記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

裏銀座縦走 1日目 〜偉大なる野口五郎〜

けがで右手が不自由でなかなか難儀しましたが、
この間の山行記スタート。


金曜日。仕事を5時チンして即帰宅して、あれこれ支度。
パッキングはすでに前夜に済ませてあるのだが、
今季初の小屋泊まりなので何持って行こうか少し悩んだ。
結局、小屋は混めば夜中暑くて寝苦しくなるだろうし、
防寒関連はフリース一枚だけにした。
今回は長丁場のコースになるのでなるだけ軽量にして挑む。
しばらく風呂もないので、シャワーを浴び、
そろそろ出発のタイミングで嫁子が帰宅して、お見送り。
そのまま新大阪に向かうが、夕方はみどりの窓口も券売機も大行列で、
ギリギリになってようやく切符を購入できて、間一髪で18:40のひかりに乗り込む。
この便がワイドビューしなのに接続する最終で、
これを逃したら19:03ののぞみを使って、名古屋から松本まで鈍行が最終。
今回は翌朝が早いので、できるだけ早く松本に着きたいのだ。


松本には22時前に到着。すでに駅ビルのドマゾン部分には
野宿を決め込んだ登山者の場所取り合戦が始まっていました。
それを横目に、駅を出て黙々と西へ歩き出す。
約2駅20分ほど歩いていつものネカフェに到着。
いつものシートで仮眠&情報収集。
3時に起床し、すぐに支度してまだ明けきらない夜道を松本駅まで。
電車までまだ40分以上あるので、コンビニで水分やレーションを調達。
さらに駅前の松屋でしっかり牛丼で腹ごしらえをしておく。
列車到着の15分ほど前にようやく改札と券売機が開いて、大町までの指定券を購入する。
ムーンライト信州号はとても人気で、
新宿発の指定券はほぼソールドアウトなのだが、
松本駅で大量に下車するので問題なし。
ちなみにこの列車は特急でも急行でもなく、臨時の快速列車扱いです。


ムーンライト信州


予定通り4:30に列車に乗り込むと、
前日深夜新宿からの相当に疲弊した顔が並ぶ。
さながら帰還兵を詰め込んだ弾丸列車の様相。
自分の座席からうっすらと明るくなってきた車窓を見ていると、
前夜大きく光っていた月が蝶ヶ岳の稜線に落ちていくところだった。
天気は明らかにいいぞと期待を膨らませる。


スーパームーン


5:11、予定通り信濃大町駅に到着する。
ここから今回の登山口である高瀬ダムまではタクシーに乗っていくしかないのだが
早朝に1台もいないと困るので、前日に予約の電話を入れておいた。
相手はプラカードを持って待っているはずなのだが、
ほかの名前のプラカードを掲げた人しかいない…
タクシーは十分台数が止まっていて、
ちょうど同じく高瀬ダムへ向かう人を募っている輪があったので
そちらに混ぜてもらい、4人相乗りで出発する。
高瀬ダムまでの運賃は8000円なので、4で割って2000円で済むのはありがたい!
県道326号に入ったぐらいになって、
無線で自分の名前が飛んで、いないいないと言っている。
運転手さんに事情を話すと無線で伝えてもらえました。
大町ダムを過ぎると本格的な山道に入っていく。
ここからは大町ダム〜七倉ダム〜高瀬ダムと3つの巨大なダムが連なっている。
あの黒部ダムよりもはるかに多い発電量で、原発一基分に相当するらしい。
しかも夜間電力が余る時間帯には、
その余った電気で川の水をくみ上げてリサイクルするという優れもの。
ダムマニアとしてはそちらもたまらんなあ。


長い長いトンネルを抜けると、登山の拠点である七倉に到着します。
一般の車が入れるのはここまでで、
奥の高瀬ダムへ行くには指定のタクシーに乗っていくか、
さらに長いトンネルを1時間30分ほど歩くかしないといけません。
ここでいったんタクシーは停車し、登山センターで登山届を出します。
指導員の方に、「野口五郎までかあ。行けるか?頑張れよう」と声をかけてもらいました。
ここでトイレを拝借し、再びタクシーに乗り込んで出発します。


↓七倉からは許可車のみ通行可


ゲートが開いて、1.2kmある山の神トンネルを進みます。
ここを夜が明ける前に歩くのはちょっと嫌ですねえ。
トンネルを抜けしばらく進むと、巨大な石積みのダムが眼前に姿を現しました。
高瀬ダムです。
ロックフィルダムとしては日本一の高さを誇り、全ダムでも黒部に次ぐ2位の規模。
面白いのは堤体を縫うようにして道がつけられていて、
タクシーはそこを通行して天辺まで向かいます。
タクシーの運転手によれば、
ここの石積はなんとたった2人の技師さんによって並べられたそうです。マジ!?
ここも含め3つのダムはすべて、ふもとの発電所で遠隔制御されていて無人です。


高瀬ダム


↓日本一高いロックフィルダムの斜面を縫っていく


高瀬ダム


タクシーは高瀬ダムの天辺で停車。一人2000円を支払って下車します。
結構冷たい風が吹いていました。
自分は吸汗性のポロシャツに、
生地の薄いペラペラのリラコみたいな短パンだったので結構肌寒い。
でもこれから3大急登が待ち受けていて、ピーカンで気温が上がるのは間違いないし
これは予定通り。むしろ今のうちに涼を感じていた方がよいのです。
周りを見渡すと杓子定規に長袖に分厚い登山ズボンを履いていますが、
あんなの灼熱の急登では体力を消耗するだけで、絶対しんどいです。
セオリーはもちろんあるけど、臨機応変に対応した方がよいこともあります。
さて、6時を少し過ぎて山行スタートします。
まずは正面にぽっかり空いているトンネルへ突入。
トンネル内部はさらに寒い。
トンネルを抜けると吊り橋。
ここはなんとなく広河原から北岳を目指すときの風景に似ていますね。
吊り橋を渡ると、ほとんど機能していないであろうテン場を過ぎ、
巨大な河川工事現場の脇につけられた小道を進む。
濁沢に入ると正面では小さな滝が音を立てています。
木板を渡した橋で対岸に渡ると、何人かの先行者が休憩されています。
到着すると、いよいよここが日本三大急登と称されるブナ立尾根の取り付きでした。
ここまでダムから10分ほど。まだ始まったばかりなので休憩なしで急登に突撃します!
よっしゃ、やったるで!


↓トンネルから山行スタート


↓つり橋を渡る。なんとなく北岳へ向かう感じに似ている


↓テン場を過ぎる


↓南沢岳と不動岳の間の濁沢に入る。正面に滝。


↓日本三大急登、ブナ立尾根の登山口


のっけから細かいステップで急激に上がっていきます。
この尾根にはナンバリングがされていて、
1番ふもとが12番で、0番が稜線上にある烏帽子小屋になり、
1番ごとの間隔が自分のペースで代替10〜15分ほどでした。
まずは序盤からです。序盤は現場作業用の簡易の階段が設置されていて
それらをずんずん登っていく感じ。
アップダウンはなく、横移動するような水平な場所も少なく、
ただひたすら上へ上へと登っていくような感覚。
登山道自体は本当に狭いので、序盤、先行者をパスしていくのに慎重になりました。
深いブナ林に覆われているので、眺望は全くなく、風も吹きこまず、
純粋に運動した熱が体にまとわりついて、
かなり早い段階からシャツがびしょ濡れ状態。
極端な薄着をしてきて正解でした。
最初はナンバーごとに写真を撮っていましたが、
どこもまあ同じような景色なので途中からすっ飛ばし。
やはり登り始めのころが一番急で、6番辺りまで、つまり中盤までは結構急でした。
ここらで朝出発した先行組をひとまず全員抜いて、稜線まで単独行となります。


↓全部で12のナンバリング


↓序盤からなかなかの急坂


↓11番


↓眺望のない深い森の急斜面


↓9番


↓6番。ようやく半分


6番を過ぎると少しだけ斜度が緩み、サクサク進みますが、
4番までに再びきつい個所が出てきたり、そう簡単ではありません。
途中、森が開ける個所がいくつかあり、
すぐ北側の南沢岳の崩落地がチラ見できたり、
対岸の餓鬼岳などがわずかに確認できます。
ずいぶん森の厚みも薄まって、青空の割合が多くなってきました。
すると三角点のある4番に到着しました。
ここで初めて5分ほど休憩を入れます。
時刻は8時を少し回ったところ。


↓ちらっと餓鬼岳が見える


↓三角点(4番。2200m付近)


そこからはさらに斜度が緩むのかなと思いきや、
何気に面倒なのぼりが続きます。
途中タヌキ岩と表示のある岩に出ましたが、
なぜタヌキなのかちょっとわかりません。
右手側が少し開けてくると、上部が崩落している個所に出います。
そこを左に巻きながら、さらに高度を上げていきます。
もうずいぶん登ってきて、北側の山の具合がよく見渡せるようになってきました。
南沢岳と不動岳の間はかなり崩落が進み、禿げているようです。
その右奥には、去年登った針ノ木岳蓮華岳が仲良く並んでいます。


↓タヌキ岩


↓崩落地を巻く


↓南沢岳と不動岳の崩落地。奥に針ノ木岳蓮華岳


空が近くなったことでもうそろそろ稜線も近いのかなと思いきやそれはそれ。
ここからも結構あります。
この辺りから上から降りてこられる登山客とのすれ違いも多くなってきました。
結構なんどもジグザグと山肌を左右に振られて、
いったん少しだけ下ったところが1番。
そこから登り返したところを少し下ると
ようやく稜線上に立つ烏帽子小屋に到着しました。
ふぃ〜。確かに結構なのぼりでした。
感覚的には同じ3大急登でも合戦尾根よりも長く感じましたが、
あちらは序盤の大渋滞がすごいので、こちらは比較的スイスイ進めます。
高瀬ダムからちょうど3時間で上がってこれました。


↓烏帽子小屋前から


さすがにハイペースで登ってきましたので、お疲れモード。
おトイレを拝借し、売店でコーラを購入して、お花畑の前で一服。
コーラ最高♪
その場所からは文句なしの青空のもとで
いくつもの山が連なる絶景が広がっています。
東沢谷を挟んだ向こう側には、しんどいと噂の読売新道が貫いていて、
その南端に険しい表情を見せているのが水晶岳
もともと黒岳というだけあって黒々としています。
翌日は最初にあそこにアタックすることになります。
すぐ手の届きそうに見えて果てしないですねえ。
水晶を起点としてさらに北側に転じれば、
途中で赤々とした土が露出したピークが見えます。
あれがレッドブル、もとい、赤牛岳です。
どの登山口から目指しても相当に遠い山ですね〜。


水晶岳。黒岳の別名通り黒い岩肌


レッドブル


15分ほど補給がてらに休息をしたら、
小屋の外に荷物をデポしてちょっと寄り道に向かいます。
本当なら、今回の目的である裏銀座コースは、
この烏帽子岳から南へ向かうのだが、
せっかくなので小屋の北側にそびえる烏帽子岳にも登頂しておくためです。
来た道を少し戻り、分岐を左に折れて緑の中を進みます。
身軽になってスイスイといくと、まるで燕岳のような白砂の景色に変わります。
そこを登っていくと、小さなピークが目の前に飛び込んできます。
意外と近いなあと感じますが、それはれっきとしたブラフ。
烏帽子岳という偽ピークです。
ホンモノのピークはその山に隠れてしまってまったく気配がありません。
とりあえずささっと偽ピークへたどり着くと、
ようやく烏帽子岳本人とご対面。
なかなか鋭く北のオベリスクという名称がぴったりなスタイリッシュさを帯びた山です。
標高が2700mに満たず背が低いのがかなり残念なところです。(ラルクのhideみたいな感じ)
それにしても、鋭く天に向かって突き刺さっております。
ふと脇を見ると、今朝方出発した高瀬ダムの湖面が見えました。
あそこから頑張って登ってきたんだなあと思うと感無量です。


↓あれは偽ピークの前烏帽子


↓前烏帽子から烏帽子岳を望む


高瀬ダムが見えます。3時間でここまで高度を稼いだ


困ったことに、前烏帽子から烏帽子まで行くには
いったん乗越までゴツゴツした歩きにくい岩場を下らされてしまうようです。
ということは行って帰ると2度登りが発生するということですね。
稜線まで出ると日光を遮る緑が一切ないので、とにかく暑いのです。
でも言っても仕方ないので、乗越まで一気に下ります。
乗越で道が2分します。
1つは、ここから南沢岳〜不動岳〜船窪岳〜蓮華岳と続く稜線の道で、
もう1つが烏帽子岳の山頂を目指すルート。
そこにザックをデポしている人が2人ほどいらっしゃいました。
烏帽子の取り付きまでは全然イージーなのだが、
いざ直下まで来ると急坂になります。


↓南沢岳・船窪岳方面の縦走路から分岐して烏帽子を目指す


↓烏帽子直下から急坂


えっちらおっちら登っていくと、いよいよ岩場が登場します。
まずはほぼ垂直に岩と岩の間を登る鎖場。
ここは本当に手や足をかけるステップがほとんどなく、結構苦労して登りました。
下りは下りで難しそう。
そこを登りきると、上から2人ほど降りてこられたので、
ご挨拶をして道を譲ります。
先ほどの上部に水平に張られた鎖場は、確かに高度感は多少ありますが、
シビアな場面ではないのでスイスイ。
その先で、大きな岩を乗り越えるところをグイグイっと体を持ち上げると、
そこがほぼ山頂でした。
一応標識が立てかけられているところがあったので、
そちらへと移動し、大岩と大岩のわずかな隙間に立ちました。
さすがにタイマー使用で撮影できるような余裕のない場所だったので、
ちょっといつものポーズが中途半端にしか撮影できませんでした。
ここからは、お隣の南沢岳から奥の立山
さらに奥に続く後立山連峰の峰々を望むことができます。


烏帽子岳の鎖場。直登部分は手掛かり少なく難儀


↓上部の鎖場


烏帽子岳山頂


↓烏帽子の山頂はわずかの足場


ほとんど滞在できるようなスペースがないので、
撮影を終えたらすぐに降ります。
先ほどの垂直の鎖場はやっぱり降りるのが結構難しかったです。
無事に降りたら縦走路まで戻り、そこから前烏帽子を再び上り返し。
これからの縦走を考えるとできるだけ消耗したくないんだけど、
こういうチマチマしたアップダウンが
後でボディーブローのように効いてくるんだよなあ。
ここらでは後続の烏帽子を目指す人たちと続々とすれ違います。
ほとんど狭い山頂なので、混む前に済ますことができてよかった。
そうして烏帽子小屋まで戻ってきたのが11時。


↓烏帽子小屋を再出発


さあいよいよ裏銀座縦走をスタートさせます。
まずはどっしりと南側に構えている三ツ岳を越えていくことになります。
小屋を過ぎ、テン場方面へといったん下ります。
そこから緩やかに弧を描きながら、
目の前の緑豊かなトレイルを歩いていきます。
稜線は非常になだらかで広く、歩く人も前後遠くにちらほらと見えるだけで
本当に贅沢な山歩きを堪能することができます。


↓まずは三ツ岳を越えていきます


↓なだらかな稜線歩き♪


裏銀座のトレイル


↓振り返って


大きくピークに向かって右旋回をしながら登っていき、
ラスト少し斜度が上がるところを詰めると、広いピークに出ます。
でもここは偽ピークで、
小屋からは見えないさらに南側にピークを認めます。
トレイルはそのピークの右側をトラバースしてつけられていて、
そちら側はゴツゴツとした岩が点々としています。
空は全く素晴らしいお天気で、少し暑いぐらいだが、
東沢の谷底から吹き上げる風が心地よく、疲労を和らげてくれます。
三ツ岳をトラバースしていくと、その先に槍ヶ岳がお出迎え。
はるか南の先まで様々な山が連なって、もうそのスケール感と、
非日常の世界に圧倒されます。
まるでここは日本ではなく、
アルプスかピレネーのど真ん中ではないかと錯覚してしまうほど。
これから進んでいく方向はもちろん、
ここまで歩いてきたトレイルを何度も振り返ってみても、
とにかく飽きることなく絶景が広がっていて、もうたまりません。


↓偽ピークからさらに上る


↓東沢側にトラバースしていく


↓槍さんコンニチワ


↓歩いてきたトレイルを振り返る


↓三ツ岳のトラバースを歩いてくる人がいます。スケール感を感じてください!


三ツ岳の中腹でコースチョイスが発生します。
西峰を経て稜線を歩く眺望コースと、
ピークを避けてなだらなか稜線の脇を行くお花畑コース。
もちろん、せっかくなので三ツ峰西峰に登ります。
5分ほど急坂を詰めればすぐにトップに到着。
ここはゴツゴツとした大岩が積もった場所でした。
ここからの眺めも最高です。
特にこれから向かう野口五郎岳までのラインが一望できて、
ああ、これからあそこを歩いていくんだというワクワク感を演出してくれます。
一方北側の景色も忘れてはいけません。
西から伸びている読売新道と、立山方面の山々はいまだ健在。
特に、午後になって雲が湧きだし、
荘厳な雰囲気を醸し出している針ノ木岳のその荒々しい山容はまるで、
剱岳かと見まがうほどでした。
ここでしばし休憩。


↓三ツ岳西峰から野口五郎岳を望む


↓三ツ岳西峰から北側の眺め(五色ヶ原と立山


↓白衣を纏った針ノ木岳。なんとなくプチ剱岳な感じ


さて、残りまだまだあるので進みます。
まずは軽い岩場だった山頂をこなして下っていきます。
途中でお花畑コースと合流すると、その先は細かい岩礁越えが何度か続きます。
それほど難しい個所はありませんが、
やはりこの炎天下で歩き続けているのでそろそろ足にきています。
意識して水分を飲みすぎないようにセーブしているつもりですが
それでもついついボトルに手が伸びる。
何度かの岩礁を超え、湯俣側にトラーバスしていくと、少し急な登りがあり、
そこを超えると標識があります。そこから大きくなった野口五郎岳本体に取り付きます。
あと400mの表示に背中を押されて、ゴツゴツした岩場を登りきると、
ようやく今日の最終目的地である野口五郎小屋が見えました。
その奥の標が立っているところがピークです。
時刻は14:00でした。


↓正面の小高い野口五郎岳がこの日の終点。左に槍ヶ岳、右に水晶岳


↓あともう一息。奥は読売新道の赤牛岳


↓小屋まであと400m!


↓ゴローゴローする岩場を上り詰める


↓やっと小屋が見えました。小屋向こうにピークが見えます


野口五郎小屋


さっそくお宿の受付をします。
ここの小屋は比較的小さく、何かの理由があるのでしょうがテント禁止。
どこの登山口からも遠い場所にあるのでたぶん、
ぎゅうぎゅう詰めになることはないと思います。
この日は2階に案内され、布団一枚があてがわれます。
この2階までの梯子が何気に大変でした。
さて、ここまでレーションだけできちんとした食事は早朝食べた牛丼だったので
何かいただくことにします。
腹の具合からいえばカップ麺か何かにしようと思ったのだが、
名物のゴロープリンなるものがラス1だよとおすすめされ、それにしました。
山頂の標に見立てたチョコの小枝が刺さった大きめサイズの黒ゴマブリン。
お母さんの手作りだそうです。
ん〜甘みが全身に染み渡る@@@@


↓本日の寝床は2F。一人1枚のお布団


野口五郎小屋名物のゴロープリン。ラス1をゲット!


さて、腹ごしらえを済ませたら、とりあえず山頂いっときましょ。
びっしょりだった汗も引いた上に、風が強くなってきたので長袖に着替えたら出発。
小屋から向井の山肌をざくざく登っていきます。
さすがに名前通りゴローゴローと岩が転がっています。
そうして標高2924mの野口五郎岳に登頂!お疲れした!
もはや説明不要ですが、かの御三家の方はこの山から芸名を付けました。
そのおかげで300名山の割には知名度は抜群。
ここからは360℃すばらしい眺めが広がっています。
まずはなんといっても南側。
ど真ん中にそびえるは言わずと知れた北アの王様・槍ヶ岳
これまでいろいろな場所から槍を見てきましたが、ここからは3峰に鎌を広げ、
さらに赤岳〜硫黄岳の荒々しい前掛けを纏って文字通り君臨しています。
左側には、燕岳からきれいに水平に続く表銀座大天井岳が堂々と受け止めている様が見えます。
さらにその奥には常念岳がちらっと顔をのぞかせていますね。
一方槍の奥には穂高がへばりつき、その先を追っていくと乗鞍岳、さらに最奥には御嶽山がみえます。
御嶽の付近にだけ縦に伸びる白い雲が見え、まだ噴煙を上げているのか少し心配になります。
その横にきれいな三角帽子が見えます。笠ヶ岳です。
新穂高方面から見るとのべぇっとしただらしない山容ですが、
こちら側からは文字通りのきれいな笠で、これはとてもうれしい驚きでした。
さらにその右手側には翌日歩く行程が一望できます。
かすかに窪地に明日の最終目的地である双六小屋、
明日のハイライトになるであろう鷲羽岳とワリモ岳が仲良く並び、その端に水晶岳
うむ〜なかなか明日も明日で盛りだくさんの予感です。
北側は今日歩いてきた道のりと立山、後立山のおなじみの面々。
1時間ほど山頂を独り占めしましたが、もうハイカー冥利に尽きる贅沢な時間でした。


野口五郎岳


↓南側の絶景


↓絶景をバックに


表銀座。左に燕山荘。右に大天井岳。こう見ると本当に水平だなあ。


↓明日のルートが丸見えです。笠ヶ岳以外はすべて通って双六小屋がゴール。


↓見事な笠


小屋に戻ると、続々と宿泊客が到着します。
自分の横の人は大ベテランの方で、いろいろ話をしました。
翌日は赤牛岳まで行ってまたここに戻ってくるそうです。
食事までの1時間は休息します。
といってもいきなり横になると呼吸が浅くなり高山病にかかりやすくなるので
壁にもたれながらの転寝。さすがに前日ほとんど寝ていないし、
8時間歩き詰めだったので簡単に落ちました。
そうして待ちに待った晩飯タイム♪
欲望に負けて缶ビール一本いただきました。
メニューは豪華な天ぷら定食。ん〜うまい!
味噌汁とごはんもおかわりしてしまいました。
ちょこっとデザートがついているのもうれしい。疲れた体にはやっぱり甘味。


↓本日の夕食は天ぷら定食。ゼリーがついているのがうれしい


夕食後は夕焼け目当てに外へ。
あまりに晴れすぎて雲がないので、これはさすがに山は焼けないかなと思っていたら、
表銀座の向こう側、松本盆地の方面のあちらこちらから散発的に入道雲があがりだす。
そのみるみる発達していくさまがすさまじく、ずっと観察していると、
なんとバラバラだった入道雲同士が徐々に一塊になったかと思うと、
その入道雲のさらに上空に大きな笠上の雲が湧き上がって、それらを一気に丸め込んでいく。
ざっと見ても直径40kmほどあるような、今までに見たことのない規模の雲です。
なんとそれが夕日を浴びて一気に焼け始めました。
もう一方それを観察していた方と、
あまりの自然の造形にあんぐり口をあけっぱなしで感動しまくりでした。
あれだけのでかい雲を見たのも初めてなら、雲であれほど感動したのも初めてでした。
そこからもずっと雲は発達をしていき、まるで山を全部飲み込んでしまいかねないほどの勢い。
それらが所々でバチバチっと電気を発生させているようでした。


↓方々から入道雲が乱立し、それがひとまとまりに


↓夕日を浴びて焼けてきた!


↓龍の巣だあ〜 by ドーラ


夕日がすっかり落ちたので小屋へ戻ります。
消灯まではまだあと1時間あったので、
冷えた体を食堂で温めつつTVでニュースを見ます。
どうも下界はすさまじい猛暑らしく、
夕方にかけて全国で激しい夕立と雷が発生しているようでした。
すると外が騒がしいのでなにかとみていると、
先ほどの雲が激しい雷を連発していて、それを写真に収めようと皆が出ているのでした。
自分もせっかくなのでお邪魔して、何度もトライして何枚かゲットできました。
撮影をしていると消灯の声がかかったので小屋へ戻り、そのまま寝床へとつきました。
さあ、明日も晴れてくれよ。


↓雷鳴を聞きつつ就寝


2日目に続く。