記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

フジヤマ登山2014 富士宮ルート〜剣ヶ峰

21日の早朝に丹沢の麓、秦野に6:00。
これが今回の大前提として、プランニングを始める。
この時間にそこへたどり着こうとすれば、
小田原駅発4:55の始発に乗らねばならない。
ということは必然的に前ノリ確定なのだが、
どうせそちらまで遠征をするのであれば、
その周辺のお山に登ろうではないか。
と思いつくのだが、「その周辺」というのがなかなか適したものがなく、
アルプス方面は余計に料金がかさむため、どうしたものか…
で、結局、道中(東海道)にある山といえば富士山しかないなと。
一度登った時は須走ルートで、最高地点である剣ヶ峰までは行けなかったので、
それじゃあ今回は、剣ヶ峰を目指すべく、富士宮ルートに決定。
大急ぎでバスの手配をしたのだが、
フジヤマライナーは臨時を含む3台が全て残席×…
うむう。
しかしこれであきらめるようなarkibitoではございません。
今度は御殿場・小田原方面へ向かう金太郎号をチェックすると、残席○と余裕あり。
早速WEB予約をして足を確保する。
ただし、これでは目的の富士宮まで直行でいかない。
夜行バスで新幹線の新富士駅下車をしてそこから、在来線の富士駅まで徒歩で向かい、
始発の見延線に乗れば富士宮駅に6:30には到着する。
富士宮口五合目へ向かう登山バスの始発は7:30なので、十分すぎるマージン。
朝からちょっと忙しくなるが、
これでどうにか富士山へのアプローチのめどが立った。


土曜日。21:00に嫁子に見送られて家を出る。
そのまま歩きで東梅田駅上にある高速バスの停留所へ。
前回、同じ金太郎号を利用した時は、
最後尾真ん中の席=エンジンルームの真上ということで、
うだるような暑さに、ほとんど死にかけたので、
暑さ対策に氷結のペットボトルやパウチ式アイスなどを3つ4つ購入。
熱ければこれを氷枕にして一晩やり過ごす作戦。
このバス停留所は様々な方面へ向かう高速バスが、分刻みで発着していて
見送る人、見送られる人でごった返し、
NHKドキュメント72時間を思い出すような光景で
まるで人生の交差点のようだった。


東梅田駅前から夜行バス


定刻通り21:55にバスが出発。
自分は8Bと、後方3列の真ん中の席。
座席は、2:1というのではなく、
1:1:1と完全セパレートで前後左右比較的ゆとりがある。
心配していた暑さであるが、空調が効いていて問題はなかった。
(あのエンジンルームの上の席だけが問題なのかも)
真ん中の座席は当然ながら窓がなく、前方もよく見えないので
まるで黒いうごめく物体の中に閉じ込められているような感覚で、非常に不安。
閉所恐怖症ではないはずだが、やっぱり窓際の方が自分は気が紛れていい。
今どの辺を走っているのか、全く分からない上に、
まだそれほど眠たくもないまま、ぼんやりと正面を見つめたまま座っているだけ。
はるか前方のフロントガラスの一部だけがカーテンの隙間となっているようで、
大体そこからどの辺を走っているのか予測しながら、ひたすらぼんやり。
と、天王山トンネルを抜け、もうそろそろ京都南ICを降りようかというくらいで
急に急ブレーキがかかったうえに、バスが勢いよくクラクションを鳴らす!
全然状況がわからないが、夜行バスが怖いという先入観も手伝って、
非常にビビる。
アナウンスでは「先ほど高速上で危険行為がありました」とだけ。
高速上であれだけの制動がかかって、クラクションが鳴るなんてまあない。
しかも状況が見えないから、ただただ恐怖心だけが植えつけられてしまった。
京都で残りの客をピックアップして、再び走り出すバス。
しかしもう、さっきのアクシデントで目がさえてしまい、
ひたすらバスの揺れと暗闇に耐えるのみ。
途中の休憩で土山SAに到着したときにはもう結構ヘロヘロでした。
しかし、ここからが本番。
完全に消灯したのちは、もはや起きているということも厳しく、
目をつぶって無理やりにでも寝ようとするのだが、
バスの振動が気になってしょうがない。
路面の継ぎ目や凸凹の間隔、あそれから左右へのハンドリング。
それらが目をつぶると振動が増幅されて感じられるようで、
その動きが結構激しく、しかも一定じゃない場合にドキッとしてしまう。
これが窓から外を眺められたらずいぶん気がまぎれるのだが、
真ん中の席はそれが許されないので、本当に怖い。
まるで目隠しをしたままジェットコースターに乗せられているような感覚とでも言おうか。
精神的な疲れやらなんやらで、途中から疲労困憊となり、
ウツラウツラするのだが、イレギュラーな振動の度に起こされて、
ほとんど睡眠をとることがないまま、新富士駅でバスを降りたのが5:30頃。
疲れも相当たまっているが、恐怖の夜行バスから解放されて心底安堵。
就活の頃なんか、より過酷な4列シートで何度も東京⇔大阪を行き来したものだが、
全然平気だったのに、年なのか…?


↓JR新富士駅着


がらんとした新富士駅を後にし、ここから徒歩で富士駅に向かいます。
新幹線駅と在来線駅は離れていて、事前の調べだと30分ほど離れているよう。
特に周囲に見どころもなく、県道174号を歩いて6時前には富士駅に到着。
周囲にはコンビニもなく、トイレだけ済ませて、見延線の始発電車に飛び乗る。
6:08に電車は出発。残念ながら富士山は雲に隠れてほとんど姿を確認できない。
眠いんだか眠くないんだかよくわからない状態でぼんやりと車窓を眺め、
35分ほどで富士宮に到着。
そこから、バスターミナルへ向かうが、チケット窓口は7時から。
すでに何人かのハイカーが待合所で待機されていた。
待っている間に、コンビニまで向かい、
朝ご飯をサンドウィッチとオレンジジュースで済ます。
続々とハイカーが集まってきたので、早めに窓口へ並ぶ。
オープンと同時にチケットを購入し、乗降口で待機。
7:30の便は定員オーバーで、臨時便が出ることになった。
自分は1台目に乗り、いよいよ登山口へと向かいます。
何度も何度も同じような蛇行を繰り返す富士スカイラインをあがっていくにつれ
雲なのか霧なのかが発生して、みるみる天候が悪くなっていく。
当然、下界の様子などうかがい知ることもできない。
ひたすら退屈で長い単調な道をバスは進み、一般車通行規制のゲートを抜けて
苦しそうなエンジン音を響かせながらさらに上がっていきます。
そうして8:50に富士宮五合目登山口に到着しました。


富士宮五合目登山口


バスを降りると、さわ〜っと冷たい空気が抜けていきます。
下界はすでに25度以上あったのが、ここでは16度。
なにせ、標高はすでに2400m。
2400mと言ったら、蝶が岳に届きそうな高さ。
ここまで一気にバスで登って、高度の順応が十分ではないまま来たので
登山口にあるレストハウスで少しゆっくりしていこうかと思っていたのだが
今から登るのか、下ってきたのかわからないがとにかく人がうじゃうじゃいて、
軽装で騒がしいアメリカ人、中国か韓国の横暴なパーティー
タバコをスッパスッパ吸いまくるヤンキー、そして大阪のおばちゃん!
もう山の雰囲気もへったくれもなく、こんなところでゆっくりしたいとも思えず、
とりあえず序盤は抑え目で歩き始めることにします。
レストハウスをあがると、そこに保全協力金のブースがあり、
そこで1000円お支払する。
少しだけ一服して上部を見やると、
雲の切れ間から遥か天に向かってひたすら伸びる山肌に思わずつばを飲み込んだ。
と、そこにお一方、ローディーさんが息を切らせて到着。
ご苦労さんです。


レストハウスで支度


保全協力金をお支払


↓本日の天候は曇り。山頂は気温1度


↓クライマーの強者でしょうか


さてさて、時刻はちょうど9:00となりました。
みなが一斉に登り始める前にスタートを切ります。
登山道へと向かうと、そこに看板があり、標高2400mとあります。
ここから約1300mの標高、約5kmの道のりです。
最初はペースを上げないように小股小股で進むように意識しながら進みます。
スタート直後は高みに向かってというよりも、斜面をトラバースするような形で、
カフカの黒土の道が続きます。
大した斜度もなくて、思わずペースも上がってしまいます。
徐々に斜面が急になってきますが、どうにも勢いがついてピッチが上がります。
急斜面の先で、ブルドーザーが登山道を横切って専用道をウンウン上がっていきました。
その先も平坦な横道で、じきに六合目の小屋に到達しました。
時刻は9:15。標高は2490m。まだまだこれからってとこですね。


↓標高2400mからスタート


↓見上げればはるかな高み


↓6合目へ続く急な斜面


↓ブル通過中


↓六合目到着


まだ歩き始めて15分しかたっていないし、
特に用もないので小屋はスルー。
小屋を通り過ぎ裏手へ回り込むと、宝永山への分岐の先に、
いよいよ頂へと続く長い長い登山道がジグザグと延びている。
カラフルな色が点々と続いているのは登山客で、
やはり世界遺産登録で増えているのだろうな。
すぐに登山道に取りついて登り始めます。
右手に広大な荒地が広がるのを目に焼き付けながら、
ゴツゴツした岩の道を進む。
徐々に、先行していた人たちの渋滞が始まってくる。
富士宮コースは、例えば須走コースなどのように
登山用と下山用に登山道がわかれておらず、同じ道を上下でシェアするので
登りにくい個所や、ジグザグの頂点など狭い区間では、
離合のために自然渋滞が発生してしまう。
そのうえに、日頃登山などしないような人達でも、
観光の一環や、度胸試しみたいな形で登ってくる人もいて、多種多様なので
何でもない場所で立ち往生したり(そらスニーカーならそうなるわ)、
登り優先のような山の基本マナーを知らなかったり、
道のど真ん中でいきなり立ち止まって休憩を始めるような連中もいる。
自分が歩きやすい場所を選んで、狭い道を右へ左へ車線を変更して、
前後の人の通行を全く混乱させているのも多い。
中にはカンペーちゃんかというくらい、
トレッキングポールを所構わず振り回している人とか。
特に自分のペースが遅すぎるせいで後ろに長〜い行列を作っていても、
それに気づいていないか、気づいていても譲らずにマイペースな人とかもいて、
余計に行列がエグイことになっている状況があちこちで多発している。
例えば、高速道路上で法定速度50kmオーバーで飛ばしているのも危険だが、
逆に追い越し車線で80km走行しているのも危険なのと同じ。
速いからいいとか、遅い人に譲るべきとかそういう問題ではなくて、
こういう難しい環境だからこそ、登る人下る人、早い人遅い人、
それぞれお互い譲り合いが大事だと思うのだが、
そういうのが一切なくカオス状態である。
かといって、イチイチ自分が注意したりなんてできるわけでもないし、
山の人に対してなら通じるものも、
そういう人に言っても暖簾に腕押しに違いない。
富士山はよくも悪くも他の山とは違う。
色々な人がいるのだから、ここは自分も譲り合いだと納得して、
狭い個所、危険個所では隊列を乱さぬようペースに合わせ、
場所が広くなったところなどでは、
「右から行きます!」とか合図をした上で追い抜きをかけていくようにしました。
時には、歩きにくいイン側の急な岩場をよじ登ったり、
他の人に余計なプレッシャーや気を使わせないようにしつつ、
ペースをできるだけ落とさないようにするのがなかなか難しいかった。
コースの斜度とか厳しさもさることながら、この渋滞対策というのが、
最も大変な作業で、骨が折れました。


↓小屋の裏から続く登山道


↓モクモクモクモク…


↓上空は少し晴れ間が見える


↓渋滞発生


結局序盤はペースを落としてともくろんでいたのが、
追い抜きをかける際には一気にブーストを上げて、
まるでダッシュ練習のように上がってきたので結構ハードな展開。
しかし、ダラダラ渋滞につかまる方が大変なので、
ここは正念場と進んでいきます。
そうして標高2780mの新七合目に到達したのが9:45でした。
”新”ということは、当然本来の七合目はもっと上にあります。
この辺りでちょっと小腹も空いてきたのだが、小屋に寄るほどでもないので
歩きながら手持ちのカントリーマアムをいくつか頬張りつつ進みます。
毎回、山行の時は色々なレーションを持ってくるのだが、行動中、
いつも食べるのはカントリーマアムとマーブルチョコばかりになってしまう。
今回も結局、最後まで他のレーションは残って、この2つだけは完食。


↓新七合目


↓標高2780m


小屋の前後は休憩する人たちでごった返しているので
慎重に混雑を抜けて、さらに上へと続く登山道へ進みます。
黒土に、ぼっこぼこと大きな岩が散らばっていて、
脆いところでは上から砂礫がこぼれてきたりして、
落石に注意しつつ進みます。
遥か上部にポツンと小屋が見えて、
あそこまでひたすらに同じジグザグを繰り返すのだと思うと目がくらくらしてきます。
振り返ってみると、これまた同じようなジグザグ道が下から伸びていて、
もう果てしない。
この頃になると、雲の流れが速くなり、
上部では時折青空を伺うことができたが、下界の方面は完全アウトで、
眺望がないうえに、日差しが強くなるだけで参る。
狭小部分、難所部分は隊列のペースに合わせて進み、
広いところで声掛けをして一気にアタックというのを何度も何度も繰り返す。
そのうちに、道端に標識を発見。
いよいよ標高3000mを越えます。今季初。
とはいえ、まだ700m以上の道のり(六甲約一本分ほど)が残っているわけで、
さすがに日本一のお山です。


↓落石注意で進みます


↓はるか上に元祖七合目の小屋が見える


↓ここまでを振り返る


↓標高3000m突破


標高3000m標識のところから、もうしばらく上り詰めると、
ようやく元祖七合目(3010m)に到着。
時刻は10:15。だいたい1時間ペースでここまで上ってきました。
ここも多くの人が休憩をしていたので、
抜きどころと判断してスルーします。


↓元祖七合目


七合目からはこれまでの区間よりも結構ロックな個所が多く、難儀します。
この辺りまで来ると、地力の差がでて、人もまばら。
が、山の経験のある若い人たちが自分のハイペースに乗じてどんどんついてくるので
妙なトレインを形成しつつ、先頭を曳くことに。
それはそれで後ろから追い立てられてしんどいのだが、
こうなるとこっちも意地でハイペースを維持しつつ進んでいく。
途中からみなついてこれずに、結局また単独で上がっていくようになる。
そうして10:45、八合目(3250m)に到着。
元祖七合目から八合目の区間が自分の中では最も長く感じました。
さすがに強度が高かったので、最初の休憩をここで取ります。
トイレに並び用を済ませ、狭い空き地でザックを置いてしばし休憩。
土にドカッと座ると、地熱なのか暖かくて心地よい。
補給品をむしゃむしゃと食べて、ドリンクで流し込んだら出発。


↓八合目


いよいよ富士宮ルートの本番である8合目からスタートします。
鳥居をくぐって神域に突入。
休憩が逆によくなかったのか、
リスタート直後から足は重たく、脈が乱れて、かなりツラい。
ここは無理をせずに、コンディションが安定するまでは、
省エネモードを心がけて、小股小股で刻んでいきます。
そのうちに、涼しい風が吹き抜けてきたと思ったら、
右手に大きな雪渓が登場。
休憩がてら写真をパチリ。


↓八合目からがいよいよ本番


↓大雪渓現る


↓上部まで続く雪渓


この辺りまで来ると、下山してくる人の数も増え、
登りであえぐ人たちと入り混じって、なかなか停滞気味になってくる。
自分もリスタート後のコンディションの変化に合わせて少しペースを落として
九合目(3460m)に到達したのが11:30でした。
この辺りから、妙に左指先にしびれを感じたり、ズドンと左肩が重くなったり、
主に左半身に色々ダメージの信号が来ます。
でも、体が動かないとか息ができないといった状況ではなく、
軽く腕を回したり、フォームを変えると症状が治まるので、そのまま行きます。


↓九合目


九合目から九合五勺までは、さきほどまでの区間の半分くらいの位置づけなので、
あっという間でした。
ただ、道端にはヘロヘロで倒れ込んでいる人や、
ポールにしがみついて動けない人など多数いて、
正念場を迎えるしんどい個所だと思います。
九合五勺(3590m)には12:00ジャスト頃に到達。
ここからは雲の合間からすでに山頂の位置がはっきりわかります。
ゴールがはっきり見えていると力もわいてくるというものです。
が、手の届きそうな位置に見えているのに、あそこがやけに遠いのです。


↓九合五勺


↓山頂が見えてきた!


ラストスパートということで、九合五勺の小屋をスルーして、
ますます険しさを増す斜面へと突き進みます。
斜度も結構キツイ上に、砂地ではなくゴツゴツした岩の道へと変化し、
よっこいよっこいよじ登るような個所もあったりして、
思うように進みません。
他の登山客も、疲労と難易度アップでガクンとペースが落ち、
渋滞の列も長くなってきました。
途中、登山道の真ん中に雪渓が張り出している個所があり、
そこは整備の方が切り出してくれている道があって
狭い登山道を譲り合いながら上ります。
その雪渓を過ぎると、ゴツゴツした岩の九十九折れが少しあり、
そこを上りきると、鳥居が立っています。
そこがまさしく富士山頂。
イェイ!無事登頂です!
9時から出発して富士宮口山頂(3720m)に到着が12:30なので、
約3.5時間の道のりでした。
さすがにちょっと厳しかったゼイ。


↓斜度もきつくなってきた


↓雪の塊の間を進む


↓富士山頂登頂!イェイ


山頂は登頂を果たした人たちで大賑わい。
そのまま剣ヶ峰の方までおはちめぐりに進もうと思ったのだが、
登頂と同時に大粒の雨が急襲!
大慌てで皆、軒先や小屋へと逃げていく。
さすがに雨の勢いがすごいので、いったん小屋へと退散します。
雷の音も何度かしていて、これはマズイんでないの?とビビる。
これは少し雨の勢いが収まるまでは小屋で待機した方がよさそうと、
ごった返す人の群れをかき分けて小屋の奥へと進む。
イスを1つ譲っていただいてそこで一服。
登山バッヂと、ホットヌードル(600円)を購入し、ハフハフいただきます。
このカップ麺がまたウマイ!


↓山頂の賑わい


ホットヌードルがうまいのなんの南野陽子


しばらく、小屋の中で前をやり過ごしながら補給をして、
一体どうしようかと思案していると、
隣のパーティーがこのくらいならなんとか剣ヶ峰まで行って帰れそう、
待ちすぎて余計悪化する前に発とうと話をしている。
外を見ると、雨はやんではいなかったが小康状態であったので、
自分もこの機を逃さずリスタートすることにします。
小屋を出て、裏手に続く道へ向かいます。
右手は火口で、すぅ〜っと白いモヤが立ち込めて、
その底まではうかがい知れない。
カフカの黒土の道をしばらく進んでいくと、
いきなりの激坂登場!
砂走りのごとき急斜面がいきなり行く手を遮り、
ハアハア息を切らせて一歩一歩登る。
さすがにこの最後のダメ押しはしんどかった!


↓いざ剣ヶ峰


そうして、激坂を上り詰めると、
富士山気象観測所に到達です。
ここはあの石原裕次郎主演の『富士山頂』のテーマとなった観測所です。
こんなところに、これだけのものを建造する…想像を絶しますね。
そしてその横に、「日本最高峰富士山剣ヶ峰」の碑がどーんと鎮座しています。
ここが日本の一番高い地点、標高3776mです。ヤタ!
ピーク時にはここは多くの人でごった返し、写真撮影なども行列になるらしいが、
さすがにこの天候なので、人もまばら。
お互いに登頂者同士でカメラをお願いして、写真を撮影しました。
ちなみに、富士山頂には二等三角点があります。
え?一等三角点じゃないの?とお思いかもしれません。
でもこの三角点(一等から四等まである)はあくまでも地図の測量のために
設置されるものであり、山の高さを示すものではないからです。
もちろん測量においては、どこからでも眺めることのできる山の頂が
選ばれやすいのですが。
また、三角点の位置が必ずしもその山の最高地点と一致しないこともあります。
ちなみに一等三角点の最高峰は、南アにある赤石岳(3121m)、
標高第2位の北岳(3193m)は三等三角点です。


↓富士山気象観測所


↓日本最高地点・剣ヶ峰


↓二等三角点


さてさて、時刻はすでに13:20です。
山上で約1時間も過ごしていることになります。
そろそろ下山のバスの時間が気になる時間。
本当は、下りでは、狭い富士宮ルートではなく、
少し山上を歩いて須走ルートへ出て、
砂走りで一気に下る予定でしたが、この悪天候だし、
下山した先のバスの本数を考えると、富士宮五合目の方が便利なので
来た道を戻ることにします。
剣ヶ峰直下の黒土の激坂をポールさばきでうまくこなし、
相変わらずごった返す富士宮山頂の小屋を通過し、富士宮ルートに入ります。
雨がすごくてたまりません!


↓山上は霧の中


下山は時間との勝負だったので、一切の写真なし。
後続から登ってくる多数の人との行き違いと、
登頂でヘロヘロになった団体さんの下山組が登山道を埋め尽くしていて
8合目まではほとんど先行者をパスできず。
登りよりもむしろ下りの方が時間がかかったんじゃないかなというくらい。
でもまあ仕方がない。
8合目を過ぎると、一気にペースを上げて下ります。
雨で濡れているので難しいところは慎重にしつつ下る。
登りでは全く気付かなかったのだが、下りで踏み込むと、
靴の中で靴と靴下と足が摩擦で滑って、キュッキュとなる。
そこで初めて、登山用のソックスに履き替えるのを忘れていたことに気づく。
往路のバスでは窮屈な登山ソックスではなく、普通の靴下にしていたのだが
出発を急いで完全に忘れていた。
しかし、こんな中途半端な場所で、しかも雨が降っている中で、
登山靴を脱いで、ザック開いて着替えなどできないので、このまま行くしかない。
そのため、どんどん足の指やら何やらが摩擦で痛めつけられてしまって、
かなりのダメージを負ってしまうこととなった。
6合目に到着したのが15:20。さすがにあと10分でバス停まで無理!
惜しかったが断念することにして、
6合目の自販機でファンタグレープを買ってガブ飲み。
すぐにリスタートして、5合目の登山口に到着したのが15:40でした。
まずはバス停へ行き、次のバスの時刻を再チェックして、先に切符を購入。
そのあと、レストハウスの空きスペースで着替えと荷造りをして、
あとはみやげものを物色。


↓登山バスに帰還


16:30になりバスは無事に出発。
幸い、座席を独り占めできたのでのんびりと座ることができました。
服を着替え、体も拭いたのだが、冷房の風邪が寒く、
小さく縮こまりながら、バスの揺れに任せてぼおっと外を眺める。
延々同じような景色が続き、何度も何度もヘアピンを抜けていく。
下るにつれて雨脚が強まってきた。やはり、早めに下山は正解だったか。
前夜の深夜バスでほとんど寝てないうえに、ハードな山行、
それも日本最高峰への登山をこなしたせいで
完全に消耗しきって眠いし、足は痛いし、途中で気を失って、
気付いたら富士宮駅でした。
麓まで降りると雨は止んでいて、めちゃくちゃ蒸してきました。
18:00富士駅に到着しバスを降ります。


次に目指すのは小田原なので新富士まで行って新幹線がセオリーなのだが
早く着いてもすることがないし、それならちょっとでも節約です。
18:20熱海行きの電車に乗り込み、冷え冷えとした車内でウェアを着込んで眠る。
熱海で東京行に乗り換えると、車内アナウンス。
どうも大雨の影響で、新横浜〜品川で新幹線が不通になっていて
ダイヤが大幅に乱れているとのこと。
結果的に在来線をチョイスして正解だったかな?
他にも京王線やらなんやら、あちらこちらで雨等の影響で電車が止まっている様子。
関西では、電車が止まるなんて言うのはよっぽど(阪和線は除く)だが、
東京は脆弱だなあ。
そうこうして、19:40に小田原駅に到着。
そこそこ栄えた町なので、どこかに東横とかスーパーホテルとかあるだろうと思ったら、
全然ホテルがなくって、ええっマジ?と焦る。
繁華街の方へ向かうと怪しいビジネスホテルが何件かあったが、
ちょっと古すぎて入りづらい。
これは以前キャノボの時に世話になった、万葉の湯へ飛び込んで聞いてみるが、
この日は連休ということで休憩室は満杯の様子…
仕方がないので駅の方へ戻り、別の方角へ向かうと、なんとかまともそうな宿を発見。
一泊5900円を支払って、どうにか寝床ゲット。
さすがにこの日は疲労がすさまじく、野宿やネカフェ待機は厳しすぎました。
すぐさま風呂を入れて、汚れを落として温まる。あああ、生き返るわ〜♪
風呂を済ませてから、ようやく晩飯に繰り出します。
が、ホテルを出たとたんに土砂降りの雨が降り出したので、
目の前にあった焼き鳥屋で一杯ひっかけることに。
学生目当ての安い店で特筆すべきものなし。
ホテルへ戻り、缶ビールをもう一杯いただいて、11:00に就寝。


↓小田原にて一泊


富士山は2度目で2度とも天候に恵まれていない。
眺望があるなしで印象は随分変わると思うが、
登山道の混雑ぶり、代わり映えのしない登山道であることを考えると
決して、登ってても楽しい山じゃなあいなあと思う。
やっぱり富士山は登るよりその美しいシルエットを眺める方がよいなあ。