記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』 by 庵野秀明

不満。
はっきり言って失望に近い。
前作『破』でこれまでの世界観を一気にぶち”破”ってくれそうな予感があったのに、
これだけ延ばし延ばし待たされたうえに結局は騙し討ちだったという結果…
このやりきれない思いをどこへ向ければよいのやら。
話が急展開をしているのに、人間模様をめぐるやり取りは皆無でほぼ戦闘シーンしかない。
エヴァの一番の魅力は、ヘンテコな使徒とのバトルシーンでも、
あってないようなストーリーでもなく、ドロドロとした人間関係や、
バトルを通じて各キャラクターがシンクロしていく様ではなかったか?
各キャラクターがそれぞれ孤立し、肝心のロジックが欠如。
これでは単なる戦隊モノになり下がってしまっている。
初期に比べて当然技術が進歩し、スピード感だったり、立体的な表現は進歩しているのだが
ただ単にテクニカルな部分をエヴァでやってみたかっただけ、
現代技術で過去作品を焼き直ししたという感じが否めない。
それではファンも納得しないだろうからと新たに追加したキャラクター設定なども含めて、
どうも世間に迎合するような姿勢がちらついてよくない。
いかなる批判を浴びようとも我が道を行く庵野節を貫いてもらいたいのだが、
まさか年を取ってヤキが回ったわけではあるまいて。
とにもかくにも作品の芯、骨格が根こそぎ歪められてしまったような無残さがあった。
それでもまだグラフィックや背景デザイン等で圧倒してくれていたら
ある程度納得できたのだが、そこのずさんさが今回は目に余る。
進歩したスピード感やテクニックでさえもそこを隠しきれないほどひどかった。
全体として、まるでどこかの2流ハリウッドSFを模倣したような代物。
オリジナルがコピーを模造するとは何とも皮肉な結末。
イメージのスクラップ置き場のような作品でした。
それでも、テレ東第1話から見続けている人間としては最後まで追っかけるつもりだが。