初八ヶ岳 2日目 阿弥陀岳〜赤岳〜横岳〜硫黄岳
2日目。5:30起床。
同じ部屋で泊まっていた人たちも
ほとんど起き出してあわただしく準備している。
自分は1泊1食で朝食抜きなので、荷造りとトイレを済ませて
6時前には山歩きをスタートさせる。
小屋を出ると、若干白い靄がかかっているが、雨は降っていない。
昼からの雲行きが怪しいが、
せめて核心部である赤岳までもってくれれば。
天気次第では翌日もどこかの小屋に宿泊して山行延長も考えられたが、
あまりそこまで期待できない感じなので、それであれば、
無駄に宿泊費がかさむよりは、この日中に帰ってしまった方がよい。
また、天気がどうであれ、せっかくここまで来て、
最高峰の赤岳に登れなかったら悔やまれるので、
そこを確実に登頂するというのを最優先事項として前夜にプランニング。
まずは阿弥陀岳を登り、そこから稜線を伝って、赤岳。
天気が持てばそこから、横岳〜硫黄岳とつないで、
再び赤岳鉱泉に戻って美濃戸口へ降りるコースライン。
標準タイムだと6時発でも、バスの最終である16:40にギリギリ。
よっぽどの悪天候でない限り、標準タイムよりは短縮できるはずだが、
それでも序盤でできるだけ時間的なマージンを作っておきたいところ。
気合を入れて歩き始めます。
小屋の裏手に回り込み、標識通りに、まずは行者小屋を目指す。
八ヶ岳特有の深い緑の中をトレイルが続く。
前日の雨で、ぬかるみがあったり石が濡れて滑りやすく慌てずに。
乗越のところでジグザグと登りとなる。
そこからわずかに進むと行者小屋。
行者小屋で念のためもう一度トイレタイムをしっかりする。
小屋からは赤岳が目の前にあり、
ガレガレ斜面にはトレイルがうっすらと見える。
このまま、文太郎尾根もしくは地蔵尾根で、
赤岳に直行することも可能なのだが、
主稜線から一筋外れた阿弥陀岳へやっぱり行ってみたくなり、
遠回りにはなるが、
赤岳が羽を広げている稜線の先にある阿弥陀岳を目指すことにする。
行者小屋のテン場をすぎて、しばらく歩くと、
赤岳へ向かう文三郎尾根と稜線の右側にある中山のコルへ向かう道との分岐。
迷わず右へ進みます。
↓文三郎尾根と中岳のコル分岐
分岐を進むとすぐに沢沿いの道となり、えっちらおっちらと進みます。
道はいったん見えている稜線に向かってまっすぐ登っていくのですが、
そこから直登を断念したかのように、斜面にぶつかって右へ折れ、
緩やかに弧を描きつつ斜度を上げていきます。
そうしていったん、最西部の緩やかな尾根にたどり着くと、
今度はその斜度を利用してしなやかにトレイルが続きます。
赤岳〜阿弥陀岳の稜線に近づくと、
阿弥陀岳が荒々しい岩場の片鱗を見せ、
一部かなり急なロープ場を抜けて、
いよいよ、稜線に飛び出しました。
中岳のコルからは、稜線で見えなかった南側の景色。
赤岳からさらに南へ伸びる主稜線の頭に編笠山が見えます。
その向こう側には分厚い雲が海を作っています。
ここから阿弥陀岳を見上げると、
かなり急なのぼりが予想されるため、
荷物をいったんここにデポして、
空身で行って帰ってくることにします。
しばしの休憩ののち、
防寒用にレインウェアと小さいペットボトルだけを持って出発。
いきなりガレガレの急斜面となります。
しばらく詰めると、ハシゴ場。
まあまま長めで、しかも途中からハシゴの傾斜が変わります。
前日までの雨で少し濡れて滑りやすいのでしっかりホールドして登る。
振り返ってみると、本日のメインディッシュである赤岳がどど〜ん。
ハシゴを過ぎると、次は垂直に近い岩壁にぶち当たります。
細っいチェーンのような鎖が取り付きにありますが、
それは使わずに3点確保で岩場をよじ登ります。
途中で、かなり難儀な岩礁があり、
一旦裏へ回り込んで、少しでも登りやすいルートを見定めて登る。
ここは全く鎖やポールなどの整備がなく、赤ペンキもありません。
その割に高度感があり、雨上がりに関係なく、
かなり岩が脆くて浮石だらけで、
今回一番緊張感のある場所でした。
難所を抜けるとあとは、カレカレの道をグイグイと登り、
標高2805mの阿弥陀岳に到着。
ちょうど晴れ間が見えてきた時間帯で、
素晴らしい眺望が待っていました。
↓阿弥陀岳
茅野の方面を見ると眼下に雲の海がたゆたい、
その切れ間から高原の緑が見え隠れ。遠くに中央アルプスの山塊。
残念ながら北アルプスは雲の中に隠れてしまって見えず。
翻って見れば、主稜線から外れている阿弥陀岳ならではの絶景。
遠く蓼科山を起点として北八ヶ岳〜南八ヶ岳までの
主だった山々が連なる様が手に取るように見えます。
特に、相対するかのように鎮座する赤岳の攻撃的なフォルム。
いいですねえ〜。
その赤岳からさらに南絵のビル主稜線の終わりに編笠山があり、
雲海を隔てての南アルプス。
残念ながら富士山はお休み。
ひとしきり眺望を楽しんだのち、赤岳へ向かいます。
先ほどの難所を今度は下らなくてはならないが、
これがなかなかどうして難儀難儀。
自分が下った直後の場所から
すでに細かい砂や石が崩れ落ち、非常に不安定。
かなり斜度が厳しく、慎重に3点確保で下るのだが、
本当にもろい部分ばかりで、
一度はうっかり浮石をつかんでしまってズルッ!冷っ!
幸い下に他の登山者がいなかったけど、
フライパンのような岩を谷に落としてしまいました。(汗)
ハシゴ場の上部まで来ると、
下から年配のトレイルランナーがおひとり上がってきてしばし歓談。
5時に美濃戸口を出発して、
阿弥陀岳から硫黄岳まで周遊日帰りとのこと。
全く同じコースなのでお互いに健闘を称えあってお別れ。
7:50には無事に中岳のコルに戻り、
ザックをピックアップ。
↓振り返って阿弥陀岳
赤岳の前に稜線上には小さなでっぱりである中岳を超えます。
さくさくっと登り、振り返ると先ほど上った
阿弥陀岳が朝日を浴びて輝いていました。素晴らしい!
そして正面に立ちはだかる赤岳はとても大きく、
その荒々しい山肌に、幾度もジグザグとへばりつくトレイルと
豆粒のようにたくさんの登山客が下ってくるのが見える。
今からあの急斜面を登るのかと思うと、
気が引き締まる思いと、マジか〜という思いと、
ワクワクが止まらない気持ちと、
とにかく感情が大きく揺り動かされる。
これだから山はやめられないなあ。
一度反対側の広々とした鞍部へ降りると、
さっき見えていた団体さんとうまいタイミングですれ違い。
そこから気合を入れてジグザグを詰めます。
さすがにペースを上げるとしんどいところ。
でも眺望が良いので、すがすがしい!
そうして15分ほどかけて文三郎尾根との合流点に到着。
↓八ヶ岳連峰
↓文三郎尾根との合流点
ここで少しだけ息を整えたら、
一気に赤岳の核心部に迫ります。
分岐を過ぎて、しばらくは砂礫の道を詰め、
にわかに頂の南側に回り込んでいくと、
ここから先は岩の殿堂と化す。
さきほどの阿弥陀岳に比べれば、
岩質が頑丈で、フリクションも効いて登りやすい。
確かに見た目はとても荒々しく感じるのだが、
高度感があったり、難易度が高いようなところはなく、
しっかりと見極めながら歩いていきます。
途中で、権現方面から続くキレットからの道と合流し、
8:40に赤岳に登頂。
赤岳は標高2899mで八ヶ岳連峰の最高峰。
振り返るとまだ阿弥陀岳が輝いていて、
朝から歩いてきた道のりが手に取るように見える。
本当は逆側の東の眺望も期待したかったのだが、
分厚い雲がすぐ眼前に立ちはだかって全く様子がわからない。
しかもそちら側からの風に煽られて、
雲がどんどん押し寄せてきて、
文字通り雲行きが怪しくなってきた。
まだまだ先があるので、そろそろ出発します。
↓赤岳頂上小屋
山頂のすぐ和仁にある頂上小屋を過ぎて、
岩の回廊を歩きます。
その先に、ガスに巻かれた横岳と硫黄岳がむわ〜っと立ち上がってきます。
八ヶ岳というと、牧歌的な高原リゾートのようなイメージを抱いていたが、
このような岩場のルートだったり、
荒々しい光景だったりをみると、
十分アルプスのような満足感が得られ、
標高もそれほど高くなく、随所に小屋が設置されて安心感があり、
高い人気を誇るのがよくわかります。
しばらく岩場を伝っていくと、急に前方が絶壁のようになり、
真下に赤岳天望荘がちらちらと雲間から見えてきます。
この北壁は、赤岳へ登る主要ルートで、
しっかりロープで登山道が示されているのだが、
このえげつない角度の岩壁は、
特に下りは支えとなるような場所が一つもないうえに滑りやすく、
意外と難所でした。
とにかく腰を下ろしながら、尻セードのような要領で、
うっかり滑り落ちないように注意しつつガシガシ下ります。
高度感はそれほどないけど、
一度足を滑らせたら、勢いがついて転がり落ちそうで
難儀でしたが無事に下り切ります。
赤岳天望荘には9:05に到着。
稜線上は結構風が出てきて、雲も厚くなり、
少し冷えてしまったので、100円を払っておトイレを拝借。
しかしこの小屋にも五右衛門風呂が設置されているというのだが
贅沢極まりない。
外のベンチで遅めの朝食を摂りながら、
赤岳がすっきり晴れるタイミングを待ったのだが、
雲は晴れるどころかどんどん厚みを増してきたので、
諦めて先へ進みます。
この辺りからは下から上がってくる人や小屋を発つ人など、
人が多く、少し渋滞。岩場を伝っていくと、
行者小屋との分岐である地蔵の頭に出る。
ここから先へ行ってしまえば、
途中赤岳鉱泉・美濃戸方面へのエスケープはなく、
硫黄岳までおのずと縦走しないといけない。
今のところ、時間も早めに展開できているので、
そのまま周遊を継続して、次のお山である横岳を目指します。
地蔵の頭を過ぎると、再び険しい岩場区間に突入します。
小さなハシゴ場を抜けて、
ゴツゴツした岩の間をすり抜けるようにしながら
アップダウンを繰り返します。
硫黄岳方面から縦走してきた人と
狭いところでの行き違いも増えてきました。
相手がハシゴやロープ場を下りてくるのを待っている間に
何度も振り返っては赤岳を眺めます。
↓再び岩場区間へ
↓振り返って。阿弥陀岳〜赤岳の稜線
そのうち、大きな岩礁にぶち当たり、
それを右手の方から回り込みながら越えていきます。
少し高度感のあるトラバース区間があり、
その先には長めのロープ場。
ここもさっきの赤岳の北壁のように垂直に近く、
鎖やロープを補助的に使いながら体を押し上げます。
岩礁を抜けると、ようやく横岳の本丸が見え始めます。
しかし、そこからいったん大きく下ってから登り返しがあり、
ひーこら言いながら三又峰に到着。
↓岩礁を越えます
↓イージーな梯子
分岐を過ぎ、先ほど本丸の右手に見えていた偽ピークに到達。
ここは結構広々としているので、休憩されている人が多かったです。
ただ頂上はここではなく、その先にチョーンと出っ張ったあの岩礁の上。
一度鈍く下って、再び上り返し、
2連のハシゴをタカタカ登ると標高2829mの横岳の標識。
時刻は10時を少し過ぎたところ。
この頃になると周囲は雲に巻かれてガスガスになってきました。
少し風も強くなり肌寒い。
狭い山頂なので、人でいっぱいいっぱいで落ち着かないので、
写真を撮ったらすぐにリスタート。
山頂の北側は鋭いナイフリッジになっているが、
鎖で区切られているので問題なし。
すぐ先で垂直のハシゴがあるがここも高度感はなし。
大きな岩の間をドコンドコんと下ると、
わずかながら、高度感のあるギリギリ幅の区間。
落ちたらひとたまりもないが、
丁寧に歩けば特に難しいところではない。
そこを抜けるといきなり前方が開ける。
台座ノ頭と呼ばれる、器の大きい山肌になり、
鹿除けネットの間をずんずん進む。
↓リッジ区間
この頃になると、完全に雲の中に突入してしまい、
右も左も真っ白けっけ。
視界もほとんど効かなくなり、
前方からいきなりぬうっと行き違いのハイカーが出てくる感じ。
穏やかなトレイルはすぐに終わりをつげ、
そこからカラカラの石が連なる斜面を下っていきます。
しばらく歩いてくると、突然青い屋根の硫黄岳山荘に到着。
時刻は10:30。
休憩を入れずに先を急ぎます。
↓天狗岳山荘
ここは乗越部分なので、左から右へ強く風が吹きすさぶ。
分厚い雲がぶわ〜っとやってきて体をすり抜けていく感じ。
前も後ろも、右も左も白の世界のなか進んでいくと、
おぼろげに前方に大きな存在を感じる。
と、強い風が吹いて前方の霧が散らされて、
雄大な硫黄岳の横っ腹がよこたわっているのが目に飛び込んできました。
そこへ向けて、いつくもの立派なケルンが道標として連なり、
大きな石が転がるトレイルが延々と続いています。
↓天狗岳が見えてきた
ここの登りがなかなかに長く単調なので、
少しばかりおっくうでしたが、
その先で人がかなり賑わっているのが感じ取られるようになると、
俄然元気が出ます。
そうして、標高2760mの硫黄岳に到着です。
ここはかなり広々としていて、
各方面からやってきたハイカーが思い思いに憩っています。
雲がひっきりなしに流れて行くその合間に、
歩いてきた横岳の様子や、北側の天狗岳へ続く山並みが見えます。
ここの一番に見どころは何と言っても
爆裂火口と呼ばれる激しい岩壁。
文字通りここは大昔に噴火した火口跡で、
この大きさから推測するに
八ヶ岳は昔は3000m以上あった可能性もあるそうです。
この激しい現場を目の前にすると、
どれほど激しい噴火だったのかと想像してしまいます。
さて、11時となり、そろそろ下山を開始します。
北側へと続く山並みを見ると、後ろ髪をひかれる思いですが、
あちら側の小屋は要予約が多いし、
9月にもなると帰りのアクセスが至難の業なので、
あちらへお邪魔するのはまた今度の宿題とします。
標識に従って赤岳鉱泉を目指します。
山頂直下で急な岩場の間を抜けると、そこからは穏やかな道となり、
その先に砂浜のようになった箇所に出ます。
赤石の頭と呼ばれる場所で、ここも交通の要所となっています。
硫黄岳にサヨナラを告げて、鉱泉への下り道を選択します。
すぐに深い森の中へと分け入るようになり、
何度もジグザグと展開していきます。
おそらく朝に美濃戸口を出発した人たちが続々と上がってくるので
何度も行き違いをします。
森の中までガスが入ってきて鬱蒼としていますが、道は明確。
ひたすらガンガン下っていきます。
大同心と呼ばれるクライミングの名所の分岐あたりで
一度沢をまたぎ、赤岳鉱泉に到着したのが11:40。
約6時間でぐるっと周遊することができました。
せっかく充実のグルメがあるので、
ここでお昼でもいただこうかと迷ったのだが、
結構人でにぎわっていて時間がかかりそうだったので
まずはさっさと下山してしまうことにします。
↓赤岳鉱泉に帰ってきました
続々とひとが昇ってくる北沢をひたすら詰めていきます。
時間が経つごとにどんどん雲行きが怪しくなり、
堰堤広場まで来るころには、ポツポツと降り始めました。
再びの雨は御免とペースを上げて、
足をすり減らして美濃戸口に到着したのが13:14でした。
もともと16:40の最終バスをと考えていたのだが、
途中からこれは14:20行けそうだというのもあって
ハイペースで飛ばして降りてきました。
1時間くらい余裕があるので、飯と立ち寄り風呂で十分…
と思ったら、なんと13:20のバスがある!
まさか2本も早い便に間に合うと思っておらず、
この便の存在に全く気づいていなかったのだが
間に合うんなら1本でも早いに越したことがない!
大慌てで、コーラを流し込みトイレに急行、
バタバタしながらもバスに飛び込みました。
茅野駅には14時前に到着。
まずは帰りの電車の手配をし、30分ほど余裕があったので
駅前の駅そばで、いつもの温かいとろろそば。
ん〜甘めのダシが優しい@@
それから売店でお土産を物色してから帰路に着きました。
帰阪は19時前ということで負担なし。
いつでもいけるわと思いながら、後回しになって、
ようやくの八ヶ岳デビューでしたが、
なかなかバラエティに富んでいるし、
遊び方次第で色々な可能性も感じられて、楽しいお山でした。