記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

『GHOST IN THE SHELL』 by ルパート・サンダース監督


ガンダムよりもエヴァよりも、無類の攻殻好きとしては
この映画を観に行かねばならぬということで映画館へ。
ジャパニーズアニメの世界をハリウッドが実写化というと
どうしてもちゃんちゃらおかしい結果になってしまうのだけど、
実写化不可能と言われていた攻殻の世界を
これほど見事に表現していることに素直に驚いた。
もちろん、士郎ワールドとも、押井ワールドとも、
神山ワールドとも似て非なるものではあるけれど、
激しい息遣いが聞こえてくるアクションの臨場感や、
生身の人間だからこそ表現できるゴーストのあり方や表現など
極めてクオリティの高いSFアクション映画に仕上がっていた。
なにより、きっと監督の押井LOVE、押井リスペクトが
画面からひしひしと伝わってきて(犬好きの押井を連想させるシーンも)、
それがあるから全く手を抜けないという緊張感があった。
またこういう映画だと大抵、
CGや背景の世界観にばかりこだわりすぎて
肝心のストーリーや、役者の演技が置いてけぼりされがちだが、
きちんと、マシンと人間との狭間に生きる上で、
「ゴースト」とは何かという肝心のテーマに
しっかり向き合っていたのが良かったと思う。


特に素晴らしかったのは主演のスカーレット・ヨハンソンの表情。
強いゴーストを感じる生命力あふれるまなざしと、
義体化され改ざんされた記憶に苦悩する心ここにあらずな虚無感、
その相反する表現を同時にこなしてしまうところがすごい。
これは以前主演した『真珠の耳飾りの少女』でもそうだったが、
彼女の持つ、造形として美しすぎるマネキン的な素質がうまく生かされた
まさにキャスティングの妙だろう。
もう一つすごかったのは、出演時間はほんのわずかだが、
スカーレットとは真逆のどこまでも人間臭い強烈なインパクトを残した
桃井かおり。この人ほんとスゴイ。
台詞も英語だし、ハリウッド大作映画の現場なのに、
桃井かおりはいつでもどこでも桃井かおり
その圧倒的な存在感と説得力。恐れ入った。
逆に、ビートたけしは出損感。
『JM』とか意外とハリウッドのSF映画とは縁があるし、
ジャパニーズ文化に敬意を表してという意味でも
キャスティングされたのだろうけど
どうもどのセリフも血が通わない棒で、
ストーリーから一人浮いた存在になってしまっていた。
これはたけしが悪いというよりも、
棒にならざるをえない嘘っぽい、
芝居がかったセリフばかりを用意したのが悪い。


今回は字幕版で観たが、日本語吹き替え版は、
なんとオリジナルの声優陣が担当しているという粋な計らい。
やっぱ少佐は田中さん、バトーは大塚さん、トグサは山寺さんでなきゃ。
そちらも機会があればいずれ。
そして神山監督により新シリーズの立ち上げも発表されたし、
そちらも楽しみ。