記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

星座から見た地球

Aの主張では地球という惑星で起こるささいな事象を切り取った一種の観察日記だという。
あの日あの時、彼/彼女たちに起こった小さな発見や事件あるいは主張すべき事柄について
拾い集めたスケッチブックのようなものと考えていただきたい。
秘訣は細かな部分まで丁寧に綴ることであると教えている。
Bにとってこれは全くの他人事ではなかった。
ここに描かれたことについて、彼はまったく身に覚えがあったからだ。
無視するわけにはいかなかった。
もしかしたらこれは彼本人についての物語かもしれなかったからである。
Cに言わせればこれは全くのでっちあげだと言う。
話の中身もてんでアベコベでデタラメ。
騙されてはいけないと警戒している。
気付けばもう随分前からDは黙ったままだ。
どうかしたのかというコチラの心配を他所に、彼は一心不乱に本にかじりついていたのである。
そういった時はまず間違いなく彼が深く感動している証拠である。
そしてこの状況はあと数時間は続くであろう。しばらくそっとしておこう。


こないだの恵文社での戦利品のうちの1冊。
読みやすい本だとは思わない。話の筋は正直ちんぷんかんぷん。
バラバラになったパズルのピースを手当たり次第に拾い上げ、
そうこうしながら一つの大きなイメージを組み立てていくという感じ。
さっき出てきたシチュエーションと繋がっているようで繋がっていない、
と思ったら実は繋がっていたり。
あれ!?ここさっき読んだぞというように、いつのまにかループしていたり、
まるで誰かの記憶の一部、イメージの断片に迷い込んでしまったかのような不思議な後読感。
とてつもなくシュールであると同時に、えもいえぬ愛に包まれているような幸福感。
一読の価値ありと思う。


星座から見た地球

星座から見た地球