記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

Music Life 音楽の父、細野晴臣 : YMOという宇宙

久々に自作以外の音楽紹介。
すでに何度か紹介をしていますが、
日本のミュージックシーンの父である細野晴臣さん。
震災直後にリリースされた『HoSoNoVa』がこのところのヘビロテです。
もはや説明不要だが、日本語ロックの元祖であるはっぴぃえんどから、
ユーミンや数々のアイドルたちと繰り広げたニューミュージック、
そして今なお多くの影響を与え続けるYellow Magic Orchestraw、
アンビエントワールドミュージックな放浪を経て、
たどり着いた境地はもうきわめてシンプルなもの。
酸いも甘いも全部味わい尽くし、余計なものを一切合財そぎ落とし、
ただ朴訥とつぶやかれる音の一滴一滴の濃厚さ。
6月の味園ユニバースでのコンサートが楽しみだ。


↓悲しみのラッキースター


↓ラモナ


自分も今年に入って音楽活動を再開しているが、
もうやっていることが全然違うわけです。
自分が今音楽を作る場合、まず、
いかに音を足していくかという観点でスタートしていくわけです。
まずはギターの弾き語りでメロディーを浮かべて、
そこにベースライン乗っけて、ギターソロを入れて、その他のアレンジを入れて、
どんどん音に厚みを出していく、いわゆる足し算の音楽をやっているわけです。
しかし細野さんの場合は真逆で、できるだけ必要最小限の音へ絞って絞って、
全く無駄をなくして調和を目指す、引き算の音楽なのです。
もうあれもこれも音楽と名のつくもののほとんどをやりきってしまって、
アレンジなんてどうにでも操れるわけで、
足そうと思えばいつでもいくらでも足せるわけですが、
それをどんどん研ぎ澄ませていけばいくほどやはり向かうのは
シンプル・イズ・ベストということなんでしょう。
わかりやすく例えれば、自分があれもこれも食材を継ぎ足して
煮込み料理をせっせと作っているのに対して、
細野さんは、無駄を一切廃して食材の持つ本来の味わいだけで勝負する、
超一級の寿司職人みたいなものです。
それができるのも一つ一つの音を出す精度が全然違う。
自分のように音を重ねて重ねて粗を埋めるのではなく、
単発の音だけでも音楽できるだけの自信と懐の深さなんだろうと思います。
その自信というのはやはり、
きちっと音楽のロジックを試行錯誤の中で学んできたという経験なんだろうと思います。
自分にはまだまだそこまで自分の出す音に自信がない。
ないから音を厚塗りして隠す。そういうことだろうなと痛感している。
そりゃあ遊びでやっている自分と、
音楽歴数十年のプロでは全く相手にもならないのは当然わかってます。
でもここまで圧倒的に違うともうかないませんね。


HoSoNoVa

HoSoNoVa


ちょっと話は逸れるが
同じYMOつながりで坂本龍一教授の音楽番組『スコラ 音楽の学校』を観なおしているのだが
これがまたものすごく面白い。
音楽を理屈でとらえる、名曲をばらばらのパーツに一旦分解をしてみて分析をしてみると
こういうカラクリがあったんだ、こういうテクニックが隠されていたんだとものすごく興味深い。
音楽というクリエイティブな分野ではもちろん、
フィーリングやイマジネーションはとても重要なんだけど、
そこにしっかりとしたロジックが加わると、意図した世界観だったり、狙った音がカチっとはまる、
ということを今さらながらに再確認した次第です。
自分も若いころは、コードなんて知らねぇ〜、
ただギターをデタラメにかき鳴らして、どんちゃん騒げばOKみたいな感じだったが
振り返ると、あれは音楽なんかじゃ全然なかった。
今では、音の構成とか、メロディーラインのつながりだったり、あるいはリズムの外し方とか、
よく考えて作るようになりました。
心地よいメロディーライン、気持ちのいいグルーブ感、
こういった感覚的な部分をできるだけ楽曲の中で再現するには、
思いつきではなく意図的に出すということをしないと生まれないのだと最近わかってきました。
まあ今さらと言えば今さらなのですが、
音楽の核心に一歩でも近づけただけでも音楽を再開してよかったかなあと思う今日この頃。