記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

7サミッツ 六甲ステージ編

はてさて、我ながら長々と綴ってきた地獄の7サミッツも最終章。
もう少しお付き合いください。


ぱしゃ君の肉離れというアクシデントがありながらも
なんとか6つ目の中山桜台を制覇した一行は、いざ六甲へ向かう。
中筋で県道332号に入る。向かい風でローテで回すも30kmがいっぱい。
ぱしゃ君の肉離れはもう回しても痛みがないので一時的なもののよう。一安心。
途中で裏道に入り小浜宿を抜け、車で大渋滞の中、武庫川を渡る。
消防署前で曲がって逆瀬川駅へ。
ここの上りでさえ疲れが見え見えのぱしゃ君には厳しい感じ。
そしていよいよ踏切までやってきました。
休憩なしでスタートのつもりだったが運悪く踏切で足止め。


気分を入れ替えていざ12kmの上りに挑む。
序盤は緩いが、後半を考えると無理はさせられない。
そこそこ18kmくらいペースで曳く。
後ろでは意外と行けそうじゃんといった風のぱしゃ君。
しかしこれはホンの序章。君はまだ甲寿橋から続く4kmの地獄を知らない…
とにもかくにも白瀬橋までは順調そのもの。
そこから逆瀬川マンション沿いに精神的にきついロングストレート。
ペース優先で無理せず進む。途中から目に見えて斜度が上がるところで
ぱしゃ君がめげそうになっているので、その先少しで一旦平坦だからと声をかける。
そしてダンシングを少し交えながらなんとかゆずり葉台の入口まで到達。
わずかな平坦部で足休め。
そこから少し上るが、それを超えたらしばらく下りだからと甘い言葉で釣って進む。
西宮市との市境まで上りつめて、しばしの下り。
しかもここは防護ネットのおかげで少し日差しも遮られているのでありがたい。
下りも積極的に回すというより、乳酸がたまらないように足を回す程度で温存。
そしてなんとか甲寿橋に到着。ここまで16分半。思ったよりもなかなかいいペース。


ちょうど赤信号になってしまったので一旦休憩。感想を聞くと、
この調子だったら六甲制覇、全然行けんでと軽口。
ふふふ、その感想はこの直後、ものの見事に打ち砕かれるぞい。
赤信号明けにさしスタートするが、ぱしゃ君得意のクリートはめ損ないでロス。
ここから本線合流まで10%、そして本線から盤滝まで12%の坂が休みなく続く。
ゆっくり10kmペースで進む。本線手前、旧道別れのところで路駐がずら〜っとおり
しかも後ろから車がバンバン来るので危ない。
一旦脇へそれて後ろの車を先行させて再スタート。
この短い区間、日よけが全くないので暑さがハンパなく、疲労度が増す。
でもここの区間は車が多いのでできるだけ早く抜けたいので、ぱしゃ君にがんばれとエール。
ときどき後ろの様子を振り返りながら上るが、
さすがに2ケタ斜度がこれだけの長さ続く坂は初めてなのでかなりきつそう。
汗はじょんじょろだし、リンゴのように顔が真っ赤に充血している。
なんとか盤滝の交差点に到着。赤信号だったし、ぱしゃ君のクールダンが必要だったので一旦停止。
ここで2人のローディーさんが下ってきた。
ぱしゃ君急いで水をかぶり、氷結のお茶をがぶ飲み。
さっきの軽口はもう、当の昔に消え失せた様子。でもまだここは地獄の一丁目
3つのダブルヘアピンをクリアし、宝殿手前の激坂が待ち受けているのだ。
でもここまできたらもう上るしか選択の余地はない。


リスタート後、しばらくは平坦。そこは足慣らしで無理しない。
小笹峠分岐からいよいよ地獄の本編が始まりだす。
斜度はもちろんだが、減速帯が不快感を増大させる。
これにはぱしゃ君もイライラし始める。
びしゃもん橋を抜けることから、全く会話がなくなる。
スピードも6,8kmくらい。それでもいいからひたすら回し続けろと声を出す。
足を回し続けるのも地獄だが、止まればそれ以上に地獄、それがヒルクライム
それに12%が続くこの坂で止まればぱしゃ君はビンディングを再装着出来ないだろう。
が、次の橋のところでついにぱしゃ君足付き…
こちらもこんなところでお付き合いして止まれないので、
ひとまず斜度の緩むファーストのヘアピンまで行って待機することにする。
ぱしゃ君はリスタートをあきらめ、ビンディングで歩きにくい中押して上がってくることに。
それもまたしんどい。
ファーストのところでほぼ平坦の部分が若干あるのでそこで回しながら待機していると、
命からがらと言った風でビアンキを押して上がってくるぱしゃ君。
今まで見たことのないような弱気で泣きそうなぱしゃ君。
一度足を止めてしまうと底なしの地獄がやってくるのだ。
その地獄に今にも飲み込まれそうになっている。
そしてこのわずかな平坦部分の先に、視覚的にエグい上り返しが立ちはだかるのを見て
完全に戦意喪失しているぱしゃ君。顔に血の気がない。
あかん、レベルが違いすぎる…とか、いままでの6つ合わせたよりキツイと弱音が続出。
でも昨晩から必死にここまでやってきたアホな努力を思い出せ!
ここで下るのは簡単だ。でもそれではまた1からやり直しだぞ!と
わけのわからない理屈で、とにかく蚊が止まるペースでも、
足付きしてでも上を目指す、ゴールに到達するのだ!
しぶしぶ再スタートのためクリートを装着するぱしゃ君。
そこから清流橋までの急な上り返し。しかし、橋が見える手前で再び足付き。
もう肉体の危機に近いくらい限界がきているようだ。
こちらはセカンドの緩めのところで待機し、ぱしゃ君を待つ。
ぱしゃ君のペースに合わせてゆっくり上って初めて気付いたが、
どこもかしこも斜度がいつも走っているよりきつく感じる。
いつものTTモードではさっと抜けてしまうような部分も
じっくり味わってみると結構どこも厳しい。
今日はそれに、自分も相当消耗しているので余計にそう感じるのかもしれない。
しばらくしてフラフラのぱしゃ君が合流。
そこからぱしゃ君から、自転車に乗ってもあっちへフラフラ、こっちへフラフラして
後ろから来る車をよける自信がないから、押して上がるから、
宝殿で待っててくれと懇願され、それではここまでと懇情の別れ。
一足先に急ぐ。地獄の六甲コースの中で最も厳しいのがサードから宝殿までの区間
ボロボロの身だし、タイムももう関係ない状態だが、手は抜きたくないので本気で行く。
ダンシングを交えて14kmくらいペース。意外とやれば出来るもんだ。
難なく宝殿に到着。ぱしゃ君の安否が心配だ。
でも下って迎えに行くだけの余力がない。疲労困憊、睡眠限界、灼熱地獄。
どれくらい経ったかようやくぱしゃ君が合流。しばらく休息。


ここからラストまで残り2kmくらい。もういちばん厳しい区間は終わり。
しんどいには変わりないが、もう絶対無理と言う傾斜ではないし、
最後はきちんと自転車でゴールしたいが、どう?と聞くと、
殊勝にもがんばるの一言。覚悟を決めてフィナーレへ向かう。
8kmペースで尾根を目指す。かなり厳しそうだが、声をかけ続け前に進む。
尾根に入り少し緩む。ここから東縦走分岐までが最後の勝負。
あとカーブ3つ、2つ、もう上を見ても山が高いところがないからすぐ、
あそこのカーブ曲がって木の切れ目、あの空のところで実質終わり、
と具体的な目標を声に出して伝え、気持ちが切れないようにエールを送る。
無言ながらも必死でペダルを回すことでそれに応えるぱしゃ君。
ようやくピークを越え、少しの下りで一安心。
トンネルを越え、あとはラストスパートを言い置いてお先にスパート。
今月2度目の一軒茶屋に着いたら、すぐにカメラを用意。
ヘロンヘロンで上がってくるぱしゃ君の雄姿をパシリ。
ついについにやりました!7サミッツ達成!
幾多の敵の攻撃を耐え、苦難苦行を乗り越え、ついにゴールです。
みなさん!ありがとう、ありがとう!
ぱしゃ君もよくやった!


↓瀕死のフィニッシュ

しばらく、ゴール地点で廃人のごとき有様でぼ〜。
そのあと祝杯の代わりに、一軒茶屋で一番贅沢なカツカレーを頼み、
すきっ腹に満足を充てんさせる。
ぱしゃ君は六甲のおぞましさを心底痛感した様子で、
もう二度と上らねえ、絶対に上らねえ、とうわごとのように繰り返す。
中山桜台レベルの山を一晩に3度も上れるようになったので、
六甲大丈夫かと思ったがまだ少し早すぎたのかもしれない。
足も付いたし、押し歩き区間もあったが、それでも一軒茶屋までまぎれもなく上ったことは誇っていいと思うよ。


↓一軒茶屋のカツカレーでお祝い


↓終わったぜ


さあ、全く世間に評価されることのない、無意味でアホな挑戦がこれにて幕を閉じたわけだが、
いかんせん、家に帰らねばならんのだ!
やりきった感でモチベーションがグ〜ンと落ち、逆に昼を過ぎて急上昇中の気温と太陽。
もう最寄りのホテルで一泊したい気分。
それでも自分の足で帰らなきゃならんわけです。
まずは六甲のダウンヒル。いっつもしんどいが、今日は減速帯がいつも以上に牙をむく。
もう振動に耐えられる体じゃないわけですヨ!
集中力・判断力がかなり落ちているので、30kmを超えないくらいでフルブレーキで進む。
腕が肩やらがかなりしんどい。そのうえの減速帯の振動。フラフラです。
命からがら甲寿橋まで下りてきたはいいが、今度はむせかえすような暑さが選手交代でやってくる。
なんじゃこの暑さは!蜃気楼なのか視力に影響がきているのか道がぐにゃりと見える。
イカイカン!
鷲方面へ下り、北山貯水池〜神呪寺と過ぎて、ピクニックセンターの道を選択。
そして仁川の激坂へご案内したら、超びびってた。
試しに上り返すか?と冗談半分で聞いたら、マジでキレられた。嘘ですやん。
そこからできるだけ日よけのあるコースをということで新幹線沿いの道をチョイス。
もう平坦でも全く回せない2人。ずっと惰性で進む。
信号が多く、しかも赤信号でつかまりまくりでイライラ。
もう停まって再スタートもしんどいのじゃ!
で、神崎川の橋の上りで、今日最後の上りを終え、無事に十三まで来ると、
ぱしゃ君が「ああああああ、もう家が近い。家が近いなんて。ああああ」
と深い感動を覚えているようで、一刻も早くシャワーを浴びて布団に入りたい様子。
うんうん、わかる、よ〜くわかる。
そしていよいよぱしゃ君の家に到着。互いに健闘をたたえあって再見!
こちらはその後、3km先の家まで。


こうして、アホな企画は血と汗と脱力感にまみれて達成され、
微塵も感動を巻き起こすことのないままに幕を閉じたとさ。チャンチャン♪


追伸:もう二度とせんからなー!!!