記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

『ポーの物語』 by いしいしんじ

ポー、ポーや。うなぎ女の母なるささやきが聞こえる。
晴れです、空広いです、天気売りのうれしそうな声がこだまする。
ひまし女の卑屈な笑い声。虹色に輝くメリーゴーランドの背中。
犬じじの深く刻まれた皺。蒸気とともに揺らめくうみうしさんの半透明の身体。
出逢った全ての人の想いを通り抜けて、ただひたすらにポーはゆく。
赤茶色に焼けた荒野を地を這いながら飛行する白鳩や
黒々と光る大うなぎの尾ひれを追いかけて。
それは生と死、そして償いの意味を求める旅。
業に満ちた物語。
ポー、それは私たちみんなの息子。
これほどまでに壮大で、愛と想像力に満ちた物語をほかに知らない。
何度読んでも胸が躍り、何度読んでも懐かしく暖かい。
名作。


ポーの話

ポーの話