記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

なんちゃってキャノンボール① 大阪〜名古屋

さて、いよいよブログ版も果てしなき日本橋までの道を走りだします。
はてさてゴールはいつになることやら…


金曜の深夜、大慌てで黒部から帰宅したものの、飯食ったら即出動予定時刻。
さすさに疲労困憊で、もうこの時点ではDNSするつもりでした。
なにせ後輪のタイヤ交換はまだだし、一番最近に走ったのはあの紅葉峠。
コンディション絶不調で500km越えなんてリスク高すぎる。
ということで、おとなしく布団にもぐりこむ。
で、起きたらすでに10時。これはもう無理っしょとダラダラ家族で朝を過ごす。
でも、掲示板を見たらなんか、こんなんでDNSしてどないすんねんという気になって、
大慌てで支度し、タイムスケジュールを練り直す。
今から出れば、なんとか日が暮れる前にはイシバシ工業のダート区間は抜けられる。
名古屋で日没になってナイトライドでも、市街地区間なのでそう心配はなさそう。
翌日の日暮れまでに箱根を越えて、20時には東京駅についてどうにか帰れそうだ。
装備の方はおおよそ準備は済ませてある。
あとは後輪のタイヤ交換。30分前まであれこれを頑張ってみたが、
FUSION3はビクともせず、手の皮がむけて心底疲労しただけ。
仕方がないのでそのまま元々履かせていたアルトレモで一発装てん。
という感じで、一旦気持ちが走りだしたら止まれないのが性分。
奥さんも相当心配顔だが、止めても無駄なのを分かってらっしゃるので
力飯を握ってもらい、2つパクパク食べてから、
12時少し回って珍しく明るいうちからの出動。


とりあえずしゃしゃっとスタート地点である梅田新道に向かい、
記念撮影をして12:15、いよいよ東京目指して出発。
これまでロングはたくさん経験してきたし、つい先月にはついに福岡まで行った。
スタートラインに立ってしまった以上、とにかくやれるだけやろうという気持ちのみ。
無茶をしまくっているので、よくロングなんて全然へっちゃらでしょと思われていますが、
出発前はいつだって怖い。怖くて怖くて逃げ出しそうな自分がいる。
楽勝だなんて一度だって思ったことはない。臆病な自分をなんとか必死で押し殺している。
うまくやれる保証はどこにもないし、夜闇は寒くて孤独で薄気味悪い。
それでもその先に美しい朝がやってくるのを知っている。
苦労して苦労して走りぬけた先にえもいえぬ達成感を味わえることを知っている。
だからつい走りだしてしまうのです。
走りだしてしまえば、心の中のモヤモヤはすぅっと晴れて、もう大丈夫。
それでもさすがに今回は全く勝算なし。


↓梅田新道スタート


とりあえずR1を東へ進む。
京橋辺りでは交通量が多いのでちょっとスパートをかけたのだが、
とたんに心肺が乱れ、ものすごく気分が悪くなる。
こないだのように慌てて急停車すると気を失う危険性があるので、
裏道に逃げ込んでゆーっくりゆーっくり速度を落とし、
城東警察署で停車して心肺が落ち着くのを待つ。
のっけからこんな状態で果たしていけるのかと正直思うほどの状態。
やはり前日前々日から過密スケジュールで体力が削られているし、
今日は北風が強くて冷たい空気が入ってくるせいだろう。
少し落ち着いて、とにかく清滝までは行ってみよう。ダメならそこで引き返せばよい。
清滝も15分も20分もかかって上るようでは到底箱根なんぞ上れるわけがない。
序盤ならいつでも致命的にならないうちに帰宅できるわけだから、
清滝はTTモードでやってみて、清滝程度で無理ならあっさり諦めて帰ろう、
と、決める。
心肺の乱れは数に収まったが、そのせいで非常に胸やけのような感じで気分が悪い。
ある程度状態が戻るまでは油断せずに、ダラダラと20km程度で第2京阪を巣本まで。
少しずつペースを上げ、R163は30kmペース。
結局中野ランプに来るだけで1時間もかかった。


中野ランプではちょうどビアンキ乗りの方がいて、
TTをスタートするための準備をしているところだった。
自分は競うつもりもないし、タイムもどうでもいいが、
現状の体力でどこまでやれるのか、
その判断確認の意味でタイムをセットして先行してスタート。
ここで大きく心肺が乱れたり、まさしく瀕死の状態でしか上りきれないようなら
無理せずに今回はDNFだ。
といっても、DNFにならないように是が非でも!という気負いはなく、
むしろそうあった方が東京ライドをやめるいい訳ができるなという軽い感覚で行く。
いつもは重いギアでゴリゴリ上っていくが、
今回は負担をかけないためにいつもより軽めのギアで上がる。
2つ目の信号で信号待ちで少しロス。
リスタート時に軽くダンシングでダッシュしたら少し脈が乱れるが、
走りながらどうにか戻る。
ホテル前は6分半程度。そこからクリーンセンター前までは無理しない。
クネクネ区間でも一気にペースを変えると怖いのでジワジワとペースを上げる感じで。
特に乱れる様子もなかったので、ラストの直線はスパートしてみて問題なくゴール。
まあここでなにかあっても自走できるし、誰か気づくでしょうから。
リスクは常に状況が自分の手中にあるうちに冒すべし。
これが見知らぬ遠方の地だとどうしようもない。
あとになって無理しないといけないシチュエーションに陥った時に
身動きできなくなるのが一番怖いし、困る。
(実際オーラス、横浜からロングスパートに突入するのだが…)
で、肝心のタイムは12:51。
う〜ん、意外と悪くな〜い。
これくらいの強度でなら問題なく走れるのであれば、もう行くっきゃな〜い。
うれしいんだか悲しいんだか複雑な気分で清滝峠を奈良方面へと下る。


↓清滝峠。TTは12:51


昼間にR163を使うなんてこの頃ではめったにしないが、
時間が惜しいのでエスケープせずに突っ込む。
すでに北風が激しく横風の煽りにナーバスになりながら慎重に進む。
あと、昼間の日差しの暑さも考慮して、ウェアを若干薄めにしてきたのだが
すでに結構寒い。夜間大丈夫だろうか…
裏起毛付きのバネストジャージにすればよかった…
山田川ICを越えたところで後方からローディーにパスされる。
背中に「出」?と書かれたジャージの奴だが、
車列の間に割り込んでセンターライン寄りでフラフラしてて危ない。
本人はうまく前の車のスリップにベタつきしていると思っているのだろうが、
明らかに交通の邪魔になってて、ああいうのには巻きこまれたくないのでスルー。
西木津でR163が旧市街を迂回するところでそのままR163へ行ってくれて一安心。
木津に到着したのが14時。駅前のデイリーで軽く補給して一服。
リスタートするが、停まったことで寒さがいっそう身にしみる。
R163をわずかにエスケープで、県道47号で加茂まで。
途中、家路につくローディー数名とすれ違い挨拶。
恭仁大橋で木津川を渡りR163に復帰。
真新しい湾漂山トンネルをくぐり、狭い道をひた走る。
笠置トンネルも特攻。タイミング良く後続から車来ず。
大河原の先の小上りでは、寒いので暖を取ろうと少しだけアップ。
月ヶ瀬口から再び上りで、島ヶ原BPでも上り。この区間結構上らされます。
大して交通量がなく、頼りのない西日を浴びて閑散としていて裏寂しい。
伊賀上野の集落に入ったのが16時前。


上野城


伊賀に入ったらもうすぐそこのイメージがあるのだが、
伊賀から柘植までは15kmと意外とあるのです。
ただっ広い盆地の平坦道をえっちらおっちら走る。向かい風が厳し〜。
R25の心臓部に突入する前に、ちょっと温かいものを補給しておきたかったので
西ノ沢のファミマにピットイン。ここはイートインがあるので寒さをしのげる。
なんかレジ横にうず高く積み上げられたおでん容器がえらいことになっとる。
温まりたかったのでカップヌードルとおにぎりを買って食べていると、
店先で怪しげな動きをするヤンキー。
いかにもヤンキーで、お薬でもやっていそうにウロウロしている。
やだなあやだなあ、怖いなあ怖いなあ(稲川淳二風)と思っていると、
目があってしまい…するとツカツカっと店内に入ってきてこっちへ来るぞ。
なんか因縁でもつけられるんかと身構えていると、
めちゃ甲高い声で
「スイマセン〜、自転車の前かごにとっても大事な鞄を入れてるんで、
トイレの間見ててくれますか〜@+*‘?><〜」
スケスケのグラサンに、眉毛を剃りおとした女性が、ふらふらの声で言ってきた。
「まあ見とくだけなら」というと床につきそうなくらいお辞儀をして、
ダッシュで便所へ。一体何やねん。
まあそんな奇妙なコンビニを後にして、先へ急ぎます。


↓ん?どした?


しばらくして柘植を通過し、いったん名阪国道脇へと軽く上る。
そこから2ケタ国道らしからぬシケインを通過して、いよいよR25の核心部へ。
こちら側からは大した上りもなく、明るいうちにイシバシ工業のダート区間を通過。
本来のプランであればここを夜明け前に通過するはずだったが、
真っ暗闇でここを通過するのはさすがに無傷ではいられなそうだ。
あとは関まで基本下り基調で進む。
一か所、短いトンネルを抜けた先の下りで、
対向からマシンの両脇にでっかいバッグをぶら下げたランドナーさんが重そうに上ってきた。
よく見ると外国の方で、大きい声で「ガンバレ!」とエールを送ると、
チャーミングなスマイルで応えてくれました。
どこまで行かはるかは知らないが、きっと長い旅路のはず。お互いがんばろう!
関でひさびさにR1に再開しますが、亀山ICの手前で再びサヨナラして裏道へ。
亀山BPの側道はアップダウンが多いので県道565、28号の東海道鈴鹿へ抜ける。
亀八食堂から漏れている香ばしい匂いに後ろ髪を引かれながら、前進。
川合町で再びR1に復帰する頃にはもう日没。


↓花は桜木、男はイシバシ!


R1は帰宅を急ぐラッシュなのかモロ混みで、なかなかシビアな道路状況。
しかも四日市までは山の手の方を貫いていてそこそこアップダウンもある。
どうせ四日市から弥富までたっぷり混雑する車と格闘しなきゃいかんし、
その分の体力とマインドを温存するため、ここは鈴鹿川の土手道にエスケープする。
井田川駅の手前でR1を横断し、真っ暗な田んぼ道を少し走る。
県道641号に入って、平和橋で一旦鈴鹿川の右岸の土手道へ。
車にとっても抜け道なのか、結構交通量があるのが誤算。
外灯もなく暗いのだが、土手道でガードレールもないので
路肩に寄りすぎて転落しないように慎重に進む。
汲川原橋、庄野橋、定五郎橋まではかなりの交通量で、
路肩を縫っていけないので軽いストレス。
そこを越えるとぐっと交通量が減る。
真っ暗の高岡橋で鈴鹿川を渡り、県道103号で北上に転じる。
内部川にかかる河原田橋でローディーさんを一人パス。
そのままペースを上げる。
大治田一でR1に復帰し四日市市街地へ突入。徐々に交通量が増える。
ここからは激混みの幹線道路を特攻するしかない。
四日市周辺は道幅も広くそれほど難儀はしないが、
富田の辺りは道幅が狭く渋滞をすり抜ける感じ。
途中で後ろから疾走してきたクロモリに抜かれるが、
ノーヘルであのスピードでこの混雑を右へ左へ縫うのは危険極まりない。
員弁川を渡ると桑名の市街地。この辺りからはまた一気に道幅が増える。
桑名を過ぎると3大河川を一気にまたぐ。
まずは伊勢大橋で揖斐・長良川をまとめて渡る。
橋はギリギリの道幅しかないので無理せず歩道に乗り上げる。
なんか継ぎ目ごとにえらい道が盛り上がっているので慎重に進む。
長島をスルーして尾張大橋で木曽川を渡ればいよいよ愛知県。
約150km走って一応関西圏は抜けた。時刻は19:30。
県境で一度メンバーに近況報告のメールを打つ。みんな相当心配している様子。


↓あ、あ、愛知県突入…ゼエゼエ


すぐにリスタートするがガス欠気味。
予定よりも40分ほど先行しているので弥富のところにあるマクドに入って、
がっつりハンバーガー3個食べる。
ここでもチャライヤンキーがたむろしててウザイ。
興味深々でこちらを見てくるが、
こちらも腹は減るは疲労困憊だわで相当殺気立ってたので向こうも寄ってこず。
20分ほど滞在し、5分だけ目をつむる。
リスタート後はひたすらR1を疾走する。
幹線道路は神経をすり減らすだけでじぇんじぇん面白くない。
逆説的にいえば道自体に面白みがないからこそ、
さっさとスピードを出してペース刻むことがモチベーションとなって、
それがキャノボへと発展していくという原理でしょう。
となると、できるだけ快適な道を見つけて迂回するという自分のスタンスは
やはりブルベ的なんだろうな。まあハタから見たらわずかな違いかもしれませんが。
話をライドに戻すと、徐々に周囲が都会に入ってきたなあちう感じになってくる。
相変わらずアゲインスト気味の北風が少しずつ体力を削っていく。
それでももうじき一区切りの名古屋だし、飯を食って元気を取り戻しているので
ペースを上げて快調に東進。
が、一色大橋で庄内川を渡ろうとした途端にリアに力が伝わらなくなり、
プシーという空気が漏れる音がする…ああ、ここにきてパンクだよ…
テンションがっくり下げて、歩道へ乗り上げリアを見るとペコペコ。
タイヤ自体に深刻な外傷は見当たらないので続行は可能。
だから出発前にFUSION3に履き替えたかったのに!という気持ちがあるので、
ちょっとイライラ。
でもアルトレモはめちゃくちゃはめ易いのであっちゅうまにリペア。
それでも15分ほどはタイムロス。体は冷える。


↓一色大橋で痛恨のリアパンク…ったく


リスタート後はパンクで生じた遅れを取り戻すためペースアップ。
途中から市バスとのデッドヒートが発生するが勝利。
名古屋は道幅がめちゃくちゃ広いので走りやすい。
ただ交差点では左折レーン・右折レーンがあって、そこは注意が必要。
六番町で新幹線とクロス。そういえば昨日の晩だよな名古屋で立ち往生したの…
しばらくして熱田神宮前に到着。20:45。
ここは実際はスルーしただけですが、
記事を書く便宜上、ここまでを第1区間とします。
まだ走行距離200kmにも満たないのに、すでに非常に疲労しております。
しかもいつもと違って出発が正反対の昼に出たのもあって感覚が違う。
本当はまだ9時間弱しか走っていないのだが
なんかもう夜が来てしまったぞという妙な焦りがあったり。色々満身創痍。
ただ、とりあえず名古屋までは来ました。
DNFするならここで新幹線に乗らないと、無駄に一泊することになります。
でも、やんや言うてもまだ元気は元気、どうせなら一晩走ってしまえということで、
第2区間へと躊躇なく突入していきます。
つづく…