記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

阿部海太『ぼくがふえをふいたら』原画と新作展 at itohen

少し前の話。

いつもお世話になっているiohenさんへ。

ほぼ毎回、家族で参加しているデッサン教室の先生でもある、

画家・絵本作家の阿部海太さんが、

新しい絵本『ぼくがふえをふいたら』を出版するにあたって、

原画(+新作)の展覧会を開くことになったので、

家族でお邪魔してきました。

 

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鮮やかな夕焼けに照らされた空と大地に

「ぼく」と犬のふたりだけ。

フルーフルー おもむろにぼくが笛を吹けば、

大地に響く音色に呼び起された色々な動物たちが、

次々と音を鳴らして、

すっかり暗くなった地平のむこうから、やってくる。

思い思いに打ち鳴らされた素朴な音は、

ひとつ、またひとつと折り重なって、

おっきなおっきな音楽となって世界を満たしてゆく。

 

どこか古代から伝わる星座に込められた神話の数々、あるいは、

宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』に出てくる「ケンタウル祭」を

思わず連想するような宇宙的な奥行きを感じさせるモチーフ。

 

そして、タタ タタ、ビーンビーン、カチャケチャ、オーンと

絵から聴こえてくる原始的でみずみずしいリズムが

まるでページをめくるごとに手をつなぎ、

少しずつ重なって、ふくらんで、

祭囃子のように、空に大地にこだましてゆくのが、

はっきりと分かる。

 

それにしてもこの色の鮮やかさはどうしたものか。

まるで物語の鼓動に合わせて色彩が躍っている。

あの燃えるような赤は、果たして、

燦燦と降りしきる太陽の日差しから

借りてきたのだろうか。

あのどこまでも複雑に光り陰り、

表情を見事に変えていく青色は、

まるで赤道直下の大海原から

そのまま掬い取ってきたものだろうか。

まさかあの深く深く果てのない黒い色のかたまりは、

いつかの夜から盗み出してきたものだろうか。

あの眩いほどのイエローは…。

生き生きと漲るグリーンは…。

そして、色と色がぶつかり合い、弾け合い、

そうして生まれた、

名前すらつけることのできないたくさんの色たち。

絵が、キャンバスを乗り出して、無邪気にほとばしる。

そして音と色のアンサンブルが、

「生きる」ということを強く強く肯定している。

輝ける一冊。

 

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コロナ禍でしばらくデッサン教室もお休みだったので

阿部さんとはお久しぶりで、

itohenも今年初だったので、

どうぞよろしくお願いしますとご挨拶。

美味しいチャイを飲みながら、

ゆったりとした休日を過ごせました。

 

ぼくがふえをふいたら

ぼくがふえをふいたら