記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

『真夜中のギャングたち』 by B・ユアグロー

Be cool!
ギャング映画の1シーン1シーンをスクラップブックにまとめたような小気味よい短編集。
実際、血生臭い情景を映画のト書きのように実にシンプルに書き連ね、一切の無駄がない。
例えばこんな風。


欲にかられて誰かが闇の世界に片足をを突っ込む。
案の定、厄介な状況に陥る。
もはや後戻りのできない運命にわが身を嘆きながら、ドツボにはまっていく。
運のいい奴は足や腕を失うだけだが、大抵は朝日を見ることなくあっけなく終わる。


必要最低限の言葉数で構成された短編の一つ一つを読みながら
読者は、読者がかつて見たギャング映画やヤクザ映画の1シーンを頭の中で再現させるが、
その再現されるシーンはきっと人によって千差万別。
全く同じ物語を読みながら、人によってはデ・ニーロが出てきたり、高倉健が出てきたり
タランティーノ風だったり、深作風だったりするだろう。
物語を最終的に完成させるのは著者ではなく、読者自身のイマジネーションという。
それはなかなか1つのイカした流儀だ。


追伸:海外文学は翻訳者の腕に出来が大きく左右させるけど、やっぱり柴田元幸だと間違いない

真夜中のギャングたち

真夜中のギャングたち