから、

少しずつ斜度が上がってくる。

えっちらおっちら上って引原ダム。

そのまま音引湖をなぞるようにして、進んでいきます。

 

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ダム湖を過ぎると再び斜度を上げていく。

ドライブインみやなかの先に、まず1つ目のトンネル。

登り基調だが、後続のバイクが嫌なので、スパートをかけて

手早く抜ける。ゼエゼエ。

その先、ハチ北へ抜ける県道48号との合流点を通過すると、

ダラダラ、クネクネと鈍い登りを詰めて、

ようやく新戸倉トンネルに到着。時刻は10:30。

ここまでが関西エリア、

これを抜ければ中国地方、山陰エリアという境界になる。

そして本日のチマコッピ、標高731mです。

 

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約1700mと長い長いトンネルは、

兵庫側から入ってすぐに下り基調になる。

後ろから車やバイクが続々来るので、

できるだけ手早くクリアしたいが、

ダウンヒルで焦っては余計に危険なので、

慎重にも慎重を期して丁寧に。

無事にトンネルを抜けると、鳥取県そして若桜町の看板。

おひさしぶりの鳥取

 

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トンネルを抜けると、若桜の町までの5,6kmほどは

ほぼほぼ下り。ぐんぐん加速して下っていきますが、

序盤はテクニカルなクネクネが連続するので、注意が必要。

ずっと前傾でブレーキを握りっぱなので、腕が疲れる!!

そして11時を少し過ぎたくらいで若桜鉄道若桜駅に到着。

ここでしばしの休憩。

 

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11:30にリスタート。

ハイライトの戸倉峠を無事に越え、

鳥取県に入ったということで、ちょっと油断しがちだが、

鳥取市街&砂丘までは、実はまだ30~40km近くある。

(今回の目的地の窯元は、そことはまたちょっと離れた場所にある。)

引き続きR29で西進するが、

ところどころ轍がひどくて走りづらい。

群家の手前で左折し、八東川沿いの県道324号に入る。

ただこの道、そのまま進むとトンネルに突入してしまうので

船久橋で県道32号にスイッチ。

しばらく西進すると、

正面右手に河原城(丸山城)の模擬天守が見えてきました。

 

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鳥取道をまたいで、千代川を渡って、

県道195号に左折。

千代川沿いに南下してそのまま道なりに県道196号を進む。

しばらく進んで中井という集落にやってきました。

時刻は12:30。ジャスト12時間で目的地に到着しました。

 

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集落に入ってすぐのところに、

登り窯が見えていて、

そこが今回の目的地、因州・中井窯です。

 

1945年に初代・坂本俊郎がこの地に登り窯を築窯し、

のちに鳥取生まれの民芸運動家・吉田璋也氏の導きで、

新作民芸に携わることに。

現在は三代目・中井章さんが作陶され、

工業デザイナー柳宗理ディレクション作品や

BEAMSとのコラボなどで注目を浴びている窯元です。

同じ中井集落にある牛ノ戸焼から受け継がれた

緑・黒・白の釉薬を使って染め分けられた

モダンで大胆なデザインが美しい器の数々は、目を見張ります。

 

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ここは作業場の横にギャラリーが設けられていて、

そこで実際に器を手に取ってみることができ、

購入することができます。

早速中に入ると、それはそれは美しい世界。

思わず、わあと声を上げてしまいました。

サイズやものによってはお値段の張るものもありますが、

元々が、豪華絢爛で高価な器ではなく、

暮らしの中で使われる民藝のものということもあり、

比較的求めやすいものがたくさんあります。

とはいっても、あれもこれもというわけにもいかないので、

1つ1つ手に取って、わが家の食卓を想像しながら、

日常的に使えるサイズや形のものを吟味します。

 

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色々と悩みに悩みぬいて、

青黒のものと、青黒白の3色の大皿の2枚にしました。

ああ、これは・・・いいものだ。

実際にはこれは見本で、

これから注文に応じて焼いていただくのですが、

人気で殺到しているため、数か月後にわが家に届くことになっています。

今からすでに待ち遠しい。

 

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よい買い物をして、せっかくなので、

同じ集落にある牛ノ戸焼き窯元にも少しだけ寄ってみました。

こちらは特に見学スペースなどはないようで、

わずかな時間の滞在となりました。

 

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さて、時刻は13時。

せっかく鳥取まで来たので、少し寄り道をしていきます。

県道196号を戻り、千代川沿いに北へ。

県道32号はアゲインストの風が強くてなかなか進まない。

源太橋で対岸に渡り、R53に入り、

車の流れに乗って鳥取市街へ突入。

ひとまずは、他はさておきお腹がペコペコなので、

いつも鳥取を訪れる際はマストで訪れるなじみの店へ。

 

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ここのカレーが本当に大好きで、

何の変哲もない欧風カレーなのだけど、

とろみ具合、奥深い味わいが自分にドンピシャで、

かれこれお10年ほど通っています。

久々にありつけましたが、やっぱり好き!!

そして、デザートには、

これまた食べずには帰れないインド氷。

この頃はかき氷専門店が登場して、

いろんな味や工夫が楽しめますが、

10年前にこの味を知った時は本当に大発見でした。

いやあ、やっぱり旨い!!

大満足!!

 

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お腹を満たして、元気も出たので、

せっかくならもひと足。

裏道を伝って、県道318号に入る。

鳥取バイパスをくぐって、そこからちょいとの小登り。

ピークのトンネルをくぐれば、そこは鳥取砂丘!!

砂丘内は自転車乗り入れ禁止なのだが、

自転車を置いていくわけにもいかないし、

まあ言っちゃあただのでっかい砂場なので特にすることもないので

入り口のところで記念撮影して、すぐに退散。

 

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鳥取市街へ取って返して、もう一か所寄り道、

鳥取民藝美術館へ。

その隣には鳥取県内や山陰、全国の窯元の器がそろう、

たくみ工芸店があり、軽く覗いてみるつもりが、

余りに素晴らしいラインナップに一気に目の色が変わる。

ああ、あれもほしい、これもいい!!うわうわうわ!!

結局、思いがけず4つも器を買ってしまいました。

(まだもっと買いたかったのをぐっと我慢…)

 

お店の方と色々お話しできて、

窯元のこと器のこと教えていただきました。

大阪からチャリで来たというと、大層びっくりして、

外に置いてあったバイクにも興味津々にされてました。

 

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これだけ買い物で盛り上がるのも日頃あまりなく、

1人で盛り上がって、

どうにか帰って即日使いたい欲が勝ってしまい、

発送にせずに、二重に包んでもらってしまいました。

が、少し走ってみて、これは絶対割らずに走って帰るのは無理!

となってしまいました。

まあ、今回の目的は走ることより、器を求めることだったし、

早く持って帰って奥さんに披露したいということもあって、

復路は早々に断念して、鳥取駅からは輪行で帰ることにしました。

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帰宅後、早速器をお披露目。

まずは見事な大皿は筑前は日田の小鹿田焼(おんたやき)。

民芸運動の指導者・柳宋悦や

イギリス人陶芸家バーナード・リーチらによって

世界的に名を知らしめ、

1995年には国の無形重要文化財にも指定されています。

飛びカンナと呼ばれる道具を使って、

つけられた幾何学模様が実に美しい。

 

続いて右側の渋く深い色合いに焼き上げられた、

やわらかで無駄のないフォルムの中皿は、

鳥取・岩美町の延興寺焼。

手に持った時の収まりやすさがとてもよいのと、

使い勝手の良いサイズ感が購入の決め手でした。

 

そして下の二つは、今回訪れた中井集落にあった

牛の戸窯の小鉢。

静かながらにも力強く主張する黒と青のコントラスト。

たまりません。

 

そして焼き上がりの待ち遠しい、お目当ての因州・中井窯。

いい買い物ができました。

 

※画像の解説の紙、左右間違って置いてます…

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ということで、早速わが家の食卓にも

ジャンジャン登板していますが、

やはり同じ料理でも、素敵な器に盛りつけるだけで

なんだかおいしさが違います。

そして華やかな祝祭感が漂います。

今までの暮らしでは、あくせくと忙しい日々で、

きっとここまで深く感じたり、

こだわることのできなかったものに、

図らずも”気づき” が芽生えたのは、本当に幸せなことです。

こういう小さな喜びを日々少しずつ少しずつ。

 

ライドの方は、片道にはなりましたが、

久々にまっとうなロングといえる距離が走れてよかった。

やっぱり久しく乗っていないと、お尻やら腰や首やら、

あっちこっち痛いけれども、ペース的なものなんかは、

余りブランクを感じなかったし(もともと速くはないけどね笑)

鳥取も楽しめたし、いいライドでした。