記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

丹沢山 地獄から天国 詳細編

朝5:30に小田原のネカフェで目を覚ます。
トイレを済まし、もろもろ荷物の準備をして、駅へ向かう。
まだ辺りは暗い。
夜半から雨が降ったらしくすでに路面は濡れていて、
今は止んではいるがいつ降り出してもおかしくない。
前日のサイン会のために何冊か本を持っていたり、
仕事のもの、スーツなど、山に不要な荷物をコインロッカーに預け、
それからコンビニで朝飯と補給食を買い込む。
6:30の快速急行新宿行きの小田急線に乗り込み、
7時までには秦野駅に到着する。
ヤビツ峠行きの始発バスは7:35で、
まだ40分ほど時間の余裕があったので、ベンチで朝飯とトイレを済まし、
20分前にバス停へ向かうと、
信じられないほどの行列…マジ?
どうやら地元の登山会の集まりらしく、すでに30人以上が並んでいる。
ああ、これは絶対にバスでは座れない。
バス停の小さな屋根からはみ出るくらい人が並んでいて、
自分もぎりぎり屋根が切れるところに並ぶ。
ビルの合間から丹沢の山並みを見ていると、
どんどん雲が集まってかき消されていく。
そのうち、雨が降ってきて、早くも濡れる。
そんな状況でも、電車が到着するたびに、登山客が押し寄せて、
バスを待つ行列は伸びる一方。
と、その時、前方に陣取っていた大所帯のリーダーさんらしき人が
突然、「今日は中止!」と宣言され、どっと団体さんが列から離脱。
バスで上に行ってしまってからでは後手に回るので、
その前に強行か中止かの判断をされたみたい。
これだけの人数を束ねているので、
早めの判断されたのは素晴らしいと思います。
そのおかげで、行列の順番も繰り上がり、
無事にバスの座席をゲットできました。
バスは満杯の人を乗せて定刻通り7:35に出発。


↓秦野駅のバス停は大混雑


出発直後は、少し日が差すような感じで、秦野市街を抜けていきます。
R246を横断して山間に入っていくにつれて、
車窓にどんどん白いスクリーンが張られていきます。
大日堂を過ぎると、本格的な山道に入り、
細かくカーブが連続していきます。
ここは関東ローディーのヒルクラのメッカ、ヤビツ峠ということで、
どんなコースかなとずっと道の具合を見ていましたが、
激坂な区間はあまり感じず、
同じような斜度・同じような風景が何度も繰り返される鍋谷峠のようなコースでした。
そうして約1時間かけて標高761mのヤビツ峠に到着。


ヤビツ峠


ここではすでに真っ白なガスに覆われ、
視界が悪いうえに、すでに雨がポタポタと降っている。
バス停の脇にある公衆トイレの軒先に避難して、レインウェアを着たり準備。
で、慌てて出発したのだが、方向感覚がわからず、
最初は間違ってバスで登ってきた方へと進んでしまう。
ただ、なんかおかしいぞと感じ、地図で確認したら、
逆方向の登山口が出てきたので、慌てて引き返す。
そんなこんなで8:40頃にようやく本当のスタートを切る。
しばらくは、県道70号の舗装道路を1.5kmほど歩きます。
雨が強いので、傘をさしてずんずん進みます。
そうして20分ほどで富士見橋に到着。


↓富士見橋


ここで、清川村へと続く県道70号を外れて、
公衆トイレのある方向へ左折。
しばらくコンクリの激坂をえっほえっほと登ると、
いよいよ表尾根ルートの登山口に到着。
ここで傘を締まって、山道に突入します。


↓表尾根ルートに突入


スタート地点でいきなりロストして、出足が遅れたので、
ここで挽回をしながら次々と先行者をパスしていきます。
木で組まれた足場を急ピッチで進んでいきます。
まるでこのあいだの大和葛城山を思い出すしんどさ。
この辺りはまだ緑が深いところを行くので、
降ってくる雨は大して気にはならないが、
前日から降り始めた雨のせいで足元がヌルヌルとしている。
今回は登山靴ではなく、履き古しのトレランシューズで、
いつもよりもグリップがないため、
ぬかるみに足を入れるたびにグニュっと軸がブレるため、
その分若干ながら余計に踏ん張りが必要になる。
これが蓄積していくと結構足が疲れるだろうなあ。
しかし進んでいくしかない。
バスを降りた直後はかなり寒くて、
レインウェアの下にフリースやら何やら着込んでいたのだが、
さすがに急ペースで登り始めると一気にウェアの中は蒸し風呂状態。
オーバーヒートすると途端にパフォーマンスが落ちるので、
二ノ塔の少し手前の広場で余計なウェアを脱いで機動力を上げる。
その先、結構ガレた斜面が続き、斜度も急になってくる。
ジグザグと進んで、8:23に二ノ塔に到達。
ここは周囲が開けているので、普段であれば眺望が期待できそうなのだが
今日は雲が厚すぎてどうにも無理。
ということで次へと進みます。


↓二ノ塔


二ノ塔からはいったん下って鞍部へ進み、
そこから再びえげつない階段地獄が続きます。
この表尾根ルートは、いくつもの小さなピークをつないでいるので、
上がったり下がったり、結構アップダウンが厳しい。
そうして白い靄のなかから小屋がぬっと姿を現し、
9:34に三ノ塔に到着。
ここまで約3km、標高差で約450mほどを1時間で上がってきました。


↓階段地獄


↓小屋発見


↓三ノ塔(標高1205m)


久々の山行というのもあって、多少疲れていたが
まだ1時間しかたっていないので休憩をせずに先へ進みます。
しかし、このくらいの標高になり、稜線歩きへと転じると、
一気に横殴りの風が猛威を振るい始めます。
時折踏ん張らないといけないような突風が足元をすくい、
その荒れ狂う風に乗った雨粒がビシャビシャと顔面をたたく。
これはなかなかのバッド・コンディション。
これが3000m級の山の上であれば即座に山行を中止するが、
2000m未満の山で、小屋も営業をしているところも多い。
油断をするわけではないが、
撤退しないといけないほど追い込まれているわけではないので
ひとまず塔ノ岳まではなんとか頑張る。
それにしても芳しくないことは確かで、
今年もずいぶん雨中登山を余儀なくされてきたが
おそらく今年一番激しい雨風。


↓木道が続く


色々要所で写真を撮ったりなんかしていると、
後ろから赤いウェアの女性が足早にパスしていった。
この方、登り口で追いついたのだが、
そこから他の人や先行者は次々と置き去りにしてきたのに、
まったくペースが落ちずにずっとついてこられてた方で、
相当速い。
写真がブレてしまって撮影がやり直しになるので
道を譲って先行していただく。


↓大荒れの天気


三ノ塔を過ぎてしばらく進むと、
急激に下るちょっとした難所に差し掛かる。
かなりのピッチで階段があり、落ちるように下っていく。
ぬかるみがひどく、丸太部分も滑るのでひやひや。
そこを結構下っていくと、今度は短いながら梯子が登場します。
そこを過ぎると、ガレガレの急斜面となり、
慎重にルートを見定めながら下っていく。
雨と風が真正面から吹き付けるし、足元はユルユルなので、
思ったより体勢が安定せず、丁寧に難所を抜けました。


↓第1の難所に差し掛かります


↓脆い急斜面を振り返る。滑る!


最低鞍部まで到達して、今度は一転登りの階段が続く。
周囲は熊笹に覆われ、木々が低いので風の影響をモロに浴びて
微妙に跳ね返されながらも、低姿勢で前進する。
そのうち、前方に小さな小屋が見えてきた。
ここが標高1136mの烏尾山。時刻は9:53
残念ながら小屋は空いておらず、
雨風をしのいで休めるところがないので、そのままスルーします。
小屋をぐるっと左側から回り込むような形で尾根道が続いてきます。


↓烏尾山


だんだんと、尾根らしく両側が開けてきたが、
左手側から右手側へと真っ白なガスの塊が次から次へと横断していくので
なかなか視界が効かない。
平坦な部分が現われたかと思うと、
急な岩礁を上り詰めるようなところもあり、
意外と体力がいる。
そうして、急な岩場が少し続いたピークに
小さな祠が祀られている行者岳に到達したのが10:09。


↓行者岳


そこから先も、行者岳と言われるだけあって、
しばらく岩だらけの歩きづらい区間が続く。
コースはきちっと鎖で区画されているのでその間を行けば問題ない。
その先で、今回の最大の難所と思われる10mほどの岸壁にぶつかる。
ほとんど垂直に切れ落ちている岩の壁を
鎖を利用しながら下らなければいけない。
これがまた滑りやすい岩質のもので、雨でツルツルになっている。
慎重に足場を確認しながら三点確保で無事に下る。


↓なかなかの岩壁をクリアして振り返る


この天候で最大の懸案だった岩の難所を抜けたので、少しホッとします。
そこから先、再び登り返しが続く。
最初は延々と続く階段…
腿上げがしんどいぞ、ブリー隊長!
この辺りから雨風はさらに容赦なく吹き付けるようになり、ちょっと必死。
アップダウンをしこたまこなして、政次郎ノ頭を通過する。


↓どこまで続くの階段よ…


↓政次郎ノ頭


そこからは、またまた急な上りが延々と続く。
視界が完全不良なので、ただ黙々と登りを詰めていく。
だんだん周囲に鹿除けのフェンスなどが現われ、
いくつかの偽ピークを経て、小屋のある新大日に到着。
時刻は10:39。ヤビツ峠からほぼ2時間です。
思っていた以上にアップダウンがあり、
ちょっとエネルギーが落ちてきたので
手持ちのレーションを大急ぎで口へ放り込む。
立ち止まっているとどんどん熱が奪われて寒くなるので、
足踏みをしながらさっと休みを済ませて、先を急ぎます。


↓新大日(標高1340m)


新大日からは緩やかで直線的な山道が続きます。
ほどなくして木ノ又大日小屋を通過すると、
小屋の軒先で雨宿りしている3,4人ほどのパーティーがいて、
「こんな悪天候でも登るなんて、お互い変わってますねえ」とご挨拶される。
本当に、晴れた日に登りたいですわ〜。


↓木ノ又大日小屋


そこを過ぎてしばらく行くと、登山道が崩落した個所があり、
そこを迂回する登山道が脇に設置されています。
そこを過ぎると、再び急な岩場の登りとなり、ジグザグと上っていきます。
この頃になると雨脚が一層強くなってきて、
登山道もにわかに雨滝のごとく上から水が流れ落ちてきます。
あああ、もうドブネズミのように全身が濡れてなんどもひどい。
冷えて疲れ切った体を無理やりに引き上げていき、
塔ノ岳に登頂したのが11:16。
ヤビツ峠から約7.5kmを3時間半で来ました。
思った以上にアップダウンがあり、
そしてなんといっても雨風が思いのほか難儀でしたが、
とりあえず無事に第1の目的地には到達です。
取り急ぎ、記念撮影をしたいのだが、自撮りが厳しいので、
出発間近の人を捕まえて、シャッターを押してもらう。
突風にあおられて一発でシェ〜が決まらず、
標にもたれかかるようにしてなんとか。


↓塔ノ岳


塔ノ岳の山頂は結構広々としていて、
その一角に、尊仏小屋が営業をしていました。
先ほどより一層高い稜線に出たため、雨がダイレクトに当たり、
風もそうとうに荒れ始めたので、大急ぎで小屋へ避難します。
小屋の中は結構な人でごった返し、みな寒そうに暖を取っておりました。
自分は入ってすぐのところの椅子に陣取って、しばし呆然。
すると、小屋のオッチャンが注文は?というので、
熱いお茶(300円)をお願いします。
その暖かな温度を体中にしみこませるようにゆっくりいただきながら、
ベラベラになったレインウェアを脱ぎ、タオルで体を拭いて少しでも乾かします。
ザックは、登山用ではなく、通勤に使っているもので
レインカバーもついていないのでもうベチャベチャです。
頭もニット帽なので水を吸って、重くなり、
やはりこんな天候で、中途半端な装備だとえらい目に遭うわけです。
それほど疲れたわけではないけど、
この雨に打たれたというストレスと冷え切った体がズドンと。
暖炉があってそれなりに暖かいのだが、少し震えが止まらない感じ。
そういえばストーブの目の前の特等席には猫がまんじりとも動かずに寝ている。
名前を聞いたら丹沢みーちゃんというらしい。
外を見ると、風はさらに勢いをましまるで台風のように窓をたたいているし、
雨粒が見えるほど強く降っている。
この先、片道1時間往復2時間かけて、主脈を伝って丹沢山を目指すか。
とりあえず塔ノ岳登頂で満足してこのまま大倉へ下るか。
地図とにらめっこしながら色々思案する。
地図を見ると純粋な標高差は少ない。
稜線歩きなのでそれなりアップダウンはあるだろうが、
往路と復路でタイム差がほとんどないということから察するに、
ほとんど平坦で行けるのではないか。
そうすればちょっと急ぎ足で展開すれば2時間と言わず1時間30分で
再びこの小屋に戻ってこれるだろう。それならばリスクも少ないし、
雨風をどうにか耐えれるのではなかろうか。
と考え、もう少しだけ休憩を続行して、多少衣類が乾いたところで
意を決して小屋を飛び出す。
時刻は11:50。


熱いお茶(300円)で小休止


↓尊仏小屋のマスコット、丹沢みーちゃん


小屋の戸を開け放ち外に出ると、冷たいしぶきが一気に顔に吹きかかり
再び地獄へと舞い戻った。
小屋の裏手から続く主脈へと足を踏み入れる。
予想に反して、小屋のすぐ先から激下りの階段…
これだけ下るってことは、再び登り返しがあるということで、
その上に当然、今下っている区間は帰りには激坂として立ちはだかる…
それも十分萎えるのだが、それ以上に幻滅したのが登山道のぬかるみ具合である。
この辺りは鹿が多く生息しているらしいのだが、
彼らや登山客の多くが踏みしだいた登山道は、ほとんど泥炭と化していて、
道の中心部分はほぼ水没しているといっていいほど、水たまりとなっている。
どうにか、道の端を歩くのだが、ずっとその部分を歩けるわけではなく、
仕方なくぬかるみに足を突っ込まざるを得ないところも多い。
その度にペラペラのトレランシューズは浸水して、
ジュブジュブと音を立てて水を吸い、靴下が恐ろしいまでに冷たくなっていく。
足先はもうふやけてしまって感覚がなく、
足元の不快さがストレスの極みとなって襲いかかる。
ちょっとでも足場のましなところ、ぬかるみの浅いところを選んで
飛び石のように進んでいくのでペースも一向に上がらない。
上からの吹き付ける雨、下から体力を奪う水たまりのダブルパンチ。
もうこうなるとただ歩くマシンに徹して黙々と突き進むしかない。
登り返しを詰めてようやく中間点の日高に到達したのが12時。
小屋を出て10分しかたっていないが、
もはや1時間ほど雨にさらされているような感覚。


丹沢主脈


↓日高


日高を過ぎると道はほぼ平坦となり、楽にはなるが、
その代わり道の水没具合はエグさを増し、
水たまりを避けて通るのが非常に難しい。
もはや足元を気遣ってどうこうなる状態ではないので、
ペースを上げていく。
徐々に深かった白い霧がマシになってきたようで、
うっすらと前方にピークが見え隠れするようになる。
あそこまで!とわかると、パワーが出てきてピッチを上げる。
そのうち階段が現われ、それをトントンと登っていくと、
ようやく百名山丹沢山(1576m)に到達する。時刻は12:30。


↓前方に目的地が見えてきた!


丹沢山登頂!


こちらの山頂も広々としていて、見晴らし台やベンチなどがあったが、
残念ながら眺望はなし。
すぐそばにあるみやま山荘へとお邪魔をして小休止。
さきほどの尊仏小屋では山バッヂは売り切れだったのだが、
こちらでは在庫があり1つ記念にいただきます。
何か食べようかとも思ったが、
これは天候が悪くなる前に塔ノ岳までバックするのを優先したほうがよいので
少し休憩をして引き返します。


↓三角点


↓山頂は広々としている


↓気温は8度。体感はもっと低い


↓みやま山荘


↓小屋で山バッヂゲット


丹沢山を後にして、ずんずんと木道を下っていくと、
にわかに雲の厚みも薄らいで、
往路では全くわからなかった主脈の様子が徐々に浮かび上がってきました。
丈の低い緑が絨毯のように連なる稜線で、
それらがぐるーっと弧を描いて続いています。
振り返ってみると、先ほどいた丹沢山のすぐ西側に、
それよりも明らかに高い蛭ヶ岳(神奈川県最高峰)が仲良く並んでいます。
あそこまで行ければなおよかったのだが、
片道3.5km、往復7kmの追加はさすがに日没までに下山できない。
あちらはまた次のお楽しみにしておこう。


↓振り返って右が丹沢山、右が蛭ヶ岳


風はまだまだ強いのだが、あれだけ降っていた冷たい雨は収まる。
風に煽られて雲がどんどん散り散りになり、
西側の山並みが徐々に顔を出し始める。
深い谷にいくつもの山、それらがまるで風呂上がりのようにもうもうと煙を上げている。
まるで一枚一枚白い絹のカーテンをはいでいくかのように、
徐々に奥へ奥へと視界が開けてきた。
これはひょっとして、さらにその先の富士山まで見えるようになるのか?
午前中あれだけの悪天候だったし、さすがにそこまで望むのは難しいか、
しかしせめてその裾野だけでも拝めれば。
先を急いではいるが、急展開する天候を注視しつつ、
見晴らしのいい場所で何度か立ち止まって西の方面が晴れるのを待ちわびる。
みるみる雲が晴れ、残っている分厚い雲はみな、
まるで富士山の河口付近に吸い寄せられているかのように
ぐるぐると展開しながら渦を巻いている。
あともう少し待てば、山頂まではっきり見えそうだが、
とりあえず塔ノ岳のピークからでも見えるはずなので、先を急ぎます。


↓西側の視界が開けてきた


塔ノ岳への最後のしんどい階段を上っていると、すぐ左手でガサゴソという音。
なんだ?と思ったら、鹿でした。
丹沢といえば、ヒルと鹿が有名ですが、
最近ではその数が増えすぎて生態系を破壊するようになって、
他の山同様、有害駆除の対象となっています。
何事もバランスが大事。


↓鹿と遭遇


最後の登りをこなし、再び塔ノ岳にたどり着いてみると、
ほんの2時間前の嵐が全く嘘のように、上空には青空と日差しが見え、
はるか西に堂々とそびえる富士山が、雲の布切れをまとって、
なんだかいつもより勇ましく見える。
雨は本当に困るんだけど、こういう展開でばあっと雲が晴れ、
眼下に雲海が広がるというのも自然のダイナミックさを見せつけられるようで
なかなか趣があるものである。


↓2時間前が嘘のような天気


とりあえず、ここまでほとんど補給品も食べずにきて、
エネルギーが足りません。
写真をあわただしく撮ってまずは小屋で腹ごしらえです。
時刻は13:40。
カップヌードル300円にお湯を入れてもらっていただきます。
山の上で食べるカップ麺ってウマイ。
山の上は気圧の関係で沸騰が弱いので、それだけ麺が固めに仕上がるせいかな。
ガシガシ食べて、スープで暖まり元気も回復。


↓尊仏小屋で昼飯


お腹を満たし、しばらく休憩。
小屋のオッチャンが登山客に16時になると一気に暗くなるぞとアドバイスされていました。
ここから大倉まではおよそ2時間の距離。
一応ヘッデンは持ってきてるけど、出来れば明るいうちに下りておきたい。
ただ今時刻は14時ということで、そろそろ出発。
小屋から出ると、空は急速に晴れ渡り、遠くまで眺望が開けていました。
まずは西の方を見やると、延々と続く丹沢山系の山々の先に、
富士山が光に照らされて美しくそびえています。
一方東側を見ると、歩いてきた表尾根ルートの山々をたどって大山まで続いている。
そしてそのはるか先で雲の切れ間からは湘南の海岸線が弓なりに続いているのが見える。
大山より北の広い範囲では、標高が低い一帯には分厚く雲が停滞していて、
それは素晴らしい雲海が広がっております。
標高1400mほどの塔ノ岳ではあるが、
まるで3000m峰の高山から世界を一望しているかのよう。素晴らしい!
その雲海のはるか先に目を凝らしてみると、
なにやら鋭い針のようなものが雲間から突き出ている。
何だろうと思ったら、スカイツリーではありませんか!
こんなに遠くの山からもはっきり目視できるとは、さすが634mもあるだけある。
塔ノ岳は、比較的アクセスしやすいうえに、
これだけの眺望があるので本当に気持ちのいい山でした。
もっとクリアに晴れている日であれば、
関東平野や湘南〜真鶴までの海岸線が一望できるみたいだし、
小屋に泊まれば素晴らしい夜景も楽しめるようなので、
これはまたぜひ機会があれば再訪したい。


↓塔ノ岳から西の絶景


↓東の大山と、その先にうっすら湘南の海岸線


↓お見事


スカイツリーはやっぱスゲェ


なんだかんだ絶景に見惚れ、写真をバシバシ撮っていたら、
15分も過ぎてしまっていた。
そろそろ見納めにして帰路につきます。
広場の脇から始まる急な階段をえっほえっほと下ってきます。
他の登山客も皆14時をメドに下山を開始したのでちょっと混雑していたのだが
道幅の広いところでパスしながら急ピッチで下ります。
しばらく進むと金冷シという分岐点があり、そちらを左に折れて大倉尾根に入ります。
ここを直進していけば鍋割山へ行けるのだが、今回は断念。
鍋割小屋の鍋焼きうどんは絶品と聞くので行ってみたかったなあ。


↓金冷シから大倉尾根に入る


大倉尾根に入りすぐのところに、短い梯子場があり、
そこを越えて広いピークに出ると、そこから再びきつい下りが始まる。
前方の視界は開けているのだが、雲海が広がっていて、
まるで今からそこにダイブするような感覚で、
軽快にステップを降りていきます。
幅広の登山道をガンガン降りていくと、花立山荘に到着します。
このルートは一定距離で小屋があってまるで富士登山のようです。
どれもが営業されているので初心者の人でも安心。
そこをスルーしてさらに下へ下へと進んでいくと、
いよいよ雲の中、深い森へと突入していきます。
ここまで見守ってくれていた富士山ともここでお別れ。


↓花立山


↓雲間へと突入します!


↓さらば富士よ


雲が残っている標高まで下ってくると、ガスが辺り一帯に充満して、
一気に幻想的な森へと景色が一変します。
登山道ははっきりとしているので、道をロストすることはないが、
日が差さないので一気に寒くなってきた。
ひたすら同じような下りを延々と下っていき、どんどん高度を下げていきます。
これは大倉から登る時は結構しんどいだろうなあ。
そうしてちょうど中間地点辺りにある堀山の家を通過したのが
14:47。
ここまで塔ノ岳から3kmほど下ってきたが、大倉まではまだ4kmほどある。


↓雲へ入ると一気に白の世界へ


↓堀山の家


堀山の家を過ぎると、道は歩きやすいなだらかな平坦路となり、
一気に足の負担が無くなります。
道はほとんど落ち葉で埋め尽くされて、ところどころスリップに注意しつつ進みます。
左側に本谷沢がみえているのだが、紅葉が美しい。
しかし山の様子を見るとまだまだ高度が高く、道のりが長いことがわかる。
平坦な道と階段が何度も繰り返されひたすらそれを詰めていきます。
所々小屋もあり、休憩もできるのだが、
できるだけ早く下山したいので全てスルー。


↓平坦な道になりラクチン


↓このコースは小屋がたくさんあって安心


途中で、登山道が二手に分かれているところにでる。
これを直進をして大倉高原山の家の展望所を経由していくことにする。
背丈の高い木立の間から、まるで波間のように柔らかな木漏れ日がゆらめく。
とても心地が良い森の道を進んでいくと、テン場が現われ、
10人ほどの人がテントを設置しているのか撤収しているのか、
忙しく作業をされていた。
そこを突っ切って、しばらく降りると大倉高原山の家の前に出た。
ここはテラスがあって眺望を望めるらしいのだが、
あいにく眼下には雲海が一面に広がっていて海は見えず。


↓大倉高原山の家の展望所より


大倉まではまだ2kmちょっとあるので先を急ぎます。
その先ずっと道は続くのだが、その先でちょっと混乱。
あきらかに登山道は直進しているのだが、
人為的に大きな枝が何重にも遮るように置かれ、
通行禁止のようなサインになっている。
しかも正規の道から外れるようにして、
道のようなものが掘られて左の谷へと続いている。
何らかの原因(台風など)で登山道が崩落などして
迂回路が設けられているのかもしれないと思って、
そのサインに従って真新しく掘られたばかりの荒れた道を進んでいったのだが、
途中でその道もなくなり、正面は急な谷となっていてこれ以上進むのは危険。
仕方がないので分岐点に引き返すが、
道らしい道は木で遮られた正規ルートしかない。
とりあえず見通せる範囲では危険がなさそうなので、
引き返すリスク覚悟で、その木をまたいで先へ進む。
確かにここ最近では人が入っていないのか、
登山道は枯葉で覆い尽くされて踏み跡がないのだが、
所々に標識もあって、道も危険な個所もなく、無事に合流地点出る。
そこからもう1つ2つ小屋を通り過ぎて、ようやく舗装道路に出ました。


↓無事に登山道を抜けました


この頃には周囲は深いガスに覆われていて、
なんだか不気味な感じになってきました。
バス停のある秦野戸川公園まではまだ少しあるので、気を緩めずに歩く。
登山口には、登山者に向けていくつかアナウンスがあるのだが、
そんな中に、余裕のある人は角材を上の小屋まで運んでね♪なんてのもありました。
ペットボトルに水を入れて運んでねというのは知っていたが、
まさか資材まであるとは!次来るとき余裕があればお手伝いします!
あとは、ヤマビル注意の立て看板。
今はもう寒い時期なので問題なかったが、
夏場はヒル除けスプレーは欠かせないらしい。
足元だけじゃなく、木の上から降ってくるらしいので怖い@@
登山口をさらに進んでようやく一般の道と合流する地点に、
なにやらOh!マイキーのような怪しいお人形さんがお出迎え。
名札を見ると「丹沢クリステル」さんとあります。おもてなしアリガトウ!
 

↓余裕のある人は資材を運んでね♪


↓丹沢はヤマビルのメッカ。夏は要注意


↓丹沢クリステルさんという方におもてなしされました


そこからさらに歩いていくのだが、
さっきの山上の快晴が嘘のように、深く邪悪な霧が一帯を立ち込めてきた。
そうしてようやく16時になって大倉バス停に到着しました。
朝の8:45から、7時間15分の山行でした。
ひどい天候で、アップダウンもそこそこあったので結構疲労困憊。
バスの時刻を確認すると10分ほどあったので、大急ぎでインナーを着替え、
コーラで渇きを潤す。
それからここは陽希さんとお会いした記念の場所なので、写真も忘れずに。


↓大倉に無事下山


バスは定刻通り出発。登山客も自分を含めて3人だけ。
20分かけて渋沢駅に到着。
そこから小田急線で小田原へ向かい、まずは新幹線の手配。
次の便が10分後なので大急ぎでチケットをゲット。
小田原は一部のひかりを除いてこだまばかりなので、静岡で乗り換えが必要なようだ。
ロッカーから忘れずに荷物をだしパッキングをし直すが、
ザックの底が雨のせいでずぶ濡れなので、脱いだウェアをそこに詰めて、
無傷の荷物を守る。
残り6分で目の前の土産屋を除くが大したものはなく、
大急ぎでホームへ駆け上がりどうにかセーフ。
思った以上に疲れていて、すぐにウトウトするが乗り過ごしてはいけないので
必死に耐えて静岡で乗り換え。
そのあとは記憶なく、気付いたら京都駅を出るところだった。
新大阪止まりではなく岡山行なので、そこで目が覚めてよかった。
帰宅したのが21時ごろ。
熱い風呂にドボンと浸かってようやく復活。