記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

社家郷山・樫ヶ峰

土曜日。奥さんが14時前に仕事から帰ってきてからフリーに。
今から出動しても山歩きを開始できるのは15時。
なんぼ遅くても18:30には野に下っておきたいのであまり広いエリアは無理。
といって荒地山ばかりでは飽きてくるので、ちょっとマイナーな東六甲の最果てエリアを散策。
樫ヶ峰を中心とする狭いエリアではあったが、
谷底歩きに、眺望満点のスポット、そして恐怖の痩せ尾根綱渡りと
バラエティー豊かな楽しみ方ができてなかなかあなどれないゾーンだった。


<本日のコース>
阪急夙川駅〜(さくらやまなみバス)〜かぶとやま荘〜長谷峠〜キジ谷ルート〜社家郷大滝
〜外れ峰〜小笠峰〜西三ッ辻出合(社家郷山)〜展望ルート〜東三ッ辻出合
〜イノシシ池〜キレット展望台〜東三ッ辻出合〜馬の背〜樫ヶ峰〜東三ッ辻出合
〜痩せガレ尾根〜焼ヶ石原〜ゆずり葉台〜なだうら堰堤〜慈癒の小径〜東縦走〜塩尾寺〜阪急宝塚駅



13:50の特急に乗って夙川着が14:10。今日はここから登り口まではバス。
14:30にさくらやまなみバスに乗り込む。
いつもならロードでえっちら登るおなじみの鷲林寺TTコースを車窓から。
なんとなく後ろめたい気分になるのはなぜだろう?
それにしてもバスから見ていると、
夙川学園までの序盤がローディーにとっていかに危険な道かが分かる。
ロードで走っている時は自分の走りで精いっぱいだから感覚が薄いかもだが
ドライバー目線からしたら、あの狭い路肩でチャリが走ってたら
相当シビアだと思う。事故っても不思議じゃない。
できるだけ鷲コースは走らないようにしよう。
本当は西宮甲山高校前で降りるつもりだったが、
たまたま登り口により近いかぶとやま荘のバス停に停まる便だったので
そちらで降りる。ラッキー♪
保養所のロータリーで降り、すぐに上がってきた道を少し戻ると
立派な門のようなものがそびえるキャンプ場の入り口がある。


↓スタート地点のかぶとやま荘(一部の便のみバス停車)

↓山への入り口


急な階段がずっと続く山道をえっちらおっちら上がっていく。
しばらく登って少し下ったところが、長谷峠。
ここでは3つのルートに分岐がある。
ひとつは直進して東屋経由で展望ルートの西三ッ辻を目指すコース。
向かって右側は、東三ッ辻へと続くキレットルート
そして左側にはキャンプ地への立ち入り禁止のフェンスが張られているが、
今日はこの左側に進んでキジ谷ルートを選択する。
このエリアの目標点は、樫ヶ峰で自分も最終的にそこを目指すのだが、
あえて一番遠回りで難易度の高いルートで。
長谷峠からは広く緩やかな下りを進む。
少し歩くと先が明るくなっており、コンクリの階段スロープ溝がみえる。
ここがキャンプ場の敷地との境界らしく、
そこから南斜面にキャンプ場が広がっていて子供たちがワイワイやっている
それを横目にコソコソと溝を歩いて端まで行くと、そこからただっ広い林となる。
ここにはピンクリボンだらけで、どこが正しい道かわからないまま、
とりあえず進行方向へ藪を突っ切ると、きちんと整備された道に出た。
だいぶ荒れ果てている道の状況を考えると歩く人がほとんどいない様子だが
案内板などがしっかり設置されているのでまずロストしないだろう。
しばらくこの道を進んでいると、向かって左側からエンジン音。
覗いてみると盤滝までの旧道と新道が合流する地点のすぐ近くだった。
ナルホド。ロードでは何度も通過しているはずだが、
ロードに乗っているだけじゃこの場所も知らなかったわけか、と考えながら
しばらく見ていると何人かのローディーが頑張って登っているのが見えた。
がんばれ!


↓長谷峠

↓随所に案内板があるのでそれに従えばロストしない

↓ロードだと何気にしんどい盤滝までの区間が眼下に


人口道の景色とおさらばしてすぐに、大きな堰堤を通過し、
キジ谷の底に到達。
水量は少ないが、なんども沢を横断したり、沢幅が狭い個所があって
靴が濡れないように注意しながら遡上していく。
しばらくすると石を積み上げた堰堤が立ちはだかる。
それを向かって右手から巻いていく。
誰もいない、何も音のしない、静かな静かな谷底を独占している幸せを感じながら
大石だらけの沢をえっちら登っていると、目の前に大滝が出現。
そばにはご丁寧な看板があって、社家郷大滝とある。
ちょうど座るのにいい岩があったので、そこで遅めのランチ。
マイナスイオンが心地よいぞよ。


↓枯れた沢を遡上するルート

↓幾多の堰が立ちはだかる

↓社家郷大滝


しばらく休憩ののち再スタート。まずは大滝を越えていきます。
向かって右手の急斜面に鎖場があって、ガシガシよじ登って向こう側へ。
そこからは幾多の石積みの堰を連続で越えていく。
途中からは完全に水の流れはなくなって、かわりにでっかい石がゴロゴロ。
傾斜も厳しくなっていき、なかなか骨が折れる。
オーラスと思われる急な傾斜をよじ登ると展望ルートへの案内板があって、
そこからは沢道から普通のけもの道にかわる。
尾根道に出てしばらくすると、外れ峰への分岐にあたる。
せっかくなので寄り道で外れ峰へ行ってみるが展望も何もなしですぐに引き返す。
で、ようやく小笠峰で東西をつなぐ樫ヶ峰エリアのメインルートである
展望ルートに到達。


↓大滝は向かって右手の急斜面を鎖を利用しながらよじ登る

↓沢ガニ発見

↓なかなか骨の折れる谷

↓小笠峰の外れ峰、展望なし

↓小笠峰で、展望ルートに入る


展望ルートまで来ると、道もよく整備され、分岐には立派な立て看板があり快適そのもの。
この辺の山はふもとの宗教施設や地域住民によってしっかりと手入れされているのだろう。
低木が茂っていているが、北側に東縦走路のある山並みが見え隠れする。
快適な尾根道を上ったり下ったりして、西三ッ辻出合を直進。
さらに進んで帰路として選択する北側斜面への下り口を確認して、東三ッ辻出合到達。
この時点で16:30くらいで、どうしようかと思ったが、絶景を見て帰りたいので寄り道。
まずは分岐をキレットルートに折れて南側斜面を下っていく。
しばらくすると巨大なイノシシの水浴び場が右手に現れる。
こんな山上に近いところに池があるのが不思議。
今日は見かけなかったがこの辺にもイノーさんがいるんだなあ。
そこからさらに急な斜面を下ると、展望台への枝道の案内板がありそちらへ。
しばらく怪しげな尾根道を進んでいくと、急に林を抜けて空が広がる。
目の前には碑のようなものがあってそこが終点。
その地点からは、向かって左手に樫ヶ峰、右下には西宮甲山高校、
目の前に甲山と深谷貯水池があり、さらにその向こうへ大阪平野が広がる。
素晴らしい眺望で、しばらく見惚れる。


↓西三ッ辻出合

キレットルート途中にあるイノシシ池

キレット展望台からの絶景!六甲でも屈指の見晴らし


この痩せた尾根は細々と先へと続いているのだが、見るからに危なそうで
そこから先へ行くなという警告があるので、Uターンしてキレットルートに戻り
さらに東三ッ辻まで上り返す。
その分岐を今度は樫ヶ峰方向に折れて寄り道。
少し山道を歩くと、広い岩場に出て、そこからの眺めが最高!
左右の視界が開け、南側はさっき展望台で見た景観の角度違いで
芦屋浜のモンスターマンション群が遠くに見える。
しかも今日は天気が良くて、海向かいに和泉葛城山がバッチリ。
反転して北側は太平山〜大谷乗越〜譲葉山〜行者山と東終走路の山々、
眼下にはエデンの園と、むき出しの岩肌がいくつか見える。
そして左手前方には五月山千里丘陵地まで見通せる。
なかなかこんなに一望できる箇所はそうないのではないかというくらい
ナイスな展望スポット。
いつまでも見惚れていたいが、これからやばそうな下りがあるし、
日はまだ高さを保っているとはいえ、下山までまだかかるので名残惜しみながら進む。
3分ほど進んで樫ヶ峰の頂上に到達するも林の中で展望はなし。
写真を撮ったらすぐに引き返し、東三ッ辻のちょっと進んだ所にある北側斜面への下り口。


↓馬の背から太平山方面を眺める。帰りは矢印の痩せ尾根を下る

↓樫ヶ峰方面へ展望ルートを進む

↓樫ヶ峰、展望なし

↓恐怖の痩せガレ尾根への入り口


ここはすでに落ちるような感覚で斜面を下っていく。
最初は林の中を立ち木を支えにしながら滑り落ちていくが
そのうち目の前が広がったかと思うと、思いっきりガレて浮石だらけの
見るからに危険なやせ尾根に出た。
進行方向を見極めてみると、かろうじて尾根は続いているようだが
何しろすでに足元がガラガラとすべるすべる。
しかも木々もないので、滑ったらそのまま谷底へサイナラ。
一気にペースを落として、着実に足元を確認しながら牛歩。
それでも段差が大きめのところがあったりして、しかも危ない浮石のワナがいくつもあって
何度か手足をとられて肝を冷やす。
いやん、怖い〜。
先へ進めば進むほど尾根道は心細くなっていく。
尾根の両面はどんどん磨り減っていくし、
両側の視界にはカタくて痛そうな大岩群が丸見え。
一箇所などはしゃがんでオシリをつけて岩を下りる所があって
慎重に慎重に手を置き足を置いて通過する。
岩だらけの川底に着くまでずっとこの調子で、
無事に下まで着いたときには脚がくがく。
今たどってきた道を見上げてみると、そんな大した距離ではないが
どこ歩いてきたかわからないくらいハードな山肌だった。
でも無事に難所を乗り越えて安心すると、めちゃくちゃスリリングで面白かった!


↓痩せ尾根は両面切れ落ちているうえに、ガレて浮石だらけ

↓難易度高けー!スリル満点!

↓今下ってきた恐怖の痩せガレ尾根の全体像を見返す

↓命からがら石だらけの河原に着地


降りてきたのは逆瀬川源流の支流にあたるところ。
今でこそほとんど枯れた川だが、その昔は全国屈指の土石流の災害地で
甚大な被害を出した暴れ川だった逆瀬川
その面影というか、この一帯は馬鹿でかい岩がゴロゴロころがっていて、
まさに土石流の素といった感じ。
その岩沢をドンドと下って行くと大き目の堰堤上に出た。
ここから本流の沢に下る道をあれこれ探してみると向かって左手にロープ場を発見。
スルスルと下って降り立つと逆瀬川が流れている。
向き直って確認してみるが、こちらからやってきた場合、
あの尾根道への入り口はかなりわかりづらい。
そこから川の流れを横断し、河原をずんずん進むと、駐車場に出て、ゆずり葉の集落に出る。


↓焼ヶ石原。ゆずり葉台から登り口は見つけづらい。矢印のところから。

↓ゆずり葉台の果て。この奥が逆瀬川の源流エリア


ゆずり葉台に出た時点で17:00。まだ日は落ちていないもののどうしようかな。
ここからバスを使って逆瀬川に下るのもいいが、
まだ歩き足りないし、行き帰りもバスというのはなんだか気が引ける。
面白そうなルートで帰れないものかと地図を見ながら考えていると、
ここからいくつか東終走路まで上り返しの道があるようだ。
ひとまず駐車場の広場を出てすぐ左手にあるナダウラ堰堤へ急斜面を上がる。
道の終点から山の斜面を見るがそれらしい道が見当たらない。
どこだどこだと見てみると住宅と川の間に細い踏み跡を発見。
そこを進むと堰堤を越える階段を発見。
トントントンと上り、そこからはやけに斜度のキツイ斜面をひたすら登っていく。
ここは展望も何もなく、一定の上り斜面が続く。
ふもとの宗教関係者がつけたのか、ところどころに「慈癒の小径」とある。
小径というにはタフすぎる斜面をじっくり疲労しながら登る。
20分くらいかけ、汗だくで東縦走路にでる。
そこで休憩していると何人かのハイカーやトレランナーが通過していく。
再スタートして、自分もトレランで塩尾寺を目指す。
トレランで肝要なのは下りのテクニック。
落下するエネルギーをうまく使って楽をしながら、スピードを維持できるか。
そして膝や足に負担をかけないというのが、差になるので、
鏑木さんの本で記憶している内容を実践したりしながら、リズムとテンポを意識して走る。
時々身軽そうな本職のトレランナーをパスしながら、あっという間に塩尾寺に到着。
あとはダラダラと宝塚駅まで歩いて18:38の特急にて帰宅。
わずか3時間30分ではあったが、充実の山歩き。


↓裏面発見。ここから東縦走路まで登り返す

↓ここで東縦走に合流