記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

さようならネル

10/2、0:20。
ネルが逝ってしまいました。
超がつく甘えん坊のネル。
奥さんの家に初めてやってきたときには、
まだ手のひらに乗るくらい小さな子猫で、
そこから10年、ツライときも楽しいときもいつも一緒にいたネル。
名前を呼ばれると、家のどこに潜んでいても、
必ずチャア〜と言いながら必ず寄ってきたので、
自分がネルだとちゃんとわかっていました。
いつもヨルと一緒にいたからか、
本人は猫というよりも犬の感覚だったのかもしれません。


全く家の外に出たことのないお坊ちゃんは、
極度の怖がり&人見知り。
奥さんの実家から出て新居へ引っ越しした時などは、
本棚の隙間に身を潜めて、2日ほどオンオンと目から涙を流しておりました。
猫も涙するんだとこの時初めて知りました。
猫にしては非常に珍しく柑橘系のにおいが大好きで、
特にフリスクなどのミントタブレットを食べていると、
うっとりした表情で顔の前に寄ってきて、クンクン匂いを嗅いで、
思わずペロっと口をなめてこようとしたり。
色々とちょっと変わった、人間臭い猫でした。


もう思い出を挙げればきりがありません。
しかし…2月にヨルを失い、
まさか矢継ぎ早に愛する家族を失うことになるなんて全く思ってもみませんでした。
犬も猫もいない寂しい生活が今日から始まるなんてちょっと信じられない…



この夏から少し呼吸が早いのかなあと心配していて、
先週病院で心臓疾患の疑いと、
肺に水がたまって呼吸困難になっていると告げられたばかり。
投薬も頑張って、その日の朝までは、
容体も落ち着いて回復傾向にあるのかなと少し安心していた矢先、
日付が変わってすぐに急変。
呼吸がつらいのか、口を開けっ放してベロをだし、
ヨダレがとめどなく流れ、非常に苦しい姿を見せつつも、
自分と奥さんに強く訴えかけるような、何か覚悟を決めたかのように
かっと目を見開いて普段とは違うとても強いまなざしを投げかけると、
へたり込んでいたカーペットの上から、
ぴょんとダイニングテーブルに飛び乗り、
そこからさらに、まるで終の場所をさまようように、
普段はいかない洗面台の方へとフラフラになりながら向かう。
猫は自分の最期を悟ると身を隠す習性があり、
ああもうこれはそういうことなのかなと気づく。
とはいえ、飼い主としては最後の最後までできうる限りのことはしてあげないといけない。
奥さんにはすぐに夜間救急に電話を入れてもらう。
自分はネルの少しだけ離れたところから様子を見守る。
そうしてネルはさらに奥の浴室まで入り、ウエウエとえずきだす。
何かつっかえが取れて楽になればと、背中をさすりながら
出してもいいんだよ、楽にしなと声をかけると、
少しだけオシッコをだしました。
そこからさらにリビングへ戻ろうと最後の力を出して歩き出したところで、
足場が滑って転倒。
毛が濡れてしまったので抱きかかえてタオルで拭いているうちに、
ウーウーと小さな声をだし、けいれんを起こし始めます。
電話をしていた奥さんにもういいから、早くこっちと呼び寄せ、
2人で最期を看取りました。
猫としては、ひっそり静かに逝きたかったかもしれませんが、
長年連れ添った2人としては、
最期をきちんと看取ることができてよかったと思います。


まだ単に寝ているかのようなネルを抱いてリビングへ。
タオルとペットシーツを敷いて、楽な格好にしてあげました。
もう苦しまなくても大丈夫になったことで、少しほっとしました。
それから寝かしつけていた娘を起こし最後のあいさつをさせます。
そしてリビングに供えてあるヨルの骨壷に手を合わせて、
ネルがそっちへ行くから、あとはよろしく頼んだよとお願いをしました。
ネルは何も言いませんでしたが、ヨルが2月に亡くなってから、
どことなく元気が落ちたような感じだったので、
一生のほとんどを共にしたヨルを追って行ったのかなあと思います。
2人が向こうで無事に落ち合って仲良くしてくれていることを祈ります。


昨日は、ヨルと同じ火葬場にてネルの亡骸を荼毘にふしました。
奥さんも自分ももう、何か穴がぽっかりと空いたように体に力が抜けてしまいました。
ネルありがとうな。またいずれどこかで会おうな。