さて、充実の前穂〜奥穂の山行を終えたわずか2日後に
再び北アルプスへと舞い戻ります。
今回は単独行ではなく、
今年に入って勢いづいている長女を連れての子連れハイク。
娘はもちろん、本格的な高所登山は初めてだし、
2泊3日で母親と離れるのも初めて。
山歩きに関しては彼女の能力はもう実証積みなのだが、
色々な不安を解消するために、万全を期すことからスタート。
まずは日程です。
1人なら蝶ヶ岳へは一泊でも十分ですが、
そんな過酷な行程は無理なので、
1日目は横尾もしくは徳沢泊、2日目は蝶ヶ岳泊、
3日目は下山・帰阪というプラン。
お盆時期が意外と登山客数が減るので
元々そこを狙っていたのですが、今年は特殊事情があり、
8/11(木)が初めての「山の日」を迎えるということで、
その前後3日間は記念式典開催の影響で、宿泊は一杯だし、
交通規制がかかったり、色々と読めない状態だった。
できれば、帰ってきたばっかりで疲労もあるので、
1週間ほどインタバールを開けたかったのだが、
1日目の横尾or徳沢の宿泊予約状況がこの週末は一杯で、
空室がある中で検討した結果、
ベストだったのが8/10(水)だった。
山上の蝶が岳ヒュッテの混雑具合だけが読めなかったが、
宿泊する11日は下の上高地に人が集中して、
山上まで上がってこないと予測できた。
(実際快適だった♪)
荷物も、基本的には自分の荷物は自分で持たせるのだが
何かあった場合のエクストラの着替えだったりなどは
こちらのザックに詰め込むので思ったよりボリューミー。
あとせっかくならあの広い穏やかな山上で夜間撮影をしようと
重い三脚をむりやり突っ込んだので、結構な重量となりました。
出発当日。6時には起床し、
7:03の新大阪駅発ののぞみに乗り込む
久々の新幹線に娘もワクワクドキドキ。
あっという間に名古屋に到着したら、今度は特急しなのに乗り換え。
早起きしたせいもあって、娘はほとんど眠りこけておりました。
松本駅に着くと、「ま〜つもと〜、ま〜つもと〜」というアナウンスに、
娘は反応して、ずっと真似をしておりました。
一旦下車をしてアルピコ交通のチケットを購入。
新島々までは電車でそこからバスに乗り換え。
バスは臨時の2台体制になったため、
後続車を定期便として、
我々が乗る先行車は途中バス停をすっ飛ばしての特急に。
臨機応変の対応はありがたいです。
運転手によるとつい2日前にはR158で事後が発生して
3時間も交通がストップして、乗り継ぎができなかったらしいです。
そういうリスクもあるのねん…
バスでは娘は、徐々に深くなっていく山の様子や、
3つあるダムを自分のカメラでバシバシと撮り続けておりました。
予定よりも10分ほど早く12:40に上高地BSに到着。
大阪から約5時間30分。やっぱりなんだかんだ遠いねえ。
↓3日ぶりの上高地
3日ぶりの上高地です。特に感慨はありませんが、
翌日の式典にむけて、BSの駐車場一帯にテント会場が設置されていて
そのために若干バスの出入りが大変そうでした。
ちょうどお昼時ということもあり、出発前にお昼ご飯。
車内で寝てしまって食べそびれた駅弁をベンチでしっかり食べます。
30分ほどでお昼を済ませたらいざウォーキング。
河童橋はものすごい人だかりです。
娘がかわいがっているカッパのぬいぐるみたちが売店にあり、それに喜ぶ娘。
河童橋からは先日登ったばかりの前穂〜奥穂の吊尾根が見事に見えていて
本当にいいお天気。
娘も高原リゾートの雰囲気を楽しんでいる様子でした。
↓河童橋とわたし
さて、時刻は13:30。
17時までには横尾山荘に到着しないといけません。
横尾までは約10kmの道のり。
普通に行けば3時間あれば行けますが、娘のペースもあるので、
ほとんどちょうどくらいのタイミングなのでそろそろ歩き始めます。
小梨平からは木立の中を進むので、直射日光がなく、
この日はそよ風が吹き抜けてとても心地よし。
川の対岸の明神岳が見えるポイントでは娘は、
文春の記者バリにカメラをバシバシ。
観る者すべてのスケールが今まで体験したことのないものなので
純粋に驚き、楽しんでいる様子に目を細めます。
それほどアップダウンもなく、娘の足取りも快調で、
15時前には徳沢園に到着。
これで約束の17時までに横尾に間違いなくつくメドがつきました。
ここでちょっとブレイクということで、
徳澤名物のソフトクリームを。
どこから来てもずっと歩いてこなければ味わえないからか、
ここのソフトクリームは美味しい。
娘も口の周りをベチャベチャにして味わっておりました。
15分ほど休憩をしたら、残りの道をやっつけます。
さすがにこの時間、人通りがぐっと減ります。
娘もさすがに少し足にきたようで、疲れた〜と言いながらも、
ペースを落とすことなく、他愛もないおしゃべりをしながら歩きます。
横尾には16:12に無事到着。
すぐに寝床の受付をします。二段ベットの上下を確保しました。
同じ部屋ですぐ真上とはいえ、
実質一人で寝るのがはじめてな娘が気がかりですが、他に手立てはありません。
寝床に着いて、まずは荷物の整理をしていたら、
娘は二段ベッドがいたくお気に入りなようで、
用もないのに梯子を上ったり下りたり、超機嫌よく元気。
そんなに元気ならちょっとお散歩ということで、
暮れなずむ横の谷にかかる名物の吊橋の下に出て、少しばかり川遊び。
水が冷たい!
しばらく外遊びをしましたが、夕食まではまだ時間があったので、
先にお風呂を済ませます。
当然ながら男女別々で、娘一人で心配でしたが、
まあそれらにりちゃんとやったようです。
風呂あがりにお父ちゃんはおビ〜ル、娘はジュースで乾杯♪
ぷはあ。
晩御飯となり、食堂へ。
周りのおっちゃんおばちゃんに色々質問攻めにされてご満悦の娘。
夕食後はすることもなく、
寝床で消灯時間までお話をして、21時には就寝。
何時だったか、娘が上へあがってきて、足が痛いというので
よくマッサージをしてあげると、もう大丈夫と言って戻っていった。
そんなこともあったので夜中なんどか様子を見に降りるが、
心配をよそにぐっすり寝ておりました。
2日目。
5時ごろになると槍や涸沢へ向かう人たちがごそごそと起き始め、
さわがしくなって、自分たちも目を覚ます。
朝食までの間に荷造りを済ませておく。
朝ごはんはしっかり食べましょう!
6:25。
いよいよ蝶ヶ岳へアタックを開始します。
トイレも済ませ、荷物の整理も終わり、小屋を出ると、
見事は晴れ模様で、向かいに見える前穂もばっちりです。
早立ちの人はもうほとんど出払い、閑散とする横尾を出発。
槍方面への道の入り口の分岐点から山登りがスタートします。
↓ここから蝶ヶ岳へ向かいます
深い緑の中を進むと、すぐに登りがスタートします。
今日は稜線まではずっと眺望のない森の中を登りっぱなしになります。
のっけからまずまずの急登が続きます。
昨日の晩に足が痛いと言っていたので心配をしていたのですが、
寝たからもう治ったと、ケロっとしていて、
お父ちゃんの心配をよそに、ぐんぐんペースを上げて行きます。
むしろ、数日前の山行の疲労や、
いつもと勝手の違う山行で
もろもろ気苦労で寝れてないこちらのペースがあらず、
待ってくれい〜。
いやああ、若いって素晴らしい。
40分ほど登りを詰めていくと、
道の脇に小さなベンチがあり、そこで女性が2人休憩されています。
槍見台と呼ばれるポイントで、振り返ると、
緑の間から槍がエッヘンと胸を張って姿を見せています。
我々も5分ほど休憩。
リスタート後も、道の様子は変わらず、
木の枝やゴロゴロの岩の道をひたすら詰めます。
森は一層深く、緑一色の世界。
木々のおかげで直射日光からは逃れられるのですが、
風が入ってこないので、空気が淀んで蒸し暑い。
えっほえっほと登っていくと、標高2000mの標識を発見。
娘にとっては初めての大台突破です。
オメデトウゴザイマス。
そこからも一定のペースで登りつづけ、
7:54に、本家よりも立派な「なんちゃって槍見台」に到着。
誰かが眺望をよくするために木々を伐採したのか、
以前来た時よりも、眺望が開けていて、槍がくっきり。
眺望も大事だけど、木の伐採はあかんと思うけど…
8:00までしばし休憩。
休憩ののち、再び登ります。
道は相変わらずで、徐々に斜度も上がってきたように思います。
娘を先頭にえっちらおっちら登ります。
眺望もなく単調なのですが、娘は楽しいと言ってくれてちょっと安心。
9:35には標高2500m地点と書かれた標識を通過します。
あともう少し!
歩きながら少し娘に森林限界について解説をします。
大きな木はある高さ以上だと、
風が強かったり寒かったりして育つことができないから、
もう少ししたらその高さになって、木がなくなるよ。
そうしたらもうすぐ山の上に出るよと教えてあげます。
しばらく歩くと娘が前を指さして、
「もうすぐ木がなくなるから、なんとか限界やな」とつぶやきます。
その通り、その先からは高い木々がなくなり、ハイマツ帯へと様子を変えて、
青空が広がるようになっています。
ようやく森林限界を抜け、ザレ場を詰めると、常念主稜線の分岐点に出ました。
時刻は10:13なので、約4時間の登りでした。
乙!
そうしてお待ちかね。お待ちかね。
振り返ってみると、槍・穂高の山の連なりが、
オールウェルカムでお出迎え♪
娘は思わず、「うぉおおお〜!」と絶叫を上げておりました。
自分も初めてこの光景を見た時には、
日常ではありえない、大パノラマのスケール感に度肝を抜いたものです。
小学生の娘からしたら、その驚きはさらにものすごかったことでしょう。
この景色は自分の足で歩いたものだけしか見ることのできないものなので、
彼女が自分の足で得た経験ということではほんとうにえらいと思います。
この景色をぜひとも見てほしかったので、
天気も味方して本当にうれしかった。
↓槍・穂高の絶景!
稜線まで来ましたが、目的地まではあともう少しあります。
山頂と、山頂直下にある本日の宿泊地・蝶ヶ岳ヒュッテまでは
なだらかに二重稜線を30分ほど歩きます。
一見なだらかに見えますが、そこそこアップダウンがあります。
ハイマツ帯の間に細く切られたトレイルを進んでいきます。
↓蝶ヶ岳まではなだらかな稜線
自分も娘も、すかっと開けた眺望に
すっかり足の疲労も忘れて快調に歩いていると、
前方でハイカーが数人ハイマツを覗き込むようなしぐさをしていたので
何かなと見てみると、なんと雷鳥の親子でした。
どうもやんちゃなヒナたちがが
あっちこっちにハイマツのつぼみを食べに散ってしまって迷子になってしまい、
お母さん鳥がハイマツの繁みから大きく頭を出しながら、
鳴き声でヒナたちを呼び寄せているようでした。
お母さんの心配をよそに、
ヒナたちはひょっこりむき出しのトレイルに飛び出しては
自由に歩き回って、ちょうど娘の足元を平気で横切りました。
こんなすっきり晴れた日に、
しかも蝶ヶ岳の稜線でばったり出会えるなんて
本当にラッキー。
雷鳥の生息の南限は乗鞍岳なので、
ほぼほぼ南限に近いエリアで見れるのは珍しいことです。
↓雷鳥さんだぞ
そんな思いがけない出会いもありつつ、
再びトレイル歩きに戻り、11:00に蝶ヶ岳ヒュッテに到着しました。
かなり早い時間ですが、早速宿泊の受付を済ませます。
12時からしか寝床への案内がないので、
その間休息と、ちょっと早めのお昼ご飯。
なんだかんだで5時間歩き通したのでお腹ペコペコ@@@
自分も娘もカレーを注文してガツガツ食べます。
フライドガーリックチップをかけて食べるとうまいのねん。
のんびりとお昼を食べていたら、もうじき12時という頃合いだったので
ロビーで少し待って、12時に一番乗りで寝床へ。
ちょうど角のカイコ部屋の1ブロックというベスポジをゲット。
混み具合によってはもう1人入ってくる可能性があり、
この日は初の山の日ということもあって
小屋の人も混雑が読めないと困っておられましたが、
結果的に2人で1ブロックを丸々使えて快適でした。
↓蝶ヶ岳ヒュッテにとうちゃこ
さて、無事寝床を確保しましたが、
肝心なことを忘れております。
まだ蝶ヶ岳のトップに登頂していません!
ということで、荷造りと寝床作成を終えて、
お昼からはおさんぽタイム。
まずは小屋から歩いてすぐの山頂へ。
標高2677mの蝶ヶ岳に無事登頂しました!
オメデトウゴジアマス!
ここから振り返れば、先ほどからずっと見えている槍・穂高はもちろん、
ヒュッテ越しに大きな器のような常念岳がどっしりと構えているのが見え、
本当に素晴らしい眺望です。
↓蝶ヶ岳登頂♪
登頂を済ませた後は、
今度は小屋とは逆側に蝶槍まで足を延ばすことにします。
横尾の分岐点までは上がってきた道を戻ります。
再び探してみましたが、残念ながら雷鳥さんはもうすでにおらず。
そうこうしているうちに、安曇野側からモクモクと雲が上がってきました。
勢いよく山を上がってくる雲の塊に娘も興奮気味。
いつものように梓川から吹き上げてくる風が強いために、
この雲は稜線の半分から向こうへは乗越すことはできないため、
半分が晴れで半分が曇りときれいに割れています。
まだ小2だと理科の授業がないので、娘に説明するのが難しいですが
できるだけわかりやすくこの水と空気のマジックについて説明したり。
「へーへー」といいながら面白がっておりました。
↓安曇野側から雲がモクモク
分岐点を過ぎ、なだらかな稜線のアップダウンをこなしていくと、
前方に鋭い岩礁が見えてきました。
近づくにつれて、ガレた岩場となり、
梓川の方は結構な高度感。
娘も慎重に前進して、無事に蝶槍に達しました。
↓常念岳と蝶槍
ここからの眺めもまた最高で、
本家の槍が槍沢ロッジの辺りから一気に伸びる様は圧巻。
槍はどこから見ても素晴らしいのですが、
ふもとから山頂までタテのラインで見えるのは
この一帯だけだと思います。
槍が鋭く天へと突き刺さるさまとは対照的に、
向かいにどっしりと地に足をつけて構える常念岳の堂々たる様もまた見事。
ああ見えて、意外と山頂は狭く、山頂までの登りは急登です。
蝶槍では結構長い時間まったりしていて、
その間にも、常念から縦走してきた人たちが
ヒーヒーと大汗をかきながら到達してくるのを迎えます。
みな、娘の姿を見つけてすごいねえ、すごいねえと声をかけてくれ、
娘もまんざらではなさそうな感じ。
びっくりしたのは、娘が山歩き用の帽子がない代わりに、
スワローズの帽子を被っていたら、
スワローズファンに発見されたことです。
相手はお父さんと小学校高学年のペアの人でしたが、
まさかレアなスワローズファンに出くわすなんてびっくりで、
それは向こうも同じだったようで、
思わず盛り上がってしまいました。
この後、続々と縦走路からやってくる人たちと
みなさんで写真の撮り合いっこをしたり、楽しい時間を過ごせました。
「この景色、何時間でも見れるし、何枚同じ写真撮ってもええなあ」と
娘もつぶやくほど、お気に入りの場所になったようです。
時刻は14時を過ぎ、雲も続々と上がってきたので
ぼちぼち小屋へと戻ります。
空身で来たので絶景を横目に軽快に歩く。
途中、ケルンを見つけると、
娘はわざわざ馬鹿でかい石を見つけ出してはおいていきます。
赤茶けた石を見て、
「鮭に似てる」「鮭に似てる」と何度も謎の言葉を発しておりました。
15時過ぎには小屋に戻る。
戻ってきてまずはおトイレなのだが、娘は小屋のトイレは初めて。
水洗ではないので、用を足したら拭いた紙は
必ず目の前のゴミ箱へ入れることと教える。
蝶ヶ岳ヒュッテは、昼間は屋外のトイレしか使えないルールになっていて
そこがまた結構な悪臭がただようトイレで、
娘はトイレから出てきたときには鼻をつまんで「強烈!」と叫んでおりました。
まあこれも山の洗礼の一つですね。
寝床へ戻りお菓子タイムにしようと、
娘のお菓子の巾着を探っていると、
ポテチの小袋がパンパンに膨らんでいたので、
ここでまたまた理科のプチ授業で、気圧の話をしました。
袋がパンパンなのに大笑いの娘。そらおもろいわなあ。
そこから娘と二人で1時間ほどお昼寝タイム。
起き出すと、結構人が込み合ってきました。
幸いにして、寝床は2人だけを確保できましたが、
それなりに混んできました。
17時になって第1弾として夕食。
娘は食べるのが遅いので最後まで残されてしまいますが、
小屋の人に2弾目のテーブルは十分あるので、
ゆっくり食べてくださいと声かけしていただきありがたや〜。
夕食後は、夕焼けを見に、瞑想の丘までおさんぽ。
最初は大キレットの間に太陽が落ちていく様がよく見れたのですが、
時期に梓川の谷間にみるみるうちに雲が発達して、
その雲が尾根を乗越して安曇野側へとこぼれていくようになり、
はっきりとは夕焼けは見えませんでした。
少し肌寒くなってきたし、雲がどんどん厚くなって
これ以上眺望も望めないだろうということで小屋へバック。
乾燥室に行って衣類を干したり、
ロビーのテレビでオリンピックを観たりして時間をつぶす。
19時過ぎになって、
テント場が騒がしいので様子を見たら
雲が晴れたようなので、夜景を見に外へ。
この日は半月が煌々と明るくて、
小さな星のきらめきまでは見えませんでしたが
時折星が流れるのが確認できました。
せっかく思い三脚を担いできたので、用意して夜間撮影をしましたが、
やはり満天の星空は捉えることはできませんでした。
そのかわり、眼下に広がる安曇野の夜景や、
眠る穂高岳の黒い山容に、
小屋の所だけ明かりが灯ってる様などはどうにか撮れました。
ちょっとカメラ自体の調子も、前回の山行で悪かったので、
ぼちぼち買い替えを検討せねば。
↓安曇野の灯
↓眠る穂高
消灯時間までには寝床へ戻り、おやすみ。
スペース的には十分なのだが、
娘の寝相の悪さに、何度も起こされました(笑)
懸念していた高山病も問題なく。
4時ごろ、
早立ちの人たちが起き出してごそごそとしだすのに気付いて起きる。
窓をのぞくと、すでに東の空がうっすらと明かりが刺し始めている。
娘に声をかけて起こし、朝は冷えるので、
下は2枚、上は3枚と厚着させ、小屋の外へ出る。
瞑想の丘の少し先まで行って、そこに陣取って日の出を待ちます。
この日はほとんど風もなく不思議なくらいおだやかな朝。
眼下にはふわふわと心地よさそうな雲海が敷き詰められていて、
地平と空の間から朝が少しずつ少しずつ始まろうとしています。
娘も神妙な面持ちで空を見つめ、時折思い出したようにカメラをバシバシ。
そうして、いよいよ朝日が昇り始めると、
そこからはもうあっという間で一気に空が明るくなりました。
娘もこんなのは見たことがないと心底感動しているようで、
連れてくることができて本当によかったなあと思います。
感動は東の空ばかりではなく、翻ってみれば、
今日も見事な姿を見せる槍・穂高の面々が朝焼けに燃えて素晴らしい。
一つ北にそびえる常念岳も相変わらず魅力的なフォルム。
小屋の向こう側には、うっすらと独立した円錐が見え、
それが富士山だと娘に教えてあげました。
約1時間、それほど冷えることもなく絶好のコンディションで
朝焼けを楽しむことができました。
↓燃える穂高
小屋へ戻り、5:30に朝食。
小さな娘にとってはお漬物とかはあまり好物ではないものなので
お米と味噌汁ばかりを食べる。
残してはいけないので、代わりに自分がパクパク。
朝ごはんをいただき、長蛇のトイレをすませます。
荷造りを終えたら、公衆電話でふもとの登山口までのタクシーを予約します。
標準タイムで4時間ほどなのだが、
こちら側のルートは初めてなのと、娘のペースが読めないので
少し余裕をもって11:30に来てもらうことにしました。
小屋の人にお礼を言って、いよいよ6:25に下山開始。
その前にすぐそこなので、お別れとしてもう一度だけ山頂に立ち、
見納めとなる槍と穂高にさようなら。
そこからテン場を抜けて、大滝山方面へのトレイルに入ります。
これから降りていく方面はびっしりと雲海が広がっていて、
あの雲の中へと降下していくことになります。
常念山を左手に臨みながら、お花が咲き乱れる斜面を下っていくと、
トレイルは分岐に差し掛かり、三股登山口方面へと折れます。
これまで蝶ヶ岳は3,4回訪れているのだが、
三股登山道を利用するのは実は初めて。
大体しんどい長壁尾根を詰めるか、横尾へ降りるかなので
自分にとっても新しい道でワクワク。
常に左手に常念のスケール感のある山肌を感じながら、
意外と急峻で歩きづらい道が続きます。
ガイドブックなどでは、ビギナーな山である蝶ヶ岳に登るルートの中でも
最もポピュラーで優しい道という紹介が多いですが、
道は狭く、岩が転がり、斜度もあって、なかなかの道です。
ずんずんと下っているとどんどん足にダメージがたまっていくようです。
最終ベンチ、第1ベンチと書かれた目印をパスしていきますが、
だんだんと道はハードとなり、木の根っこやら岩場を渡るようなところも出てきます。
ひょっとしたら前日の横尾からの登りよりも、
こちらの下りの方がハードかもと感じるくらいでした。
娘も難所は慎重に慎重に足場を選びながら進んでいきます。
2時間30分ほど延々と降り続けて、蝶沢とよばれる沢の頭に到着。
ここまでの区間はなかなかハードで、思った以上に時間がかかりました。
あまりモタモタせずに、それなりのペースで降りてきたはずですが、
標準タイムより1時間もオーバーしてしまいましたので、
あまり甘く見れない区間だったのかもしれません。
娘も、「疲れた〜」と叫んでおりましたが、
この場所もあまり広いスペースではないので、
もう少し進んで落ち着けるところでしっかり休むことにし、
一呼吸おいてリスタート。
この先もしばらくはゴツゴツとした岩の部分があったり、
痩せた道が山肌に取り付けられただけの部分が多く、慎重に進みます。
そろそろ、朝早くに出発した人たちが上がってきて、
行き違いが頻発しますが、一様に登ってくる人は汗だくで辛そうでした。
眺望を見る余裕もあまりないのですが、
時々木々が開けたところから常念がよく見えます。
あのスケールのある裾野はまだまだ下の方まで伸びていて、
一体この山はどれだけ大きいのかとため息をつきます。
結構な時間、頑張って下ってきたつもりですが、
まだ2000mを切るところまでしか到達していません。
登山口は1300m台なので、まだ半分も来ていないのか!?
4時間程度で降りれると何処の案内にもあったけど、
これは5時間以上かかりそう…
細い道へっこうな行き違いが続き、
その度にお互いに頑張ってと声をかけあって別れます。
小さな娘のエールに勇気づけられる人もいたみたいで、
自分も結構バテバテになりながら、
しっかり声を出して挨拶をしていた娘が誇らしくあります。
長らく続いた急登も2000mを切ると落ち着きだし、
中腹の広い場所に出ます。
そこでいったん休憩をして、娘の靴と靴下を脱がせてマッサージ。
「楽〜♪」と大喜び。
そこからぬかるみに木道をはわした区間などをずんずん進み、
まめうち平に到着したのが9:35。
ここから登山口まではまだ2kmちょいあります。
まめうち平から下は、よく整備された階段状の道が続く。
結構一気に高度を下げるような形だが、
上部の道よりも断然整備されているので安全で歩きやすい。
ただ、下りの衝撃で足が結構ダメージが大きい。
途中、おそらく見納めになるであろう常念にさよならをつげて
さらにどんどん下ります。
がっつりと階段で高度を下げたのちは歩きやすいフラットな森の道となります。
直角に道を右手身曲がったところに面白いスポットを発見。
少し前から、その姿がゴジラに煮ていると話題になった木で、
面白がって木の割れ目に石を敷き詰めて牙のようにしたりして
ますますゴジラのようになっています。
今では「ガオさん」という愛称もつけられて、
蝶ヶ岳の新マスコットとして密かな人気となっているようです。
娘もこの木がお気に入りになったようです。
さて、ガオさんに別れを告げて先へ進むと、
徐々に沢を流れる水の音が大きくなってきました。
少し岩場を下っていくと右手から大きな沢が現れ、
一帯から流れが集まってきました。
そこを抜けていくと、小さな吊橋がありそこを渡ります。
そうしてしばらく進んでいくと、三股の登山口に無事たどり着きました。
そこにある小さな小屋には係員のオッチャンがいて、しばらくお話。
しかしゴールはここではなく、さらに800m進んだ駐車場まで行かないと、
タクシーは来ないので、トイレだけ済ませてすぐにそちらへ向かいます。
そうして11:08に無事に駐車場にてゴール!
おつかれさま!
駐車場へ着くと既に1台のタクシーが停まっていて、
名前を告げると予約したタクシーでした。
念のために早い目に待機してくれていたようで、
熱くて何もない駐車場を待ち時間なしで、すぐに出発です。
タクシーのオッチャンによると、ここまで上がってくるときに、
この道のところに熊が出たらしく、まだこの辺をうろついているらしい@@@
きょろきょろ周囲を見回してみると確かに、
猿やら鹿やらを目撃したので、熊もいるのでしょう。
快適なタクシーで30〜40分ほどでJR豊科駅に到着。
6000円ほどでした。
次の松本行の電車までは30分ほどありますが、
駅前には何もなく、
空調の効いた待合所でジュース飲みながら待機。
すると、電車遅延のアナウンス。
中央西線で特急が鹿をはねたとかで、
10分ほどタイヤが乱れているとのことでした。
予定より少し遅れて入線してきた電車に乗り松本駅まで戻ってきたのが12:40。
下界はびっくりするぐらいに暑くて、ヘロヘロ@@@
まずは帰りの電車の手配をし、1時間後の電車を手配。
その間に昼ごはんとおみやげ。
娘は久々にマクドがいいというので、駅前のマクドへ。
そのあと土産物を物色。
信州や北陸のターミナル駅はそこそこ駅までみやげが充実しているのだが
松本駅はちょっと物足りない。地酒ももっと置いてほしいんだけどなあ。
13:52に予定通り特急しなのに乗り込み、
最初は娘はぐっすり熟睡していたのに、途中で起き出して
そんな短時間で回復したのかよというくらい元気はつらつ。
撮りためた写真などを見ながら、また山に行こうねと約束しました。
名古屋まで来るともう現実世界で、17:03には帰阪。
本格的な登山という大冒険を終えて、娘はまた一回り成長したように思います。
単独で、厳しい日程のなか、難しいコースを制圧するというのも
とてもやりがいがあって楽しいのだけど、
こういう山行もとても充実感・達成感があってよかった。
娘と忘れ難い思い出を共有できて大満足のおとうちゃんでした。