記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

『プラネタリウムのふたご』 by いしいしんじ

プラネタリウムのふたご

プラネタリウムのふたご


数奇な星の下に生まれ育った双子がたどる悲しくもやさしさに満ちた運命、
そしてユニークで忘れ難い人々との出会いと別れを描いた壮大な物語。
1人は天体を司り、星空に壮大な物語を描き出す。
もう1人は手先を器用に操りながら、ありとあらゆる奇跡を披露しては人々を驚かせる。
方法は違えどそれぞれのマジックで、人々を幸福へと導いてゆく。
たとえ遠く離れていようとも、同じ空の下、見えない指で固く結ばれながら…。
これこそまさにホンモノの物語だと思う。


この物語はたくさんのマヤカシと偽り、愛すべき作り話で満ちている。
天体にまつわる無数の神話、
サーカス一座が繰り広げる手品、
まぼろしの熊、老婆の手紙…。
そもそも泣き男と、双子の関係さえ、実の親子ではない。
しかしそれが本物であるかどうかなど大したことではない。
時にマボロシは本物を越える。
誰もが愛する人を驚かせ、喜ばせるためにちょっとしたマジックを使う手品師なのだ。
そうやってみな繋がっているという深くて大きな教示。