記憶の残滓 by arkibito

「マジメにアソブ、マジメをアソブ」をモットーに、野山を駆け、コトバを紡ぎ、歌う。

裏銀座縦走 2日目 怒涛のピークハンティング

前日は20時就寝だったが、窓側の寝床で、
稲光が頻繁で最初はなかなか寝付けず。
でも、この日の客が皆素晴らしく良かったのか、
いびきをかく人も全くおらずとても快適に眠ることができました。
4時半ごろに、お隣の赤牛を目指すおっちゃんが起き出して
荷物をまとめる音で目覚める。
自分も朝食の代わりに弁当にしたので、
食事時間に縛られずに自由に動けるのだが、
朝はおトイレが必須なので、
ひとまずは朝焼けショーを見てからいったん小屋に戻る作戦。
おっちゃんをお見送りがてら野口五郎岳までひと上りしていると、
徐々に太陽が東の雲間から顔をのぞかせ始めました。
昨日あれほどでかかった入道雲は見事なまでに消え去っています。
そのうち、おっちゃんが「行くわ」と告げて発たれお見送り。
自分はもうしばらく山頂を独占して朝焼けショーを楽しみました。


↓朝が生まれます


↓山頂にてご来光


↓夜のほうを見返します


8月とはいえ山頂の朝はかなり寒く、
薄着で出てきたので案の定体が冷えてしまいお腹が急降下@@@
大慌てで小屋へと舞い戻り、トイレタイム。
まあ、これもれっきとした作戦です。名付けて強制噴射。
出すものしっかり出してからスタートしないと本当に大変なので。
朝食は取らず、小屋の人にお礼を言っていざ出発。
本当に素朴で素晴らしい小屋でした。
さてさて、2日目はいよいよ裏切算の核心部、黒部の源流エリアを歩く。
天気も良好♪で5:30に出発。
まずは、すでに何度も行き来した野口五郎岳へ登ります。
ただ今回は、山頂のすぐ脇から山頂をパスしてトラバース道に入ります。
直下には東沢谷が広がり、その先に第1の目的地である水晶岳と水晶小屋、
その手前にギザギザに展開している稜線の道が見えます。
ああ、今からあそこを歩いていくのかと思うとワクワク、ドキドキします。
東谷側につけられた細いトラバースの道をえっほえっほと下っていきます。
遠くに何人か先行者がいらして、それを目安に進んでいきます。


↓なだらかなトレイルを歩き始めます


しばらく進み、真砂岳との間の乗越に到着すると、
そこで野口五郎岳の山頂からのトレイルと合流します。
振り返ってみるとどっしりとしたシルエットを横たえてなかなか雄大です。
ここから真砂岳の北側をトラバースする道へと入ります。
それなりに整備されているとはいえ、岩場の区間もあり慎重に進みます。
真砂岳の反対側に出ると、急な下りが待ち受け、
それが結構ガレザレで、慎重に下っていきます。
ここからは今日ずっと山行を見守り続けることになる槍や、水晶岳が惜しげもなく。
はるか向こうにはこの日の最終地である双六小屋が見えます。
一見近いように見えますが、
これからいくつものピークを越えてあそこまで、
果たしてたどり着けるのかしらん?


↓最初の目的地、水晶岳


↓今日は終日出ずっぱりの槍さん


↓本日の最終目的地である双六小屋が見えます


↓右がワリモ岳、左が鷲羽岳


急なザレ下りの途中で背後から走ってこられた
単独の女性ランナーさんにパスされます。
結構不安定な下りで、なかなかの勢いでパスされてびっくりしましたが、
女性の方が肝が据わっているということなんでしょう。
下りきると、そこからはなかなか歩きにくい岩場、
それも結構左右の余裕のない回廊に突入します。
トレイルは何度も南のワリモ沢側と東谷側を行き来しつつ、
大きな岩の塊の間を貫いていきます。
これはガスっている時は結構嫌だろうなあ。
で、小さなピークから再び下りに入ろうかというところで、
いきなり目の前の岩陰から人が出てきてちょっとびっくり!
よく見るとさっきの女性ランナーさんが朝食を摂っているところでした。
「びっくりさせてごめ〜んね♪」と言われました。ははは。
ここから再び岩場を下って、次の岩場へ登るといった風に繰り返されます。
ちょっと大き目な山塊に取り付くと、トレイルは左手に大きく折れます。
そこから岩のテーブルを渡り、南側から迂回するようにして反対側へ。
その先も岩の上を行くステージとなり、難しいところはありませんが、
なかなか高度感を感じるとことはありました。
この辺りからようやく、第1の目的地である水晶小屋の姿が見えてきますが
見えてから長いのが山のセオリー。
予定より30分はや立ちしたこともあるし、慌てずマイペースで参ります。


↓ひょ〜高い


真砂岳を過ぎるとゴツゴツした岩歩きになる


↓東沢谷


↓稜線の先に水晶小屋


そうして中継ポイントである東沢乗越に到着したのが7:15でした。
ここでこの日初めて休息を取ります。
振り返ってみると、野口五郎から真砂へかけて結構ハードに下ってきたのが見えます。
これ逆だと結構ツライだろうなと思える長さと岩歩きです。
一方、これから進む方を見れば、まず目の前にでっかい岩礁への急登がどーん。
そうしてその先には、赤々とした山肌がむき出しになった荒々しい光景が広がり、
その天辺にちょこんと小屋がのっかていました。
チョコを1カケとドリンクを補給してすぐにリスタートします。
まずはえぐい急登。なかなかここしんどいです。
両手も使ってえっちらおっちらと岩礁を登りきると、
さらに馬の背のような稜線の具合がはっきりしてきました。
まずは東谷側につけられたトレイルへと向かいます。
1か所だけロープははわされている個所がありますが、
そこも特に難しいという個所ではありません。
そこを過ぎていくとザレザレの斜面にきちっとステップが設けられ、
歩きやすく整備されています。
そこを進み本体の山肌に取り付くと、
そこからお花畑のほうにトレイルは進み、
最後の激坂を上りきると小さな水晶小屋に到着しました。
この小屋は定員わずか30名と前日の野口五郎小屋に輪をかけて小さな小屋です。
ここまでの区間は、見た目のエグさとは裏腹に、
トレイルはしっかりとつけられているのでそれほど難しさはありませんでした。
むしろ真砂岳からの下りのほうがしんどく感じました。


↓東沢乗越


↓馬の背のようなガレガレ場を行きます


↓しっかり整備されて見た目ほど難しくないです


↓こぢんまりとした水晶小屋


時刻は7時50分。トイレを拝借し、レーションでしばし休憩します。
小屋に荷物をデポしていこうか悩みましたが、
ここからの時間、結構人の往来が増えるので用心をして、
水晶方面に少し入ってのち荷物をデポすることにしました。
小屋から、水晶岳南肩の赤岳のピークにわずかに登り切り、
そこから水晶までの稜線を認めます。
前半はなだらかな稜線が続いているようですが、山頂付近は結構ギザギザな山容です。
頃合いのところで荷物をデポし、
天蓋を取り外して必要なものだけウェストポーチ化して出発します。
左手には昨日まで見えていなかった雲ノ平と、
その脇にそびえる黒板五郎もとい黒部五郎岳が自信満々に構えております。
さらにそのはるか向こう、スカイブルーの果てに白山連峰が顔をのぞかせております。
黒部源流に位置するこの雲ノ平は
”最後の秘境”や”天上の楽園”と称されるハイカー憧れの地であります。
それにしてもこんな山奥に、誰かが計ったように、
こんなに巨大な高地が登場するなんて全く誰が想像できるでしょうか。
まるで神様がこしらえた闘技場だと説明されても納得してしまいそうです。
本当は今回の山行は当初は折立から入って雲ノ平で一泊を予定していたのですが
折立までのバス予約が満席で急きょ裏銀座に変更したのでした。
いつか行ってみたいところですが、
今回は残念ながらあそこまで行ってしまうと予定をこなせないので
眺めるだけでじゃんねん。


↓最後の秘境雲ノ平がお目見え


黒部五郎岳とはるか向こうに白山連峰


↓雲ノ平小屋が見えます


さてさて、こんな贅沢な絶景をずっと左手に眺めながら、水晶岳を目指します。
途中からいよいよ岩礁地帯へと突入していきます。
手始めに10段ほどの梯子から取り付きます。
梯子はそれほど問題ないのですが梯子の直下が少し急にザレているので注意が必要。
梯子を無事に抜けて、岩礁の裏側に出ると、
ハードそうなトレイルが岩場に張り付いているのが見えます。
トレイルは基本的に黒部谷側につけられていて、比較的整備されて歩きやすい。
昨日裏銀座から見えていた通り、
黒々とした岩肌が余計にハードな印象を与えていますが、
普通に歩いていればほとんど問題ありません。


↓いざ水晶へ


岩礁をいくつも越えていきます


そうしていよいよ標高2986mの水晶岳に登頂です。時刻は8:30。
ここは日本百名山の中でももっとも奥まったところにあるため、
もっとも登頂しにくい百名山の一つとされています。
元々は黒岳という、文字通り岩肌から名づけられたいたって平凡な名前だったのですが
この山で水晶が採れるということから、今のキラキラネームになったそう。
この名前も百名山に選定された大きな要因でしょうね。
ここからは北側へ続く読売新道が黒部ダム湖へ向かって
ゆっくりと高度を下げていく様がよく見えます。
おっちゃんは無事に赤牛へ向かっているかな。
そして今日も昨日同様のすばらしく澄み切った空の元、
立山・後立山の山々も元気に見えます。
昨晩泊まっていた野口五郎岳をこちら側から見渡すと、
やはりどっしりと雄大な山容をしていますね。
さて、山頂はギザギザとした岩場で、あまり十分なスペースとは言えません。
いつもの撮影をどうにかこうにか済ませてから戻ります。


水晶岳とうちゃこ


水晶岳の先に続く読売新道


難所は登りの時は上を見続けながら、足を上げていけばいいのですが、
下りの時は谷底を眺めつつ、滑りやすいところを行かねばならないので、
少し難易度が増します。
慎重に慎重に進んでいくと、前を歩いていた人が急に何かに気づいて
道の脇を注視しています。
何事かなあと思ったら、なんと雷鳥さんがひょっこりと姿を現しました。
まさかこんな急峻な場所でお会いするとはびっくり。
しかもヒナ鳥が3羽ほどお母さんにぴったりと付いてヒョコヒョコ歩いています。
少し観察をしていると、1羽が岩場を越えるのに手間取り、
その間にお母さんたちと少しはぐれてしまい、どっちへ行けばよいのか困っています。
どうするのかなあと思ったら、お母さんが鳴き声をあげて、
こっちだよと誘導をはじめ、その声のする方へヒナが歩きはじめて、
無事に合流することができました。
こんな厳しい環境でたくましく暮らしている
小さな生き物たちには本当に驚きますね。
なんだかんだ言って緊張感のある岩場を朝から歩いてきたので、
ほんわかしたシーンに出会えて少しその緊張がほぐれました。


↓ひょっこりライチョウさん


↓しかも親子


そこから狭く慎重を要する箇所での行き違いが頻繁に発生し、
その度に道を譲りあいしながら、無事に水晶小屋に戻ってきました。
小屋に立ち寄って山バッヂとドリンクを補充し、
ここからいよいよ本格的なワリモ・鷲羽岳の登りに入る前に、
しっかりと腹ごしらえをしておこうと、小屋の裏の分岐のところで、
野口五郎小屋の方に作っていただいたお弁当をいただきます。
お弁当は、川魚の甘露煮がメインの素朴なお弁当。
しっかりいただきます!
20分ほど絶景を眺めながらの贅沢な朝食を済ませ、
いよいよ裏銀座の核心部へと突入していきます。


↓歩いてきた野口五郎岳


↓水晶小屋で弁当タイム


まずは分岐の先から小屋の立つ赤岳をゆっくりと下っていきます。
右手には巨大な雲ノ平の台地があり、
眼下には黒部源流の一つである岩苔小谷が豊かな緑の絨毯を敷き詰め、
その上には優美な薬師岳がしなやかな肢体を惜しげもなく披露しています。
その、あまりにすごすぎるスケール感にクラクラとめまいを覚えつつ、
一歩一歩、満足感を踏みしめながら進んでいきます。
そうして最低鞍部へとたどりつきます。
振り向けば、思った以上に下ってきたようでした。


↓ワリモ・鷲羽岳へ向かいます


薬師岳が見えます


↓結構下ってきました


そこからワリモ岳の北側の斜面をトラバースしていきます。
そこそこゴツゴツとした岩の道となり、慎重に下っていきます。
時折、谷底からいたずらっぽく冷たい突風が吹き付けて、ドキっとしてしまいます。
そうしてワリモ岳の北分岐に到達したのが10:20です。
ここからは向かいに祖父(じい)岳が間近に見えます。
少し前からその山の斜面に一際でっかい黒い岩が見えていたのですが、
光の具合なのか本当に真っ黒で垂直に立っているので、
初めはモノリスか何かかと思いました。
この風景なら1つぐらいあってもおかしくないなあ。
さて、この分岐から次の目的地である三俣小屋までは2択になります。
1つはワリモ岳を経由し、鷲羽岳を越えていくルート。
もう1つは祖父岳を経由して、黒部の源流地まで下っていくルート。
時間があれば、さらに雲ノ平小屋までピストン?なんて欲を出してしまいそうです。
やはりあれだけの絶景を目の当りにしたら、なかなか諦めきれないですよね〜。
どちらもとても魅力的ですが、今回はやはり裏銀座をトレースして行こうと決めて、
再び斜面をなぞりながら、ワリモ岳の山頂を目指しました。


↓ワリモ北分岐


↓まずはワリモ岳を目指します


歩き出しから登山道は結構ザレザレと乾燥した滑りやすい路面で、
それがどうにかワリモ岳の西側の斜面にへばりついている感じ。
小さな鞍部にたどり着くと、その反対側はすでに絶壁で、
最小限の回廊がさらに先の岩のピークに伸びているといった有様。
ここからはなかなかの高度感を感じる区間へと入っていきます。
急こう配でしかもゴツゴツとした岩場の連続する箇所で、
その岩もしっかり固定されているというよりも触ると結構グラつく感じで心もとない。
慎重に一歩ずつ確認しながら踏み出して少しずつ上がっていきます。
山頂が近づくにつれて、険しい岩礁地帯となっていきますが、
すぐ右手は黒部源流までまっさかさまの有様が丸見えで、じんわり嫌な汗を感じます。
慎重に岩場を詰めていくと、ワリモ岳山頂の標がありました。
さすがにここで停滞するような場所ではないので、先へと進みます。


↓途中から結構なガレ場


↓踏み外さないように慎重に進みます


↓ワリモ岳頂上


山頂を少し過ぎたところで、地図でも「危」マークの付いたロープ場が登場します。
難易度的にはついさっきたどってきた岩場とそう大差があるわけではないですが、
岩が谷側にスラブ状になっており、その分だけちょっと肝を冷やす感じ。
そのためにロープははわされているのですが、ロープ自体はユルユルなので、
むやみに強くつかんでロープがたわんだり、しなったりして
バランスを崩すと余計に危ないです。
なのであくまでそっとつかむ程度で、
後は岩場に沿ってしっかり進んでいけば問題ありません。
無事に難所を通過すると、鷲羽岳との間の鞍部へと少しだけ下ります。
そこで鷲羽方面からやってきた3人パーティーとすれ違います。
鞍部について、ここからのまた壁のような登り返しを眺めて、ボーゼン。
さすがに一筋縄ではいきませんね。
もうここまで来たら、行くも地獄、戻るも地獄。
ならとことん行ってやろうじゃないか!
でもその前にちょっと休憩させて。(笑)
緊張感をほぐし、カンカン照りの暑さで疲弊しきった体を冷やすために、
ちょっとコーラをいただきます。
そのうちにさきほどのパーティーが難所に差し掛かったので、
固唾を飲んで見守ります。
3人とも無事に抜けたようです。


↓危険なロープ場。慎重にいけば問題なし


鷲羽岳が見えてきました


↓さっきのロープ場に向かうパーティー


さて、こちらも仕上げに取り掛かります。
見上げると、先ほどのワリモ岳などまだ序の口だと言わんばかりに、
ラスボス感満載で立ちはだかる鷲羽岳です。
眼下の見通し抜群な斜面に、
心細くつけられたザレザレのトレイルに足を踏み出します。
難易度が高いわけじゃないけど、辛くしんどいのは明らかで、
しかもれっきとした高所恐怖症なので(エッヘン!)、
こういう道はいつもドキドキしてしまいます。
なんだか以前に登った常念岳の登りを思い出しつつ、
えっちらおっちらと登っていきます。
怖いので見てはいけないと思いつつ、なぜかついつい下を見てしまい、
あああ高いやんけ@@@と思い知らせながら、気を持ち直し進みます。
ちょうど少し先に2人組の先行者の姿が見え、それを目のやり場として、
とりあえず一歩一歩集中して登ります。
いったん偽ピークまでたどり着くと、そこからは斜度が緩み、
あともうすぐそこに見えるピークまで辛抱強く登り詰めて、
ようやく11:20に標高2924mの鷲羽岳に登頂です。
万歳!


↓しんどい登り返し


↓いやん。高い


↓あともうちょい


鷲羽岳とうちゃこ〜


鷲羽岳の山頂からの眺めは素晴らしすぎました。
正直言って、前日から散々ぱら絶景を眺め続けていて、
ゲップが出そうなほど満喫してきたわけで、
しかも登場人物たちはほぼ前日から出ずっぱりな訳です。
でも、そんな予定調和な状況ですら、
いとも簡単に想像を超えてしまうほどの絶景が目の前に広がっていました。
まずは槍方面。ついつい、いつでも最初にその姿を求めてしまいますね。
こちらの景色がまるで嘘のようです。
まさか想像だにしていなかった美しい湖面をたたえた鷲羽池!
飛びきりの隠し玉を満を持して差し出されたかのような出会いがしらの衝撃。
ほかの山からは、まさかここに、
こんなに美しい池が存在しているなんて想像だにできません。
その見事なクレーターの具合と青く澄んだ鏡、
その奥に硫黄岳の荒々しい鎧をまとった槍の穂先が青天井に向かって鋭く突き刺さる。
こんなの信じられません!
そして右手と視線を転じれば、穏やかにカービングされた緑の尾根尾根。
双六岳から三俣蓮華岳にかけてのしなやかな曲線。そしてその先の黒部五郎岳
そしてその間に広がる黒部源流の眩しいグリーンが、のったりと祖父岳へと盛り返し、
その先の雲ノ平へと流れてゆく様。
はるか遠くには、焼岳や乗鞍岳、そして笠ヶ岳御嶽山まで、
オールスターさながらに顔をのぞかせています。
背後に回ればその雄大なさまが一変し、
先ほど苦労して乗り越えてきたワリモ岳のいかに険しいこと。
そしてさらに奥には今朝方から歩き詰めてきた稜線、
野口五郎岳から水晶岳へ続く岩の帯。
ついさっきまであそこを歩いてきたのがまるで信じられません。
そして立山・後立山の山々もいまだ健在。
東には天と地をきれいに切り分けたような表銀座の断面と、大天井岳のたくましい様。
360度どこを見渡しても、まるで神話の世界に迷い込んだかのような
夢の光景が広がっているのでした。
ああ、ここが北アルプスの中心、いや世界を支える柱の真ん中なんじゃないかと、
そう思わせられるほどの圧倒的で、完全に景色に丸め込まれてしまいました。


↓槍方面の絶景


↓向かいは三俣蓮華岳。ふもとに赤い屋根の三俣小屋


↓ふりかえってワリモ岳


↓今朝歩いてきた野口五郎岳水晶岳の稜線


しばらく景色に圧倒されながら、ぼうっと贅沢に景色に見入ります。
そしてしばらくして、いつもの撮影を済ませます。
すると隣で携帯電話で通話している人がいて、
そういえば奥さんに全く連絡していないことに気づき、
前日の段階ですでに充電が底を尽きかけて寝かせていた携帯を起動して、
とりあえず無事のメールを飛ばす。
携帯はちょうど役目を終えて、完全に充電が切れました。ご苦労!
再び景色の方に戻って、ひたすらに絶景を目に刻み込みます。
ああ、ここに丸一日滞在できるだけの
ゆとりあるスケジュールが立てれたらなあとしみじみ。
ただ今はわずかな時間でもこの絶景に立ち会えたことを深く感謝しつつ、
後ろ髪をひかれる思いで下山を開始します。
また来るよ〜。
さて、時刻は11:30を回りました。腹も減ってきました。
はるか眼下には三俣小屋の赤い屋根。
本当に足元がすくむほどの下りが今まさに目の前に広がり、思わず唾を飲みます…
実は今回の山行で最も懸念をしていた箇所です。
ザレザレ、ガレガレの長丁場の下り、それも高度感バリバリの下りは大の苦手なのです。
まさに手に汗握る。
しかし、登ったからには下らねばなりません。
先ほどまでの夢うつつの頭から、すっきりと真剣モードに切り替えて挑みます。
そこで、秘密兵器とまではいきませんが普段全く使わずに
ザックの肥やしとなっているトレッキングポールを取り出し、
それでバランスを取りながら確実に下っていくことにします。
道は見た目通り乾燥してざらざらの砂と、ゴツゴツの岩のミックスで、
十分にペースを落として、一歩一歩慎重に下ります。
ポールのおかげでうまくバランスを取りながら、下っていきます。
それにしても果てしない!
ザックザックと足をとを踏み鳴らしながら順調に高度を下げていきますが、
やはり衝撃が伝わるようで、古傷の左膝が泣き始めました。
下りなのに登り以上に汗だくだく。
空からは泣き面に蜂でメラメラと光線が降り注ぐ。
要所要所で鷲羽岳のピークを振り返ると、
本当に絶壁のようにそびえていて、改めてすごい山です。
途中、先行する方を追い抜いたり、
下から必死の形相で上がってくる人たちとすれ違ったりしながら、
どうにか安全や緩斜面まで到達したころには、もうハンガー手前のヘロヘロ状態でした。
そこからもう少しザレザレの道を詰めていくと、途中からハイマツ生い茂る道へと変わり、
そこを抜け、少し崩落したような崖沿いの道に出ます。
そこを辛抱強く進むと、ようやく赤い屋根がチャーミングな三俣小屋に到着です。
時刻は12:30を少し過ぎたところ。
下りでしたが、ここは慎重にコースタイム通りのリザルトでした。


↓ヒイイイイイイイ〜激下り


↓とにかく下る(山頂を見上げたところ)


↓三俣小屋にとうちゃこ〜


ちょうどお昼時となり、水晶小屋から2つのピークを詰めたこともありガス欠。
この小屋はサイフォンコーヒーが飲める喫茶兼食堂があるほど
フード類が充実しているので(ここで宿泊すると晩はシカ肉のブラウンシチューです)、
ここらでランチタイムと洒落込みます。
2Fにある展望食堂に入ると、さすがにお昼時で結構お客さんがいらっしゃいます。
鷲羽を過ぎたこちら側はさすがにどっと登山客も増えているのです。
お腹が減っていて数あるメニューのどれもがおいしそうで目移りしてしまいますが、
卓上にタバスコを発見したことで、ボロネーゼパスタに即決。
ミート!ミート!アンド、タバスコ!大好物です。
しばらくJAZZが静かに響く、絶景自慢のカフェで涼んでいると、
まるでここが深い深い山の中だということを忘れてしまうような感じです。
しばらくしてお呼びがかかり、パスタをいただきます。
刺激に飢えていることもあり、タバスコをドバドバかけていただきます。
ん〜まい!
ちょっと荒目に茹で汁を切ってあるので、
後半は若干スープパスタ気味でしたが、
熱中症対策には塩汁はちょうどええです。


パスタをほおばっていると、
1階から小さな女の子と男の子が元気よく駆け上がってきました。
小屋の子らしくて、皿洗いをしたり健気にお手伝いをしていました。
きっと夏の間はここで過ごすのでしょうが、
ここまで登ってくるのも相当大変だろうけど、とにかくたくましいなあ。
みなこの小屋のマスコットである小さな登山家に軽い尊敬の念を覚えているようでした。
このどでかい自然のようにきっと大きく育ってほしいですね。
はたまた、ほかの人たちのやり取りを聞いていると、
前日・前々日の混み様は相当のものだったようで、
今日ようやく布団が干せるんですとスタッフさんの弾む声が聞こえます。
確かに小屋の前のハイマツの茂みにはいくつも布団が干されていましたね。
他にもなんと早朝に奥黒部ヒュッテを発って、
読売新道をひたすら詰めてここまでたどり着いた強者がいたり、
いろんな人がこの三俣小屋を交差しているんだなと実感します。
ああ、いっそ名物のサイフォンコーヒーでまったりしたいなあと
思わず強い誘惑に駆られますが、
ここで腰を落ち着かせてしまったら、
もうテコでも動かなくなってしまいそうなので
パスタを食べ終えたら、出発の準備に取り掛かります。
ああ、忙しないことこの上なし(泣)


↓三俣小屋の展望食堂


↓ボロネーゼパスタで昼食


さてさて時刻は13時ちょうど。
最終目的地である双六小屋まであともうひと頑張り参ります。
といっても一度完全に落ち着いてしまい、
歩き詰めで蓄積した足の疲労やら、暑さで消耗した全身の疲労やらが、
ジワジワと襲い始めていて、リスタート後の一歩一歩が相当にダル重いのです。
ここから双六小屋まではいくつかのルートがあるのですが、
いずれにせよ、いったん三俣蓮華岳の中腹まで登り返す必要があります。
小屋から見上げると、緑の斜面が迫ってきていて、
早くも気後れしてしまいます。
そうはいっても進むしかありません。
背後にそびえる鷲羽岳の威圧感にせっつかされるように歩き始めます。


↓槍と布団干し


↓威風堂々、鷲羽岳


↓三俣蓮華岳を見上げる


小屋の裏側に広がるテン場を抜け、ちょっとした雪渓をまたぎます。
そうして、ゴツゴツした岩の斜面をえっちらおっちらと登っていきます。
途中からハイマツの生い茂る緑のトンネルを抜けると、木道が整備されていて、
お花畑の間を悠々と歩きます。そこから眺める鷲羽岳の見事なこと。
まさに文字通り、鷲が羽根を広げたような山容です。
でも実は明治期までは今の三俣蓮華岳のことを鷲羽岳と呼んでいたようで、
今の鷲羽岳は東鷲羽岳もしくは龍池ヶ岳と呼ばれていたようです。
そうして、13:50に三俣峠へ到着しました。
ここでルートを思案します。
双六小屋までは、三俣蓮華岳のピークを踏んで、
そこから稜線を歩いて双六岳のピークを越えていくルートと、
山の中腹のなだらかな道を進むショートカットルートがあり、
ここがその分岐点となります。
小屋を出た時点では、もう体力の消耗が激しく、
あの上り返しを見た時点で、
無理してピークを落とすこともないかなあと弱気でいました。
でも、この峠まで上がってくると、三俣蓮華の山頂はもう目と鼻の先に見え、
せっかくならもうちょっと頑張ってみようとギアを入れ替えました。


ちょうど峠で、男性パーティー7,8人が休憩をしていて、
それがリスタートしようとしていたので、渋滞は嫌だと、
そのまま休憩なしで、ピークへ続く急斜面へ突入していきます。
すると、そのパーティーのうち2,3人の若者が、
きっと足に覚えのあるのでしょう、
上のオッチャン(自分のこと)をさっさと料理(パス)して、
ピークに行きましょうや、みたいな軽口を叩いてすぐに追ってきました。
残念ながら自分はすこぶる耳がよいので、
その挑戦状を聞き逃すことはありませんでした。
買われたケンカは安値で買い叩くのがモットーですので、
ここで本気モード入ります。我ながら大人げないですねえ。
このピークまでの斜面はザレザレの急こう配で、
距離は短いながらもかなり体力的にハード。
序盤からハイペースで後ろから追ってきたので、
こちらもペースを上げて千切りにかかります。
途中からは手も使って岩をよじ登るところもあって、なかなか大変でしたが、
おかげで、ものの10分程度でピークに上がってこれました。
さっきの若者にも大差をつけることができ、オッサンの面目躍如。
まずは山頂の標の前でパーティに独占される前に、いつもの記念撮影を済ませます。
そうこうしていると、さっきのパーティーが続々と登頂してきました。
若者が息をゼエハアしながら、
「いやあ、思ったよりキツイ登りっすね」と声をかけてきたので、
「そうですねえ」と答えます。


さて、三俣蓮華岳は標高2841mで三百名山に選定されています。
三俣の名の通り、山頂は長野県・富山県岐阜県の3県の県境になっています。
ここからは向かいの鷲羽岳のシルエットが本当にきれいに見えます。
そして反対側には器の大きい黒部五郎岳が惜しげもなく懐を広げています。
もう今日はどこをとってもハイライトですね。
贅沢の極み。


↓まさに鷲を広げたような山容


↓三俣蓮華岳


↓何度見ても美しい風景


さてさて、時刻は14時となりました。
夕食のことを考えると小屋には16時頃には到着していたいものです。
ひとしきり山頂の景色を堪能したら稜線コースを伝って双六岳を目指します。
きっと、さっきのパーティーも目的地は同じなので、
やっぱり道が渋滞する前に先行して動きます。
すると、またまた後ろで、
さすがに双六までには抜けるっしょ、リベンジリベンジみたいなことを言っている。
どうやらさっきのショートスプリントの決着だけでは納得がいっていないようです。
いいでしょう。じゃあ第2ラウンドは双六までの耐久戦です。
挑発に乗るのは正直あまり褒められたことではないとはわかっていつつも、
時間も時間だし、これをうまくエネルギーに変えて乗り切りましょう。
まあこの日の終盤で集中力やモチベーションが落ちてきていたところなので、
ちょうどよい刺激です。
では参りましょう。
まずはピークからザクザクと下りです。道はモミ沢側につけられ、
すぐ下には雪渓が残っています。
少し下には先ほどの峠から平坦に伸びるショートカットコースが見え、
たくさんのハイカーが往来しているようでした。
西側には、でーんと黒部五郎岳が鎮座していて雄大
ああ、あちらの山もぜひ登ってみたいなあ。
細い稜線をずーっと進んでいくと、いよいよピークに向けて鈍い登りです。
特に難しいところもなく、えっほえっほと登ります。
背後ではワアキャアと山ガールのように
おしゃべりをしながら追跡者達が追ってきます。
しんどいところでこそ差をつける方が当然効果的ですから、
ここからさらにペースを上げます。
今朝から登り詰めてきた坂に比べれば全然大したことがありません。
ピーク付近にかけて少し斜度が上がり、息が切れましたがどうにか登り切ります。
登りきると、道は緩みさらに進んでいくと…
なんとその先にもまだまだ稜線が続いているのでした。
自分はてっきりこの山が双六岳のピークだとばかり思い込んでいたのですが、
ここは双六岳と三俣蓮華岳の稜線上にある丸山という小ピークにすぎませんでした。
あれま@@
しかし、偽ピークってなんで毎度毎度あんなにきれいに騙されるんでしょうね。
まず見抜けたことがありません。


↓展望ルートを行きます


雄大黒部五郎岳


↓ピークまであと一息!?


↓偽ピークでした。ガーン。本物の双六はまだだいぶん先


丸山のピークで2人ほど休憩している方がいてご挨拶し、
自分はノンストップで進みます。
丸山の南側を大きく下り、ただっ広い稜線歩きがスタート。
後ろが騒がしいので振り向くと、
続々とさっきの追手が続いてきました。
チェイスされているとはいえ、ただ通り過ぎるにはもったいない景色なので
ところどころで立ち止まって写真をバシバシ。
どこを切り取っても絵になります。
ただ歩くときは、ハイペースを維持して進みます。
しばらく広い稜線を歩いていたのが、
今度は左側の縁をなぞるようにして進むようになります。
途中で、双六岳のピークを回避して
そのまま双六小屋に伸びる中道ルートの分岐を過ぎます。
さすがにここまで来たらピークを踏まずには進めませんね。


↓中道ルートとの分岐。もちろんピークを目指します


少し気になって後ろを確認したら、
さっきのパーティーのうちエースと思われる人がものすごい形相、勢いで
向こうの方から迫ってきているのが見え、
本当に追手に追われているような末恐ろしさを感じ、
思わず「ひぇ〜」と声を出してしまいます。ガチやん。
そこからしばらく道幅の狭いところが続き、
先行者の方々に道を譲ってもらいながら、いよいよ大詰めの登りに差し掛かります。
双六岳の直下はゴツゴツした岩の登りになり、
そこをぴょんぴょんと颯爽飛びの要領で登っていきます。
さっきのエース君はずいぶん頑張って差を詰めてきてはいたのですが、
この登りで失速してしまったようで、その機を見逃さず、
サクサクっと岩場を登って、無事に双六岳に先行して登頂しました。
時刻は15時ジャスト。


双六岳とうちゃこ


双六岳は標高2860mの山で、なだらかな稜線と山頂がなんとも穏やかな山です。
ただあまりに山上が広いため、
濃霧時などは道をロストしやすいそうなので油断は禁物です。
山頂はたくさんのハイカーさんがいらして、
おそらく双六小屋の宿泊者が空身で上がってきているようで軽装の方が多くいました。
まずは例によって標にていつものシェーポーズで記念撮影をしていると
長野県の山岳パトロールの隊員さんに爆笑されてしまいました。
お勤めご苦労様です!
そうこうしているとエース君がようやく登山道をあがってきました。
かなり息が上がっているようで、
ずっと恨めしそうな顔でちらちらこちらを見てきましたが、
何も声をかけてはきませんでした。
しばらく風景を楽しんでいると、
さっきのパーティーの残りのメンバーが散り散りに登頂を果たしてきて、
エース君に、ペース速いよ、メンバーがついて来れないじゃんかと文句を言っていました。
集団行動は和が大事ですよん。
うるさくなってきたので、自分は早々に次へ進むことにしました。
ちなみに彼らは、まだ登頂していないメンバーもいて、
これ以降自分をチェイスするのは断念したようで追ってきませんでした。
これでようやく妙なプレッシャーから解放されることになりました。


双六岳のピークを早立ちしたのは、この山の醍醐味はピークではなく、
そのなだらかな稜線にあるからです。
小屋に向けて続いていくトレイルの先には、
まるでカテドラルのようにそびえたつ槍ヶ岳のなんと神々しいこと!
そして脇を見やれば、今日歩いてきたすべての山と稜線が見渡せるのです。
まるでそのために設けられた専用の巨大テラスかのようです。
あえて騒がしい山頂から外れて、静かな稜線の隅で、
思う存分絶景を味わいました。
とにかくスケールが大きすぎて、もう感動の針はとっくに振り切れてしまいました。


↓槍へ向かって進め!


前後誰もいない状態で、槍を真正面に受けながら広大な稜線をひとり歩きます。
なんと贅沢な孤独の極みでしょうか。
一歩一歩踏みしめるごとに目の前の槍ヶ岳がどんどん大きくなってきて、
ただひたすらに圧倒されます。
ここから見る槍は、ほかに横やりを入れる山が一切なく、
真正面から完全にタイマン勝負で挑んできて、
自分の存在のちっぽけさと如実に対比されるのでものすごく大きく感じます。
去年ちょうど裏側のヒュッテ大槍から見た槍も、昨日野口五郎から見た槍、
さきほど鷲羽で感動したところの槍も素晴らしかったですが、
ここからの槍が一番感動しました。
いずれにしても槍は本当にどこから見ても全く隙がありません。
そうしていよいよなだらかな稜線の端までたどり着くと、
トレイルは山の北側の斜面から一気に高度を下げます。
雪渓を避けるようにして岩場の道を詰めて、一段下の台地にたどり着くと、
まず中道コースと、次にショートカットコースと合流します。
その先から再び急こう配となりますが、眼下を見やると、
今日の宿泊地である双六小屋の屋根が見えてきました。
いよいよ長かった一日のフィナーレです!


↓今日歩いてきた山々をバックに一枚


↓双六小屋が見えてきた!


ゴールが見えてくると、人間、力が湧くもので、
喜び勇んで急坂を駆け下りていきます。
途中で疲労困憊の単独のお母さんがいらして、
「あともうちょっとですよ!」とハッパをかけたりしながら、
ずんずん下り15:45に無事に小屋に到着しました。
おつかれ〜。
5:30からスタートして実に10時間15分。
水晶岳、ワリモ岳、鷲羽岳、三俣蓮華岳双六岳と5つのピークを越えて、
ようやくここまでたどり着きました。
いや〜すばらしい一日でした。


↓10時間の山行終了♪オツカレ〜


早速、お宿の手続きを済ませます。
話を聞いてみると、昨日一昨日はぎゅうぎゅう詰めで大変だったようで、
この日もそこそこ混みそうだという話でした。
手続きを済ませたら今夜のお部屋へ通されます。
この宿はいわゆるカイコ部屋ではなくしっかりきれいな個室に分けられているようです。
中に入ると先客のお二人がいらっしゃいました。
通常だと6人部屋なのですが、今日は布団3枚を4人でということで、
8人入ることになりそうです。
お二人のうちお一人は、同じ年か少し若い方で、
前日の薬師沢小屋から雲ノ平を経てやってきた方でした。
この方は翌日4:30に新穂高へ発つとのことで、
翌日図らずも同じバスに乗り合わせることになります。
もうお一人は、30年ぶりに登山を再開したとのことで、新穂高から上がってきたそうです。
この部屋にはこの時は姿はありませんでしたが
すでに4人パーティーのザックがありました。
彼ら学生グループはは翌日槍をめざし、そこから上高地を目指すとのことでした。
そこにもうお一方はいられてジャスト8人となりました。
最後のお父さんは翌日、赤牛から読売新道を抜けるとのこと。
そういえば、昨日のお父さんも同じコースでしたが、最近人気なのかな?
双六岳と樅沢岳の間の乗越に位置する小屋なので、
窓を開けると心地よい風が吹き抜け、まったりと4人でお話をして盛り上がりました。


この小屋は山と山との間にあるため、残念ながら朝日も夕日も期待できません。
とはいうものの、もしかと思って外に出てみましたが、
日暮れ前に雲が発達し、低い位置の雲が乗越を越えて、
小屋周りは暗くなってしまい、夕焼けは断念しました。
ここの小屋は各方面への入り口・起点となる小屋なので、
人が多いため比較的大きく、サービスが行き届いていました。
一番驚いたのは、トイレ!なんと水洗便所です。
麓ならまだしも山上で、
紙も一緒に流していい山小屋なってあまり聞いたことがありません。
水が豊富な立地だからこそできる芸当でしょうか。
17:30となり、2回目の食事番に呼ばれ、
さっき同部屋で最後に到着された方と一緒にお食事。
なんと、メインは昨日とモロ被りで天ぷらでした。おいしかったですよ。
あとは誘惑に負けて、生ビールをいただいちゃいました。
さすがに山上なので1000円します。
まあ1日頑張ったご褒美ということで。


↓夕方にかけて曇ってきた


↓まさかの天ぷら被り。生がウマイ♪


夕食後部屋に戻ると、なんと宿泊客のめどがついたとかで、
小屋の人が部屋割りの見直しをしてくれて、
最初にいたお二方が移動されて、定員通りの6名、
つまり一人一枚の布団で寝れるように調整をしてくれていました。
ふつうこういう調整はなかなかやってくれないのですが、
気を利かせてやってくれた小屋のスタッフさんに感謝感激。
外はますます暗くなり、雨粒がしぶくので出れません。
小塔までまだずいぶん時間が余ってしまいました。
なので、談話室へ行って暇をつぶそうと思ったら、
ここの小屋にはギターが置いてあるようで、
年配のパーティーの方がそれを弾きながら、
フォークソング大会になっていました。
まるでかつての新宿西口の地下広場のような感じでしょうか。
みんな、いい年して青春しているなあ。うらやましい。
19時半には部屋に戻ると、すでに学生4人組はぐったりと寝込んでいます。
消灯までまだ1時間半もあり、明日赤牛を目指すお父さんと、
色々とお話をして、20時半には就寝しました。


最終日へ続く…