記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

 『127時間』 by A・ラルストン

127時間 (小学館文庫)

127時間 (小学館文庫)


沈黙と乾燥が支配するデザートキャニオンの奥底で、
大岩に腕を挟まれて身動きが出来なくなった青年が
127時間の壮絶なサバイバルの末に生還を果たす実話ドキュメント
500kgもの岩塊に右手を押しつぶされて身動きできないという絶体絶命の状況。
四方15km圏に人が全くおらず、おまけに誰にも行き先を告げずに出掛けたことで
捜索が開始されて救助が見込めるのは早くて1週間。
手元にあるのはわずかな食料と1リットルの水だけ。
40度を超える日中の暑さと夜の寒さ。
狭い谷底を漂う耐えがたい孤独。
この極限の状況を冷静な頭で判断分析し、
不屈の精神でもって脱出の可能性を一つ一つ検証していく。
この自然からの無慈悲な仕打ちの前には全く無意味と思われることでも
あえて細かい目標を設定し(例えばロープを紡ぐ、岩を1時間で1mm削るなど)
それを地道にクリアしていくことで精神的希望を維持し続ける。
決して諦めないというサバイバルの極意。
これは口で言うのは簡単だが、いざ実行となると到底真似できない。
そして最後の最後には、小さいサバイバルナイフで押しつぶされた右手を切断するという
自殺行為とも思える最後の手段を遂行する。
まるで他人事のように何処までも冷静沈着に事態を見定め、
時には文字通り決死の超難解なミッションに対して、
持てる力の全てを注ぐことに喜びを感じているかのようにさえ見える。
ただただタフとしか言いようがない。
ソロで山に挑むリスク、サバイバル対処法として一読の価値あり。
D・ボイル監督で映画化もされるそうなのでそれも楽しみ。