前穂〜奥穂 縦走
2日目。いよいよ本番です。
朝の4:30には起床し、ザックを整理。
向かいでご一緒した佐賀からお越しの方に、
頑張ってと声をかけていただき、いざ出発。
人気のない河童橋から、目的地である岳沢〜前穂を見上げると、
すっきりクリアな空。気合が入ります。
明神池まで続く、梓川の左手につづく木道をずんずん進む。
朝もやの中、向かいにそびえる霞沢岳も静かに見守ってくれています。
10分ほど歩いて、岳沢の登山口に到着。
↓岳沢登山口
5:00。いよいよアドベンチャー開始。
岳沢登山口からはうっそうとした緑の中をしばらく進みます。
道中には650mほど上部にある岳沢小屋まで
ナンバリングがされていて、距離感がつかみやすい。
本当なら岳沢小屋からスタートしたいところが、
あそこはキャパの問題で完全予約制で、
しばらくは週末は満杯で予約不可になっていたため、
この区間はハンデとして、早く消化したいところ。
ペースを上げて進んでいきます。
NO.7のところには自然のクーラー・風洞がありましたが
まだ朝も早く涼しかったので、あまり実感できず。
NO.5辺りまで来ると、河童橋からも見えていた、
石の沢に出ます。
ここからは、さっきまでいた上高地が眼下に広がり、
上部を見上げれば西穂の方からせまってくる
荒々しい岩礁の稜線が威圧するかのようにそそり立っています。
↓No.7付近にある風洞
道はこの岩の沢のヘリに沿って続き、
岩の区間と緑の区間を交互に行き来しながら
にわかに高度を上げていきます。
ちらちらと小屋が上部に見えてきますが、まだ先。
NO.2の手前で登りは厳しくなり、
えっほえっほと登っていると、
岳沢を発ったばかりの人たちとの行き違いがはじまります。
急登を登ると、道は左へと折れ、岩の沢を横断します。
沢を渡って少し登れば、岳沢小屋に到着。
時刻は6:30。
できるだけイージーなところで時間を稼いで、
その分難易度の高いところでゆとりが持てるようにと
少しペースを上げてたのが功を奏しました。
小屋ではおトイレと、前日に朝食代わりに手配した弁当を食べる。
7時となり、いよいよ重太郎新道に突入します。
ここから前穂高岳まで、わずか2kmで
900m以上も高度を上げることになるので急登必至です。
重太郎新道とは、穂高岳山荘の初代主の今田重太郎さんが、
事故の絶えない前穂高に安全な道をと切り拓いた登山道で、
当時幼かった娘さん(紀美子さん)テントに寝かせながら
作業されたそうです。
そのテントを設営した場所が今は紀美子平と呼ばれています。
北アルプスの一般ルートの中でも急登と知られている道で、
小屋から上部を見やれば、その過酷さが一目でわかりますね。
いざ!
まずは岩の沢を再び対岸へ渡り、
テン場の脇をかすめて進みます。
ゴローゴローとした岩の道は
急斜面をジグザグと高度を上げていきます。
道幅は徐々に狭まり、カーブの部分では
両手で岩をよじ登るような格好で
徐々にハードな展開になっていきます。
そうして急登と格闘していると目の前に、
重太郎新道名物の長梯子が現れました。
早速梯子に取り付きます。
見た目は意外と怖いような感じがしますが、
自分は人工物がしっかりと設置されているところの方が安心感があります、
もちろん、ロープとか鎖とかがあるところというのは
それなりに危険度が高いから設置されているし、
その設置されているものも、
経年劣化などで必ずしも信用してはいけないのだけど、
そういうところは案外、自分でも危険というのが頭にあって、
自然と緊張と集中しているので、怖い思いをすることが少ない。
むしろそういうのが全くないのに、危ういガレ場とかの方が足がすくみますし、
難所を抜けた先で、ほっと気を抜いた場面などの方が事故が多い。
ここは梯子が長いので
渋滞だったり、下りだったり、ウェットコンディションだと
確かにちょっと慎重になりそうです。
しっかりと梯子をホールドして上部へあがると、
左手の明神だけとの間にあるえぐい岩の沢が目に飛び込んできて、
ひや〜っとします。
ここからは道はジグザグと急斜面に無抵抗に振り回されながら
幾多のハシゴや岩場の連続。
周囲に植生があるのでそれほど高度感は感じませんが
とにかく岩にへばりつく感じで骨が折れます。
急斜面と格闘していると上部がにわかに広がり、
カモシカの立場と呼ばれるちょっとした平地に出ました。
重太郎新道はひたすら真上に続いているので、
眺望にほとんど変化はありませんが、
眼下に常に見えている岳沢〜上高地の景色は徐々にワイド感を出し始め、
それと対比するように、西の稜線はその鋭い牙をむき出しに威嚇し始めます。
↓カモシカの立場
↓カモシカの立場から見える西穂の稜線
↓振り返ると、焼岳と乗鞍岳がきれい
立場で少しだけ休憩をして先へ進みます。
ここから先はいよいよ本格的な岩場の道となり、
リスタートして早々にスラブ状に展開する鎖場が登場。
手置き場、足場を確認しつつ抜けていきます。
そこからさらに急な岩礁もあり、かじりついて登ります。
ここから岳沢小屋を出発した人たちに追いついたり、
逆に早くも上から降りてくる人たち(奥穂から来たのか、ご来光帰り?)との
行き違いが頻繁に発生。
難儀な岩場で結構わちゃわちゃと忙しく、
恐怖感や高度感を感じている余裕なく、ひたすらに急登を詰めます。
この間、結構な高度を稼いできましたが頂はまだまだ先。
さすがは重太郎新道です。
↓急な岩礁もよじ登る
↓パーティーをパスしてひたすら登る
えっさほっさと急登を詰めて、8:30には
7合目に当たる雷鳥広場というわずかなスペースに出ました。
わずかに息を整えてリスタートします。
個人的にはここから8合目に当たる紀美子平までの区間が
一番難儀な区間で、結構な角度の岩場を鎖をサポートに使用しながら
グイグイと登っていく。
ちょうど上から、韓国のご一行が一斉に下りてきて行き違いが発生し、
難しいところで互いに道を譲りあいしながらで大変でした。
みな、礼儀正しく、「がんばって」「アニハセヨ〜」と声かけ頂きました。
↓7合目に当たる雷鳥広場
↓急な岩場区間に差し掛かる
難儀な岩場を抜けると小さな梯子で岩礁を抜け、
さらにそこから急斜面の岩場を詰めます。
道幅が限られているのだが、
韓国のご一行さんの列はまだまだ終わらず、
お互いにわずかな足場を確保しながら譲り合い。
岩にかじりついて詰めていくとその先が騒がしく、
向こう側へと抜けると、そこが紀美子平でした。
ふぃ〜。やっと着いた!
↓岩礁を越えたらもう一息!
ここでは多くの人が休息を取っていて、
自分も一角で小休止。
いったんザックを脇にデポして、
前穂の頂上まで空身でアタックします。
ここからの登りがさっきの7〜8合目よりもさらに岩登りな感じで
えっほえっほと登っていきます。
9合目の槍見平からは穂高の山並みの間から
ちらっと槍が穂先を見せているのが見えますが、
山頂まではおあずけして、とりあえずトップを目指す。
9合目から上も、浮石が多い岩場の登りで、
一部結構な高度感を感じるような場面もあったり、
一筋縄ではいきません。
慎重に歩を進めて、9:20に標高3090mの前穂高岳に登頂しました。
乙!
山頂は想像していたよりもずっと広々としていて、
大きな岩がからからと積み上がったような広場になっています。
せっかくなので、一番奥の方まで進みます。
そこからの眺めは本当に素晴らしかった!
まずは何と言っても、これから向かう先の奥穂高岳の威圧感!
吊尾根の先にそそり立つ岩の殿堂は、
前のめりでこちらを覗き込んでいるように感じるくらい圧倒的。
今からあの細い回廊を伝ってあちらへ行くのかと思うと、
思わず武者震いをしてしまいます。
そして、真っ先にその姿を求めてしまう槍ヶ岳。
この日もしっかりと北アルプスの中心に堂々と鎮座しています。
その槍からこちら側へ向かって鋭い稜線が向かってくるのが見え、
改めてものすごいところに来てしまったという実感が湧きます。
視線を東へ転ずれば、はるか眼下の梓川沿いに
明神池や徳沢の小屋がミニチュアのように見え、
その上部に、蝶ヶ岳〜常念岳〜大天井岳〜燕岳と常念山脈のしなやかな山並み。
そしてさらにそのはるか奥に針ノ木岳や鹿島槍、
そして後立山の山々までが延々と続いています。
事前の天気予報では二転三転していた天候も、
文句のつけようのない晴天で感無量でした。
↓常念・表銀座方面
20分ほど絶景を楽しんだのち、
紀美子平までの下降をスタートします。
登りに難儀した道は下りは一層難しく、慎重に下っていきますが
途中で思わぬトラブルが発生。
槍見平まで下ってきて、奥穂のショットを撮ろうとポケットを探ったら
なんとスマホがない!WHY?
山頂では撮影をしたので、その時までは間違いなくあったので、
その間に落としたのか?
でも、落としたらきっと音やら何やらでわかるはずなのに?
でも紛失したのは山頂からの下りなのは間違いないので
向き直って再び山頂へ登り返します。
周囲にいた人たちや、先行で登っている人たちに、
あったら教えてください!と声をかけながら戻っていると、
上部の人がスマホがここにあるよと教えてくれ、
しかもわざわざそれを私に降りてきてくれました。
ありがたや〜@@@@
そこはちょうど、段差が大きくて、
降りるのに尻をつかないといけないところで、
おそらくその動作の際にズボンのポッケから
ニュルっと静かに押し出されてしまったのだと思います。
皆さんお騒がせいたしましたm(__)m
なんだかんだで、どうにか紀美子平まで降りてきました。
ただでさえ緊張感が続くゾーンにいるのに、
思わぬトラブルで軽いパニックになり、
少しここで休憩を入れて落ち着きを取り戻します。
10分ほど休憩をしたのち、いよいよ吊尾根にアタック!
道自体はすでにここからほぼ全容が見渡せます。
よくよく目を凝らすと所々にカラフルなザックが動いているのが見え
こちらから見ると、ええっつ!?あんなところ歩いていくのと
少しばかりビビってしまいます。
特にここから見える奥穂高の威圧感はすごくて、
それを目の当りにするだけでもひるんでしまいますが
ここまで来た以上は突撃あるのみ!
細い細い道が岳沢側につけられていて、
そこをえっちらおっちらと進みます。
しばらく進んでいくと、上部の難儀な岩場から声が?
何かと思ったら前穂の頂上から降りてきた人で
「道をロストしてこっちに来てしまったんだけど、紀美子平どっち?」
と聞いてきた。
いやいや〜そんな危なっかしい岩場に来るまでに
なぜ気づいて引き返さないのよ。
オッチャンのいる岩場から縦走路までは結構段差が大きいし、
岩の状態もよくないから、
正規ルートまで引き返した方がいいですよと声をかけたのですが
「いや〜登り返すの面倒なんで」とかいいながら
無理やり縦走路まで下りてきて、そのまま反対側へ消えていきました。
いやいや、無事に一般ルートへ戻れたからいいけど、
それは結果論でしかなくて、もしあそこで滑落されたら、
周囲の人も放っておくわけにはいかないわけで、迷惑かけるでしょうが。
そもそもあんなわかりやすいところで道をロストして、
それにすら気づいてない程度なんだから、
そういう人がこんなところに来て勝手はいけません!
さて、オッチャンの無事を一応確認してからリスタート。
すぐ目の前に山の端の岩礁が目に飛び込んできます。
先行する単独者さんが、
そこを通過するのにルートを決めきれずにまごまごしています。
山の切れっ端のところで、なかなか高度感がありそう。
しょっぱなから難しそうです。
少し遅れて、自分も岩に取り付きます。
左側はすっぱり切れ落ちていて、
滑落すればはるか800m下の岳沢小屋まで10秒で着けそうな勢い@@@
マークに従って慎重に岩を乗り越えます。
その先も山肌に沿って細い道が続いており、
山の凸凹に応じて切れっ端の部分では同じように岩礁が待ち受けていて
その度に、スリリングな岩場を越えていく、というのが繰り返されます。
不思議なもので、この辺りまで来ると徐々に高度感にも慣れて、
恐怖心がなくなってきます。
ただ、そうなってからの油断が怖いので、
集中集中と声に出しながら慎重に歩きます。
前方の奥穂の絶壁と、西穂から続くエグイ稜線のむき出しの岩肌が
本当に迫力満点で迫ってきていて、目がくらくらします。
その無慈悲な光景に、思わず、
少し前に温かく迎えてくれた前穂の方を振り返ってみると、
先ほどの歓迎はどこへやら、
こちら側もギザギザのタテガミをなびかせて早くも他人行儀な表情。
あまりに巨大すぎるモンスターの間に挟まれて、
あまりにちっぽけな自分の存在に途方もなさを感じてしまいました。
とはいえ、ここで停滞するわけにはいきません。
じっくりと一歩一歩前進します。
途中、分岐点(?)とマークの書かれた場所を通過し、
ひたすら細いトレイルを詰めていきます。
この吊尾根はアップダウンはそれほどきつくないし、
スキルを要するところもそれほどないのですが、
左側は常に切れ落ちており、緊張感で体が硬くなって疲れます。
岩場になると、多少滑りやすいところもあるので
慎重に足場を確認しながら進んでいく必要があります。
この日はとっても天気が安定して、晴れていたので
時折、立ち止まって深呼吸をしながら、
眼前に広がる絶景に癒されながら進むことができましたが
これが雨だったり、発達した雲の中に巻かれていたら
さぞかし不安だったと思います。
↓上高地はずーっと眼下に
ちょうど中間地点辺りで、わずかのスペースがあり、
先行していた3人パーティーさんと一緒に小休止。
ここからはようやく岳沢と反対側の涸沢を眼下に見ることができました。
大きい小屋床屋の間には色とりどりのテントが咲いているのが見えます。
リスタートすると、ここからは少しずつ高度を上げていきます。
岩場の傾斜がにわかに急となり、
万一足を滑らせたら谷底というのが頭をよぎりますが、
必要以上に恐怖心を抱いてもよくないので、
気を紛らわせながら進みます。
そうして進んでいくと、
徐々に奥穂のトップの岩の塊が近づいてきました。
吊尾根のほぼ終盤に差し掛かり、
この区間最大の難所にぶち当たります。
絶妙に嫌な角度で岩の斜面が結構な長さ続いていて、
そこには一本の鎖がぴろんと垂れ下がっているだけ。
意を決して取り付きます。
まず鎖の末端まで上がるのに、
意外と岩がフラットで難儀します。
どうにか鎖まで来たら、それを補助に、
岩の段差や切れ目を使って三点確保で登る。
上部に行くほど傾斜が急ですが、
必死に岩と格闘してどうにか上がりきる。
最中は登るので必死ですが、登りきってその区間を振り返ると、
谷底まで滑り落ちるように展開する岩場に
さーっと血の気が引きます。
下りの場合は絶対怖い@@@
長めの鎖場を抜けると、さらにその先、岩と岩の間に鎖場。
ここは、中央に突き出た岩が結構邪魔で、
腕力で無理やりよじ登ります。
そこを抜ければ難所は終了で、少し登れば南陵の頭に到着。
そこからはもう山頂がすぐそこで、
たくさんの登山客が見えることでちょっと一安心。
そこからはカラカラとした大岩が転がる
なだらかな区間となり、進んでいきます。
左手側からは名高いジャンダルムがそそり立つ稜線が近づいてきます。
そうして12:05に北アルプスの最高峰、
標高3190mの奥穂高岳に登頂しました。
いや〜念願の奥穂です!
さすがに奥穂は人が多く、にぎわっています。
トップにある祠で、絶景を堪能しながら写真の順番待ち。
すぐ前方のジャンダルムは本当に敵意むき出しの荒々しさで、
眺めているだけでも萎縮してしまいそうな感じ。
でもよく見るとあそこのトップにも何人か人が立っていて、
そこからの危うい稜線上にも歩いている人が見えます。
純粋にすごいですね。
自分はちょっとあそこにはよっぽどのことがない限り、行けなさそうです…
翻って、槍方面もこれまた文句なしの絶景。
さっきの前穂からは見えなかった、笠ヶ岳や薬師岳といった面々も見えます。
すごいねえ。
こんな景色、いつまでもずーっと飽きずに見ていることができます。
さて20分ほど写真を撮ったり満喫して、時刻は12:30。
実は腹ペコなのと、おトイレがそろそろということで、
名残惜しいのだが、穂高岳山荘を目指すことにします。
祠から先へ伸びるトレイルへ進み、
右側へとくるっと回り込むような形で岩場を降ります。
そこからは比較的フラットな岩場の区間を歩いていきます。
途中で山口から来たというオッチャン2人組と合流して
色々山話をしながら進みます。
徐々に前方が切れ落ち、向かいの涸沢岳との谷間に赤い屋根が見えてきました。
奥穂の名所となっている小屋直上の2連梯子にたどり着きます。
ここは時期や時間帯によっては長蛇の渋滞が発生し、
しかも登りと下りで同時なので、
ヘタをすれば1時間待ちとかもありうるところなのですが、
この日はスイスイと通過できました。
すぐ下に小屋が見えていることもあって、
あまり恐怖感も感じません。
そうして奥穂の山頂から30分弱で穂高岳山荘に到着。
しかし、よくこんなところに小屋があるものです。
小屋は涸沢から上がってきた人たちでごった返しています。
まずは何より腹ごしらえということでカレーを注文。ビールは我慢。
速攻でペロリ。
で、ここで思案です。
当初の予定だとこの日の終着点はここで、
この小屋で一泊を考えていたのですが、時刻はまだ13:00。
この調子なら、向かいの涸沢岳に登った上で、
涸沢に降りることができそうです。
というのは、穂高岳山荘のHPでは
この日は超混雑日のマークがされていたし、
実際この時間でこの混雑ぶり。
宿泊受付にも今日は1枚の布団を3人でと書かれてあります。
これだけ登って疲れている上に、3000mの山上で、
ひどい寝床は避けたいもの。
それであれば、涸沢まで降りれば、小屋は2つもあり、
それぞれがこの山上の小屋よりもキャパがあるので、
下で混んでもまだマシじゃないかと考えたわけです。
しかも、この日に下山していれば、
明日朝イチで北穂にもアタックが可能!
(奥穂〜涸沢〜北穂の稜線は実力不足なのではなから考えず)
実際はこれが欲張って策に溺れるという結果になります…
実は穂高岳山荘では、エクストラチャージを支払えば、
1人1枚の布団で寝ることが可能だったわけで、
予定通りここで宿泊していれば、
快適な寝床をゲットでき、夕焼け&朝焼けショーも観れたのでした…
涸沢の盛況ぶりを完全に甘く見てしまっていました。
それが悪夢の一晩をすごすことになります@@@
この時点ではそんな結末になるとはつゆ知らず、
涸沢に降りるために準備を始めます。
トイレを済ませ、小屋の外にザックをデポして空身で涸沢岳へ向かいます。
テン場とヘリポートを横切って、ガレた岩の道をずんずん進みます。
道はそれほど難しいところ、高度感もないのですが
高所なので登りはとにかく息が切れます。
15分ほどで標高3110mの涸沢岳に登頂です。
山頂には標識が刺さっているだけでほとんどスペースがなく、
岩の間で休憩をして景色を眺めます。
前方には険しい稜線が北穂まで続いていて、
所々にカラフルなザックが取り付いているのが見えます。
このまま前進してみたい気もしますが、
ここから先は事故多発の超難所。
安易には行けません。
そしてはるか眼下には涸沢。
あそこまで今から下っていくのか。
↓涸沢岳への登り途中。向かいは奥穂
↓涸沢岳
↓目の前に北穂があるが、この区間はさらに難易度アップ
涸沢岳にわずかに滞在したのち、穂高岳山荘へ飛んで帰る。
時刻は13:30だし、あとは下りだけなので、涸沢には十分下れると判断。
ザックをピックアップして、下山を開始しました。
穂高岳山荘のテラスから眺めると、
本当に高度感を感じるようなところですが、
道自体は谷底の方まで細長く続く岩礁の間を
ジグザグジグザグと続いていきます。
ここはザイテングラートと呼ばれ、ほぼ固有名詞化されていますが
要は主稜線ではなくて支尾根という意味です。
ひたすら岩の道を詰めてずんずん下りますが、
難しいところはあまりないように感じました。
下からは必死の形相で登ってくる人が絶えず、
頑張って頑張ってと声をかけながら行き違います。
下の方まで来ると若干の鎖場がありますが、
ここも難易度も恐怖度も低め。
無事にカールの岩殿まで降り立ちます。
下ってきた道を見上げてみると、
すごい角度で山が反り返っていて目がくらくら。
これは確かに登りは辛そうです。
右手側には今朝歩いた前穂からの吊尾根のギザギザが見えます。
もはや名残惜しい…
徐々に近づく下界をみやれば、
涸沢名物の色とりどりのテントの賑わいが大きくなってきました。
カラカラの岩の沢を歩いて涸沢小屋に到着したのが15:10。
約10時間30分の大冒険が終わりました。
おつかれさま〜。
早速、宿泊の受付をします。
本日の様子を聞いてみるとなかなか今日は混みそうな様子でした。
通された部屋は、受付の後ろにある洞穴のような地下への階段を下ったところ。
しかも残念なことに二段ベットの上の段で、梯子を上るのが難儀でした。
また、この部屋はとにかくどこからも遠くて、
トイレも乾燥室も食堂も売店も、
いちいち靴に履き替えたうえで、
薄暗くて足場の悪い階段を登らなくてはならなくて本当に不便でした。
しかも、寝床も、布団をぎちぎちまでスペースに詰めただけで、
貴重品とかメガネなど枕元に置きたいモノたちを置くスペースもなかったり、
細かいところが結構不便な造りでした…。
とりあえず荷物を置いて寝床を確保したら、
晩御飯まではフリーなので売店へ行って
早速、生ビールセット♪
テラスから今日歩いてきた吊尾根を見ながらの祝杯です。
ゆっくりビールを味わったら、
にぎわいを見せる涸沢を散策しますが、
どうも同じ山というフィールドを共有しているだけで、
文化的には異なる人種が多いようで、
サークル活動の延長のようなナンパなノリの若者グループの乱痴気騒ぎとか、
しこたま飲んで酔っ払ってタチの悪い中年グループの横暴さだったり、
アルピニズムというより、
単に都会でできることを山に持ち込んだだけという風な雰囲気が
涸沢全体にあって、
元々人ごみの苦手な自分にとっては、
あまり魅力的に映る場所ではありませんでした。
彼らの楽しみ方を否定するわけではないのですが、
自分が間違った場所に来てしまったなあと感じてしまいます。
また、高山に囲まれた深い谷なので、眺望は開けておらず、
紅葉の時期なら山肌を愛でるのも楽しいかもしれないが、
すでに上の景色を知っている山を見上げても、
あそこに戻りたいなという思いになるだけで、
山上に留まらずに欲張って下ってきた後悔だけが募ります。
それでも、それらをぐっと我慢して、明日は北穂!と
この時点までは考えていたのですが…
17:30となり晩御飯。
窓側の席に案内されたので、吊尾根を見ながらの食事。
料理はなかなかおいしゅうございました。
谷底にあるので日暮れは比較的早く、
19時には暗くなって、することもなく、寝床へ戻りますが
結果的に、布団1枚を3人でシェアするという、
回避すべく努力したはずの最悪のパターンに陥るという…
できるだけ寝床に入る時間を遅らせるため、
売店へ行き、TVでリオオリンピックの開会式をぼうっと見る。
それも21時には消灯となるため、悪夢の寝床へと舞い戻る。
さらに最悪なことに、この日一緒になった同部屋の連中は
そろいもそろって大イビキ軍団。
右も左も、ガーガーと眠れやしない。
なのに、どうつもこいつも、周りがイビキでうるさいと
自分のことを棚に上げてののしって険悪なムード。
1人のイビキが止まったなと思ったら、次はその隣の奴がイビキ、
さらにその隣、隣。
スペースも全く寝返りを打てるスペースはなくて、
右から左から肘や膝が入り、おっさんの寝息が顔にかかるので、
途中からもうあきらめて、体を起こし、座して眠る努力。
結局、朝になるまで一睡もできず。
今まで生きてきた中でこれほど最悪な夜はありませんでした。
10時間かけて、3000m峰を3つ登った昼間の疲労よりも、
7時間もの間、極度に狭い場所でなにもすることなく
ひたすら待機するだけの夜間の方がはるかに疲労しました。
一晩で心も体も芯から疲れ切ってしまい、
もはや翌日に北穂にアタックするという野望は消え失せてしまいました。
最終日へ続く…