記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

ミュージカル『私は真悟』

土曜日。2日連続の京都へ。
長女と二人でミュージカルを観劇ということで、
ロームシアターへ。


ロームシアター


↓『私は慎吾』


今回の作品は、1982〜1986年に連載された
鬼才・楳図かずおの名作SF漫画が原作の『私は真悟』。
主演は今を時めく”とと姉ちゃん”こと高畑充希ちゃんと、
個性派女優として注目の門脇麦ちゃん。
シルク・ドュ・ソレイユの演出などを手掛ける
フィリップ・ドゥクフレの有機的で独創的な演出と、
楳図ワールドのドッキング!?
音楽担当は東京駅でお世話になったトクマルシューゴさんと、
ここ最近ドハマりしている阿部海太郎さん!
そして演奏集団Open Reel Ensembleによるパフォーマンス!
これはもう行くっきゃないということで即チケットを取った次第。
開場時間にロームシアターへ到着し、
まずは同時開催していた楳図かずおの世界展へ。
怖い漫画が大好きな娘は、
さっそく楳図ワールドに惹きこまれておりました。


楳図かずおの『私は慎吾』展


↓娘も大喜び


もともとホラー漫画のお方ですが、
この作品に関してはホラー色を抑え、むしろ、
愛とは何か、神とは何か、ワタシとは何か、
といった哲学的テーマを、SF要素と絡め、
80年代のギラギラした時代の影響も多分に受けながら、
独特な世界観を打ち出した衝撃作になっています。
世紀末の退廃を彷彿とさせるようなイメージは、
AKIRA』の大友ワールドと同じ匂いを醸し出し、
また、機械に魂が宿り、
その意識が世界ネットワークに拡散していくといった発想は、
攻殻』ワールドのそれへと通じている。
そして、小学生が大人の世界を、
残酷なほどにピュアな”アイ”でもって冒険するという設定は
まるでこの間観た舞台『夜の子供たち』ではないか!
つくづく感じるのは、
あまりに猥雑でエネルギーが激しくスパークする一方で、
そう遠くない時期にやってくる世紀末という存在への
得体のしれぬ恐怖心を抱えた80年代の渦というものから
発想されたモノたちというのは、
やはり根っこは同じなんだろうなと思います。
それにしても色々な意味でキョーレツで、モーレツで、
惹きこまれてしまいますね。


↓グワシッ!


↓真鈴と悟


↓フラッシュを当てるとこうなる


↓改めてすごい画のチカラ


そしていよいよ開演。
開演に先立つ注意アナウンスが
少しずつノイズに消され、音を歪められ、
暗がりに浮かび上がる怪しげなマシンの挙動と、
舞台袖に並べられたオープンリールテープレコーダーを操る
Open Reel Ensembleの面々のシルエット。
それだけでもうシアター全体が
得も言えぬスリリングな緊張感に包まれる。
そして一気に照明が開き、舞台はいっぺんにして、
”333のテッペン”へ!!


充希ちゃんのあまりにピュアすぎる真鈴(マリン)の愛らしさと、
伸び伸びと躍動する麦ちゃん演じる少年・悟(サトル)の姿に
一撃ドキュ〜〜〜〜〜〜ン!!!
そして一番、目を奪われたのはもう一人の主役、
真悟役の成河さん!
突如ワタシという意識が芽生えたベルトコンベアという役どころを、
実に繊細にかつ大胆に演じきっておりました。彼はすごい!
そして、マシンである真悟の動きを黒子として表現した
引間文佳さんと鈴木竜さんの見事な所作に釘づけ!
シルク・ドゥ・ソレイユ流の演出だけあって、
夏に見たTOTEMでもあった
コントーション(ウミウシのような軟体芸)があったり、
マシンの動きを表現するのに、
あえて極めて有機的な動きを取り入れたり、
その発想が素晴らしすぎるし、それを体現するお二人に驚愕。
そして、作品全体を彩る音楽が本当に摩訶不思議で、
これらの音楽でなければ
きっと作品が成立しなかったんじゃないかというくらい
独特の世界観を演出していました。
ラスト、セットまるごとを使って揺れ動く
巨大ブランコにまたがって、
大人に変わろうとする二人の小学生と、
その間を行き来する真悟のサミシイ姿に、お涙頂戴しました。


本当に一部始終が衝撃的で、
きっとこれは一生のトラウマ(いい意味で)として心に残ると思います。
長女もかなりのインパクトを受けたようで、連れて行ってよかった。
本編の後、クリスマスイブの回だけの、エクストラコーナーがあり、
それも大いに盛り上がりました。
本当に素晴らしいクリスマスプレゼントになりました。